今回はユウリVSアルルカン。そして…?楽しんでいただけると幸いです。
「ハーハッハッハ!いいよいいよ、最高だ!」
アルルカンの嘲笑が辺りに響く。ラウラの落下する瞬間を見てしまったせいか目の光を失い激昂してムゲンダイナをアルルカンに向かわせるユウリ。
ユウリを置いてシルディに襲いかからんとするザマゼンタと、それから庇うように前に立つソッドの絶望に染まった顔。
ラウラが落下したことで分かりやすく狼狽し指示ができておらずバリコオルとヨノワールに押され、遂には手持ちを全て氷漬けにされたホップとネズ、立ち尽くすソニア。
その全ての顔が、アルルカンを満足させる。これから自分は殺人で捕まるだろうが関係ない。最高の光景を見られたのだから満足だ。
「よくもラウラをッッ!!!」
「そんな怒りに任せた突撃なんて当たる筈ないけどね。戻っておいで。バリコオル、サイコキネシス。ヨノワールはユウリにシャドーパンチ」
ムゲンダイナの突撃を、ヒョイヒョイと避けながらヨノワールとバリコオルを一度ボールに戻してから繰り出し、サイコキネシスでムゲンダイナをその場に縫い止め、影の拳がユウリを殴りつけて吹き飛ばす。殴り飛ばされたユウリは何とか立ち上がりながら、ボールを五個取り出して全ての手持ちを繰り出した。
「っ…お願い、みんなも力を貸して!」
「げんきのかけらだよ、もう一度働いておいで。オーベム、いわなだれ」
ボールから再び出したマタドガスにげんきのかけらを与え、さらにオーベムにいわなだれで壁を作るアルルカンになにをしようとするのか気付いたユウリが慌てて手持ちを戻そうとしたその瞬間、大爆発が再び屋上の一角を襲った。
「マタドガス、だいばくはつ」
「っ………みんな!?」
アーマーガアとセキタンザンが盾になってくれたことで何とか無事に済んだが、繰り出していたインテレオン、アーマーガア、ダーテング、セキタンザン、ストリンダー、ムゲンダイナは全て瀕死。怒りに駆られた己の行動が引き起こした惨劇に顔を青くするユウリ。それを見てさらに上機嫌になったアルルカンはリフレクターでほぼ無事に済んだヨノワールとバリコオルを侍らせ、にやにやと笑みを浮かべた。
「君は僕のオーベムを倒すことに集中するだけでよかった。なのに、僕を狙うもんだから付け入る隙が生まれた。ラウラの方がまだ冷静だったかな?」
「お前がラウラを語るなあぁあああ!」
殴りかかるユウリを、拳の一撃で跪かせるヨノワール。蹲ったユウリを蹴り飛ばしながら、ソッドとシルディに近づくアルルカン。オーベムに言って紙一重でザマゼンタを止めながら、悪辣な笑みを浮かべた顔を二人に近づけた。
「さて、これで君達を守るものは僕のオーベムしかいなくなったわけだけど」
「あ、アルルカン!後生だ!やめてくれ!」
「わ、我は死にたくない!」
「うーん、いい顔だ。でも物足りないよね!死にゆく瞬間のいい顔を僕に見せておくれよ!」
その時だった。ザマゼンタが凍り付き、同時にアルルカンの笑みも凍り付いたのは。
「…………は?」
理解できない、とでも言いたげな表情で振り返る。力なくユウリもそちらに視線を向け、満面の笑みを浮かべる。お通夜の空気だったホップ達も同様だ。
「地獄から戻って来てやったぞアルルカン」
そこには。街の光に照らされる夜空に浮かぶのは、白い翅を背中から生やし、麦わら帽子を失った赤い長髪をなびかせるラウラだった。
真夜中のナックルシティを眼下に見ながら思考する。デンチュラは瀕死。テッカニンも瀕死。げんきのかけらを与えようにもどちらも屋上だ。高速で迫る街並みに、死を覚悟する。…二度目の人生、楽しかったなあ。……………って、まだ、死ねない!だいばくはつなんかでやられてしまった皆を幻視する。デンチュラ、テッカニン、オニシズクモ、マルヤクデ、ドラピオン。それにボックスに預けているイワパレス。
「……あいつらを置いて死ねるかァアアアアアアアアッ!」
そんな俺の叫びに応えるように、頭上が光り輝き、急激な浮遊感に襲われる。何故か空気も凍えてきた。背中を見やると、そこには美しい白の蟲ポケモンがいた。
「お前は…モスノウ!」
ロトム図鑑で名前と技を確認し、ユキハミが進化したポケモンだと確信する。これなら、行ける!
「頼むモスノウ!俺を上に!」
屋上まで戻ってみると、ザマゼンタがシーソーコンビを今にも襲おうとしていたところだったので「れいとうビーム」と指示して氷漬けにして阻止。見ればユウリやその手持ちもボロボロだ。そのお礼も兼ねて、俺の存在に気付いて振り向いたアルルカンに言ってやる。
「地獄から戻って来てやったぞアルルカン」
「そ、そんな馬鹿な!?確かに殺したはずだ!この高さから落ちて無事なはずが…まさか、ユキハミか!?」
「そのまさかだ!進化条件は知らないが、この土壇場で進化したのさ!覚悟しやがれ!」
モスノウの冷気に当てられてか、あられが降ってきた。このチャンス、活かすしかないよなあ!
「ヨノワール、ほのおのパンチだ!」
「ちょうのまい、からのふぶきだ!」
モスノウから離れて屋上に受け身して着地しながら指示。超火力でしかも必中のふぶきが炸裂。ヨノワールとオーベムを氷漬けにする。進化した時に技も一新されていた。残りはこおりタイプ故に氷漬けにならなかったバリコオルだけだ。このままいくぞ!
「っ、バリコオル!こおりのつぶて!」
「むしのさざめき!」
翅の羽ばたきによる衝撃波が氷の礫を破壊しながらバリコオルを撃ち抜き、戦闘不能にする。ザマゼンタの洗脳もこれで解けただろうし、こおりなおしで氷漬けを治しておく。
「お前の手持ちは全部倒した。観念しろアルルカン」
「…やだね!僕は負けてないさ!ヨノワール!」
瞬間、氷を破って出てきてアルルカンの前に立ち塞がるヨノワール。ほのおのパンチで氷漬けを回避していたのか。
「こうなったら、君達の顔が見れなくなるのは残念だけど切札を使おうか。ヨノワール、シャドーボール」
指示を受けるなり、胴体の口(?)を開いて闇の球体を作り上げるヨノワール。すると徐々に周りの空気が吸い込まれ始め、咄嗟に蹲っていたユウリが吸い込まれそうになるのを掴んで止める。これは、シャドーボールじゃない…!?
「ヨノワールは人や行き場の無い魂を霊界に連れて行く、この世とあの世を行ったり来たり出来るポケモンさ!このシャドーボールに吸い込まれたら最後…、ヒャハハハハハ!どこに行くんだろうね?!」
「くっそ…何とか塞げ!ふぶきだ!」
羽ばたいて吸い込まれないようにしているモスノウに指示してみるも、吹雪も吸い込まれて行き意味がない。俺の小さな体で踏ん張るのもさすがに限界だし、このままだと横たわったままの瀕死のポケモン達も吸い込まれてしまう。なんとかしないと不味い…!
「も、戻れ!」
「みんなも…!」
なんとかユウリと一緒にモスノウ以外のみんなをボールに戻すが、俺達はどうしようもない。ザマゼンタも疲労していて吸い込まれないようにするので限界みたいだし、他の人間も同上だ。アルルカンだけヨノワールの背後でニヤニヤ笑っている。これ以上は本当にやばい…!?
「ウルォーード!!」
今にも吸い込まれそうな、その時だった。空からザシアンが飛来、ヨノワールに体当たりしてその向きを変えたのは。
「あ」
何か言おうとしたものの、何が起きたか理解できていない呆けた顔を最期に何の抵抗も無くアルルカンは自分のポケモンによって暗い穴へと吸い込まれていった。慌てて腹部の口を閉じるヨノワールだったが、もう遅い。その場には戦闘不能で倒れているバリコオルとマタドガス、氷漬けのオーベム、狼狽えているヨノワールだけが残された。
因果応報。自業自得。変に退場する時間とか与えたら自分の末路さえ楽しむ変態にはこれが一番の末路でした。
・ラウラ
モスノウの助けを借りて再臨。イメージは完全にキャタピーがバタフリーに進化したポケスペのイエロー。ユウリからは妖精に見えたとかなんとか。背中の火傷をモスノウに冷やしてもらった。
・ユウリ
激昂してアルルカンに直接攻撃したものの手玉に取られたチャンピオン。ラウラが戻ってきた途端元気を取り戻した。ヨノワールに殴られているため割と重症な上に手持ちも全滅とピンチ。
・ホップ&ネズ
ラウラの落下に動揺してバリコオルに手持ちを氷漬けにされた。
・ソッド&シルディ
ギリギリラウラに助けられる。完全に蚊帳の外。
・ザマゼンタ
氷漬けにされて止められ、こおりなおしで復帰した盾の英雄。地味にソッドとシルディが吸い込まれないように盾になっていたイケメン。
・ザシアン
ピンチに到着。アルルカンに救い無しと断じて実行した。
・アルルカン
暴れるだけ暴れてあの世に吸い込まれていった外道。わざわざげんきのかけらで復活させた相棒をもう一度大爆発させたり、トレーナーにダイレクトアタックしたりやりたい放題だった。
・モスノウ♂
とくせい:りんぷん
わざ:れいとうビーム
ふぶき
ちょうのまい
むしのさざめき
もちもの:やすらぎのすず
備考:おとなしい性格。イタズラが好き。夜だったこと、命懸けで守られたことが起因し条件を達成して進化した。こおりわざの威力が伝説ポケモンすら凍らせる程に強力。ラウラくらいの子供だったら一人持ち上げて飛ぶことも可能。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。