今回はVSダクマ。型を決めるための戦い。楽しんでいただけると幸いです。
サタリアを親御さんに送って翌日のこと。絶景巡りとダクマの修行を続けていた俺達は、腹ごしらえにキャンプしていた。たまにはカレー以外も食べたいと思うがユウリがなんでもかんでもカレーにぶちこむのでそれは叶わない。
「うん、カレーは最高だね!」
「さすがに連日カレーは飽きるぞ…」
「ダイスープが今や恋しい…」
カレー狂、否。カレー教信者のユウリはともかく、この一週間ほどの旅ずっとカレー三昧はさすがに飽きる。しかしあの戦いから一週間か。ハッサムとカイロスも増えて、モコウもジバコイルが増えて、ユウリのダクマも強くなって、まあ成長したんだろうか。そう、モコウの背中の包帯を替えながら考える。
「痛くないか?」
「できれば泣きたいほど痛い」
「すごいきずぐすりでも完治しないって酷い傷だね。痕が残るかも?」
「サタリアを守った名誉の傷だ、甘んじて受け入れよう。でんきタイプのユニフォームは厚手だから目立つこともあるまい」
そうなのだ。昨日、クリムガンからサタリアを守るために背中で受けた爪による切り傷が、三本の筋の様な痕としてモコウの背中に残ってしまった。すごいきずぐすりを総動員したのだが、手当てするのが遅かったらしい。
「そう気にするなラウラ。お前たちと違って我が弱かったから受けた傷だ。お前が気にすることでないわ。そうだ、あのクリムガンはどうしたんだ?」
「一応麻痺させといてサタリアに聞いた洞穴に置いて来たよ。ルミならともかく、お前の趣味でもないだろう?」
「そんな強いクリムガン、ちょっと欲しかったなあ」
「「ヤメロ」」
これ以上ユウリが強くなってたまるか。…いや、強くなるためにダクマを修行中だったか。そういや、そろそろ完全に懐いて来たんじゃないか?
「ユウリ、そろそろマスタード師の言っていた条件を達成できたんじゃないか?」
「うーん、そうかな?ダクマ、どうかな?」
ユウリの問いかけに、べあーま!とぐっと親指を立てるダクマ。仲良しだなお前ら。モコウも背中越しにその様子を見て笑っている。
「じゃあ私とダクマ、マスター道場に戻って師匠に話してくるから、ラウラ達はここで待ってて」
ザシアンを繰り出してその背の上にダクマと一緒に跨りながらそう笑うユウリ。………古今東西、伝説ポケモンをタクシー代わりにするトレーナーはお前だけだろうよ。モコウと共に呆れた顔でユウリを見送った。
「だからな。デンチュラをフルに活用するのにエレキネットは必須の技で…」
「うむ、それはわかるが最近持て余していないか?きゅうけつ、いとをはく、ほうでん、エレキネットの構成で変えるべきだとしたらきゅうけつかエレキネットだろう?」
「今がベストな技構成だと思うがなあ」
「お前はどんな状況でも対応しようとして器用貧乏になりがちだぞ」
「ただいま!」
でんきのエキスパートであるモコウとデンチュラの技構成について話していると、今度はムゲンダイナに乗ってユウリが戻ってきた。だからお前な…まあいいや、気にしないでおこう。
「どうだった?」
「もっと強くなりたいなら、双拳の塔に挑めってさ」
「双拳の塔?ってあれか?時々見えていたあの二つの塔か」
「青い塔と赤い塔か。アレに挑むのか?二つとも?」
「水の塔と悪の塔だって。登れるのはどちらか一つの塔だけで、選んだ塔でダクマの格闘の型というかタイプが決まるんだって。どっちがいいと思う?」
二種類のタイプに進化するポケモンってことか?それともまったく別のポケモンになるのかな?ケムッソみたいだな。アゲハントもドクケイルもいいんだよなあ…
「水の拳とかなんでも受け流しそうで強そうだな」
「悪の拳はなんか、一撃が重そうだ」
「迷うよね…」
うんうんと三人して悩む。生前、ポケスペで読んだことがある。つまり水とは「柔の奥義」で悪とは「剛の奥義」ということだろう。俺としては水だな。印象として、どんな相手にも対応できるんだろう。みずのはどうを扱うユウリとも相性がよさそうだ。逆にモコウは一撃の強さに重きを置いている。悪の拳の方を推しそうだ。肝心のユウリはどうだろう。
「ユウリのバトルスタイル的にはどうなんだ?」
「どっちもいいよね!」
「だよなあ」
「お前、なんでもできるからな…」
ユウリは言っちゃあなんだがオールマイティだ。俺みたいなテクニックで力の差を補うタイプとも、モコウの様に速攻で仕留めるタイプとも、ムツキの様なレベルでごり押しするタイプとも、ナグサの様な防御に重きを置いたタイプとも、ルミの様なポケモンの長所を引き出すタイプとも、どれとも違い、どれでもある。それがユウリだ。器用万能と言うのか、とにかく苦手がない。あえて言うならルミが一番近いか…そのポケモンの一番得意なスタイルを引き出して使いこなすのだ。水の拳と悪の拳。どっちでも、ユウリは使いこなすだろう。
「となると…」
「このダクマがどっちのスタイルか、になるな」
「そうだね。ダクマ、いける?」
べあーま!と力強く頷くダクマ。俺はハッサムを繰り出す。模擬戦だ。モコウは休ませるとして、まずは悪の拳…剛の拳で行くか。俺のハッサムとカイロスがこのタイプだ。自分の強みを相手に押し付ける。それが剛の奥義…だったはずだ。
「エアスラッシュ!」
「ダクマ、避けてつばめがえし!」
放たれた風の刃を、構えたまま横に避けて返しの蹴りを繰り出すダクマ。その動きに、柔の動きを見る。ふむ。相手の技を利用して強烈な一撃を返すのが柔の奥義、だったはずだ。
「こうそくいどうからのバレットパンチだ」
「そのまま真正面にほのおのパンチ!」
高速移動で接近し、音速の拳を繰り出すハッサム。対してダクマは臆さずその場で拳を振るい、クロスカウンターが決まり、ハッサムは殴り飛ばされる。今度は剛の動きか。才能の塊と言うのも考え物だな!
「交代、カイロス!やまあらし!」
「避けてビルドアップ、からのかわらわり!」
カイロスの豪快な突進を、飛び箱の様に避けて着地。気合いを溜めて能力を上げ、手刀を大地に叩き込み地割れを生むダクマ。カイロスは跳躍してそれを避け、横からダクマを掴もうとする。
「あてみなげ!」
「つばめがえし!」
上手い。カイロスの勢いを利用した蹴りが鋏の間に炸裂、蹴り飛ばされるカイロス。なんというか、タイミングを読むのが上手い。ユウリの指示がなくとも相手の呼吸を読んでいるのか的確に利用してくる。これは…
「決まりだな」
「だね。決めるよ、ほのおのパンチ!」
ユウリと共に頷く。このダクマが本領を発揮できる型は決まりだ。あとは模擬戦とはいえ、決着をつけるのみ。炎を纏った拳を繰り出すべく、倒れているカイロスに接近するダクマ。だが、甘い!
「ハサミギロチン!」
ガバッと起き上がり、渾身の挟み込みがダクマに炸裂。カイロスがあれぐらいで弱ってたまるか。ダクマは何とか逃れようと鋏を掴んで足掻くが、そのまま力を込めて一撃必殺が決まった。
「俺の勝ちだ。リベンジ戦は塔の修行を終えた後でな」
「悔しいよね、ダクマ。もっと強くなってリベンジしよう」
弱々しく拳を合わせるダクマとユウリ。そのパートナーともいえる関係は、いいものであった。
そしてやってきた青い塔、水の塔。俺とモコウは外で待機し、ユウリはダクマ一匹だけで塔を制覇すべく登って行った。ユウリの手持ちはみんな俺が預かっているが、ムゲンダイナが気に入らないようでぶるぶるプレミアボールが震えていた。…こいつ、俺に負けたことをまだ認めてないらしい。やるか?と睨んでやると睨み返された。こいつとは仲良くできる気がしねえ。
「…お前ら、喧嘩はするなよ?」
「ムゲンダイナを出して決着付けてやってもいいんだがな?」
「やめろ、またブラックナイト起こす気か」
「お待たせ!本気の師匠強かった、楽しかった!」
ムゲンダイナと視線を交わしていると戻ってきたユウリに振り向く。そこには、見上げる程に大きくなったダクマの進化系と思われるポケモンがいた。
「ウーラオス、れんげきのかた だって!多撃必倒!水の流れの様に途切れることなく打撃を相手に叩き込むんだって」
「なるほど、だから水か」
「今更だがインテレオンと被るが、本当によかったのか?」
「そのポケモンの良さを引き出すのが一番だからね!」
そう笑うユウリは輝いていて。チャンピオンかくあるべしと実感した。
ポケスペ四章は良いぞ…
・ラウラ
生前読んだポケスペを参考にしてみたけど思ってたのと違って肩透かしな主人公。水の型と聞かれてまず思い浮かんだのは蜘蛛鬼一家が好みなため読んでいた鬼滅の刃の水の呼吸だったり。テクニックで力の差を埋めるスタイル。
・ユウリ
オールマイティにポケモンを使いこなす原作主人公。数多のポケモントレーナーと戦い、そのスタイルを物にしてポケモン達の良さを引き出す。師匠との対決はほのおのパンチを連打してやけどを負わせた上でフルボッコにした。
・モコウ
背中に傷跡が残ったでんき使い。自分が選ぶなら悪の型を選ぶと確信しているぐらいに「一撃」「速攻」に重きを置いている。デンチュラもとっこうフルアタにすればいいんじゃないかと思っている。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。