今回は原作イベント…の改変。最強始動。楽しんでいただけると幸いです。
VSハガネールⅠ
「ラウラよ、惜しかったな。あの対面で負けるとはポケモンバトルとは奥が深い」
「戦略で貴女が負けるとは……本当にチャンピオンになってしまいそうですね、ユウリ」
「ユウリはすごいやつなんだぞ。兄貴にも勝ってしまうかもな!」
「ダンデさんにはさすがに勝てないと思うけど……私、頑張るねホップ!」
「正直、ダンデより恐ろしかったぞ……」
ユウリ、それから合流したモコウ、ムツキ、ホップと共にロビーに出ると、大勢の野次馬の中心に一人の男がファンサービスなのかリザードンポーズを決めて立っていた。ガラル地方、無敗のチャンピオン・ダンデその人だ。
「ユウリ!それからラウラ!ホップ!ムツキ!モコウ!……感動した。正直に言えば、気付くと涙がこぼれていた。君達みんなの、お互いの全てをぶつけ合う……勝ちたい気持ち、負けたくない思いを込めた技。あらゆる要素において純粋な試合だった!」
「ありがとうございます?」
「そ、それはどうも……」
「ユウリ、ホップ!君達に推薦状を渡すのを迷っていたトレーナーがいたとはな……」
「それ、兄貴だぞ」
「だからこそ!俺は俺自身のチームメンバー全ての力をチャレンジャーにぶつける!俺の前に立つチャレンジャーがユウリ!君であることを心から願うぜ!」
「そうだなユウリ。俺に勝って終わりじゃないんだ。大事なのはここからだ」
「うん、私もっと熱い勝負がしたい!」
「とりあえずホテルで体を休ませたいです……」
「……お前、大丈夫か?」
「俺が背負おうか?」
「……心配には及びません」
初めて会うダンデに臆しながら、事の成り行きを見守りユウリに告げると楽しげに笑う。その横でモコウがムツキを心配し、ホップが提案してたがムツキはそれをやんわり断っていた。ふむ、俺との戦いで気を張り詰めて立っていたから疲労が溜まっているか。
「ホテルもいいが、その前にエネルギー補給だ!みんなでなにか食いに行くとしよう」
「いいけど……兄貴は味にこだわらないからな。せっかくだからうまいもん頼むぜ」
「カレーかな!?」
「チャンピオンと食事……!」
「わ、我もいいのか?」
「いいのですか?」
「ああ、マリィ選手とマサル選手、ナグサ選手がいないのは残念だが……みんなで食べようじゃないか」
ダンデの言葉に思わず反応する。その時にバトルのアドバイスや何とか戦えないか聞けないだろうか……なんにしても、いい戦いが出来たから誘われたのだろう。頑張ってよかった。
それから数時間後。一旦ホテルに戻った俺達は、約束の時間を過ぎた今もダンデを待ち続けていた。
「遅い!おかしい!」
「なにがおかしいんだ?」
「どんな約束も守る兄貴だ。チャンピオンになったのも俺との約束だったんだぞ!?」
「食事の時間を守るのも余裕だと言いたいわけだな」
「でもダンデさん、方向音痴だから……」
「単純に迷っていたらさすがに笑うんですが」
そうホップが痺れを切らしていた時だった。
「ノイジーな人達ですね。それだけ騒げるなら試合でもっと全力を出せたよね?」
そこにやってきたのは、まさかのネズさん。その言葉がグサッと刺さる。……いや、全力は出したぞ?ペースをだいぶ乱されていたのは自覚しているが、うん。
「悪そうな顔と格好でまともなこと言わないでください」
「貴女は相変わらず失礼な女ですねムツキ」
「ネズさん!こっちは真面目なの!」
「それよりも、チャンピオンならローズタワーに行きましたよ」
「どうしてそんなところに?」
ユウリの問いかけに、肩を竦めるネズさん。
「さあ。よくわかりませんがモノレール乗り場で会いましたよ。ローズタワーに行くため約束の時間に遅れること貴方達に伝えてほしいと」
「ローズタワー?今更なんかあるのか?ネズさんついでだからローズタワーに案内してよ」
「たしかに。俺達ローズタワーの場所を知らないしな」
「やれやれ。一言で言うと人使いの荒い人達です」
「通りすがりにネズさんに頼むチャンピオン程ではないと思うが」
「そうですね……ファイナルトーナメントが始まらないと俺も困りますし、何より俺に勝利した君達は嫌いじゃないですしね。わかりました!エール団みんなで遊びに行くとしましょうか!」
「ええ……」
仮にも悪の組織ポジションだろうのに主人公と共闘するのか……BW2でも一応共闘はしてたっけか。熱いけどエール団はさすがに町の人に迷惑じゃない?
「イエイ!ネズさんサイコー!みんなでガンガン行っちゃうぞ!」
「そんな大所帯で行く理由があるのか……?」
「さあ。案外馬鹿なんでしょ。男ですもの」
「男が馬鹿なのは否定しない」
「聞こえてますよそこの三人娘」
はい、すみません。前世が前世だからムツキの言葉には納得しかしなかった。
「ユウリとの激しい試合でくたびれとーのに……」
「エール団はユウリを応援すると決めたのですよ。一緒に手伝ってください」
外に出るとネズに呼ばれたマリィ、エール団の面々と合流。いざローズタワーに行こうとしていた時だった。
「必要ありませんッ!」
「オリーヴさん?」
そこに現れたのは二人の人物。ローズ委員長の秘書のオリーヴと、長身でサングラスをかけた女性のリーグスタッフだった。……なんか見覚えあるなあのリーグスタッフ。
「ローズ委員長はチャンピオンと大事な大事な打ち合わせの最中……誰にも邪魔をさせる訳にはいきませんッ!もっとも、ローズタワーには関係者しか行けません。だってモノレールでローズタワーに行くにはキーがいりますもの。つまり、ローズ委員長がいらっしゃるローズタワーには誰も行けないのです!」
「……そのキーをもらうわけには?」
「あげるわけがないでしょう。ですが、キーは私が選んだこのリーグスタッフに渡しておきます。だってローズ委員長、ちょっとした遊びが好きですもの。彼女を倒せれば、いいですね?」
含み笑いをして去って行くオリーヴ。残ったリーグスタッフは綺麗な一礼してにやりと笑う。
「はい、私が……えっと、いわゆる悪いリーグスタッフです。私と勝負しますか?」
「その声……?」
「はっはっは!受けて立つ!」
ムツキが首を傾げ、モコウが意気揚々とライボルトを繰り出すと、リーグスタッフはボールを手元から落とし、ボールが地面に落ちる前にそのスイッチ部を蹴りつけてハガネールを繰り出した。今のってたしか…
「じめんタイプか……だが、はがねタイプなら勝てるぞ!ほのおのきば!」
「やめなさいモコウ!その人は…」
ネズさんが何かに気付いたのか止めようとした、その瞬間。
「公共の場に迷惑をかけないように……じしん」
リーグスタッフがコンコンと靴音を鳴らしたかと思えば、ハガネールは何もしてないように見えたのに、ライボルトは塔の様に隆起した真下の地面に打ち上げられて、戦闘不能になった。ライボルトを打ち上げた隆起はそのまま戻ってちょっと罅割れているが元通りになる。今のって…!
「やはり貴女でしたか。これは分が悪いですね……」
「母さん!なにやってるんですか!?」
ネズが溜め息を吐き、ムツキが絶叫する。やはりか。ムツキの言葉を受けて、サングラスを外して帽子を外した先にあったのは見覚えのある顔。
「あら、さすがにばれちゃいましたか。ごめんねムツキちゃん。これは仕事なの。いくら貴女とそのお友達が相手でも手は抜けないわ」
「ムツキの……お母さん?」
「ああ、グランドウォール・キリエ……チャンピオンダンデがチャレンジャーだった時代の最強のジムリーダーだった人だ」
ユウリの疑問に答える。以前、ネズさんと戦った時にアドバイスをくれた人。ダンデのリザードンを公式戦で唯一倒した女。圧倒的強者。最強のジムリーダーだったキリエさんが、そこにいた。
実は悪いリーグスタッフな立ち位置だったキリエさん。名実ともに最強の元ジムリーダーがラウラ達の前に立ちはだかります。
・ラウラ
見覚えがあるとは思っていたがまさかキリエだとは思わなかった蟲の女王。既に実力差を味わっているこそ信じたくはなかった。チャンピオンとの食事に興味津々。
・ユウリ
ラウラに勝ってご満悦の原作主人公。ニッコニコ。最強の元ジムリーダーと聞いては黙ってられないぜ!な心境だけど、じしん(?)には困惑してる。
・モコウ
キリエには多分絶対に勝てない人。じめんタイプ対策はパッチルドンとウォッシュロトムだけ。なお、キリエ相手にはふゆうだろうが相性悪かろうが関係なかったりする。
・ムツキ
母親が悪いリーグスタッフとか名乗っていて恥ずかしいキリエの愛娘。キリエの強さを一番わかっているが、それでも自分は勝てると信じてる。
・ホップ&マリィ
原作通り。キリエのことを知っている世代。
・ダンデ
ガラルのチャンピオン。セミファイナルトーナメントには真面目に感動していた。タイプを極めながらここまで来た三人娘とは話してみたいと思っている。
・ネズ
あくタイプのジムリーダー。キリエの強さをよく知っている人間の一人。今回の面々の保護者枠。
・オリーヴ
キリエに絶対の信頼を向けているローズの秘書。抜け目なくモノレール乗り場に他の悪いリーグスタッフも待機させている。
・キリエ
元ジムリーダーにして悪いリーグスタッフ。仕事人間なので娘だろうが容赦はしない主義。はがね使いが多いマクロコスモスとしてリーグスタッフとして活動時はハガネールを使う。ピンポイントでじしんを起こして隆起させ浮いている敵でもじしんでノックアウトが可能、さらにそのあと地面を元に戻せる。トレーナーとしても足音だけで目標を指示して相手に悟られないようにするなど実力は限りなく高い。公共の場では実力を発揮できないのが救いか。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。