ポケットモンスター蟲【本編完結】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。お気に入りが800を越えましたありがとうございます!今回は久々に序盤のラウラらしい戦い方がお送りできるかと思います。強い(確信)

今回は全編ムツキ視点、最後だけラウラ視点でお送りします。VSマクワ後半戦。楽しんでいただけると幸いです。


VSイシヘンジン

 私が観戦する中で始まったラウラとマクワの対決。どうせ一方的に負けるだろうと思っていたら、予想外の方向に試合は傾いていた。

 

 

「まさか一撃で倒されるとは…僕もまだまだですね。ツボツボ!」

 

「ツボツボか。存分に語りたいけど今は…このままいくぞ、エレキネット!」

 

 

 私のルチャブルが、からをやぶるからのシェルブレードを急所にもらい敗れたガメノデス。それを一撃で倒して見せたデンチュラと、対峙するツボツボ。相性もあるんだろうけど、技の選択が上手い。今もツボツボの小さな体をエレキネットで拘束してなにもできないようにしている。

 

 

「なにもできないとお思いですか?ツボツボの細い体はエレキネットから抜け出せますよ!がんせきふうじ!」

 

「わかっていたさ、いとをはく!」

 

 

 繰り出された岩石の取り囲むような攻撃を、いとを壁に伸ばして引っ張ることで回避するデンチュラ。一撃でも当たれば終わることがわかっているのか、回避に重きを置いている。私のノーガード戦法とはまた違う。これが、母さんもしていた戦術による戦い。周りの観客席から歓声が上がる。話を聞くにラウラは人気のチャレンジャーなんだとか。私よりも弱いのに、凄い人気ですね…

 

 

「逃がすな、ストーンエッジ!」

 

「連続でいとをはく!撃ってくるのは五発だ!お前のふくがんならやれる、デンチュラ!お前の判断で逃げ切れ!」

 

 

 次々と地面を突き破る致命の岩の刃を、糸を伸ばして巧みに避けていくデンチュラに、思わず魅せられた。天蓋にも糸を伸ばして空を舞う姿は、どことなくひこうタイプのポケモンを思わせたのだ。

 

 

「なんという速さ…!」

 

「いわタイプは堅牢な代わりに鈍重なポケモンだ。避け続ければ、勝機はある!」

 

 

 そして五発目が放たれ、がんせきふうじに切り替えようとするマクワの隙をラウラは見逃さなかった。

 

 

「上空からほうでんだ!」

 

「がんせきふうじ!」

 

 

 雷鳴が轟き、まるでかみなりと見紛う電撃がツボツボに炸裂。黒焦げにして戦闘不能にする。あれはじしゃくでも持たせているのでしょうか。むしタイプ一体で、いわタイプ二体を倒してしまった。その事実が、私に圧し掛かる。…彼女は、本当に弱いのか?

 

 

「ここまでとはね…どうやら、こちらも本気で行かねばならないようだ。イシヘンジン!」

 

 

 出た。繰り出されたのは、防御の鬼。石造りの遺跡の様な、変な姿のイシヘンジン。ガメノデスとツボツボはなんとか倒せたのに、アイツに私は手も足も出ずに3タテされて、マクワの最後のポケモンを引き出せなかった…!ルチャブルがいてもあの堅さの前では駄目だろうと感じさせる、そんな防御力。それほどの強固で堅牢な壁だ。母さんの手持ちにも匹敵する防御力をあのポケモンは持っている。

 

 

「ステルスロックだ」

 

「…まあやるよな」

 

 

 地面と空中、フィールドの一帯にばら撒かれすぐ透明になる尖った岩石。交代するだけで傷付く上に空を飛ぶと言うアドバンテージを完全に崩されるアレを攻略しないと、私は勝てない。すると、自身の側に戻ったデンチュラに、ラウラが何事かぼそっと呟いたのを、病院暮らしで培った地獄耳が拾った。

 

 

「…デンチュラ、覚えたか?」

 

 

 その言葉に頷くデンチュラ。…まさか、いや、ありえない。だが覚えるものなんて一つしかなくて…

 

 

「あんたのことを調べて、その手を攻略しないで来たとでも?」

 

「なんだって?」

 

「デンチュラ、いとをはく。イシヘンジンを翻弄しろ」

 

 

 その瞬間、観客席からどよめきが起こった。見えないはずのステルスロックに糸を伸ばしたデンチュラが、まるでなにもない空間を空飛ぶように高速でスイングし始めたのだ。さらに空中で身を捻り、それに引っ張られた何かと地上の何かが衝突して粉々に砕け散る。まさか、ステルスロックの場所を覚えて、ステルスロック同士をぶつけて破壊した!?

 

 

「なあ!?」

 

「俺のポケモンもステルスロックを覚えていてね。此処に来るまでに死ぬほど練習したんだ。アンタを攻略するためだけにな!」

 

「ほうでんに備えろ!ワンダールーム!」

 

 

 ステルスロックが完全に破壊される間にマクワが使ったのは確か、空間内のとくぼうとぼうぎょを入れ替える技だ。防御力の塊であるイシヘンジンを特防の鬼にした。それほどデンチュラのほうでんは脅威だと考えたのだろう、私も同じだ。今の手持ちで、あのほうでんに勝てるかと言われたらNOだ。先手で倒さないと私の手持ちの練度でも一撃で倒される。

 

 

「ありがとよマクワさん。交代だ、オニシズクモ!」

 

「しまっ…のしかかり!」

 

「遅い!アクアブレイク!」

 

 

 とくぼうとぼうぎょが入れ替わる。それはつまり、ぼうぎょが弱くなることと同義。調べてみたがとくしゅ方面では紙もいいところなポケモンだ。そんなとくぼうとぼうぎょが入れ替わってるのだ。オニシズクモのアクアブレイクの前ではひとたまりもなく、イシヘンジンは一撃で落とされてしまった。後出しで放った全体重を乗せたのしかかりがオニシズクモにダメージを与えたが、それが何だというのか。

 

 

「まだよ!まだ崩れ去って砂とはなってない!戦う!いでよセキタンザン!」

 

 

 そして繰り出されたのは、ほのお・いわのセキタンザン。……六匹目、アーマーガアが適任かと思ってましたがほのおタイプがいるならやめるべき?いや、でも…そう考えていたら、ラウラはオニシズクモをそのままで行くつもりらしい。確かに水は四倍ダメージだが、そう一筋縄でいくだろうか?いや、いかないでほしい。ラウラが強すぎてさっきから何も罵倒が出てこないのだ。

 

 

「山の様な岩となれ!ええい!キョダイマックス!」

 

「ダイマックスだ、ワンダールームを利用するぞオニシズクモ!」

 

 

 ラウラは叩きつけるように、マクワはサングラスをかけ直しながら、両者共に巨大化したボールを放り投げ、己のポケモンを巨大化させる。初めて観客席で見ましたが、これほどの大迫力なのですね…セキタンザンはダルマストーブの様な姿となり、目がオレンジ色に輝く。うーん、やっぱりひこうタイプの方がかっこいいです…なんか好きになれない。

 

 

「でかい体そのものが強さ!全身で痛みを味わえ!キョダイフンセキ!」

 

「いくぞ!ダイストリーム!」

 

 

 二つの一撃が炸裂するかと思われた瞬間、オニシズクモの動きが止まった。あれは…麻痺?のしかかりの時に麻痺ってしまったのか?ワンダールームのおかげか、オニシズクモは行動できなかったがなんとか耐えきったものの、キョダイフンセキの追加ダメージを受けて倒れてしまい、大爆発に包まれ縮んでいく。これは…さすがにラウラのむしポケモンたちじゃ終わったか?いや、ドラピオンがいましたっけ。それでも耐えきれそうにないですが。

 

 

「…じゃあ、作戦通りにいくとするか」

 

「「え?」」

 

 

 聞こえてきたその声に、得意げにしていたマクワと、私の呟きが重なった。ダイマックスは切って、それをまひで無駄に使ってしまって、唯一とも言っていいいわタイプへの打点であるオニシズクモを倒されたというのに、まだ勝ち筋が?

 

 

「ジム戦でもムツキにも、まだ見せたことがない俺の新入りだ。頼むぞ!イワパレス!」

 

 

 繰り出されたのはいわ・むしタイプのイワパレス。打点があるとは思えないのですが…?すると目に見えて狼狽えるマクワ。そんなに強いポケモンなんです?

 

 

「そのイワパレスは…まさか!」

 

「いわタイプ使いなら知ってるよな。からをやぶるだ」

 

「キョダイフンセキ!」

 

 

 背負っていた岩石から抜け出して赤い光に包まれたイワパレスに襲いかかる巨大な岩盤。叩き潰されてしまったというのに、ラウラの顔から余裕が崩れない。なんで…?

 

 

「がんじょう、ですか」

 

「御名答。そしてイワパレスはいわタイプだ。キョダイフンセキの追加効果は受けない」

 

 

 岩盤が崩れ去ったそこにはボロボロのイワパレスがそこにいて。しかししっかり立ってキョダイセキタンザンを見上げていた。息をのむ観客席。私も、あまりの光景に開いた口が塞がらない。

 

 

「とどめだ。わざマシンで覚えさせた…あなをほる!」

 

「キョダイフンセキ。…ダイマックスは三回撃つか交代するまで切れない。僕の負けですね」

 

 

 再び放たれるが、そこにはもう既にイワパレスの姿はなく。通常サイズに戻ったセキタンザンの真下から強烈な一撃が叩き込まれ、重いはずのセキタンザンが宙を舞った。オニシズクモが倒されただけの完全試合とも言っていい内容に、拍手が爆音の如く轟いた。…ああ、これは。

 

 

 

 

 

―――――完敗だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穴があったら入りたい…いや、ここは落ちてしまいたい、か。完敗です。おみごと…でした。決まりですので、いわバッジを渡します!…僕のことは気にしないでください。トレーニングに励むだけですので」

 

「…アンタは強かった。むしポケモンじゃ勝てないと思った。だから全力で対策したんだ」

 

「そうですか。それは…嬉しい言葉ですね」

 

 

 いわバッジを受け取り、外に出ると、そこには空を見上げて黄昏ているムツキがいた。俺に気付くと振り向き、ジトッと睨み付けてくる。…なんか悪いことしたか?

 

 

「どうだった、俺の戦い」

 

「……正直、感服しました。以前言ったことを訂正します…貴女は強い。私なんかよりよっぽど強いです。むしタイプを馬鹿にした事は少しだけ、ほんの少しだけ認識を改めましょう」

 

 

 そう言ったムツキの顔は晴れやかな笑顔だった。…こいつの純粋な笑顔を見るのは初めてだな。するとウォーグルを出して自分の肩に掴まらせ、空に浮かび上がりながらムツキは言った。

 

 

「しかし、それでもひこうタイプこそが一番であると主張させてもらいます。それこそが私の夢であり、誇りであり、意思ですので!チャンピオンになるのはこの私です!貴女とはセミファイナルトーナメントで決着を付けましょう!もう、一回負けたぐらいでへこたれませんよ!それはそれとして、言い過ぎたことは謝ります。では」

 

「…お前、どこまで素直じゃないんだよ」

 

 

 ワイルドエリアに飛び去って行くムツキを見送り、満足げな笑みを浮かべながら俺はキルクスタウンの温泉へと足を進めるのだった。




ついに認めて謝罪したムツキ。ここからようやく本当のライバル関係になれました。

・ムツキ
今回の主役。ルチャブルで4タテしてやると慢心してたらガメノデスにやられ、イシヘンジンに残りのポケモンをボコボコにされる。ラウラの戦法はとても真似できないと半ば諦めて自分なりのスタイルを探すことにした模様。むしタイプだからとバカにするのはやめた。六匹目はアーマーガアの予定。笑顔が可愛い。

・ラウラ
ステルスロックを攻略するために自分で覚えるんじゃなくポケモン達に全てを任せることにしたチャレンジャー。相性が何ぼのもんじゃい。使えるものはなんだって使う。スパイダー●ン戦法が意外と有用だということに気付いた。まひするなど天運には見放されている。

・マクワ
別に侮ってはいないけど完全攻略された人。むしタイプの天敵だからしょうがないね。このあとガッツリ落ち込んで閉じこもった。

・イワパレス♀
とくせい:がんじょう(体力八割以上の際に致命傷になる一撃を耐えられる)
わざ:からをやぶる
   がんせきほう
   ステルスロック
   いわなだれ→あなをほる
もちもの:かたいいわ
備考:まじめな性格。好奇心が強い。セキタンザンに四倍ダメージのあなをほるをわざマシンで覚えた。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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