今回はVSマスタード。楽しんでいただけると幸いです。
「あらーそれじゃあ新人ちゃん達、帰っちゃったの?」
「そうッポイですゥ。お迎えはちゃんとしたんですけどォ。私との勝負の後、突然いなくなっちゃってェ…」
「せっかく家族が増えると思っていたのに残念ねぇ」
マスター道場と思われる建物に着くと、クララさんと黄緑色の服を着た女性が話し合っているところに出くわした。あることないこと言ってんな。すると女性の方が視線をこちらに向けて気付いたようなので会釈する。
「あら?」
「どうも」
「こんにちは」
「悪いなクララ殿」
「ん…?えげェ!?」
凄い顔で驚くクララさん。本当にあれで帰ると思っていたのだろうか。
「もしかしてあんた達が今日から道場に来てくれる新人ちゃんたちね?」
「そそそそうなんですゥ!やったァ!?この子達ったら!気が変わったのォ?んでもでも!また会えてクララとォーってもうれしィー!」
慌てて駆け寄ってきたクララさんに一瞬睨まれながらも肩を竦める。怖いが命の危機を二度ほど感じている身としてはそこまで怖くない。
「あたしも会えて嬉しいよ。ええっと、あんたたちの名前は確か…」
「今日からお世話になるユウリです」
「ラウラです」
「我はモコウだ」
「うんうん、ユウリちゃんにラウラちゃんにモコウちゃんだね。あたしはここ、マスター道場でおかみさんやってるミツバだよ。気軽におかみさんって呼んどくれ。もう知ってると思うけどこのちょっと変なのはクララ。ジムリーダー目指してうちで修行してるのさ」
「ジムリーダーか。俺と同じだな」
「同じ?」
「今はほのおタイプのジムトレーナーをやっているがむしタイプのジムリーダーを目指しているところだ。よろしくな、先輩」
「今度バトルしようね、先輩!」
「よろしく頼むぞ、先輩」
「お、おう…よろしく…?」
「ほらっ!クララ、仲よくするんだよ」
「キャハッ!よろしくねェ!」
俺の差し出した握手に戸惑いながらも握り返し、ユウリとモコウの挨拶にもたどたどしく応える様から押しに弱いことが分かる。最後はヤケクソな笑みでの叫びだった。癖が強い先輩だ。…胸も大きくて太腿も眩しい。男のままだったらちょっと危なかったかもしれない、いろんな意味で。蟲好きでもそこらへんは思春期真っ盛りで死んだからな…。
「あっ、やだよあたしったら。遠くからいらしたお客様をいつまでも外にいさせちゃって!ちょっと汗臭いかもだけど、どうぞ中に入って入って!」
そう言って建物内に入って行くおかみさん。するとそれに続こうとした俺達にクララさんが歩み寄って来て。
「ねえねえ三人とも。駅でのこと……おかみさんにチクったら……ジュワッ!だからね!」
「駅でのことってなんのことです?」
「ええと、はい、わかりました?」
「まあめんどくさそうだし言う気もないが」
…まあ、できるならやってみるといいんだろうけど、多分ユウリが返り討ちにしそうだなと俺はモコウと顔を見合わせて思った。
マスター道場は和風の建築で、イギリスに近い印象のガラル地方とは思えない造りでちょっと新鮮で懐かしさを感じる。中に入ると掛け軸やら板の床やらまた和風で、思わず感嘆の声が漏れた。ユウリとモコウも珍しさからキョロキョロしてる。印象としてはジョウト地方に近いな、ジョウト出身の人が作ったのだろうか。中心のちょっとしたバトルフィールドになっている場所には黄色い道着に身を包んだ10人近くのトレーナーがいて、その奥には老人がいた。彼が師範かな?
「みんな聞いてー!新人ちゃんたちの紹介だよ!これからみんなと一緒に修行に励む、ユウリちゃん、ラウラちゃん、モコウちゃんだよ!よろしくね!」
「「「よろしくお願いします」」」
「「「「「オッス!よろしくお願いしまッス!」」」」」
おお、武道家の挨拶っぽい。ちょっと感動した。
「みんな真面目で努力家の門下生ばかりだよ。そして奥の男前があたしのダーリンでここマスター道場の師匠」
「ワシちゃんマスタード!ポケモンめっちゃ強いよん!これからよろぴくねー!」
「「「だ、ダーリン!?」」」
ファイティングポーズをとる老人、マスタード師。ものすごい年の差婚なのな。そして思ってたより軽い。なんか厳粛とかそんな感じだと思ってた。これには俺達三人は絶句である。……いや、こんな口調の人がマジで強いのか世の常だからなあ。底が知れないぞ。
「「「よ、よろぴく…?」」」
「うふふ。優しくていい子たちだねー」
「普段ボケーっとしてるけど本気出したら凄い人だから」
「なんとなく、わかります」
「うん、戦いたい!」
「ユウリ落ち着け。ムゲンダイナの入ったプレミアボール握るなここを壊す気か」
「元気でいいねー」
戦う気満々のユウリを押さえつける俺達を笑顔で見るマスタード師の瞳がきらりと輝いた気がした。…あー、ユウリの手持ちの強さに気付いたっぽい?どんな観察眼だ。
「それじゃダーリン。後は頼んだよ」
「いえーい!とりあえずチミたちの力を見てみたいしー…手始めに真ん中のチミ」
「はい、私ですか?!」
「手始めにワシちゃんとポケモン勝負しちゃおーか!2VS2だよ。準備できたら声かけてねん」
テンション高めのユウリが選ばれ意気揚々とフィールドに向かったので一応モコウと一緒に釘を刺しておく。
「おいユウリ、ちょっと待て」
「ムゲンダイナとザシアンだけは出すなよ?」
「なんで?」
「「ここが壊れる」」
ダイマックスほうやきょじゅうざんの前に、技の出力が高すぎてこの大きさじゃ普通にぶっ壊れる。それに気付いたのか顔を青くして頷くユウリ。修行場所をいきなり壊すのはさすがにな。俺に四つのボールを預け、ボールを二つ握りしめてマスタード師とは反対側に立つユウリ。その顔はチャンピオンのそれだ。
「準備できました!」
「いえーい!勝負の準備はオーケイ?じゃ、始めちゃおー!チミのこと、いっぱい教えてねー!」
▽どうじょうぬしの マスタードが 勝負を しかけてきた!
「いえーい!チミのサイコーの戦い方を見せてちょーだいね!」
「そのつもりです!」
ユウリが繰り出したのは相棒のインテレオン。マスタード師が繰り出したのはBWが初出、ぶじゅつポケモンのコジョフーだ。ガラル本土にはいないポケモンにワクワクしている様子のユウリ。
「「とんぼがえり!」」
全く同時に同じ指示を出す両者。蹴りが交差し、それぞれ戻っていく。
「ありゃりゃー、渋い技を選ぶねえ」
「そちらこそ!」
ユウリが交代したのはダーテング。マスタード師はダイヤモンド&パール初出のせんこうポケモンのコリンクだ。ユウリはぼうふうを使えるダーテングに替えたかった、マスタード師は相性で有利を取れるコリンクに替えたかったってところか。
「スパークだよん」
「ねこだまし!」
お得意のねこだましが炸裂。怯ませて技を不発させるダーテング。驚きに目を見開くマスタード師にお構いなく、ユウリは自分の得意を相手にぶつけた。
「リーフブレード!」
強烈な一撃が炸裂。崩れ落ちるコリンクをボールに戻して再びコジョフーを繰り出すマスタード師。どうも本気じゃない空気がするんだよなあ。
「ねこだましだよん」
「なっ!?」
完全に虚を突かれてねこだましで怯むダーテング。まさか自分以外にねこだましを使ってくるトレーナーがいるとは思わなかったのか完全に呆気にとられるユウリ。
「そのまま、はっけい!」
「ダーテング!?」
なんて威力のはっけいだ。あのダーテングを効果抜群とはいえ一撃で落としてしまった上に壁まで殴り飛ばしてしまった。マスタード師、もしやかくとうタイプの使い手だな?
「期待以上だけどこんなもんじゃないよねー?はっけい」
「インテレオン、床にみずのはどう!」
ユウリのインテレオンお得意のみずのはどうの応用でなみのりの様な津波がコジョフーを怯ませる。その隙にコジョフーの視界から外れたインテレオンが背後から迫り、マスタード師の叫びが木霊した。
「後ろだよ!はっけい!」
「ふいうち!」
完全に誘い込んだインテレオンのふいうちが炸裂。コジョフーは戦闘不能となった。驚いた様子で髭を撫でながらコジョフーをボールに戻すマスタード師は笑顔を浮かべ、どよめくギャラリー。俺とモコウは当然だと言わんばかりに胸を張る。俺達の認めたチャンピオンが負けてたまるかよ。
「やった、やったよラウラ!」
「わかった、わかったからくっつくな!」
「相変わらず仲いいなお前ら」
喜びのままに抱き着いてくるユウリに何時ものことなので溜め息を吐く。…死んでいたかもしれないと泣かれてから、どうもあの時の顔が浮かんで引き剥がせない。どうしたものかね。
VSマスタード。ラウラが戦うとは言ってない。
・ラウラ
マスタードが格闘使いだと見抜いた主人公。デンチュラ一匹じゃさすがにきつそうだと思ったので選ばれたのがユウリで一安心した。ガラル本島以外のポケモン知識は勉強したで通している。
・ユウリ
言われなかったら伝説ポケモンを繰り出して文字通り本気で挑もうとしていたチャンピオン。いつも屋外だったりコートだったりなので屋内のバトルは慣れてない。まさかねこだましは使わないだろうという、知らない故の油断からダーテングを倒されてしまった。
・モコウ
ツッコミ役。マスタードのコリンクをでんきタイプだと見抜き興味津々。
・クララ
追い返したと思ったらジムリーダーを目指す後輩が出来てちょっと理解が追い付かない。ユウリの実力に絶句した。
・マスタード
マスター道場の師匠。ひょうきんだがラウラ曰くこういう輩の方が本当に強い(アルルカンを除く)。ねこだましを隠してとんぼがえりを使うなど中々のやり手。
・ミツバ
おかみさん。マスタードの奥さん。ハイドという息子がいる。
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