ポケットモンスター蟲【本編完結】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。今回はヴァイスVSヨハル!そう、戦えない少女がついに戦います。楽しんでいただけると幸いです。

※剣盾には出ない過去作要素が出るので注意です


VSオニゴーリ

 あれは、三年ぐらい前のことだ。アローラ地方に引っ越してすぐ、ヤユイが手持ちを手に入れるために夜に親に内緒で外に飛び出して、遭遇したカプ・テテフという守り神。その時に拾った不思議な石を持っていたのを、巡回していたしまクイーンのライチさんというアーカラ島で一番偉い人(?)に見つかり、石を加工してあげると言って家に帰されてしまったことがあった。曰く、私はカプに選ばれたのだと。

 

 

「ヨハルー?貴方が見つけたっていう石を加工したものがしまクイーンが持ってきてくれたわよー。………あのね。お母さん、ヨハルがここアローラに引っ越してきてから、夜とはいえ外に遊びに行って、それだけで嬉しかったの。しまクイーンには私から言っておくから、その気になったら顔を出してね?」

 

 

 ヤユイから戻った私は引き籠もりで。会いに来たライチさんに会う勇気もなく。お母さんの優しい言葉に甘えてしまった。食事と一緒に部屋の前に置かれていたそれを、試しに腕に装着する。引きこまれそうな夜の様な漆黒のブレスレットだった。石の感触が冷たくて気持ちいい。その日から、そのブレスレットが私たち二人を繋ぐ宝物になったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハハハハッ!お前は強いよ、認めてやる!だがアタシに勝とうなんざ100年早いね!トゲキッス!」

 

「ルガルガン戻って!アマルルガ!」

 

 

 繰り出してきたのは悪名名高いトゲキッス。私みたいな素人でも知っている、数多の大会でミミッキュやドラパルトに並ぶ使用率を誇る、凶悪なまひるみを使う白い悪魔。対してルガルガンを戻したヤユイが繰り出したのはいわ・こおりとひこうタイプに絶対的なアドバンテージを持つアマルルガ。よほどのことがない限り負けることはないはずだ。

 

 

「でんじは!」

 

「フリーズドライ!」

 

 

 でんじはを受けながら、効果抜群の凍てつく吐息を放つアマルルガ。しかしトゲキッスは広い屋内を自在に飛んで回避。麻痺したアマルルガではあのスピードを捉えきれない。

 

 

「ストーンエッジ!」

 

「一発でも当たればアウトなら、避けて怯ませてなにもさせなきゃいいんだよ!エアスラッシュ!」

 

「“まひるみ”か…!」

 

 

 攻撃を繰り出そうとしたところを怯ませられ麻痺し止められたことで苛立たしげに歯を噛み締めるヤユイ。ヤユイはなにかされる前に自分のペースに持ち込んで相手に好きなことをさせずに追い込むタイプだ。こうなると、ダフネの時と同じだ。負ける、負けてしまう。

 

 

「こんなところで使ったらヨハルの体まで危ないから使いたくなかったけど……ふぶき!」

 

「エアスラッシュで切り開け!」

 

 

 私の体を気遣っていたのか使用を渋っていたアマルルガの必殺技ともいえるふぶきを、あろうことか風の刃で切り開いて防ぎつつ怯ませるトゲキッス。反則にも程がないだろうか。いや、普通の個体よりも明らかに強い。エアスラッシュでヤユイの切札と言ってもいいブリザード級の威力を誇るふぶきを防ぐなんて。

 

 

「どうした、それで終わりか?ならこいつでとどめだよ!はどうだん!」

 

「それなら、じしん!」

 

 

 エアスラッシュを止めた今がチャンス。とどめを刺しに放たれたはどうだんを、じしんでプラズマフリゲート丸ごと揺らすことでずらして回避する。はどうだんはその速度から必中とされる技だが、必ず当たる技なんてシャドーパンチみたいな特殊な技ぐらいしか存在しない。

 

 

「今だ!根性で拘束して!」

 

「逃げろ、トゲキッス!」

 

 

 プラズマフリゲートが大きく傾いたことで床に近づいたトゲキッスに向けて歩き、首を伸ばして翼に噛み付くアマルルガ。これでもう逃げられない

 

 

「ヨハル、ごめん!最大パワーでふぶき!」

 

「はどうだん!…ぐぅううう!?」

 

 

 アマルルガを中心に部屋全体に吹き荒れる凄まじい勢いのふぶき。トゲキッスは凍り付いて倒れ、同時にアマルルガも倒れる。ヴァイスは踏ん張って耐えるが、私の小さな体は吹き荒ぶ風に耐えきれずに吹き飛ばされ、壁に勢いよく叩きつけられてしまう。その時、私は違和感を感じた。痛い。見てるだけじゃ感じない、現実の痛みを感じる。これは…まさか?

 

 

「アタシを楽しませてくれるねえ、クノエシティのヨハル!なら切札でお相手しよう!オニゴーリ!」

 

「ヤユイ?どうしたの、ヤユイ!」

 

「なんだ?どうした?誰に呼びかけてる?」

 

 

 心の内にいるはずのヤユイに呼びかけるが応答がない。気絶している…?さっきのショックで?ダメだ、それは不味い。それだけは駄目だ。とりあえず出したガラガラがこちらに指示を仰いでくるが臆してしまう。後ずさってしまう。駄目だ、ポケモンバトルは駄目なのだ。しかも相手はあのオニゴーリ。以前の、あの光景がフラッシュバックする。こわい、こわい、こわい、こわい!

 

 

「が、ガラガラ…えっと、その…ふ、フレアドライブ!」

 

「オニゴーリ、かげぶんしんだ!」

 

 

 必死に声を振り絞って出した技は、簡単に避けられてしまう。その時、ブルリとオニゴーリの姿が震えた。あれだ、あれを許してはならない。

 

 

「ウワァアアアア!シャドーボーン!」

 

「そんな闇雲で当たるか。なめてんのか?まもる!」

 

 

 ガラガラは私の指示に従ってくれるが、的確に防がれてしまう。そうだ、ブラッキーもこうやって時間を稼がれて、特性のムラっけで異様に強くなってメガシンカしたメガオニゴーリに…あの光景が何度も、何度も脳裏にフラッシュバックする。だめだ、だめだ。それだけは駄目だ。ヤユイがいないなら私が頑張るしかない、だけど、でも、どうすれば…? 

 

 

「フレアドライブ!シャドーボーン!」

 

「かげぶんしん!まもる!どうしたどうした!さっきとはまるで別人じゃないか!アタシを楽しませてくれるんじゃなかったのか?前に戻っちまったじゃねえか!ああん?!つまらねえぞ、おい!」

 

 

 凶悪に目を見開き、本当に心の底からつまらなそうな声色でそう述べるヴァイス。怖い。怖い。また何かを言われるのか。いやだ、いやだ。戦いたくない。

 

 

「もういい。起点としては十分だ。だからさ……もう終わっていいよ、お前。ぜったいれいど」

 

「!?」

 

 

 放たれたのは、つららおとしではなく。一撃必殺のぜったいれいど。ろくに避ける指示もできなかったためガラガラは直撃し、凍り付いて氷像となってしまう。だけど死んではいない、戦闘不能だ。でも、なんで…!

 

 

「なんで、その技でブラッキーを倒さなかったの!?」

 

「あ?」

 

「その技があるなら、ブラッキーを殺さずに戦闘不能にすることはできたはずだよ。なのに、なんで…」

 

「あー、その話か。簡単だよ、つまらなかったからさ」

 

「…え?」

 

 

 ヴァイスが語ったその理由は、理解の範疇の外にある言葉だった。

 

 

「アタシはね。自分が楽しめないのが嫌なのさ!弱いくせに無駄に耐えやがって、楽しくない、面白くない、燃えない、つまらない。だから殺してやったのさ。スカッとしたね。雑魚が雑魚らしくあっけなく死んでしまう様はさあ!」

 

「そ、ん、な……そんな理由で、私の友達を、家族も同然だったブラッキーを…?」

 

「そんな理由?ふざけんな。こっちは死活問題だ。それで追放されてプラズマ団なんかに入っちまったが楽しませてもらってるよ。ありがとうな、お前が弱かったおかげだ。ほら、最後のポケモン出せよ。ルガルガン、だったか?」

 

 

 震える手で最後のボールを構える。私が弱いから、ブラッキーが殺された。つまらないから、ブラッキーが死んだ。頭の中で二つの言葉がグルグルする。だめだ、だめだ、だめだ。私じゃ駄目だ。このままじゃあの時と同じように、ルガルガンが死んでしまう。いやだ、そんなの嫌だ。

 

 

『諦めないで、ヨハル』

 

「ヤユイ…?」

 

 

 目が覚めたのか、ヤユイの声が聞こえてくる。お願い、代わって…交代して、ヤユイ!

 

 

『駄目だよ。こうなってよくわかった。私が勝っても駄目なんだ。ヨハルが打ち勝たないと駄目なんだ。貴方が最強だと信じた、この私が育てたルガルガンだよ?生半可な育て方してない。ルガルガンを信じて、戦って!』

 

「で、でも…私なんかじゃ…」

 

『切札はあるでしょ。それでもダメだっていうなら…ヨハルの信じるヤユイ(わたし)を信じて!』

 

 

 そう、心の中で笑顔で私の背中を送り出してくれるヤユイを幻視して。

 

 

「っ……う、ううう…ルガルガン!」

 

「おっ、やっとやる気になったか。冷めさせてんじゃねえぞ!メガシンカ!」

 

 

 私がルガルガンを繰り出したと同時に、萌え袖を振り回してメガアンクレットを輝かせてオニゴーリをメガオニゴーリに変貌させるヴァイス。今まで渋ってた間にどれだけパワーアップしたか分からない。私が信じる、ヤユイを信じる!

 

 

「つららおとし!死にやがれ!」

 

「うううううっ、うおおおおおおおおお!」

 

 

 ヤユイの言う通り、切札は、ある。アローラに引っ越した時にカプ・テテフからもらい、ライチさんが加工してくれた石を受け取った時にヤユイの実力を認めて一緒に渡してくれた、この力…!

 

 

「ルガルガンZ!」

 

「なに!?」

 

 

 氷柱が降り注ぐ中で、防御体勢を取るルガルガン。その間に私は左手に装着していた黒い石の腕輪に、ポケットの中から取り出した茶色の菱形が三つ集まった様な形状の宝石をセット。おぼつきながらも踊るように力こぶを見せるようなポーズをとる。同時に、窓から見える空が月夜となり、私は叫ぶ。

 

 

「ルガルガンのZワザ!」

 

 

 月に向けての遠吠えするルガルガンにZパワーが集まり、無数の尖った岩塊を掘りだして浮遊させてその全ての先端を相手に向けて、自らは跳躍。それを撃ち落とす様に氷柱を飛ばすメガオニゴーリだが、岩塊に当たって砕けて行く。

 

 

「弱くてつまらない奴がZワザだと!?意地でも殺せ!つららおとし!」

 

「ラジアルエッジストーム!」

 

 

 そしてルガルガンがメガオニゴーリ目掛けて急降下すると、それに合わせて岩塊も殺到。メガオニゴーリに無数の岩塊が突き刺さり、とどめのルガルガンが振りかぶった爪の一撃が炸裂。メガオニゴーリはクレーターを作って叩きつけられ、元の姿に戻って戦闘不能となった。ルガルガンと共にヴァイスを睨みつける。彼女は信じられない様に後ずさって髪を掻き乱していた。

 

 

「な、な、な……」

 

「ひとつ、ヴァイスに言っておきたいことがあったの。ありがとう。おかげで、誰よりも大事なもう一人の私と出会えた。それはそうと許しはしないけど」

 

「み、認められるか!アブソル!あのヨハルとかいう餓鬼にエアスラッシュだ!」

 

 

 ボールを手に取り、ふくよかな胸から取り出したげんきのかけらを使うヴァイス。まだ負けを認めないのか、と身構えると、繰り出されたのはアブソルで。あろうことか、その矛先をルガルガンではなく私に向けるヴァイスに、もはや憐れみと言う感情すら出てくる。

 

 

「勘違いすんなよ?殺して無かったことにするんじゃねえ、面白くないから殺すんだ。あの世でブラッキーによろしくなあ!…………あ?」

 

「え…」

 

 

 あまりのできごとに、言葉を失った。そっぽを向いたアブソルの放った風の刃が、ヴァイスの腹部を大きく斬り裂いたのだ。鮮血が舞い、倒れるヴァイス。血だまりができていき、アブソルは静かにそれを見守る。その目からは憎悪は感じなかった。

 

 

「な、んで……アブソル、お前が……」

 

『…ヴァイスのポケモンだからこそ、止めたかったのかな』

 

「言ってる場合じゃないよ、早く手当てしないと!」

 

 

 慌てて駆け寄り、バッグの中から包帯とすごいきずぐすりを取り出して治療を始める。なんで、と問いかけてくるヤユイとヴァイスに、怒鳴り返す。

 

 

「絶対に死なせない!ブラッキーを殺したことを、これまでの悪行も全部、償え!」

 

 

 死なせない。今度こそ、死なせてたまるか!




ヴァイスの最期はこうと決めてました。自分のポケモンにやられ、つまらないと吐き捨てた人間に助けられる…屈辱の極みでしょう?

・ヨハル
三年前、アローラのアーカラ島に引っ越した際にカプ・テテフとしまクイーンのライチに出会い黒いZリングとルガルガンZをもらった二重人格の少女。バトルがトラウマになっていてろくに戦えなかったが、ヤユイの励ましで勇気を振り絞りZワザで勝利を収めた。ヤユイと出会えた点についてはヴァイスに感謝しており、どんな言葉を向けられようと、ヴァイスを償わせるために生かそうと頑張る。

・ヤユイ
ヨハルの親友にしてもう一つの人格。じしんでプラズマフリゲートを揺らしてはどうだんを避けたりとアグレッシブな戦法を取る中アマルルガのフルパワーふぶきを屋内で受けて気絶、ヨハルに戻ってしまった。目覚めた時交代してもよかったのだが、ヨハルが自分の力で勝たないといけないことに気付いて声援を送る。

・ヴァイス
プラズマ団の幹部で快楽主義者。全ての台詞が本音であり、その行動原理は自分が「面白いか」「つまらないか」。つまらなければ簡単に命を奪い自分が面白いことにする根っからの狂人。ブラッキーを殺したことで追放されプラズマ団に入ったことをよしとし感謝を送るほどの極悪人。その最期はパートナーだと信じていたアブソルに斬られて生死の境を彷徨いヨハルに助けられるという因果応報の末路だった。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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