今回から第二章!名づけるならば「剣と盾」編が始まります。例の二人もようやく登場。そしてラウラも新しい手持ちが。楽しんでいただけると幸いです。
VSユキハミ
あれから数日。頭の上にユキハミを乗せ、傍らにデンチュラを連れた俺はハロンタウンのユウリの家の屋根の上に寝そべって日向ぼっこしていた。…なんというか、都会暮らしだったせいか田舎の空気は癒されるな。すぐ近くにどんよりしているまどろみの森がなければもっといいんだが。
チャンピオンカップも終わり、チャンピオンを倒すという結果を残せなかった俺はなんとなく実家に戻る気がしなかった。どうせ蟲ポケモンのよさを理解しようともしない人達だ。何言われるかわかったもんじゃない。モコウとムツキも同じらしい。モコウはなんでも、チャンピオンになれなかったことで絶対嫌味を言ってくる従兄弟がいるらしく、実家に帰りたくないとか。ムツキは単に、病院送りにされるのは嫌だから会いに行けないらしい。
そんなわけで今度は三人で旅に出るか、と画策しているとユウリが自分の家に誘ってくれたのだ。曰く、人の少ない田舎だから落ち着ける、みんながいると楽しい、という理由なのがユウリらしい。お言葉に甘えて三人揃ってユウリの家に押しかけた訳だが…
「まあ、やることはいくらでもあるからなあ」
現在、ユウリは生放送のためにテレビ局に、ムツキとモコウはナックルジムにジムトレーナー研修に行っている。ユウリはチャンピオンとしての仕事やムゲンダイナの研究が忙しく、家に戻ることも少ない。セミファイナルトーナメント時にキバナに誘われたムツキだけでなく、モコウも誘われていた。曰く、あまごいにかみなりを合わせれば無敵だぜ!パッチラゴンって言うでんき・ドラゴンもいるわけだしどうだ?らしい。キバナ…実は節操なしなんじゃないかな。
俺もガラル中に蟲ポケモンを集めに、ユウリの家を拠点にそらとぶタクシーで赴いていた。そして見つけたのがこのユキハミだ。キルクスタウンに向かう道中では見かけなかったのだが、出会った瞬間ビビッと来たね。進化条件は分からんが絶対美しいポケモンになる。ちなみにイワパレスと交代した。
「次はどこに探しに行こうかね…」
そうぼけっとしつつユキハミを触って癒されながらスマホロトムのポケモン図鑑のぶんぷを眺めていると、空に三つの影が。見てみると、生放送帰りのユウリと、ジム帰りのモコウとムツキがそらとぶタクシーで帰ってきたところだった。
「おかえり、三人とも」
「ただいま!そんなところにいたら危ないよラウラ!」
「フハハ!屋根の上から見下ろす様はかっこいいな!」
「馬鹿と煙は高いところが好きって言いますよ」
「誰が馬鹿だ。空飛びたい願望持つお前も馬鹿ってことじゃないか」
「言われてみれば!?」
言い返すとショックを受けて固まったムツキを置いといて、俺はデンチュラをボールに戻して屋根の上から飛び降りて三人と合流。どうせいつもみたいにバトルをせがまれるんだろうなと身構えていると、ユウリが何か気になる様子でまどろみの森に視線を向けていた。
「ユウリ、どうした?」
「…うーん、ラウラと戦いたいところだけど……なにかに呼ばれた気がして」
「なにかってなんだ?」
「まどろみの森というと…たしかあの二体のいた場所だったか?」
「ザシアンとザマゼンタですね」
「そうだ、忘れてた!」
そう言って家の中に入って行ったかと思えば一分も経つことなく戻ってくるユウリ。その手には朽ちた剣が握られていた。
「これ、返して無かった…!」
「それで呼ばれたってわけか。なるほどな?」
「テレパシーか何かか?かっこいいな!」
「モコウ、貴女かっこよければそれでいいんですか…?」
「私は今から返しに行くけど…一緒に来る?」
「「「そりゃもちろん」」」
そんなこんなで四人揃って、朽ちた剣を返すためにまどろみの森に行くことになった。
まどろみの森。霧が立ち込め、日の光も入らない薄暗い鬱蒼とした不気味な森だ。ちなみに蟲ポケモンは結構いない(重要)。一応いるらしいが何故か顔を出してくれないちくせう。襲ってくる低レベルだったり高レベルだったりバラバラな野生ポケモンを蹴散らしながら奥地に進むと、古いアーチ状の建造物がある神聖な雰囲気の泉に出た。そこにいたのは、予想だにしない人物だった。
「あれ?ユウリにラウラ、それにモコウにムツキも?お前たちまでこんな森の奥にいったいどうしたんだ?」
「ホップこそどうしたの?」
「朽ちた剣を返しに来たユウリと、暇だから着いてきたおまけだ」
「誰がおまけだ!」
「いやまあ否定はしませんが」
ユウリと同じく朽ちた盾を手にしたホップが佇んでいて。ユウリの問いに答えるように周りを見渡した。
「ザシアンとザマゼンタが眠っていた森だからな。誰も入ってこなくて静かで考えるのにぴったりなんだ!」
「何か考え事でもあるのか?」
「ちょっと思うところがあってな…ユウリは剣を返しに来たって?」
「うん、なにかに呼ばれた気がして」
「なんだか不思議だな。そうだユウリ、改めて。優勝おめでとうだぞ!あれからバタバタしてて会えなかったからな!まさかユウリがガラル最強無敵の兄貴に勝っちまうなんてさ!」
「半ば圧勝でしたけどね」
「黙っておけムツキ」
「アレはユウリが強すぎた」
「ちょっとそこうるさいよ。ありがとう、そう言ってくれて嬉しいよホップ!」
「…なんだかまだ信じられない。ユウリは本当にすごいぞ…………すごすぎて、よくわからないぞ!」
「「「それはわかる」」」
「そこはわからないで!」
ユウリが凄すぎてよく分からないのは多分、誰もが思ったことだ。すると後ろを向いていたホップが、決心した顔で振り向いてボールを構えた。
「ユウリ……もう一度俺と勝負してくれよ?」
「いいけど…どうして?」
「最強のチャンピオンだった兄貴に勝った、ムゲンダイナを手に入れたユウリの強さ……俺も確かめるぞ!」
「いいよ。ラウラ、審判をお願い。6VS6でいいかな?」
「それでいくぞ!」
そしてユウリとホップのバトルが始まった。
ユウリの操るムゲンダイナと、それに立ち向かうホップのポケモン達。バイウールーとアーマーガアはかえんほうしゃで焼き払われ、バチンウニは技も何もなく押し潰され、ウッウは何も吐き出すことなくりゅうのはどうで一撃で落とされ、カビゴンはクロスポイズンの直撃をもらい、最後のエースバーンとなる。
「まだだ!まだ終わらないぞ!」
「容赦しないよホップ!ダイマックスほう!」
「上に避けてかえんボールだぞ!」
放たれるマゼンタ色の光線を、跳躍して火球を蹴りつけるエースバーン。ムゲンダイナは顔面に火球を受けて怯み、その隙を見逃すホップではなかった。
「こうそくいどうからのずつきだ!」
すばやい動きでムゲンダイナを翻弄し、真正面からずつきを繰り出すエースバーン。だがしかし、それは悪手だった。
「捕まえてムゲンダイナ!」
「なっ!?」
ガシィ!と、ずつきを繰り出して硬直していたエースバーンを両手で掴むムゲンダイナ。エースバーンは拘束から抜け出そうともがくも、がっしり握った両手は放されることはない。
「ダイマックスほう!」
そして、掴まれた状態から零距離でダイマックスほうが放たれ、エースバーンは宙を舞って地面に激突。目を回すのだった。悔しそうに表情を歪め、すぐに穏やかな笑みを見せるホップに、どこか申し訳なさそうな顔を浮かべるユウリ。俺達も何とも言えない顔になる。…これはユウリが強いのか、ムゲンダイナが強いのか。両方か。
「エースバーン、戦闘不能!ユウリの勝ちだ」
「…お前と俺とではこれほど実力の差があるのかよ…!無敵の兄貴に勝ったユウリには敵わないか…」
「えっと…」
「あんたたちちょっと騒がしいんだけど?なんてね」
「あ、ソニアさん。お久しぶりです」
するとそこに、以前ラテラルタウンで会った白衣姿のソニア博士がやってきた。そう、博士だ。この数日の間にソニアさんは博士として、本を出していたのだ。いつ博士になったのかは知らんが。
「ラウラも久しぶり、元気してた?それよりも……ユウリ、チャンピオンおめでとう!」
「ありがとうございます!」
「勝者の余裕って感じですね」
「羨ましいことだな」
「ソニア、こんなとこでなにしてんだ?助手の仕事は?」
「ホップ、実はね。私もう助手じゃないの…はれて、博士になったのよ!」
「本買いましたよ。おめでとうございます」
「ラウラが見せてくれたあの本の作者か」
「ガラル地方の伝説についての新発見ですね。私も買いました」
「ありがとうねラウラ達!ユウリ、ホップ。私、あんたたちにはほんっと感謝してる。一緒に冒険したいからガラルの歴史をもっと知りたいって思えたし、ポケモンのことももーっと好きになれたしね!あ、これ私の書いた本ね。サインつきのレアものよ。ラウラ達のもあとでサインしてあげる!」
そう言ってウィンクするソニアさん。元男としてはちょっと来るものがあった。よく見なくても美人だしな。そんな俺を睨むユウリ。…なんかすまん。
「おばあさまにも認められたし!本も出版できたし!ソニア博士の活躍にこれからも期待しててね!」
「…うん、ソニアもユウリもすげーよな!ラウラにモコウ、ムツキもしたいことを貫いて…」
「俺達は微妙だがな」
「最速にはなれたが最強にはなれなかったしな」
「自由に空を飛ぶのが目的なのもどうかと」
「そんなことない、みんな立派だよ。尊敬するぞ」
なんか様子のおかしいホップに首を傾げるが、いつも通りの笑みを浮かべたので気にしないことにした。すると頭の上のユキハミが震えだして警戒しているのが伝わってきた。なんだ?
「んで?あんたたちは一体ここで何してんの?」
「朽ちた剣を返しに来たんです。ラウラ達はその付添い」
「そ、そうだぞ!俺も返さなきゃ!助けてくれたお礼を言って剣と盾を返そうぜ!」
「そしたらまたザシアンとザマゼンタに会えるかもだしね!」
そう言って朽ちた剣と盾が置いてあったのであろう場所に歩み寄る二人。対して、頭上のユキハミは警戒を強めていく。こいつは大人しい性格で、争い事が好きなポケモンじゃない。それが警戒するほどのなにかがあるってことか?
「どうしたラウラよ」
「険しい顔をして」
「いや、ユキハミの様子がおかしくて…」
モコウとムツキに伝えていると、ちょうど剣と盾を返すところだった。
「ザシアン!ザマゼンタ!助けてくれてサンキュー!遅くなったけど、お前たちの大切なもの返すぞ!」
「…よし!帰ろう、みんな」
「私はもうちょっと森を調べたいからこのままで…うん?パワースポット探しマシーンが反応してる……?」
「パワースポット?」
「「おーや!おやおーや?」」
そしてそこに現れたのは、なんというか珍妙な二人の男だった。
「なにやら騒がっしーと思えば!」
「もしやそこにいるのは落ちこぼれのモコウさんではないですか?」
そっくりな顔をした、青い高そうな服を着た剣の様な髪型の銀髪の男と、赤い高そうな服を着た盾の様な髪型の銀髪の男。それを見たモコウの顔が歪む。
「ソッド!シルディ!貴様ら…なんでここに!?」
いつもは3000字なのに地味に4000字超えてきりがいいので今回はここまで。
・ラウラ
実家には帰りづらいからユウリの家にお邪魔して蟲ポケモンを集めている主人公。見事に暇を持て余している。ユキハミにデレデレ。屋根の上がお気に入り。
・ユウリ
大忙しでラウラに絡めないことを残念がってるチャンピオン。ホップ戦でムゲンダイナだけ使ったことにはさすがに申し訳なさを感じた。服装はチャンピオンコーデ。
・モコウ
従兄弟二人になに言われるかわかったもんじゃないのでユウリの家にお邪魔している。キバナに誘われドラゴンジムのジムトレーナーになろうか検討中。
・ムツキ
病院に連れ戻されたくないからユウリの家にお邪魔している。キバナに誘われドラゴンジムのジムトレーナーになろうか検討中。自分で自分が馬鹿だと言ってしまった。
・ホップ
なにか悩んでいるユウリのライバル。実力差を改めて思い知った。
・ソニア
久々登場。博士になっていた。ソニアの本はラウラもおすすめの一品。
・ソッド&シルディ
散々存在が仄めかされていたモコウの従兄弟。セレブリティ(笑)な髪型。
・ユキハミ♂
とくせい:りんぷん
わざ:こなゆき
むしのていこう
もちもの:やすらぎのすず
備考:おとなしい性格。イタズラが好き。嫌なものに対して敏感に感じ取る。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。