ポケットモンスター蟲【本編完結】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。UAが50000を越えましたありがとうございます!

今回はラウラVSムツキ、決着。そしてオリジナルキョダイマックスが登場します。楽しんでいただけると幸いです。


VSアーマーガア

「いくぞテッカニン!」

 

 

 ボールから飛び出したテッカニンは、ステルスロックを掻い潜ってジグザグに飛行し加速。周囲を回りながらルチャブルを翻弄。砂塵が舞ってステルスロックが姿を現すことで、逆にその陰に隠れて高速で移動を繰り返す。その姿はまるで忍者だ。

 

 

「まどろっこしいですね!とびはねるで上空から狙いなさい!」

 

「つばめがえし!」

 

 

 ルチャブルが飛び上がろうと隙を見せた瞬間、鋭く加速して襲いかかるテッカニン。それを咄嗟に避けるルチャブル。

 

 

「つばめがえしで応戦です!」

 

「つるぎのまいで防御だ!」

 

 

 蹴りと拳の鋭い一撃が連続で放たれ、それを的確に両手で受け止めていくテッカニン。複眼で相手を観察し、どこにくるかを見た上で対処している。蟲ポケモンならではの格闘戦だ。

 

 

「かげぶんしん!」

 

 

 追い詰められたところで影分身を作って退避、ルチャブルが空ぶった背後に回る。

 

 

「ルチャブル、後ろです!フライングプレス!」

 

「決めろ!シザークロス!」

 

 

 両手の振り下ろしが、跳び上がろうとしていたルチャブルの首背面、急所に叩き込まれてルチャブルは撃沈。戦闘不能になる。ほとんど何もさせずにルチャブルを倒した、仇は取ったぞドラピオン。

 

 

「ルチャブルまでやられるとは…バトンタッチするかと思えばそのままくるとは」

 

「バトンタッチは忘れさせた。あいつはもう、自分の力だけで戦える」

 

「ふむ。ならば相棒、出番です!」

 

 

 繰り出されたのはウォーグル。ムツキはウォーグルも入れて残り二体。対して俺の手持ちはテッカニン、イワパレスとあと一体。数では勝っているが、あのウォーグルは一筋縄じゃいかない。

 

 

「ブレイククロー!」

 

「シザークロスで受け止めろ!」

 

 

 飛び蹴りの様な鋭い爪の一撃を、何とか受け止めて弾き飛ばされるテッカニン。するとウォーグルはそのまま上空に移動し、溜め動作をする。アレは…!?

 

 

「ゴッドバード!」

 

「かげぶんしんで全力で避けろ!」

 

 

翼を折りたたんで加速し、凄まじい勢いで突撃してきたウォーグルを、影分身を駆使して回避するテッカニン。地面が抉られたその威力は圧巻の一言だ。

 

 

「私のポケモンの中で最も練度が高いのが相棒であるウォーグルです。終わらせてあげます、ブレイククロー」

 

「もう一度シザークロスで受け止めろ!」

 

 

 再び飛び蹴りを繰り出すウォーグルに、咄嗟にテッカニンに指示するがそれは悪手だった。

 

 

「受け止めると思いましたよ。フリーフォール!」

 

「しまった!?」

 

 

 ブレイククローを受け止めた、その瞬間掴み上げられ上空に連れ去られるテッカニン。

 

 

「つるぎのまいで抜け出せ!」

 

「逃がしませんよ、落としなさいウォーグル!」

 

 

 指示通りにつるぎのまいをしようとするテッカニンだが、刃をガッシリと掴まれて抜け出せない。そのまま急速落下してきて地面に叩きつけられ、こうかばつぐんを紙耐久のテッカニンが耐えられるはずもなく、戦闘不能になった。フリーフォールは駄目だ、ほとんど何もできなくなる。なら重いイワパレスで…

 

 

「くっ…イワパレス!」

 

「あくまで最後の一匹は残しますか。ですが甘い!ばかぢから!」

 

 

 渾身の力を込めたウォーグルの蹴りつけが、イワパレスの背負う岩板を抉りぶち抜いた。…さすがにこれは駄目か。さすがムツキの相棒だ。俺も切札兼相棒を出すしかないか。

 

 

「デンチュラ!」

 

「あの時の戦いの再現ですねえ!あっけなく潰れないでくださいよ!ブレイククロー!」

 

「横に避けていとをはく!」

 

 

 ウォーグルの飛び蹴りを横に回避して糸を飛ばし、ウォーグルの首を縛って空に舞い上がるデンチュラ。このままほうでんを撃っても当たらないのは目に見えている。確実に当てる!既に見えているステルスロックを掻い潜りながらデンチュラを振り落とそうとするウォーグルと、空中で身を捩ってステルスロックに当たるのを右に左に避けていくデンチュラ。その光景は前世で見たグリーン●ブリンとスパイダー●ンの対決そのままだ。

 

 

「っ!?振り落としなさい!」

 

「逃がすな、エレキネット!」

 

 

 ぶらんぶらん振り回されながらもエレキネットを次々と飛ばし、掠らせてウォーグルの機動力を奪っていく。そしてふらふらと降りてきたところを狙ってエレキネットを放ち、捕縛したウォーグルを空中でステルスロックに引っ付き遠心力のままに地面に叩きつけるデンチュラ。

 

 

「ほうでんだ!」

 

 

 さらに身動きが取れないところに電撃が炸裂し、ウォーグルは戦闘不能になった。共に最後のポケモンだ。

 

 

「ウォーグル、よく頑張りました。最後の一匹まで追い込んだこと、さすがです。行きますよ、アーマーガア!」

 

 

 ムツキが繰り出したのは色違いのアーマーガア。マクワ戦の時は持ってなかった一体だ。アレがムツキの六匹目か。

 

 

「風よ吹き荒れろ、その巨翼を持って世界を嵐で包み込みなさい!キョダイマックス!」

 

 

 すぐにボールに戻し、ダイマックスバンドからダイマックスエネルギーを溢れさせて巨大化、天高く放り投げるムツキ。すると遥か上空で解放されたアーマーガアがみるみる大きくなり、キョダイマックスとしての姿を見せる。アーマーが分離した攻撃用小型ユニット、ブレードバードが八枚飛び交う姿はさながら空中要塞だ。

 

 

「俺達も切札を見せるぞ、デンチュラ!」

 

 

 俺の呼びかけに両前足を振り上げてやる気十分という意を見せるデンチュラ。気付いたのは、ポプラ戦後だった。ロトム図鑑のマルヤクデの表示に記されていた謎のマークが、デンチュラにも浮かび上がっていたのだ。他のポケモンとマルヤクデの違いと言えば一つしかない訳で。それから試そうとして、相性最悪ないわ→ダイマックスできないあく→相性最悪なドラゴンと続いてしまったことで今まで試せなかった、俺達の切札。ボールに戻し、ダイマックスバンドから溢れるエネルギーで巨大化。アンダースローで地面を這うように投げつける。

 

 

「行くぞ!蟲の底力を見せてやれ!キョダイマックス!」

 

 

 その瞬間、空に浮かぶマゼンタ色の暗雲が雷雲へと変わり、雷が幾つもフィールドに落ちながらデンチュラは巨大化。さらに胴体のフォルムはそのままで足が全て巨大化してアシダカグモの様になり、複眼がシアン色に輝き、その全身も同じシアン色に光り輝く蒼雷を帯電する。そして跳躍したかと思えば口から超巨大なエレキネットを観客席と反対側の観客席の間に張り、その上に乗っかった。その姿はまるで、前世で見たゴジラシリーズに登場するクモンガ、もしくはクトゥルフ神話のアトラク=ナクアにそっくりだった。

 

 

「これが…キョダイデンチュラ…かっけえ!美しい!最高だ!」

 

 

 その雄姿に感動しながらも慌てて図鑑を確認する。きゅうけつが新たな技に変わっていた。よし…いくぞ!

 

 

「全て全て天高く吹き飛ばせ!キョダイフウゲキ!」

 

「世界にお前の巣を張る時だ!キョダイクモノス!」

 

 

 エレキフィールドやら何やらを全てを吹き飛ばす風の一撃が放たれるが、落ち着いて迎撃を指示。するとデンチュラは口から吐き出した黄色い糸を両前足で蜘蛛の巣状に展開してキョダイフウゲキを防御。蜘蛛の巣に引っ付いたブレードバードごとキョダイアーマーガアに返した。

 

 

「そ、そんなもの!吹き飛ばしなさい、キョダイフウゲキ!」

 

「効果は対象に確定まひ+でんきタイプも兼ねた攻撃、だ!」

 

 

 効果抜群のキョダイクモノスを受けて痺れるキョダイアーマーガア。技を繰り出そうとするものの麻痺して動けない。ここが狙い目だ。

 

 

「ダイサンダーだ!」

 

「くっ…ダイウォール!」

 

 

 続けて放ったダイサンダーを、咄嗟にダイウォールで防ぐムツキ。しかし、三回技を行使したことでアーマーガアのキョダイマックスは解かれてしまう。

 

 

「こうなったら…ブレイブバード!」

 

「キョダイクモノスだ!」

 

 

 最後に起死回生だと言わんばかりに突撃してくるが、麻痺してすばやさの下がったアーマーガアに攻撃を当てるのは容易で。巨大なエレキネットで地面に張り付けにされたアーマーガアはそのまま感電して戦闘不能になった。張りつめていた気が崩れたのかへなへなと崩れ落ちるムツキ。対して俺は元に戻ったデンチュラと共に勝鬨を上げる。俺達の、勝利だ。

 

 

『決着!決着ぅ!激闘の接戦を制したのは、タイプ相性を物ともせず覆して見せたむしつかい、ラウラ選手!ムツキ選手はここで惜しくも敗退となります!』

 

「…完敗です。…本当に、強くなりましたね。いや、元々貴女は強いのですか。そうですか」

 

「俺の勝ちだ。礼を言う、ムツキ。お前のおかげで俺達は強くなれたんだ」

 

「…それは、光栄ですね」

 

 

 駆け寄って手を貸してやると、立ち上がり笑みを浮かべたムツキ。ふと観客席を見やった彼女が、一瞬固まったように表情を強張らせたので振り返ってみると、そこにはリーグスタッフの格好で、こちらに娘と心なしかそっくりな笑みを向けるキリエさんがいた。その隣には夫らしき男性が座っている。ムツキの両親か。

 

 

「…はあ。母さんのいないジムチャレンジなど簡単だ、とチャンピオンを目指していたわけですが…まさか貴女に負けるとは。母さんもあの調子ですし、家出したのが馬鹿みたいです。なんのためにジムチャレンジに挑んだのやら」

 

「少なくとも、俺達は出会えただろ?」

 

「そうですね。癪に障りますが貴女に出会えたおかげで成長できたような気がします。ありがとうございました、優勝してチャンピオンに勝たないと許しませんよ?」

 

「ああ。もちろんだ」

 

 

 そして俺はムツキに肩を貸しながら、共にフィールドから退場するのだった。…次はユウリVSホップの準決勝か。どっちが勝つのかね。俺も、モコウを倒すために作戦を練らなきゃな。




キョダイデンチュラのデザインは個人的渾身の傑作。

・ラウラ
キョダイデンチュラの雄姿に心底惚れた蟲の女王。目をキラキラ輝かせ過去最高にハイテンションな姿にファンが増えたとか。

・ムツキ
惜しくも一回戦敗退した空の大天使。ウォーグルが奮闘したから接戦になっただけで、トレーナーとしては完全に敗北していると思ってる。見に来ていた親に対しては複雑な気持ち。

・キリエ
どっかのチャンピオンと同じく熱戦に感化されて自分も参戦しそうになってたリーグスタッフの一人にして元ジムリーダー。ムツキには内緒で夫を連れて観戦していた。リーグスタッフであることをいいことにムツキが泣いてたら慰めようとか画策している。

・ムツキの父親
今回初登場。マクロコスモス所属の病院の医者。ムツキが吐血しないか心配しながら見てたが、ムツキの成長と友人ができたことに感動していた。ムツキには自分も治せない医者だと嫌われている。

・テッカニン♀
とくせい:かそく
わざ:つるぎのまい
   シザークロス
   つばめがえし
   かげぶんしん
もちもの:ぎんのこな
備考:せっかちな性格。暴れるのが好き。バトンタッチを忘れてシザークロスを覚えたことで自身で戦えるように。かそくしまくって回避しつつ、剣舞で防御しながら攻撃力を上げて、強力な一撃を叩き込む戦法がメインになった。

・アーマーガア♀
とくせい:プレッシャー
わざ:ブレイブバード
   てっぺき
   ボディプレス
   アイアンヘッド
もちもの:たべのこし
備考:てれやな性格。負けず嫌い。色違い。ムツキの六匹目であり、ダイマックスレイドで捕まえたキョダイマックス個体。マクワやキバナを乗り越えた際にも活躍した。

・キョダイデンチュラ♂
とくせい:ふくがん
わざ:ダイサンダー(エレキネット)
   ダイサンダー(ほうでん)
   キョダイクモノス(きゅうけつ)
   ダイウォール(いとをはく)
もちもの:じしゃく
備考:れいせいな性格。物音に敏感。ラウラと最初に出会ったポケモンにして一番の相棒。実は特殊な個体であり、力を秘めていた。巨大な蜘蛛の巣の上から動かない。モチーフはクモンガとアトラク=ナクア。

・キョダイクモノス
むしわざが変化したキョダイマックスワザ。むしタイプの攻撃でありながらでんきタイプの攻撃でもあり、みずやひこうタイプに抜群を取れるし地面タイプには効果がない。追加効果で相手を確定で麻痺させる他、形成する途中の蜘蛛の巣で物理攻撃を防ぐことも可能。イメージは巨大なエレキネット。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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