ポケットモンスター蟲【本編完結】   作:放仮ごdz

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どうも、なんとかデンチュラを入れたパーティーでチャンピオンを倒して殿堂入りした放仮ごです。ダンデが異様に強かった。それはそうとお気に入り50突破、評価ともにありがとうございます。

今回は主人公とは別視点となります。では、楽しんでいただけると幸いです。

※12/26 とぎすます→つめとぎに修正しました


VSジメレオン

 凄い物を見た。ガラル鉱山でビートを退け、ウールーを追いかけてきたヤローさんと出会い、ソニアさんとの談義?を終えてジムリーダーとの対決を目前にした私が見たのは、昨日行われたというベストバウトの試合映像。

 

 ダイマックス。私もワイルドエリアで体験したことがあるが、基本、ダイマックスポケモンにはダイマックスしたポケモンのわざじゃないと対抗できない。それを、いともあっさり覆して見せたのは、少々小柄なれど私と同じぐらいの齢の少女。自分のことを俺って呼んでいるけど間違いなく少女だ。俺っ娘という奴だろう。長くて紅い綺麗な髪と、十人中七人が振り返る整った顔。それが気にならないぐらいにその強さは、今まで戦ったトレーナーとは別格だった。

 

 ほじょわざを使いこなし、それぞれのポケモンの役割を決め、ダイマックスポケモンさえも普通サイズのポケモンの一撃を以って倒す。圧巻だった。そんな戦い方が在るのだと、新米トレーナーの自分には刺激的だった。

 

 ジムリーダーに挑む前に彼女と戦ってみたい。ポケモンバトルに魅せられた私がそう思ったのは道理で。慌てて、次のジムがあるバウタウンへの五番道路へ駆け出した。ジムチャレンジを巡るなら、この道を通る筈だ。ワイルドエリアに戻っていたらどうしようもないけど…この道に賭ける。

 

 

 そしてワイルドエリアを一望できる巨大な橋に差し掛かり、見つけた。頭にバチュルを乗せた、麦わら帽子を被ってむしタイプのユニフォームを身に着けた紅色の髪の女の子。確か、名前は…

 

 

「待って、ラウラさん!」

 

「んー?」

 

 

 歩いていたところを引き留めると、欠伸をしながら振り返るラウラさん。私を見ると興味深げに眉を顰め、首を傾げた。

 

 

「えっと…どこかで会った?」

 

「い、いえ!昨日の試合の映像を見て、どうしても会いたくなって…」

 

「お、おう。君もジムチャレンジャー?」

 

「はい!ユウリっていいます。まだジムバッジを手に入れてないんですけど…私と、戦ってくれませんか!」

 

 

 私の熱意に「おおう」とたじろぐラウラさんは頭の上のバチュルを手に取ると撫で回し、熟考する。私のお願いを一蹴せず、考えてくれている。いい人なんだな、と納得した。

 

 

「…うん、俺のポケモンたちもいい経験になるだろうしその勝負、受けるわ。二対二でいいか?たしか君、エンジンスタジアムのロビーで見たのを覚えてるけど、チャンピオンの推薦なんだろ?俺の戦い方を見て、対策を立てた上で戦いを申し込んできたんだろ?それはちょっと楽しみだ」

 

「うっ…そんなことはなかったりするんですけど…」

 

「え?あ、うん。まあいいや。チャンピオンの推薦したチャレンジャーがどれほどの腕か、拝見だ!」

 

 

▽むしつかいの ラウラが 勝負を しかけてきた!

 

 

「いけ、テッカニン!」

 

「いって、ココガラ!」

 

 

 彼女が繰り出したテッカニンに対して私が繰り出したのは、旅の初めに仲間にしたココガラ。ひこうタイプならあのスピードにも対抗できるはず…

 

 

「なんて思ってたら見当違いだぞ?つるぎのまい」

 

「なっ!?え、えっと…ついばむこうげき!」

 

 

 弱点タイプのココガラがいるのに、つるぎのまいを始めるテッカニンに面食らうも、すぐさま攻撃を指示。しかし簡単に避けられてしまう。なんで…!

 

 

「とくせいとか関係なく、虫ってのは複眼を持っていてな?視界が広いんだ。そしてなによりテッカニンのとくせいはかそく。時間が経てば経つほど速くなる。捉え切れると思うなよ?れんぞくぎりだ」

 

「…ココガラ、つめとぎ!」

 

 

 周りを高速で飛びながられんぞくぎりを繰り出すテッカニンに対し、私はつめとぎを選択。攻撃力と命中力を上げる。速さに特化してるってことは、それだけ防御も薄いという事…!

 

 

「いけえ!つけあがる!」

 

「カウンターでれんぞくぎり!」

 

 

 能力を上げれば上げる程威力が上がるつけあがる攻撃が命中する、しかしそれでもれんぞくぎりがカウンターで炸裂、ココガラがふらつく。何とかダメージを与えた物の瀕死には至らない…ってことは、不味い。

 

 

「命中率を上げてその能力上昇を利用した一撃、か。チャンピオンが推薦しただけはあるな。バトンタッチ」

 

「止められなかった…!」

 

 

 一撃で倒す、それがあのバトンタッチに対する対抗手段だった。最初からつめとぎを指示しとけばあるいは…いや、今はあのバチュルをどう倒すかを考えないと。

 

 

「ココガラ、とにかく当てて!みだれづき!」

 

「橋の端にいとをはくだ、バチュル!」

 

 

 避けきれない弾幕ともいえるみだれづきを、射程外に逃げられて回避される。あんなこともできるのか、あのバチュル見た目よりもすばしっこいかもしれない。

 

 

「追いかけて、ついばむ!」

 

「エレキネットで迎え撃て」

 

 

 しまった、と思った時にはもう遅い。こちらの攻撃が届く前にこうかばつぐんの一撃がココガラに直撃。さらに電撃を帯びた蜘蛛巣で覆われ、そのまま勢いのままにバチュルについばむ攻撃を何とか当てるものの、そのまま崩れ落ちた。忘れていた、知っていたはずなのに、目先のことに気を取られて忘れてしまっていた。ココガラをボールに戻し、取り出すのはパートナーの入ったボール。

 

 

「…おつかれさま、ココガラ。おねがい、メッソン!」

 

「…ひこうとみずタイプだけで俺のバチュルに勝負を挑んでくるのは無謀だぞ」

 

「分かってます…!」

 

 

 ココガラとメッソン以外にあと1匹いるけど、タネボー…くさタイプっていう、むしが苦手なポケモンしかいないからしょうがなかったのだ。根本的にラウラさんのポケモンと相性が悪い。それでも、どこまでやれるか試したい。自然と、口元に笑みが浮かぶ。するとラウラさんも楽しそうに笑った。

 

 

「ピンチな時ほど不敵に笑む。まるでジムリーダーみたいだな、ユウリ!」

 

「そっちこそ、ジムリーダーだと言われても信じてしまうぐらいに強いです!でも、勝ちます!勝ってみせます!メッソン、しめつける攻撃!」

 

「バチュル、避けながらいとをはく!」

 

 

 私の指示で舌を伸ばしてバチュルを捕らえようとするが、かなりの速さで逃げられながら糸に巻かれ、メッソンのすばやさが下がって行く。でも、だったら、逃げられる場所を限定すればいい。

 

 

「空に向けて、みずのはどう!」

 

「なに!?」

 

 

 頭上に向けてみずのはどうを飛ばし、私達もろとも橋の上一帯がびしょ濡れになる。そしてバチュルは電気タイプだ、水たまりに入って漏電したくないはずだ。

 

 

「そこに目掛けてしめつける!」

 

「しまった!?」

 

 

 分かりやすく水を避けて移動したバチュル目掛けて舌を伸ばして今度こそ拘束。もう逃がさない!

 

 

「敵の頭上にエレキネットだ!」

 

「引き寄せて、はたく攻撃!」

 

 

 バチュルがメッソンの頭上目掛けて電気が奔る蜘蛛の巣を飛ばし、その前にと、引き寄せて手を振りかぶるメッソン。その時、不思議なことが起こった。メッソンの姿が光り輝いてその姿を変えたのだ。

 

 

「メッソン…いや、ジメレオン!みずのはどう!」

 

「そんなのありか…!?」

 

 

 進化して攻撃力が上がったジメレオンのはたく攻撃、からの零距離みずのはどうがバチュルに炸裂。水飛沫が飛び、落ちてきたエレキネットの電流に晒されながらもその小さな体を橋に叩きつけ、バチュルは目を回して倒れた。

 

 

「やっ、た……やったあ!やったよ、ジメレオン!」

 

「れんぞくぎり」

 

「え?」

 

 

 その次の瞬間には、エレキネットのダメージも相まってテッカニンの一撃で崩れ落ちるジメレオンが目に入る。

 

 

「…俺の、勝ちだな」

 

「はい…」

 

 

 油断した、敗北だ。バトルマネーを支払い、そのまま落ち込んでいると手が差し伸べられ、顔を上げる。そこには苦虫を噛み潰した様な顔のラウラさんがいた。

 

 

「…まさか、俺のバチュルが有利なみずタイプ相手に倒されるなんてな。試合に勝って勝負に負けた気分だよ。課題も見つかった、礼を言う。さすがはチャンピオンの推薦したトレーナーだ」

 

「い、いえ!こちらこそ、ありがとうございました!」

 

「今回は俺も油断していた。今度戦う時は容赦しないぞ。じゃあな、ジムチャレンジ頑張れよ」

 

 

 そう言ってバチュルにきずぐすりをかけながら去って行くラウラさん。ちょうど夕暮れ時で、夕日に映えて絵の様になっていた。この戦いは双方ともにいい経験になったようだ。…タイプ相性を覆す戦い方、考えないと。ジムチャレンジは…明日でいいかな。そう気を取り直して、私はターフタウンへの帰路につくのだった。




というわけで原作主人公との激突でした。やはりむしタイプ、無双とまではいきません。

・ラウラ
開会式前にユウリとホップのちょっとした騒ぎを見ていた人。普段は麦わら帽子を被っている。バトルは基本的に受けであり、自分から戦おうとはしない繊細な性格。趣味はむしポケモンに囲まれての昼寝。ターフジムクリア後、五番道路で昼寝していた。

・ユウリ
原作女主人公。奇策を行う、土壇場で進化するなど主人公としての実力を持つが向上心が強い。礼儀正しい性格だが、ポケモンバトルに魅せられたバトルジャンキー。ちなみに格好は銀髪のデフォルトのまま。手持ちはジメレオン、ココガラ、タネボーとラウラの得意タイプ。一つの事を成し遂げると頭がいっぱいになるがその分集中力は高い。手持ちは放仮ごの旅パまんまである。

・メッソン→ジメレオン♀
とくせい:げきりゅう
わざ:みずのはどう
   みずでっぽう
   はたく
   しめつける
もちもの:しんぴのしずく
備考:おくびょうな性格。辛抱強い。ユウリの相棒。ユウリの事が大好きで、期待されると実力以上の力を発揮する。

・ココガラ♂
とくせい:きんちょうかん
わざ:ついばむ
   つめとぎ
   つけあがる
   みだれづき
もちもの:なし
備考:てれやな性格。負けん気が強い。ターフジム戦用に先方だった。テッカニンの速さに負けん気の強さを発揮した。

・タネボー♂
とくせい:はやおき
わざ:たいあたり
   かたくなる
   すいとる
   おどろかす
もちもの:なし
備考:おだやかな性格。食べるのが大好き。今回出番がなかったユウリの手持ちの一匹。将来ラウラキラーになるかも…?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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