今回はVSホップ後半戦、イワパレスの初陣となります。楽しんでいただけると幸いです。
「ほのおのムチ!」
「受け止めろ!」
クイタランの炎を受け止めるイワパレス。その程度ではビクともしない。こいつの防御力は俺のオニシズクモのアクアブレイクダイストリームでもビクともしなかったんだ、折り紙つきだ。
「なら、したでなめるでまひさせるんだぞ!」
「ステルスロックだ」
鋭く尖った岩の破片を相手の周囲に飛ばし、透明にして見えなくさせるイワパレス。これでクイタランは近づけない。イワパレスは動けるポケモンじゃない、要塞の様に耐えて強力な一撃を叩き込むポケモンだ。あとはこのまま仕留める。
「がんせきほうだ!」
「なっ、きりさくだぞ!」
両手の間に岩石を集めて巨大な砲弾にしたイワパレスの一撃が放たれる。反動はでかいがはかいこうせん並の威力があるそれをきりさこうとするクイタランだが焼け石に水、まともに喰らって崩れ落ちた。
「これがラウラの六匹目…つよい!」
「新メンバーか…情報にない相手、わくわくするぞ!」
「悪いが交代だ」
がんせきほうは威力は高いが反動がでかすぎて動けなくなる。エースバーン相手にとっとかないとな。
「行け、ドラピオン!」
「がんばれ、パルスワン!」
続けて出されたのは、モコウも持っているパルスワン。対して俺はドラピオン。スピードはステルスロックで封じているからゆっくりと攻める。以前はほえるにしてやられたが、同じ轍は踏まない。
「ダメージ覚悟で突撃だぞ!スパーク!」
「ミサイルばりだ!」
ステルスロックで傷つくことを気にせずに電撃を纏って突撃してくるパルスワンに、両腕と尻尾、合わせて六つの光弾を放つ。しかしパルスワンは銃弾飛び交う戦場を駆け抜けるように掻い潜り、ドラピオンに激突。苦痛に唸るドラピオン。
「クロスポイズン!」
激突して怯んだ隙を突いて毒を纏った爪を繰り出さんとするドラピオン。明確な隙だからこそ、その技が頭から抜けていた。
「ほえるだぞ!」
「なっ!?」
「そのまま出て来た奴にかみくだくだ!」
また、してやられた。直撃する寸前に強制的に戻され、出てくるのはデンチュラ。狼狽えているデンチュラの右前脚を噛み砕かれる。夥しい傷を負って呻くデンチュラをさらに振り回し、橋に叩きつけるパルスワン。……やってくれたなあ!
「わざを急所に喰らうことも考えていたかよ?」
「デンチュラ、糸を使って外に回れ!いとをはく!」
橋の縁に糸を飛ばしてパルスワンから逃げると外側に飛び出し、橋の下をぐるりと遠心力のままに回るデンチュラ。前世に見たスパイダー●ンの動きだ、足が怪我してようが関係ない!パルスワンが警戒する橋の縁の反対側から飛び出したデンチュラを、確認した俺は間髪入れず指示をした。
「そこだ、きゅうけつ!」
「パルスワン、後ろだぞ!」
ホップが警告の声を上げるがもう遅い。遠心力で加速したデンチュラの一撃が無防備なパルスワンの背中に炸裂。体力を吸い取って削りきる。どうだ、蜘蛛には蜘蛛なりの戦い方があるんだ。
「本当にすごい戦い方をする奴だぞ…なんだ今の動き。でも、ピンチから勝利してこそ炎の逆転ファイターだぞ!」
「逆転できるものならしてみろ!このままいくぞ、デンチュラ!」
イワパレスを温存できるならしておいた方がいい。繰り出されたのは先程ユウリのインテレオンと熱いバトルを繰り広げていたエースバーン。たしかわざはかえんボールとアクロバット…問題は残りの技か。
「エースバーン、かえんボールだぞ!」
「デンチュラ、さっきと同じようにいとをはく!」
蹴りつけられた火球を、再びスパイダー●ン戦法で回避。再び死角からの攻撃を目論むが…簡単にはさせてもらえないだろうな。
「そこだ!こうそくいどう、ずつきだぞ!」
すると、顔を出した瞬間にこうそくで跳んで接近し、ヘディングの如く頭部を叩き込むエースバーン。怯んで空中に打ち上げられてしまったデンチュラに、石ころを蹴って炎を纏わせたエースバーンがシュートの体勢となる。
「かえんボール!」
「ほうでんだ!」
雷鳴が轟き、広範囲に電撃が放たれるが、かえんボールはむしろ電撃を纏って威力を上げてデンチュラの胴体に炸裂。炎が舞ってデンチュラが橋の上に落下する。
「よくがんばった、デンチュラ。…相棒対決はお前の勝ちだ、ホップ。だがこいつは倒せるかな?イワパレス!」
再びイワパレスを繰り出す。五体までだから残りのオニシズクモかマルヤクデでもいいのだが、このエースバーンは特に鍛えられている。タイプ相性で押して行かないと多分勝てない。
「かえんボールだぞ!」
「からをやぶるだ!」
迫る火球に対し、ポンッと音がした。イワパレスが、己の背負っている四角いブロック状の岩盤から抜け出した音だった。空中に飛び出したイワパレスの本体が、赤く光り輝いてまるで脱皮したかの様に光の殻が弾ける。防御力を捨てて、攻撃・特攻・すばやさを2段階上げる技だ。
「突っ込め!がんせきほう!」
「近づいてくれるなら…ずつきだぞ!」
テッカニンにも迫るスピードで、六本足を駆使して突っ込むイワパレス。ホップはかえんボールを当てることを諦めたのか、近づいたところを狙うらしい。…だがそれは悪手だぞ。
「ホップ、イワパレスのとくせいを知ってるか?」
「いきなり、なんだぞ?」
「がんじょうだ」
「!」
その瞬間、イワパレスの両手の間に形成された岩石の砲弾と、エースバーンのずつきが激突。エースバーンはホップへの信愛故かギリギリ耐えたが、それはこちらも同じ。防御力を捨てたから本来なら一撃なんだろうが、がんじょうというとくせいのおかげで持ち堪えたイワパレスは俺の意を汲んで構えていて。
「かえんボール…」
「いわなだれだ!」
空中に出現した複数の岩の雪崩が炸裂。エースバーンはまともに浴びて戦闘不能となった。
「エースバーン戦闘不能!ラウラの勝ち!」
「おつかれ、エースバーン。いやあ、参ったぞ。俺もポケモンの知識がまだまだ足りないな。五匹目を引き出すことも出来なかった。話に聞いていた通りラウラはとても強いんだな!むしのポケモンだけでそこまで戦えるの、素直に尊敬するぞ!」
「そんなに褒めるな、照れる…俺がすごいんじゃない、蟲ポケモンのみんなが強いだけだ」
俺はその強さを引き出しているだけだ。蟲ってのは元々、人間サイズになると圧倒的に強い奴等ばかりなんだ。ポケモンでもなおさらだ。ポテンシャルは元々高いんだよ。そう伝えたかったが、前世の知識ありきなので言えなかった。
「ラウラ?どうしたの?」
「いや、なんでもない。そろそろ俺はキルクスタウンに向かうとするよ。ライバルと約束なんだ、さっさと追い付いて来いってさ」
「それってもしかして最速攻略者のモコウ選手か?インタビューで答えてたぞ」
そう言ってホップの差し出してきたスマホロトムを見てみる。シュートシティに着いたらしいモコウがシュートスタジアムの前で笑顔で「我がライバルよ!我はここで待ってるぞ!」と踏ん反り返っている姿が映っていた。…全国放映で何やってるんだアイツは。
「ラウラのライバルだったんだ、道理で凄いはずだよ」
「そうじゃない…と言いたいところだが、まあな」
あんな凄い奴が、俺が追い付いてくるって信じてるんだ。やるしかないよなあ。
そしてユウリとホップと別れ、8番道路を北上しキルクスタウンに入ると、異様な光景が在った。
「…どうしたんだ、ムツキ」
「あ、ああ…蟲の人ですか…」
なんかベンチに、目に見えて落ち込んでいるムツキが座っていた。雪が積もっていることから長い時間そこにいたのがわかる。それを見て、ナックルシティでのキバナに負け続けたモコウを思い出しデジャヴを感じた。あの自信満々だった奴がなにがあったのやら。…とりあえず、ホテルに連れて行くか。
最初のプロットの予定変更してムツキがここに再登場。
・ラウラ
蟲のポテンシャルを誰よりも信じている女。デンチュラに重傷を負わされたことからキレて橋という立地からデンチュラにスパイダー●ン戦法することを思いついた。ほえるに弱い。好きな映画はサムライミ版スパイダー●ン三部作。特に2が好き。
・ユウリ
今回の立会人。イワパレスの強さに興味津々。
・ホップ
イワパレスの試運転に使われたユウリのライバル。五匹目を引き摺り出せなかったのが悔しい。エースバーンは信頼し合ってる第二の相棒。むしポケモンだけで戦い己に勝利したラウラのことを素直に尊敬している。何気にほのおタイプ二体というラウラの天敵編成だった。
・モコウ
全国放送でラウラに伝えたいことを伝えた馬鹿。これでも名家のお嬢様。両親は頭を抱えていたとか。
・ムツキ
ひこうつかい。キルクスタウンの公園で項垂れていた。辛うじて返事をしたがまるで屍の様だ。
・イワパレス♀
とくせい:がんじょう(体力八割以上の際に致命傷になる一撃を耐えられる)
わざ:からをやぶる
がんせきほう
ステルスロック
いわなだれ
もちもの:かたいいわ
備考:まじめな性格。好奇心が強い。ステルスロックで近づかせず、からをやぶるからのがんせきほうで仕留める要塞型。ドラピオンを優に超える防御力を持つ。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。