今回は因縁の対決その一。ヤユイVSヴァイス。楽しんでいただけると幸いです。
「ハハハハハハ!誰だか知らないが強いな、お前!勝ち残ったジムチャレンジャーかなにかか!?」
楽しいのかはしゃいでいるヴァイスと、仏頂面のヤユイ。以前の黒髪じゃなくて白髪になっていたが、その顔は見間違えようがない。華奢な体格に白づくめの修道服の様な物を着ていて白髪を腰までかかるロングヘアーにしているたれ目の美少女、ヴァイスだ。私のブラッキーを殺し、心無い言葉で私の心を踏みにじってズタズタに破壊した外道。それでも私はヤユイの中で見ていることしかできない。だけど、ツンベアーのつららおとしをルガルガンがでがんせきふうじで破壊してせめぎ合っている光景は、押されている様にも見えた。
「…お前、私の事を覚えていないのか?」
「あ?強い奴なら覚えているが…お前は覚えがないな。知り合いか?」
「お前…お前え!この子を見ても、同じことを言える!?」
激高したヤユイはルガルガンを戻し、代わりに繰り出したのはブラッキー。ヴァイスの姿を見咎めると敵意をむき出しにしている。…殺されたあの子の、娘。それを見たヴァイスは攻撃の手を緩めて首を傾げた。
「ブラッキー?なんだ?もしかしてアタシが追放されたことを知ってる元ファンかなにかか?」
「お前なんかのファンであってたまるか!このブラッキーに、覚えはないのか!」
「生憎と、覚えてないねえ。ブラッキーなら昔一匹殺したなあ、ぐらいか」
「このブラッキーは……お前が殺したそのブラッキーの娘だ!腐れ外道!」
いつもと異なり口調を荒くして、指を指して全力で非難するヤユイ。するとヴァイスは合点が行ったのか頷き、ニヤリと三日月の様な笑みを浮かべた。
「なんだよ、あの時の雑魚トレーナーか。雰囲気も口調も全然違うから見違えたぞ!アタシに復讐するために強くなって、こんなところまで来たのか。ご苦労様なこった。それで?アタシに勝てるつもりでいるのかい?またお前の可愛い可愛いブラッキーが死ぬだけかもよ?」
「そんなことはさせない、もう、負けない!そうあの子に誓ったんだ!」
「誓った程度で実力差は埋まらねえよお!つららおとし!」
「つきのひかり!あくび!」
天窓から降り注ぐのは月光ではなく太陽光だから全快とまでは行かないが、ブラッキーは耐久が強い子だ。何とか耐え抜き、あくびを放つ。見た限り、ヴァイスの持つボールは四つ。こちらは六体居る。数に差があってもこれは試合じゃない。四体倒せばヤユイの勝ちだ。
「そんなの、交代すりゃあ…」
「くろいまなざし!」
「っ!なるほどね、搦め手で来たか。真っ向勝負じゃ勝てないと分かっているみたいだなあ!ならこうしてやるよ…なみのり!」
くろいまなざしで逃げられなくなると、ヴァイスの指示でフィールド全体を覆う大波を発生させるツンベアー。ブラッキーは大波に飲まれ、水はヴァイスとヤユイの足元まで来て靴がびしょ濡れになる。でも、なにをしようがもう眠るはず…
「おねんねの時間だ。一緒に付き合え!ただし、永久氷河でな!ふぶき!」
「しまっ…」
波が消えてない状態で吹雪が放たれ、フィールド全体の水が凍り付いて行く。ヤユイの足元まで固められてしまって身動きが取れなくなってしまった。慌てて見やると、ブラッキーは氷像となって凍り付いてしまった。ツンベアーは眠ってしまったが、こちらも動けないからイカサマで攻撃が出来ない。やっぱり、判断が早すぎる上に上手い。認めたくないけど、ヤユイよりもトレーナーとしての実力はヴァイスの方が
「くっ…交代、いってマニューラ!」
事実上に戦闘不能にされてしまったブラッキーを悔しげな顔で戻して、マニューラを繰り出すヤユイ。マニューラは凍り付いた波の上を滑走し、まるでローラースケートでもやるように波の斜面を利用して加速しつつ眠りこけているツンベアーに突撃する。
「マニューラ、メタルクロー!」
「そろそろ起きやがれ、ツンベアー!きりさく!」
するとブーツを脱いで白いニーソックスを履いた足で氷の上に立ち、ツンベアーの口に何かを含ませるヴァイス。するとツンベアーは目を覚まし、目の前に迫っていたマニューラの振るった鋼の爪と、手に吐息を吹きかけて氷柱を装備した爪をぶつけて斬り飛ばすツンベアー。マニューラの腕から血が流れて氷の床に落ち、ツンベアーは力づくで氷から抜け出し、咆哮を上げる。このままじゃ、マニューラまで…!
「体勢を低くして壁に向かえ!かわらわり!」
「つららおとしだ!」
大きく息を吸い込み、上空に向けて吐息を吹きかけて氷柱を生成、流星の様に落としてくるツンベアー。マニューラは傷付いた腕を庇いながらも氷の床を滑走、壁にジャンプして壁を蹴り、ツンベアーの頭上に迫り、チョップを振り下ろすも、ちょうど降ってきた氷柱が直撃。ツンベアーは崩れ落ち、脇腹を裂かれたマニューラも同時に倒れた。早く、治さないと…!
「ごめん、マニューラ。少し待ってて!お願い、タチフサグマ!」
「加減はするなよ、アブソル!」
次に繰り出されたのは、タチフサグマとアブソル。たしかダフネさんから聞いた話だと、今のヴァイスがアブソルでメガシンカしていたと聞いたような。
「アブソル、メガ…いや、お前にはアイツで使った方が面白そうか。このままいくぞ、エアスラッシュ!」
「ブロッキング。ほのおのパンチで足場を溶かして!」
エアスラッシュをブロッキングで防ぎ、ほのおのパンチで氷を溶かして蒸発させるタチフサグマ。鉄のフィールドで、共に飛び出した。
「クロスチョップ!」
「みきってふいうち!」
タチフサグマのクロスチョップを見切って防ぎ、死角からの一撃が叩き込まれる。しかしタチフサグマはタフなポケモン、その程度ではビクともしない。
「「つじぎり!」」
同時に振りかぶられて放たれたアブソルとタチフサグマの鋭い爪による斬撃がかち合い、距離を取り睨み合う両者。
「クロスチョップ!」
「みきってつじぎり!」
「ブロッキング!」
ブロッキングとみきりという防御技を持っているこの二体、戦い方が似ていて勝負がつかない。ヤユイが焦って次の指示を出したのもしょうがないことだった。
「ほのおのパンチからのクロスチョップ!」
「焦ったな、餓鬼が。みきって、エアスラッシュだ!」
タチフサグマ最大の一撃は容易に防がれて。返しの手痛い一撃が叩き込まれ怯んでしまう。
「隙を逃すな、つじぎり!」
そこに十字を描く斬撃が放たれ、血を流したタチフサグマはついに倒れ伏した。戦闘不能だ。どうして…?
「特性きょううん。アタシのアブソルの攻撃は手痛いぞ。死ななくてよかったなあ?」
「やっぱり、強い……ルガルガン!いわなだれ!」
「アブソル。みきり」
タチフサグマを戻し、ルガルガンを繰り出す。ヴァイスは警戒してみきりを使って攻撃を防ぐが、生憎とルガルガンの真骨頂はそうではないのだ。
「がんせきふうじ!」
「そんなものあたるかよ!」
「がんせきふうじ!」
岩石が放たれるも、いわなだれほど質量の無いそれは簡単にアブソルに避けられてしまう。それでも連打するヤユイ。
「どうした?やけにでもなったか!つじぎり!」
「それを、待っていた!カウンター!」
アブソルの斬撃を受けながらの、手痛い拳の一撃が胴体を捉え、殴り飛ばす。アブソルは目を見開いて殴り飛ばされ、壁に激突して沈黙した。
「……誘い込まれたか。強くなったじゃないか、泣き虫でポケモントレーナーの出来損ないだったちびっ子が!お前、名は何て言う?」
その言葉に、ルガルガンと共に不敵に笑み、自らに指を向けるヤユイ。
「ヨハル。クノエシティのヨハル!それがお前を倒す、トレーナーの名だ!」
その言葉に、ショックを受ける。…そんな。ヤユイこそ、名乗るべきなのに。私は、ポケモントレーナーを名乗れもしないのに。ヤユイ、貴方は名乗っていい。隠さなくていいんだよ、もう。そんな私の言葉は、私のために戦う親友には届かない。
ヴァイス、というか新生プラズマ団の幹部陣。弱そうに思われてますが普通に強いんですよ?
・ヨハル
今回の主人公で二重人格。因縁の相手前でも戦えない、ヤユイに任せきりな自分はポケモントレーナーだと名乗れないと思っている。クノエシティ出身。
・ヤユイ
ヨハルのもう一つの人格。ヨハル第一主義で自分の存在は明かそうとせず、あくまでヨハルとしてヴァイスに勝負を挑む。怒りから口調が荒々しい。
・ヴァイス
カロス出身の元エリートトレーナーにして新生プラズマ団幹部。状況を見極め、特性を駆使し、最適解を繰り出す頭脳の持ち主。外道だがトレーナーとしての腕はかなりのもの。少なくともカロスのジムバッジを全て集めているぐらいの猛者である。幹部としての手持ちは四体。アブソル、ツンベアー、トゲキッス、そしてオニゴーリと全て白いポケモンなのが特徴。切札はオニゴーリ。その特性は…?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。