ポケットモンスター蟲【本編完結】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。ゼノブレイドDEを買ってプレイしていたせいで執筆が滞って徹夜でこれを書き上げました申し訳ねえ。

今回は修行回。VSネズ戦リベンジ序盤。楽しんでいただけると幸いです。


VSホルード

 スパイクタウンの外、裏口近くの広場で俺は手持ちを全部出して考える。初手のねこだましからしてまずきつい。確実にダメージを与えられてしまう。ふいうちも厄介だ。ネズさんは確実にダメージを稼ぐ方法が上手い。使うタイミングを分かっているというべきか。

 

 

「メンバーのタイプとわざ構成はわかった。気を付ければ脅威じゃないってのに戦ってから気付くなんてな」

 

 

 あの、ネタバレともいうべきシャウトで惑わされていたのもある。どくどく、と言われてドラピオンを出さざるを得なかった。冷静に考えればあそこで虫タイプのアドバンテージを失うのは痛い。

 

 

「メンバーは使う技さえ気を付ければテッカニン、デンチュラ、イワパレスはそのままでよさそうだ。ドラピオンだけ交代で、オニシズクモ。これでいこう」

 

「あら、随分安直ですね」

 

「!?」

 

 

 背後から囁かれて思わず振り返る。そこには、パンツスタイルのスーツを着こなした、紫色のメッシュが入った黒髪をおさげにして兎の髪留めを付けた女性が和やかに微笑んでいた。そしてその顔は見覚えがあった。

 

 

「…グランドウォール・キリエ…?」

 

「私の昔の通り名を知ってるなんて博識なんですね、ラウラ選手」

 

 

 ムツキの母親にして、じめんタイプ使いのかつて最強だったジムリーダー。一児の母親とは思えない若さと美貌、一見男と見紛う如きスラリとした体躯が綺麗だ。胸だけ残念だが…そんな彼女がなぜここに…?

 

 

「どうしてこんな田舎に?という顔ですね。ちょっとお仕事でネズくんにお話がありまして。そしたら話題のチャレンジャーがいるんですもの。どうしたんです?もしかしてネズくんに敗北しました?」

 

「…」

 

 

 ニコニコと笑顔で問いかけてくるキリエさんに、思わずしかめっ面になる。この親子は煽り癖でもあるのだろうか。キリエさんのは確実に興味本位なのだろうが。

 

 

「あ、すみません。そんなつもりは。私も彼がチャレンジャー時代に戦ったことがありまして。そのときは搦め手にしてやられちゃいました。ダンデ君みたいにまっすぐじゃないトレーナーは実にやりにくくて…でもね、搦め手を使うってことはつまり素の火力は低いことを表してます」

 

「!」

 

 

 言われてみればそうだ。ネズさんのポケモンの使う技はこちらを利用した技が多かった。いや、むしろ狙いのわざを引き出されて利用されてしまったというべきか。

 

 

「彼の話術はそれを補うためのものです。警戒させて判断を誤らせる、相手のペースを崩す。貴女もそんな風に負けたんじゃないかしら?」

 

「…何か対策でも?」

 

「簡単ですよ。相手の出方を窺って動くよりも、こちらがどっしり構えてしまえばいいのです。何があっても心を崩さず、ポケモンを信じ抜く。それだけで、ポケモンは期待に応えて本領以上の力を発揮します。こんな風にね。ホルード!」

 

 

 そう言ってボールを取り出し、落としたかと思えばスイッチ部を蹴りつけるという独特な方法でノーマル・じめんタイプのホルードを繰り出すキリエさん。

 

 

「なにを?」

 

「実践して見せましょうと思いまして。どうぞ、効果抜群の技をもらいましょう」

 

「…オニシズクモ。アクアブレイクだ」

 

 

 なめられていると悟った俺は、言われるままにオニシズクモの最大火力技を叩き込む。さすがにこれは平静を保っていられるはずがない。しかしキリエさんは何も指示をせず、ホルードは腕の様な形の両耳でアクアブレイクを受け止めてしまい、ギョッとするオニシズクモを投げ飛ばした。

 

 

「でんこうせっか」

 

 

 ゴシャッという音と共に、空中を舞っていたオニシズクモの胴体に耳腕の重い拳が叩き込まれ地面に叩きつけられ戦闘不能になってしまう。い、今のがでんこうせっかだと!?

 

 

「この様に、受けてから返すのです。効果抜群だろうが不意を突かれようが関係なく、ポケモンを信じれば応えてくれます。それがポケモントレーナーです」

 

「…地力が違いすぎる…」

 

「はい。地力…いわゆる練度ですね。練度を鍛えるのももちろんいいです。ここら辺のポケモンは中々に練度が高いので修練になると思いますよ。ただし、ポケモンの練度だけでなくトレーナーの裁量も大事です。貴女ならそれを理解していると思いますが?」

 

「それはまあ…なんでこんなに親身に?」

 

「うちの娘を介抱してくれたお礼です。素直じゃない子だけど、いいライバルでいてあげてくださいね?」

 

 

 …もしやムツキ、監視されてる?いや、考えない様にしよう…。

 

 

「ところでシャッターで締め出されているのですが。中に入る方法を知りませんか?」

 

「あ、それならそこに裏道が…」

 

「ありがとう、ジムチャレンジ応援してるわ。ネズくんもだけど、キバナくんも強いから油断しちゃ駄目よ?」

 

 

 そう言ってホルードを連れてスパイクタウンに入って行くキリエさん。すぐにエール団が殺到していたが、逆に一撃でホルードが沈めて笑顔のまま進んで行った。…なんて実力だ、でんこうせっかでさえ重すぎる。末恐ろしい人だ。そう思いながら俺は9番道路の草むらに向かう。

 

 

「…練度が足りない、ね。それは薄々気づいていたさ」

 

 

 ムツキとの戦いでレベルというものを思い出して数日…あれから一切鍛えずここまできた。だが強力な野生ポケモン、野良トレーナー。経験値を溜めるために必要なものは揃ってる。やってみるか、修行。タブンネでもいればいいんだがな。

 

 

 

 

 

 それから。ヒドイデの毒にやられたりオトスパスに拘束されそうになったり、途中で何故か自転車で水上を渡ってきたユウリと一戦交えて勝ったりしながら三日。体感で数値にして5は上がったと思う。そしてなにがあったのかシャッターが開け放たれたスパイクタウンに戻ってきた。リベンジの時は来た。

 

 

「来ましたね。言葉は不要、ですかね?」

 

「ああ、ネズさん。今度は勝たせてもらいますよ!」

 

 

▽ジムリーダーの ネズが 勝負を しかけてきた!

 

 

「負けると分かっていても挑む愚かなお前のために、何度でも敗北を見せてやろう!トップはお前だ!皆も名前を呼んでくれ!いくぜ!ズルズキン!いかくだ!」

 

「まずはお前だ、デンチュラ!」

 

 

 いかくもちのズルズキンが初手に繰り出すのはねこだまし。なので、素で交代する。

 

 

「ねこだまし!」

 

「交代だ、イワパレス!」

 

 

 いわタイプでノーマル技のねこだましを受ける。これが多分、最適解。それだけじゃない、奴は接近戦しか出来ないから、この手が有効だ。

 

 

「ステルスロックだ!」

 

 

 地面と空中、フィールドの一帯にすぐ透明になる尖った岩石をばら撒く。これでそう簡単に近づけない筈だ。すると警戒するズルズキンを見てから、ネズは仰け反りマイクを手にシャウトする。

 

 

「砂糖をかけたケーキの様に甘いぜ!すなかけだ!」

 

「なにを…!?」

 

 

 砂がばら撒かれ、透明な岩石の居場所が砂煙に浮かび上がる。やられた。だが、対処には時間がかかる筈だ。

 

 

「かわらわりで砕きながら進むんだぜ!」

 

「交代だデンチュラ。いくぞ!」

 

 

 再び繰り出すとデンチュラは頷き、跳んだ。正確には糸を使ってステルスロックを足場に、広場の上空に舞い上がった。

 

 

「キリエさんと出会って思いついたんだ。何も馬鹿正直に相手の得意なフィールドで戦うことはない、俺たちの得意なフィールドにすればいいんだってな!エレキネット!」

 

「ちいっ!しっぺがえしで迎撃だ!」

 

 

 空中のステルスロックを駆りながら、エレキネットで四方八方から襲いかかるデンチュラ。ズルズキンは見えるエレキネットの対処に追われ、対処しきれないステルスロックで地味にダメージを受けていく。

 

 

「いとをはくで拘束だ!」

 

 

 グルグルグルグルと、周囲を跳び回って中心にいるズルズキンの腕を縛り拘束して行く。完全に拘束しきったところを、引っ張り上げた。

 

 

「引っ張り上げろ、きゅうけつだ!」

 

 

 そして力の限り空中に引っ張り上げ、身動きが取れないところに喰らい付き体力を絞りきる。

 

 

「まずは一匹…!」

 

「お前の戦術!(ココ)に響いたぜ!だったらこっちはとことんひねくれちゃいましょ!カラマネロ!」

 

「このままいくぞ、デンチュラ!」

 

 

 俺の叫びにデンチュラが呼応して、いかくのつもりなのか両前足を振り上げる。勝負はここからだ!




というわけで元最強のジムリーダー・キリエの登場でした。実力的にはキバナ以上ダンデ未満といったところ。

・ラウラ
元最強のジムリーダーからもらったアドバイスを物にしたジムチャレンジャー。今更レベル上げを実施した。ムツキへのキリエの過保護っぷりにちょっと同情。キリエの強さに戦慄する。マクワ戦の経験からステルスロックを足場として利用するスタイルを取ることにした。

・キリエ
元ガラル最強のジムリーダー。どっしり構えて受け止めた上で手痛い一撃を返すカウンター戦法を取る。ムツキの様にですます口調で話すが素は優しいお姉さん口調。その心は大地の様に不動、ただし娘が関わると愛情が爆発する。マクロコスモスのエリート社員であることを利用してムツキを(監視して)見守っている。今回はネズに今からでもいいからスパイクタウンをパワースポットに移動しないかとローズに代わりお願いしに来たが断られた。ダンデ世代のトレーナーを子供扱いしている大物。ダンデのリザードンを倒したことがある。ボールを蹴りつけてポケモンを繰り出す。

・ユウリ
名前だけ登場。ラウラに惨敗した後に色々あってネズに挑み、無事勝利してラウラを越した。ちなみにダイマックスポケモンが暴れる事件も起きているがラウラは興味がない。

・ネズ
キリエの来訪でローズにイライラしていたため、三日経ってリベンジに来たラウラに内心楽しみにしていた。ユウリとマリィとは既にジム戦を終えている。前回とはまるで違うラウラの戦い方に翻弄される。

・エール団
キリエのことをまさか元最強のジムリーダーとは知らずに襲いかかりボコボコにされる。全員でんこうせっかで倒されてトラウマになった模様。

・ホルード♀
とくせい:ちからもち
わざ:でんこうせっか
   あなをほる
   じならし
   じしん
もちもの:なし
備考:ゆうかんな性格。考え事が多い。ホルビーの頃から育てられたキリエの相棒ポケモン。でんこうせっかがでんこうせっかしてない。じしんをひこうタイプに当てることができ、ダンデのリザードンを倒した張本兎。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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