今回はターフスタジアムでの一戦。楽しんでいただけると幸いです。
「ソッドとシルディは王族と呼ばれる血筋の本家で…私とアルルカンはその分家だ」
落ち着いたモコウが苦々しげ語る。その顔から奴らの名前を口に出すことすら嫌なのがよく分かった。
「奴らは自分たちの祖先こそがガラルを救った英雄なのだと豪語している。真実は知らんが、少なくともソニア博士の本でガラルを救った英雄とはザシアンとザマゼンタのことであり、私達の祖先はそれを隠そうとしていたのが分かった」
「それで奴等は自分たちが王族だと証明しようとしているのか」
「ザシアンとザマゼンタを貶めようとしているってことかな?」
「つまり嘘つきの一族の末裔だと思われたくないと。金持ちの考えは分かりませんね」
「正直私にも奴らがなんであそこまで固執しているのかはわからんからな」
ソッドとシルディとアルルカンが逃亡し、それをホップが追いかけた後。モコウからあらかたの事情を聞いたのち、ソニアさんが奴らの行き先が分かるかもという事なので彼女の研究所に四人してお邪魔することになった。研究所に入ると、知らない人物が慌ただしく資料を纏めている場面と遭遇する。
「あわわわわ!…あっ、ムツキ選手!?わー、わー、感激です!」
白いシャツの上から白衣を着ていて、下は白いミニスカートと白いニーソックスに白いブーツと白づくめの格好で、赤いリボンをした白髪赤眼のアルビノと思われる色白の少女はムツキを見て感激したかのような声を上げる。ユウリにも目もくれないとはよほどのムツキファンか。
「えっと…あなたは?」
「私、ルミといいます!元はジムチャレンジャーだったんですけど、ムツキ選手に敗北してからはポケモンのことをもっと知ろうと研究職になりました!」
「ああ、あの頃のムツキの被害者か…」
あの頃というのは、マクワに敗北するまでの調子に乗りまくっていたムツキのことだ。俺以外にも沢山のトレーナーがその手にかかったらしい。主に罵倒で心が折れたのも何人かいたのだとか、ムツキ本人から聞いたことがある。本人としては自分と違って自由に歩けるのだからこれぐらいで心が折れないでほしいとぼやいていたが。するとルミは書類の山を抱えたままブンブン頭を振ってそれを否定した。
「被害者だなんてとんでもない!ポケモンはあそこまで強くなれるのだと感激しました!あ、ソニア博士!お客様です!」
「…私のファンなんていたんですね」
「掲示板ではよく見るけど実際に会うのは初めて?」
「残念ながら記憶にはないですがね」
ユウリとムツキが駄弁っていると、奥からソニアさんが顔を出した。
「いらっしゃいみんな!」
「こちらは助手さんですか?」
「大正解!研究が忙しくなって最近から手伝ってもらってるの。ローズ委員長が集めていた大量のねがいぼし。今この研究所で預かってるんだけど…彼女がテキパキ整理してくれてね。すっごくデキる人で本当に助かってるのよ」
「いやいやそんな…私なんか、研究者になりたての子供ですよ…えへへ。チャンピオンのユウリさんと……蟲使いのラウラさん、ですよね?先程は失礼しました。お会いできて嬉しいです。これからよろしくお願いします!」
なんか俺の名前を言う時だけ怨念染みた視線を感じたが気のせいだろうか。
「ちょっと来てよ!見てもらいたいものがあるんだ」
そう言って奥に案内するソニアさん。ルミの視線の理由が気になったが、今は気にしないことにした。
「パワースポット探しマシーンって覚えてる?ってユウリしか知らないか。これはね、ダイマックスできる場所…ガラル粒子が多い所に反応する装置なんだけど……ビンゴだわ。あいつらの近くにいた時何故か反応してたの!」
「つまり、パワースポット探しマシーンの反応を追えば奴らの居場所が分かると?」
「そう、シーソーコンビの居場所がね」
「シーソー?」
意味に気付いたのかぶふっと噴き出すムツキと、よくわかってない俺とユウリとモコウにソニアさんは説明してくれた。
「シルディとソッドの頭の文字を取ってシーソー……呼びやすくない?」
「ぶはっ!いいぞ、それ!我もそう呼ぶことにしよう!苦手意識がなくなりそうだ!」
「シーソー兄弟か。言いやすいな」
「だね。いちいちソッドとシルディって呼ばなくていいし」
「間抜けに聞こえるからなおよしです!」
好評なことに笑顔を浮かべたソニアさんはモニターに向き直り、スマホロトムを手に取る。
「そんなわけで!ガラルのいたるところに仕掛けたパワースポット探しマシーンに……アクセース!」
ダダダダダダダッ!とスマホロトムを怒涛の勢いで操作し始めるソニアさん。なんというか、シュールだ。
「わっ、予想以上の反応!場所は……ターフスタジアム!?」
「スタジアムはダイマックスできるから反応してもおかしくないじゃないです?」
「でもこれほどの数値は異常ではないか?」
「ムゲンダイナは…違いますね、ユウリの手元にいますし」
「シーソーコンビとなにか関係ありますかね」
「ユウリ!この騒ぎ…チャンピオンとして見過ごせないよね!ユウリ達のタウンマップでも粒子の反応を見れる様にしておいたから迷ったら見てね。いってらっしゃい」
「そらとぶタクシーより私の手持ちの方が速いです。行きましょう」
そして俺達はソニアさんの研究所から飛び去って行ったが、見送りに来てたルミの俺を睨む視線が何とも気になった。…俺、なんかしたかなあ。
ターフスタジアムにつくと、そこにはヤローさんとネズさんの姿が在った。
「お?君達は…おぉーチャンピオン!それにラウラさん、モコウさん、ムツキさん、来てくれたんですねえ」
「お久しぶりです」
「ネズさんまで…」
「珍しい組み合わせだな」
「なにかあったんです?」
「呑気な挨拶ですね。新しいチャンピオンはダイマックスより大物ですよ」
「実はネズさんとのエキシビジョンマッチの途中、トレーナー不明のダイマックスポケモンが乱入してきましてねえ」
「観客やスタッフたちを避難させていたんですよ」
するとポケモンの咆哮と共に、ホップが奥からやってきた。ホップがいるってことはつまり奴等もこの近くにいるってことか。
「北側の観客、全員避難終わったぞ!聞こえたと思うけどダイマックスはまだ暴れてる!」
「ホップさん助かりましたよ。さすがはジムチャレンジャー。頼りになりますねえ」
「セミファイナルトーナメントで敗退したけど…あ、みんな!お前たちも来たのか。青いのと赤いのを追っかけていたらターフスタジアムに入って行くのが見えてさ」
「シーソーコンビが?」
「シーソー?あー、シルディとソッドでシーソーか。ソニアが考えたのか?まあいいや、あとをつけたら突然こんな騒ぎになってほっとくわけにもいかないし手伝ってたんだ。だから…ごめん!アイツら見失っちまったぞ」
「暴れてるのは?」
「アマージョですが。手強い相手ですよ」
「じゃあ俺に任せろ。ヤローさん達は避難活動と原因の探求を頼む。どうせシーソーコンビの仕業だろ。草タイプなら俺一人で十分だ」
制止するヤローさんを振り切り、俺は1人でバトルコートに向かった。さて、暴れるか。
念のためデンチュラを出してからバトルコートに入ると、問答無用と言わんばかりに巨大な脚が迫って来て、咄嗟にデンチュラを背中にしがみ付かせて前に糸を伸ばして逃れる。見上げると、巨大な草の女王様の様なポケモン、アマージョが。すると無人のはずなのに声が聞こえてきた。
「あれれえ?四人を足止めするつもりで選んだポケモンだったのに、なんで一人なの?」
見上げると、無人の観客席に1人黒づくめの紳士が拍手しながら座っていた。糸を伸ばして観客席に上がると男…アルルカンは立ち上がり、ステッキを手に余裕たっぷりに佇んだ。下から見上げてるため金色の瞳がにやにやしながらこちらを見ているのが見えた。
「やあやあ。改めまして、僕はアルルカン。ソッドとシルディのお目付け役をしているよ。うちの二人がごめんね、僕は止めたんだけどね?」
「嘘を吐け薄気味悪い笑みを浮かべやがって。朽ちた盾を返せ」
「い・や・だ・ね。僕が見たい景色の為には必要なんだ。君は邪魔だけど潰すのは彼女がしたいって言ってたしなあ…ここはアマージョに任せて僕はおさらばしようかな」
「っ、待て!デンチュラ、いとをはく!」
「ヨノワール。ほのおのパンチ」
俺の背から降りたデンチュラに糸を伸ばして拘束しようと試みるが、ボールから繰り出されたヨノワールの炎を纏った手で掴まれ逆にこっちのデンチュラが炎上。
「バイバイ。せいぜい頑張って僕を楽しませてよね」
慌てて上着を脱いではためかせて火を消している間にアルルカンは捨て台詞を残してスキップで去って行った。この借りは何時か返すからなアルルカン!と決意していたら、頭上からアマージョが足を振り下ろしてきていて。咄嗟に黒焦げのデンチュラを背中に装着、糸を伸ばしてその場から逃れる。
「ユキハミ、こなゆき!マルヤクデ、キョダイマックスだ!」
スタジアム内を飛び回りながらこなゆきで牽制しつつ、空中を舞いながら手にしたボールを巨大化させて宙返りと共に投擲。キョダイマルヤクデを繰り出す。それでも俺という餌に襲いかかってくるアマージョから宙を舞って逃げつつ指示を出す。
「マルヤクデ!キョダイヒャッカ!」
火球が直撃し、ほのおのうずとなってアマージョを拘束。焼き尽くしていく。そして俺はデンチュラに空中で放してもらい、結構な高さだったのでユキハミを庇うように受け身を取りつつアマージョを見やる。
「決めろ!きゅうけつだ!」
そしてアマージョの顔面に糸を付けていたデンチュラの突撃が直撃、アマージョは目を回して崩れ落ちた。観客がいないから気にせずポケモン三匹に指示してバトルしたが、なんとかなったな。複数のポケモンに指示して戦うのは慣れて行きさえすれば損はない技術だ。上手く活用したいところだな。
「しかしあいつ…何が目的だ?ポケモン解放とか新世界創造とか海や陸を広げたりとかは目論んでなさそうだが」
気絶したアマージョを抱き上げながら思案する。…あのアルルカンというやつは、シーソーコンビと違って一筋縄じゃいかなそうだ。
巨大怪獣の激突の間で飛び回るスパイ●ーマンの図。
・ラウラ
なんだかルミに嫌われるような気がしてならない主人公。久々に大暴れできて満足だけどアルルカンに逃げられてもやもや。
・ユウリ
今回はモブ。ラウラと共にターフスタジアムに赴いたのち、ラウラが戦ってる間シーソーコンビと遭遇する。
・モコウ
シーソーコンビの血筋の分家。二人ほど自身の血に固執していない。ソニアの本の内容は素直に受け入れている。
・ムツキ
なんかルミに好かれて苦悩してる罵倒娘。マクワに負けるまでは野良トレーナー戦でやりたい放題だったため、その被害者であろうルミに何言っていいか分からない。その鬱憤を出てきたシーソーコンビで晴らした。
・ホップ
原作通り。ホップが避難させた後アルルカンは侵入した。
・ヤロー&ネズ
エキシビジョンマッチしていたジムリーダーたち。ラウラの強さをよく知っているコンビだったりする。
・ルミ
ソニアの助手をしている元ジムチャレンジャーで研究職志望(自称)。ムツキに敗北してジムチャレンジから挫折した1人であるがムツキの大ファン。何故かラウラを目の敵にしている。
・アルルカン
根っからの傍観者な道化師でソッドとシルディのお目付け役。ガラルマタドガス、バリコオル、ヨノワール、あと一体が手持ち。
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