ポケットモンスター蟲【本編完結】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。昨日、今更初詣に行きました。おみくじは中吉でした。何とも言えない…あと、ついにお気に入り1000人突破ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます!

今回はラウラVSモコウ、後半戦。なんでVSライボルトを以前の話の題名に使ったかなと後悔してます。楽しんでいただけると幸いです。


VSストリンダ―

「ほのおのきばだ!」

 

「クロスポイズン!」

 

 

 炎を纏った牙で胴体に噛み付いてきたライボルトの背中に、クロスポイズンを叩き込む。しかしやけどを負ったのか威力が半減され、倒すには至らない。そのまま組みつくドラピオンとライボルト。膠着状態だ。

 

 

「抱えて地面に叩きつけろ!」

 

「ボルトチェンジだ!」

 

 

 ライボルトを持ち上げて、地面に叩きつける直前電撃がドラピオンに炸裂し、ボールへと戻って行くライボルト。代わりに飛び出してきたのは、ストリンダー。最後に出してくると思っていた俺は度肝を抜かれ、指示が一拍遅れてしまう。

 

 

「ストリンダー!オーバードライブ!」

 

「耐えてつじぎり!」

 

 

 特性で威力が底上げされた電撃を纏った爆音が放たれるも、俺のドラピオンはその程度じゃ倒れない。直撃を受けながらのしのしと歩み寄り、二連撃の十字を描く斬撃を叩き込む。見た所とつげきチョッキを着ているようだが、生憎とドラピオンは物理メインだ。やけどで攻撃力が落ちているとはいえ、そう何度も耐えられるかな?

 

 

「もう一度オーバードライブだ!」

 

「地面にこおりのきばだ!」

 

 

 胸の弦を()こうとするストリンダーに対し、フィールドを凍りつかせて拘束。()けなきゃ音も鳴らせないだろ?

 

 

「連続でつじぎりだ!」

 

 

 首から下を拘束されて身動きが取れないストリンダーに、容赦なくつじぎりを何度も何度も叩き込む。するとつじぎりの衝撃でストリンダーを拘束している氷が崩れてきて、それを見逃すモコウでもなかった。

 

 

「根性見せろ!ばくおんぱ!」

 

「っ…外側にミサイルばり!」

 

 

 気合いで手の拘束を外したストリンダーの爆音の衝撃波が放たれ、氷を全て粉々に破壊。しかしドラピオンはその間合いの外から回り込むようにミサイルばりを飛ばしてストリンダーに炸裂させ、怯ませる。

 

 

「突撃だ!こおりのきば!」

 

 

 そして突進、冷気を纏った牙でストリンダーの腕に噛み付き、完全に凍りつかせて戦闘不能にした。やっと相討ちじゃない白星である。

 

 

「やはり強いな、そのドラピオン…我も切札を切るか。パッチラゴン!」

 

「やっぱりな。ストリンダーをキョダイマックスさせないと思ったらそういう訳か」

 

 

 モコウが繰り出してきたのはライボルトではなく、温存していた最後の一匹であるパッチラゴン。俺の残りの手持ちはドラピオン、デンチュラ、そして切札のイワパレス。数的有利だが、今からモコウが使うものを考えるとあまり有利とは言えない。

 

 

「このままいくぞ、ドラピオン!」

 

「我の生き様!我の魂の在り方を痺れるぐらいに見せつけろ!ダイマックスだ、パッチラゴン!」

 

 

 今大会では初、モコウは最後の一匹でもないのにダイマックスを使用した。基本的にダイマックスに対抗するべく使用されるダイマックスは、その性質上最後に使うのが暗黙の了解とされてきた。ジムリーダーとチャンピオンの全員がそうなのだから、バトルを知らない人間でも最後に使うのが普通だと思うだろう。そのセオリーを、モコウは破った。俺のポケモンを3タテするつもりなのだろう。

 

 

「少しでも足掻くぞ!こおりのきば!」

 

「パッチラゴンの方が速いぞ!ダイジェット!」

 

 

 少しでもダメージを稼ごうとしたものの、素のすばやさが速いパッチラゴンより速く行動できず、もろにダイジェットを喰らってついにドラピオンが崩れ落ちる。…そっちがその気ならこっちもやってやるぞ。

 

 

「やるぞ、デンチュラ!」

 

「あの、我さえ知らなかったキョダイマックスか?受けて立つぞ!」

 

「いいや。こいつはな、ダイマックスしないでお前の猛攻を凌ぐだけだ」

 

「…我のパッチラゴンを舐めているのか?」

 

 

 巨大なパッチラゴンに見下ろされながら決して気圧されず真正面から睨み付けるデンチュラ。…ヤローとの戦い以来だな。ダイマックスを等身大で相手するのは。

 

 

「ダイロック!」

 

「いとをはくで壁に逃れろデンチュラ!」

 

 

 放たれるは、以前喰らったげんしのちからであろうダイロック。迫る巨岩に、デンチュラは横の観客席の壁に糸を伸ばして跳躍することで回避。砕け散った巨岩の破片が舞い散り、すなあらしが発生。間髪入れずモコウの指示が響いた。

 

 

「ダイサンダーだ!」

 

「岩の破片をいとをはくで乗り継いで避けろ!」

 

 

 砕け散ったダイロックの破片を利用して糸を伸ばして乗り継ぎ、上へ上へと逃れて巨大な雷撃の直撃を避けるデンチュラ。衝撃で掴まっていた破片もろとも吹き飛ばされるも、縮んでいくパッチラゴンに糸を伸ばして離れ、そのまま糸を縮ませて突撃する。俺の指示なしで行ったその神業に、咄嗟に指示を出していた。

 

 

「きゅうけつだ!」

 

「つばめがえし!」

 

 

 突撃していたデンチュラに炸裂する鋭い嘴の一撃。効果抜群とまでは行かないまでも、ダイサンダーを直撃じゃないとはいえ喰らっていた体力を削るには十分だった。だがしかし、モコウに対する切札の温存はできた。見せてやる、真打というものを。

 

 

「いくぞ、イワパレス!からをやぶるだ!」

 

「くっ…でんげきくちばしだ!」

 

 

 俺のイワパレスのとくせいを知ってるのか、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべるモコウ。からをやぶったイワパレスに電撃を纏った嘴が炸裂するものの、そこにイワパレスは健在。再び岩盤に潜り込んで、俺の指示を待つ。準備は整った。

 

 

「からをやぶったイワパレスとダイジェットですばやさを上げダイサンダーででんき技の威力を上げたパッチラゴン、どっちが速いか勝負だ!蹂躙しろ!ダイマックス!」

 

 

 イワパレスを巨大化させ、それに比べると小さなパッチラゴンと対峙。相手の出方を窺う中で、俺達はほぼ同時に指示していた。

 

 

「ダイアース!」

 

「つばめがえし!」

 

 

 その結果は、パッチラゴンの攻撃が届く前に地面からの一撃を受けて撃沈。宙を舞い、落ちてきたパッチラゴンに、悟った様な表情を浮かべるモコウ。

 

 

「まだだ、まだ終わってない!ライボルト!お前なら…!」

 

 

 祈るように繰り出したのはライボルト。しかしイワパレスの猛攻は止まらない。

 

 

「もう一度、ダイアース!」

 

「ワイルドボルトだ!」

 

 

 電撃を纏って突撃してくるライボルトに、無情にも炸裂する大地の一撃。宙を舞って地面に叩きつけられるライボルト。俺が、モコウが、観客の全てが。決着がついた。…そう思った。

 

 

「…ライ、ボルト…?」

 

 

 モコウの泣きじゃくった声がすなあらし(・・・・・)の向こうから聞こえる。ライボルトは立っていた。瀕死の体に鞭打って立ち上がるその雄姿に、観客が息を呑むのを感じた。ポケモンは、時に主人への信愛を示して体力ギリギリで持ち堪える現象がある。今回のはそれだろう。だがしかしだ、モコウの指示したダイロックによるすなあらしのスリップダメージが、ライボルトにとどめを刺した。俺のイワパレスはいわタイプが故にその影響を受けない。ワイルドボルトが不発に終わった時点で、皮肉にもモコウの手で決着はついていたのだ。

 

 

『決着!決着です!一進一退の激戦を制したのは、むしつかい、ラウラ選手!これほどの名勝負がこれまであったでしょうか!ラウラ選手はユウリ選手との決勝戦への挑戦権を得ました。一回戦は雨の中で、二回戦は砂嵐の中で決着がついた準決勝!皆さま!盛大な拍手を!』

 

 

 すなあらしが止んで、倒れ伏したライボルトに泣きじゃくりながら駆け寄るモコウ。俺はそれをイワパレスと共に静かにジッと見つめていた。

 

 

「…私はな、このジムチャレンジで初めてモンスターボールを握ったのだ」

 

「え?」

 

 

 ライボルトをボールに戻し、共に控室に戻る中で、泣きじゃくっていて一人称まで変わったモコウが語るのは、衝撃の事実だった。

 

 

「誰の手も借りず、サイトウになんとかパッチラゴンを使いこなせると示して推薦状を手に入れ、パッチラゴンだけ連れて訪れたワイルドエリアで、凶暴なポケモンに追い回されていた私が出会ったこのライボルト…ラクライは、初めて会ったにも関わらず、パッチラゴンを倒された私を命懸けで守ってくれた、初めて捕獲したポケモンだ。大事な…大事なパートナーだ。こいつの頑張りを、私は誇りに思う」

 

「そうだな。…待て、ジムチャレンジで初めてモンスターボールを握った?それ以前は?」

 

「私…じゃない、我は名家の箱入り娘だ。ポケモンも親のポケモンと…従兄弟のポケモンぐらいとしか関わったことがない。化石を集めてウカッツ博士に渡して、手に入れたパッチラゴンが最初のポケモンだ」

 

「………お前、天才か?」

 

 

 俺みたいに幼少期からポケモンを使っていたわけじゃなく、初めてポケモンを握って、最速でジムチャレンジをクリアしたってことか?ええ……あまりに事実にドン引きした俺に、涙を引っ込めて眉を顰めるモコウ。

 

 

「なんだどうした。そんな化け物でも見るような顔して。お前のポケモンを回復させたら決勝戦だろう。しゃきっとしろ」

 

「いや、初遭遇の時に有名なマッギョにかかってたのも箱入り娘だったからだったんだなあって」

 

 

 内心、だからあんなタイミングでダイマックスを切れたんだな、とか色々思い当たることを思い出し、そんな初心者に危うく負けるところだったのかとモコウに戦慄していたが、それは忘れて次に備えることにした。ついにユウリとの決着だ。動揺してないで十分に備えよう。あいつもモコウに負けず劣らず本物の天才だ。




モコウの真実、気付いていた人も多いかな…?

・ラウラ
勝ったのに負けた気がする蟲の女王。イワパレスを温存できたことで勝利を確信していたこともあり、モコウのダイロックが無かったら危うく負けていたため、今回は引き分けにしてほしいと思ってる。モコウの天才っぷりに戦慄しだいぶ動揺した。

・モコウ
色んなショックで泣きじゃくり一人称が戻っていたでんきつかいのドジっ子。ついにバトルにまでドジが影響してしまった。
実はユウリと同じく、今季ジムチャレンジが始まってからモンスターボールを握ってジムチャレンジを勝ち残った天才少女。根っからの箱入り娘であり世間に疎く、両親や従兄弟の反対を押し切って一人前であると認めさせるために、パッチラゴンを手に入れて顔見知りだったサイトウから推薦状をもらいジムチャレンジに参加した。
最速最強であることを拘っていたのは、それぐらいしないと認めてもらえないと危惧していたため。キャラを作っていたのも本来のか弱い自分を隠すためであり、本来は一人称「私」のお淑やかなお嬢様キャラ。髪型や眼帯、ゴスロリは完全に趣味である。

・ライボルト♂
とくせい:せいでんき
わざ:ボルトチェンジ
   ほのおのきば
   10まんボルト
   ワイルドボルト
もちもの:じしゃく
備考:すなおな性格。逃げるのがはやい。モコウの相棒。ワイルドエリアで出会った際にモコウが野生ポケモンから襲われていたところを身を挺して守り、手持ちになったモコウにとっての騎士(ナイト)。懐いた理由は守ってやらないといけない気がしたから。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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