今回はVSカブ。では、楽しんでいただけると幸いです。
ついに戻ってきたエンジンシティ。実家に寄って旅で疲れた体を癒すついでに、テッカニンとオニシズクモを両親に見せると何とも微妙な顔となった。解せぬ。やっぱりチャンピオンに勝って証明するしかないのか。
ところで、ガラル地方は基本的に寒冷な地方だから、虫使いの代名詞「むしとりしょうねん」がいない。短パン小僧はいても、割とシリーズ常駐だったむしとりしょうねんはいないのだ。つまりどういうことかというと…むしとりしょうねんリスペクトの麦わら帽子は、凄い目立つ。超目立つ。頭上にバチュルを乗せていたら猶更だ。昔から住んでた街だというのに、ひそひそと俺を指差しながら噂話する人間ばかり。……邪魔な髪を纏めるために被ってるけど、もういらないかもしれないなあ。
そんなことを思いながら早朝の街並みを抜け、やってきたのは開会式も行われたエンジンスタジアム。ポケモンの捕獲でポイントを稼ぐという珍しいジムミッションだ。5ポイント稼ぐとクリアで、捕まえると2ポイント、倒すと1ポイントだというので、ジムトレーナーの妨害を受けながらしょうがなく好みじゃないロコンやヒトモシといったほのおポケモンを捕まえていると、運命の出会いがあった。
ヤクデ。はつねつポケモン。とくせい:もらいびもしくはしろいけむり。名の通りヤスデの様なほのお・むしタイプのポケモン。見つけるなり、妨害のジムトレーナーをオニシズクモで一撃で沈めて、持ってるネットボールを総動員。無傷でゲットすることに成功した。生息地である3番道路で見つけられなかったので半ば諦めていたポケモンだった。カブさん、俺はアンタに何度ありがとうと言えばいいんだ。
麦わら帽子を外したむしタイプのユニフォーム姿でスタジアムの選手入場口に立ち、乱れた髪を整えていると、横に気配が。そちらに顔を向けると、深呼吸しているカブさんがいた。
「カブさん」
「やあ。ぼくの期待に応えてよくここまできたね、ラウラ。ダイマックスなしであの二人をしりぞけるなんてやるじゃないか」
「いえ、私もまだまだです。憧れのカブさんに勝てるかどうかも、わからない」
話しながらコートの真ん中に辿り着き、向かい合う俺達。背番号187。いつまでも燃える男、カブさん。間違いなく強敵だ。
「ここからは知り合いのおじさんではなく、ジムリーダーとして話させてもらうよ。どのトレーナーもどのポケモンも勝つためにトレーニングしているだろう!だが戦う相手も同じように努力している!勝負の分かれ目は本番でどれだけ実力を出せるかだ!」
「ああ、私…いや、俺達の努力を見せてやりますよ、カブさん!」
幼少期、まだジムリーダーのことを知らなかった俺が街中で遊んでた時に出会った、優しいおじさん。それがカブさんだ。むしが好きな俺を邪険にせず接してくれた大人であるカブさんは貴重な存在で、マルヤクデを見せてもらったり、バトルを見せてもらったりした。ジムチャレンジに挑むと決心した時には推薦状もくれた。紛れもない恩人だ。だからその恩に報いるためにも、勝利してみせる!
『本日のエンジンスタジアム第一の挑戦者は、背番号064!ジムチャレンジャーの風雲児!ラウラ選手!対するはジムリーダー、カブ!3VS3のシングルバトルです!』
▽ジムリーダーの カブが 勝負を しかけてきた!
「いけ、テッカニン!」
「いってこい、キュウコン!」
野球の投球フォームの様な投げ方で繰り出されたのは、キュウコン。対して俺はいつものテッカニンだ。そして、カブさんなら初手は必ず…
「バトンタッチ」
「おにび…むっ!?」
初手やけどを負わせてくる。分かっていて対策しない筈がない。バトンタッチで交代したのはオニシズクモ。すいほうのとくせいでやけどにはならない。
「一気にたたみかけろ!アクアブレイク!」
「ならば、ほのおのうず!」
打点がないためか、拘束するためにほのおのうずを繰り出してくるカブさん。鈍足なのが祟ってほのおのうずを喰らいながらアクアブレイクをキュウコンに叩き込み戦闘不能にする。だが、オニシズクモを包み込むほのおのうずでじわじわとダメージを与えられる。不味い、オニシズクモを倒されたら俺の手持ちじゃきつすぎる。
「次だ、ウインディ!」
「ほのおのうずを掻き消せ!地面にアクアブレイク!」
地面にアクアブレイクを叩きつけて水飛沫を上げさせ、ほのおのうずを消火していると、いつの間にか接近していたウインディが口を大きく開く。
「かみつく!」
「なっ!?」
指示されたのは、効果がいまいちのあくタイプのわざ。なんでだ?と思った直後、カブさんが不敵な笑みを浮かべた。
「そのまま…かえんぐるまだ!」
「ッ、バブルこうせんで怯ませろ!」
足にかみついたまま、そのまま炎を纏ってグルグル縦に回り大車輪の如くオニシズクモを何度もフィールドに叩きつけていくウインディ。何とかバブルこうせんを放って怯んだところを脱出できたが、軽くはないダメージを負ってしまった。そんな戦い方があるなんて…
「とどめだ、かえんぐるま!」
「っ、交代だ。バチュル!エレキネット!」
とどめを刺される直前に、バチュルに交代。突っ込んでくるウインディ目掛けてエレキネットを放たせる。エレキネットに見事絡まったウインディは電流に痺れて動きが止まり、それを好機だと直感した。
「こうそくいどうで周りを走りつつ、いとをはくだ!」
「こっちもこうそくいどうで振りほどくんだ!」
どちらもこうそくいどうを選択。こちらは糸を吐きながら縦横無尽に駆け巡り、ウインディはそれに引っかかりつつも勢いで振りほどいて行くが、それでも絡まりスピードが遅くなっていく。
「かえんぐるま!」
「っ!?」
こうそくいどうしながら炎を纏い回転、こうそくいどうしていたバチュルと激突、戦闘不能になってしまう。スピードを利用して当てるとは。さすがカブさんだ。だけど、ウインディの持ち味であるスピードを奪ってくれた。
「よくやったバチュル。後は任せてくれ。交代だ、テッカニン!ウインディの動きを警戒しつつ、つるぎのまい、連続だ!」
今がチャンスだ。スピードが遅くなった今のウインディにテッカニンが捉え切れるわけがない。つるぎのまいをひたすら積む。二回積み、かそくですばやさも二段階上げる。
「こうそくいどうで追い縋れ!」
「遅い!バトンタッチ!」
ここだ、こうそくいどうで突っ込んでくる瞬間。交代したのはもちろんオニシズクモ。真っ直ぐ突っ込んでくるウインディに、避けようのない一撃が叩き込まれる。
「アクアブレイクだ!」
「っ…ここまでとは。あの小さかった少女が…強くなったものだ。カブよ頭を燃やせ!動かせ!勝てる道筋を探すんだ!」
頬を叩き、気合いを込めて次のボールを構えるカブさん。俺も、ボールを構える。別にダイマックスを使わないのはポリシーではない。大きくならなくても虫は強いのだ。だがしかし、相手も虫だ。むしポケモンの使い手だ。そしてなにより、姿も変わるキョダイマックスだ。ならばこちらも、全力で挑まねばなるまい!
「マルヤクデ、燃え盛れ!キョダイマックスで姿も変えろ!」
「今回ばかりは全力だ!行くぞオニシズクモ、ダイマックス!」
俺はボールにオニシズクモを戻し、カブさんと共に同時にボールを巨大化させ、背後に投擲。ワイルドエリアでも見た、オニシズクモの巨大な姿が目に入る。カマキラス、クモンガ…生前に見た特撮怪獣を思い出すフォルム。ああ、お前は何てかっこいいんだ、美しいんだ、最高だ!対してカブさんはまるで東洋の龍の様に姿を変えた、こちらもまたあまりにも長大な美しい姿のキョダイマルヤクデを侍らせる。ああ、最高だ。こんな戦いを、俺は望んでいた!
「同じ虫好きとして、負けられない!オニシズクモ!アクアブレイクのダイストリームだ!」
「炎は上に燃え上がる!僕らも上を目指す!わかるね!マルヤクデ!キョダイヒャッカだ!」
長い身体を波状に折り畳み、高温の腹部を一斉に向けて放たれる高温の火炎と、オニシズクモのすいほうに包まれた頭部から放たれた水流が激突。ほのおのうずの効果があろうが、関係ない。テッカニンの渡した火力で、押し切る!
「いっけええええええええええ!」
俺の雄叫びと共に、せめぎ合っていた炎と水が、わずかに水が上回り炎を飲み込んでマルヤクデに炸裂。大きな水の渦が発生し、その巨体を押し流す。
「…俺の、勝ちだ」
「ああ。そして僕の敗北だ」
勝ったん、だな。あの、カブさんに。ジムチャレンジの登竜門にしてむしタイプ使いの関門、ほのおジムに、俺は勝ったんだ!激闘を制した俺は、あまりの喜びに感動に打ち震えるのだった。
ラウラ、ジム戦での初ダイマックス。カブさんはそれだけの相手。
・ラウラ
両親との仲はそれなり。麦わら帽子はむしとりしょうねんをリスペクトしている。ジムチャレンジ前はエンジンシティで変人として有名だった。カブさんとキョダイマルヤクデが大好き。
・ヤクデ♀
とくせい:しろいけむり
わざ:ひのこ
えんまく
まきつく
むしくい
もちもの:なし
備考:うっかりやな性格。暴れることが好き。…実はカブがラウラのために誂えた特別なポケモン。
・カブ
ほのおタイプのジムリーダー。ラウラとは近所の優しいおじさんと子供といった関係。ラウラならできると信じて推薦状をあげた。相棒のマルヤクデを好いてくれるラウラを気に入っている。手加減なく全力で戦い、負けたことに満足した。
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