今回はチャンピオンカップの一幕となります。ちょっといつもより長いです。楽しんでいただけると幸いです。
チャンピオンダンデと食事した翌日。チャンピオンカップが始まった。ジムリーダー七人と勝ち残ったチャレンジャーのトーナメント戦。勝ち残ったトレーナーがチャンピオンと戦う権利を得る。つまり、ユウリは本気のジムリーダー三人に勝ち抜かないといけないわけだ。俺は激励しておいたユウリの雄姿を観客席で見守ることにする。モコウとムツキ、それからナグサにマリィ、ホップも一緒だ。
「正直、本気のジムリーダーが相手でもユウリは勝ち残ると思うぞ。実際戦ってみてわかった、あれは天才の類だ」
「そもそも我らと違ってパーティのバランスもいい」
「ありとあらゆるタイプに対抗できるのが強みですね」
「その点においてはノーマルタイプも負けてないんだけど…あんないろんなタイプを使いこなせるのはすごいなあ」
「ユウリの凄さは私達が一番よく知ってるけんね。心配なかとよ」
「あいつは約束したんだ。最強の戦いで世界を熱狂させるって。だから大丈夫だぞ!」
ホップの自信満々な言葉に頷く。…正直、キリエさんと戦ったことでチャンピオンとの実力差を思い知った。おそらく俺では、本気のジムリーダーたちにも勝てていたか怪しい所だ。だがアイツなら…そして、ポプラさんを除いた七人のジムリーダーとユウリが集まったコートの中心に、ローズ委員長ではなくチャンピオンダンデが姿を現した。様子がおかしいな。
「改めて名乗ろう!俺はチャンピオンのダンデ!わけあってリーグ委員長の代わりをさせてもらう!ガラルのポケモントレーナーをより高みに連れて行くために!何より俺のために、最強のチャレンジャーを決めてくれ!さあ!今ここに宣言する!ファイナルトーナメント開催だ!」
そうダンデが宣言した時だった。
「待ちなよ!」
そこに、乱入者が現れた。ウール―の様な頭に、フェアリータイプのユニフォーム。特徴的だった荒んだ眼はなんかキラキラしてる。「誰だ?」と観客がざわつくが、俺は知っている。この旅の始めの頃に戦い、ラテラルタウンで決着をつけた少年。もし残っていたら間違いなくセミファイナルトーナメントに参加していたであろう、その少年の名は。
「皆さまよろしいでしょうか。僕を覚えているでしょうか。ジムチャレンジ無念のリタイアとなったビートです!」
そう言って俺に視線を向けるビート。その目には色んな感情が宿っていたが、無言で頷く。お前のことを忘れたことはなかったさ。その格好、ポプラの後継者になれたんだな。腐ってなくてよかったよ。
「ユウリ選手と…ラウラ選手とは浅からぬ因縁があります。本当はラウラ選手と決着をつけたかった…だけど、君にも僕は負けた。このまま君に勝ち逃げさせたりはしない。ルール違反は承知です。その上でお願いします。選手生命を賭けて勝負をさせてください!負けたら、トレーナー引退です」
『なんというハプニング!ジムチャレンジャーだったビート選手の乱入だあ!ビート選手について審議しております。スタジアムの皆様。テレビの前の皆様。しばらくお待ちください!』
「決着ならいつでもつけてやるってのに。なに選手生命賭けてるんだあいつ…」
「奴も我たちの仲間か」
「ラウラに負けっぱなしは癪に障りますからね。わかります」
「お前たちもか…これから時間はいくらでもあるんだ。相手ならいつでもなってやるっての」
ビートの言葉に感銘を受けたらしいモコウとムツキにツッコむ。なんでこいつらはこう熱血なのだろう。この世界のトレーナーはみんなこうなんだろうか。
「ビート…本当にいいの?」
「無茶苦茶なのは僕自身がよくわかっているよ。でも言わないわけには…動かないわけにはいかないんだ!貴女達のせいで滅茶苦茶なんだ!オリーヴさんに頼まれてローズ委員長のためにねがいぼしを集めていたのに、ラウラ選手には何もかも奪われるし、委員長には見捨てられるし、訳の分からない婆さんにフェアリータイプについて朝晩叩き込まれるし!」
ユウリの問いかけに捲し立てるビート。モコウとムツキにドン引きされたような顔を向けられる。俺がなにもかも奪ったような言い方ヤメロォ!誤解だから!
「わかりますか?ピンク色に囲まれて、フェアリータイプのポケモンでクイズと勝負の毎日!」
「ええ…」
「そのドン引きしたような顔やめてください!アアッ!こんなに暑苦しく思いを語るなんて僕のキャラじゃないのに!ラウラ選手は借りも返せないまま貴女に負けるし!いえ、貴女の実力はちゃんと見させてもらったので文句を言うつもりはありませんが!」
「ビートもラウラが好きなんだね。分かるよ」
「違いますよ!?話聞いてました!?」
うんうん、私は分かってるよみたいないい笑顔を浮かべるユウリに、なんか怒りと色んな感情が織り交ざって大変なことになってるビートに同情する。今の発言といい、ユウリはなんかずれてるんだよな。
「…ユウリのやつ、あっちか?」
「ええ、多分そっちの気ですね…しかも無自覚っぽい」
「なんか言ったか?」
「「いや、なにも」」
『なんと!チャンピオンが乱入を認めました!ガラルのトレーナーを強くしたいチャンピオンの愛でしょうか。それともユウリ選手への試練でしょうか』
実況から認められた旨が伝えられ、真っ直ぐにユウリを見据えるビート。その目は決意が宿っていた。他人を見下していたかつての姿は見受けられない。
「無理を通したんです!僕たちは勝つしかない!僕のハートは砕けてなんかいないんだ!」
「いいよ。全力で勝負してあげる!」
そして始まる戦い。ビートの繰り出すフェアリータイプのポケモン達を、相変わらずの相性がいいポケモンを繰り出し的確に指示することで一匹も倒されることなくビートを最後の一匹まで追い込むユウリ。その実力差は圧倒的だった。最後のブリムオンを繰り出し、それでも不敵な笑みを浮かべるビート。
「フンッ!その余裕……勝ったと、思ってるんでしょうね」
「思ってるよ。悪いけど、ラウラに勝った私はノリに乗ってるからね!ストリンダー、ダイマックス!」
「いいでしょう!ならば大いなるピンクを見せましょう!ブリムオン、キョダイマックスです」
コートに巨大化したストリンダーと、姿を変えたブリムオンが並び立つ。勝敗は誰の目から見ても明らか。でもそれでも、ビートの頑張りから目を離せない。
「キョダイテンバツ!」
「ダイアシッド!」
そして、決着はついた。
『おっと!ユウリ選手と自慢のチームメンバーがビート選手の挑戦をはねのけた!』
「終わった…!ですが、手を抜かないでいただき感謝です。皆様にフェアリーのよさは伝えましたよ。負けた……僕も、まだまだですね」
「ビート…」
立ち尽くすユウリとビートに、辛抱堪らなくなった俺は観客席から身を乗り出した。
「おいビート!お前、俺ともう一度戦わないで引退するなんてふざけるなよ?!」
「そうだそうだ、一方的ではあったが悪くない試合だったぞ!」
「引退したのならまたデビューすればいいじゃないですか!」
俺に続くモコウとムツキ。彼女たちにも思うところはあったらしい。特にムツキはビートと同じくローズ委員長の推薦だからなおさらだ。ホップやマリィ、ナグサや他の観客も俺達に続くように声援を送る。それを受けたビートは額に手を当てて、それでも嬉しそうに。
「ラウラ選手、ムツキ選手、皆さん…なんてことだ……あなたにリベンジできればオーケー!負けても引退して婆さんから逃げるはずだったのに……ユウリ選手、ラウラ選手!それにムツキ選手!やっぱり貴女方は迷惑だ!僕の心を揺るがせる!皆に認められたらフェアリータイプのジムリーダーを続けないといけない!」
「みんな、それを望んでるよ。私も」
「…まあ?僕の才能でしたらポプラさんや貴女達なんか、あっ!と言う間に越えますけどね」
『スタジアムは若者たちを称える声でいっぱいだ!さてユウリ選手、予想外の試合のダメージを回復するため控室に…』
そんな乱入騒ぎがあったが、ユウリが戻ってきてすぐ、チャンピオンカップは始まった。
そして、一回戦のルリナ。二回戦、勝ち残ってきたサイトウ。決勝戦のキバナを次々と苦戦することなく撃破していくユウリはダンデへの挑戦権を得て、今チャンピオン決定戦が行われようとしていた。
「コートの張りつめた空気。それとは真逆の観客の熱狂……どちらも最高じゃないか!いいかい?彼ら観客はどちらかが負けることを願う残酷な人々でもある!そんな怖さを跳ね除けポケモントレーナーとしての全てを、チームの全てを出しきって勝利をもぎ取るのが俺は好きで好きでたまらない!」
「それは分かる気がします。全力で戦うのは、本当に気持ちが良いので!」
「俺の最高のパートナーたちもボールの中でうずうずしている。さあ、チャンピオンタイムだ!ガラル地方チャンピオン、ダンデとパートナー、リザードンたちがこれまでに得た経験、知識で君達の全てを打ち砕くぜ!」
「私も、ホップやラウラ達の思いを背負って…全力で行きます!」
そんな会話の後に両者が位置に着き、いざ始まろうとしていた時だった。
「ちょっと待って!?」
「おい!モニターを見ろよ!」
「なんだ、あれ……?」
観客たちが騒ぎだし、なんだなんだと俺達もモニターに目を移す。するとそこには、灰色の砂嵐映像の後に、ローズ委員長が顔を出した。見ないと思っていたら…まさかと思うが、今俺が関わっているであろうストーリーの悪役って…昨日の騒動も、まさかそれか。
『ハロー!ダンデ君に、ユウリ君。ガラルの未来を守るため、ブラックナイトを始めちゃうよ!』
「ブラックナイト?」
たしかおとぎ話だろそれ。シンオウやイッシュの神話みたいになんかの伝説ポケモンを暗示する話だったのか?するとゴゴゴゴッ!とスタジアム全体が揺れ出して、俺は思わず手すりに摑まり、モコウとムツキも掴んで固定する。地震か?いや、違うか。
『ただブラックナイトのエネルギーが溢れだして危ないんだよね……!』
瞬間、スタジアムの中心、コートのど真ん中から溢れだすマゼンタ色の光の柱。それは、ワイルドエリアのダイマックスポケモンの生息する巣穴から漏れる光の柱と酷似していて。そればかりか、モニターに映る他のスタジアムのコートの中心からも同じ光の柱が立ち上っていた。ダイマックスエリアに何か異変が起きたのか!?
『ダンデ君が話を聞いていたらこんなことにはならなかったのにね!』
ローズの声が鳴り響く中、俺達はスタジアムから避難する。聞こえてくる話によると、ガラル中でポケモンがダイマックスして暴れてしまってるらしい。…よし決めた。顔を向けると、モコウとムツキは皆まで言うなとでも言うように同じ笑みを浮かべていた。考えることは同じだよな。
「行くぞ、多分ローズ委員長のエネルギープラントだ!」
「ムツキ、足を頼む!」
「言われなくても!」
人込みを抜けた俺達は、それぞれアーマーガア、フワライド、ウォーグルの力を借りて空に飛びだした。やることはひとつ。ユウリとダンデの決戦を邪魔してくれたローズをぶん殴って、ブラックナイトとやらを止めてやる!どうせ主人公…ユウリが解決するんだろうが、見て見ぬふりができるか!
ついに始動、ブラックナイト。ラウラ達三人娘はがっつり関わります。
・ラウラ
ビートの健闘を称えた主人公。実はだいぶ前にビートから告白紛いの絶叫を受けているが気付いてない等辺木。厄介ごとが起きても主人公にだけ任せるつもりはない。ダイパとかだとギンガ団のアジトだろうが突っ込んでる。
・ユウリ
苦戦らしい苦戦をせずチャンピオンカップを制した原作主人公。ラウラに無自覚な好意を向けている。ラウラ達とは別行動でホップと共にまどろみの森に向かった。
・モコウ
ユウリから「あっち」の気配を感じたでんきつかい。なんか嫌。ビートとは面識がないがすごいやつってのはわかった。ブラックナイトにラウラと共に立ち向かう。
・ムツキ
ユウリから「そっち」の気配を感じたひこうつかい。なんか嫌。ビートには興味がなかったが、かつての同僚が頑張っている姿に思うところがあった模様。ブラックナイトにラウラと共に立ち向かうが、またキリエが出てくるんじゃないかと内心びくついてる。
・ビート
ピンクに染まったラウラの最初のライバル。ラウラとムツキからの声援にちょっと泣きそうになった。
・キバナ&ルリナ&サイトウ
ユウリに圧倒されて見どころなく敗北した。
・ホップ
原作通りユウリにエールを送っていた。避難の最中ラウラ達と逸れてユウリと合流、共にまどろみの森に向かった。
・マリィ&ナグサ
ビートに声援を送っていた。ブラックナイト始動後は観客を安全に逃がすために案内している。
・ダンデ
絶対何も悪くないチャンピオン。ユウリとの戦いを心待ちにしていたのになんかローズにディスられた可哀そうな人。ダンデがいてもこうなってたんじゃないですかねローズさん。
・ローズ
なんで明日まで待ちきれなかったのか。ポケモン剣盾の悪の組織枠のトップ。キリエでなんとかブラックナイトを抑えようとしたけど駄目だった。
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