今回は途中からジュリ視点です。楽しんでいただけると幸いです。
「ふぅ…こんなものかな。うん?」
プラズマフリゲートの甲板で、死屍累々のしたっぱの山を作り上げた少年、トウヤは手首に付けたライブキャスターに着信が入って通信に出ると、久しく見なかった顔が出た。
≪「やあトウヤ。久しぶりだね」≫
「ああ。一年前のジャイアントホールぶりだな、N。こっちは取り込み中だがどうしたんだ?」
≪「君がプラズマフリゲートに乗り込んだことは知ってるよ。僕もシュートスタジアムにいたんだ。出来れば僕もそこに行きたかったんだけどね。それよりも、地上で捕まえたダークトリニティから不穏な情報を得たんだ」≫
「グレイって奴の情報か?」
≪「いや、それよりも問題かもしれない。グレイの切札は、いつの間にか行方不明になっていたあの時のキュレムらしいんだが…ただのキュレムじゃないらしいんだ」≫
「あの時のキュレムか…俺は力及ばなかったがメイの活躍で野生に帰ったと思ったんだがな」
≪「急いでくれトウヤ。恐らく、並のポケモンじゃ敵わない。君と君の友達の力がいる」≫
「わかった、行くぞレシラム」
レシラムをボールに戻し、先を急ぐトウヤ。その脳裏には、かつてグレイなどという大悪人と戦ったことなど覚えていなかった。
最強のドラゴンと謳われたキュレムの圧倒的な力を前に敗北した私。凍り付き、口もろくに開けない状態で見せられる、グレイの凶行に驚くしかない。真・いでんしのくさびと呼ばれたいでんしのくさびと瓜二つのアイテムを突き刺した途端、炎と雷に包まれ変貌を遂げたきょうかいポケモン、キュレム。右はホワイトキュレムで左がブラックキュレムと言う歪な姿は境界ポケモンの名にふさわしく。BWキュレムと言う名にも納得がいくものだった。
「フリーズボルト」
その背に飛び乗ったグレイの指示で、一声吠えたキュレムは冷気と電気の渦を周囲に展開し、電撃を纏った巨大な氷柱をいくつも形成、射出するBWキュレム。
「ロックブラスト!」
「れんごく!」
岩の弾丸と炎の津波で対抗しようとするダフネとシュバルツだったが、あっさりと貫いてメガヘラクロスとシャンデラに炸裂、放電して大ダメージを与える。あれ、フリーズボルトってこおりタイプの溜め技だった筈…でんきとこおりの複合技に、というか技自体が変わっている?
「ヘラクロス、休んで!お願い、グソクムシャ!であいがしら!」
「交代、ネンドール!すなあらしとじんつうりきだ!」
するとダフネはグソクムシャを繰り出して突撃させ、シュバルツはネンドールを繰り出し発生させたすなあらしを巨大なネンドールの形に作り上げ、拳を振り下ろさせる。あれなら…!
「コールドフレア」
するとBWキュレムは冷気の塊を飛ばしたかと思えば、続けて火の玉を放って冷気の塊にぶつけると、大爆発が起きてグソクムシャは吹き飛ばされ、ネンドールの砂像がボロボロと崩れ落ちる。なんて威力だ、これが真のコールドフレアだとでもいうのか。
「アクアブレイク!」
「だいちのちから!」
「飛んで避けろ、ドラゴンクロー」
大ダメージを受けながらも突撃するグソクムシャの水を纏った一撃と、ネンドールの熱線を、左肩と右腕についた白黒の翼を羽ばたかせて飛翔して回避、急降下して両腕の炎と雷・そして冷気を纏った爪の斬撃を叩き込み、大爆発を起こしてグソクムシャとネンドールに連続で直撃させるBWキュレム。瞬く間に戦闘不能になった二体を踏みつけ、咆哮を上げる。ドラゴンクローにまで属性を付与するだなんて、しかも冷気と炎か雷の熱気を合わせて爆発まで起こして威力を引き上げるなんて、強すぎる…!
「頼みます、アブリボン!」
「くっ…負けられない、負けられないんだ!ヨノワール!」
「こうも力の差を見せても足掻くか。ならばその身で受けてみるか?コールドフレアだ」
グレイの指示を受けて、BWキュレムは冷気の塊と火球を同時に飛ばした。その先はアブリボンとヨノワールではなく、そのトレーナーたち。グレイの性格が分かってきた。主人公に対しては正々堂々、ポケモンでポケモンを倒して自分の力を示そうとする。だけど、私やダフネたちみたいな主人公以外のトレーナーに対しては氷の様に心が冷たすぎるんだ。まるでゴミを片付ける様に、平気で危害を加えてくる。トウヤさんに負けたことが、「弱い」と言われたことがどれだけショックだったのか窺えるというものだ。
「危ない、ダフネ!」
「シュバルツ…!?」
ダフネを突き飛ばして庇い、爆発を一人真面に受けるシュバルツ。余波だけでアブリボンとヨノワールも吹き飛ばされるその威力は、人が喰らえばひとたまりもないことを示していて。爆発が収まった時、シュバルツは全身ズタボロのボロ雑巾の様な状態でその場に倒れ伏していた。
「…かはっ」
「シュバルツ!なんで私を庇って……グレイを止めるんでしょう!?貴方が倒れてどうするんですか!?」
「しぶといやつめ。フリーズボルト…!?」
倒れ伏したシュバルツの手を握り、語りかけるダフネ。そんなダフネを容赦なく狙うグレイだったが、アブリボンのしびれごなとヨノワールの拳がBWキュレムの邪魔をすることで難を逃れ、シュバルツは淡々と語りだした。
「…お前のポケモンを、クワガノンとアーマルドを奪った後…よく愛されているポケモンだと思った。ポケモンを心から愛してくれるトレーナーもいるのだと、少し嬉しく思った…」
「シュバルツ…」
「道を間違えた私よりも、お前が生き残るべきだと思った…、それだけだ。頼む、ダフネ。グレイを…お前が、止めてくれ…」
「シュバルツ!シュバルツ!?」
その言葉を最後に気絶したシュバルツに必死に呼びかけて。返事が聞こえないことを確認したダフネはシュバルツを部屋の隅に引き摺って下ろし、BWキュレムとその背に乗るグレイに向き直る。ヨノワールとアブリボンが軽くフリーズボルトで戦闘不能にされていた。
「シュバルツの粛清は終えた。次はお前だ、羽虫」
「クワガノン!行きますよ…ねばねばネット!」
「むっ…俺が狙いか!ドラゴンクロー!」
お得意のねばねばネットを射出する。狙いはグレイ。あちらが狙うならこちらも、ということだろうか。しかしドラゴンクローに阻まれ、簡単に斬り裂かれてしまう。ねばつく糸も炎/電気・冷気を纏う爪には関係ないらしい。
「押し潰せ!」
「くっ…!?」
そのままグレイの指示で突進したBWキュレムが、ダフネを踏み潰さんとしたその時。
「レシラム!りゅうのはどう!」
ワープポイントから現れた一人の少年が繰り出した白き竜がダフネの前に飛び出して、口から青い光線を放ってBWキュレムを吹き飛ばした。
「…悪い、間に合わなかった」
少年…トウヤさんはシュバルツや私、お兄ちゃんの惨状を見てそう言うとキッとグレイを睨みつける。対してのグレイは…笑っていた。三日月の様に、笑っていた。
「トウヤ…お前か!フハハハハ!お前まで来ているとはな!これは僥倖!」
「お前…その髪の色、もしかして、三年前にネジ山で戦ったあのグレイか?」
するとトウヤさんはグレイの事を思い出したのか、そう問いかけるとグレイは真顔になる。
「そうだ。お前が弱いと言った、あのグレイだよ。あの時の悔しさをバネにここまで来た…どうだ、お前でも勝てないポケモンを俺の頭脳で生み出してやったぞ!」
「弱い?いや、それは…」
「言い訳など聞かん!お前のレシラムを倒して、俺こそが最強だと、王の器だと証明する!BWキュレム!こごえるせかい!」
「っ、…あおいほのお!」
凄まじい冷気・炎・雷の渦と、レシラムの口から放たれた青い火炎放射が激突。大爆発がエリアに広がった。
シュバルツ、撃沈。そして伝説のドラゴン対決。
・ダフネ
シュバルツと共に立ち向かったものの、手も足も出ず圧倒された主人公。自らを庇ったシュバルツに託され、怒りに燃える。
・ジュリ
今回の視点主。驚愕でお腹いっぱい。ちなみに身動きが取れないため傍から見ると死んでいるように見える。
・ユウリ
描写はされて無い物の、爆発やら冷気やらの余波を受けながら謎のポケモンと戦っている人。正体に気付き始めた。
・シュバルツ
ダフネを庇い重傷を負ったポケモン救済を願った者。ダフネのポケモンを奪ったことで、トレーナーにも希望を抱いていたことを告白した。
・トウヤ
Nの連絡を受けて急行したBWの主人公。レシラムで挑む。「弱い」について驚いているようだが…?一年前、Nとメイのピンチに駆けつけてブラックキュレムと一戦交えている。
・N
出番がなかったけど単に今回はともだちをゾロアしか連れて来てなかったため戦闘できてなかった人。プラズマフリゲートに行きたかった。
・グレイ
トウヤの登場に狂喜乱舞するプラズマ団のボス。ジュリ曰く「主人公以外のトレーナーに対してはゴミ掃除する様に心が冷たい男」トウヤを真正面から叩き潰さんとする。
・BWキュレム(こおり・ドラゴン・ほのお・でんき)
とくせい:ターボルテージ(プレッシャー、ターボブレイズ、テラボルテージを同時発動する。もちろん実際は二種類の効果しかない)
わざ:こごえるせかい(冷気・雷・炎の渦を広げる大竜巻。氷・電・炎)
フリーズボルト(雷を纏った氷柱ミサイル。氷・電)
コールドフレア(冷気の塊に火球を飛ばし大爆発を起こす。氷・炎)
ドラゴンクロー(それぞれ炎か雷と冷気を纏い爆発を起こす。氷・竜・炎/電)
もちもの:とけないこおり
備考:おくびょうな性格。負けん気が強い。右はホワイトキュレムで左がブラックキュレムと言う歪な姿をしている。
グレイの頭脳とプラズマ団驚異の科学力により生まれたゼクロムとレシラムの遺伝子が内包された真・いでんしのくさびを打ち込まれて完全な姿を取り戻したキュレム。全ての技が複合タイプの技で本来の威力を取り戻している。正真正銘最強のドラゴンポケモン。ちなみに玉座の間はBWキュレムの戦闘に耐えられるよう頑丈に広く設計されている。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。