今回は豊穣の王登場。楽しんでいただけると幸いです。
逃げるダフネ。追いかけるデンチュラたち。モコウに言われて止めようか悩んでいると、突如ダフネが立ちどまり懐から取り出したボールを掲げた。
「もう勘弁してください!げんしのちから!」
そんな悲鳴にも近い声と共に繰り出されたのは化石ポケモンの一体であるアノプス。繰り出されたと同時にげんしのちからを発動し、デンチュラ達を一蹴してしまった。あまりにも強すぎるその実力に戦慄する。このアノプス、故意に進化していないが相当な練度だ。フーッ!と威嚇するダフネに、モコウが口を開く。
「…あの娘、ムツキの仲間か?」
「天才なのは間違いないと思うぞ」
「俺の妹はバトルも育てるのも天才だが、アゴジムシがデンヂムシに進化してから手持ちを進化させるのを嫌がってな」
「なるほどな」
ローレルの説明に納得する。アゴジムシはいいがデンヂムシは駄目だったって感じか。進化にトラウマを持つトレーナーも少なくないと聞く。なんか色々もったいないな。すると我に返ったようでオロオロしだすダフネ。
「あっ…ごめんなさい、ラウラさん。思わず手が…」
「こっちこそ悪かった。すぐ止めるべきだった。気にしなくていいぞ。お前らも何がそんなに気になるのか知らんがやりすぎだ」
コツッと軽くデンチュラを小突きながらそう言うと分かりやすく落ち込む俺のポケモン達。あの気難しいドラピオンでさえ懐くんだからすごい才能だと思うがな。
「俺は羨ましいがな。そこまで好かれて使いこなせるのに、なんでそんなに蟲を嫌うんだ?」
「普通、女の子なら蟲なんて嫌いで当り前です!」
ん?なんだろう、今の返答になにか違和感が。恐る恐るアノプスをボールに戻すダフネの様子から本気で蟲を嫌っているのは明白だ。だけどなにか、裏があるように感じた。
「ではいくぞダフネ!また修行し直しだ。ラウラ、まだここにはいるのか?」
「探し人がいるんだ。当分はここにいるかな。ムツキって言うんだが見つけたら教えてくれ。これ、俺のスマホロトムの番号だ」
「承知した。近いうちにまた再戦を申し込む!では達者でな!」
「おう、お前も風邪ひくなよ」
ダフネを引き連れて走って去って行くローレルを見送る。あの道着姿じゃすぐ風邪ひきそうだが。本当に大丈夫だろうか。…まあなんにしても、あの兄妹とは今度本気で戦いたいものだな。できれば俺の得意なシングルで。
「我らもさっさと行くぞ。フリーズ村の民宿でユウリとピオニーが待っている」
「は?なんでそこでさっきのおっさんの名前が出てくる?」
「宿を探していたらユウリと合流してな。ピオニーが自分の借りている民宿に泊めてくれることになった。ユウリを隊長として我たち二人も一緒に探検隊を結成して、伝説を調査するとのことだ」
「なんか知らないうちに入られていた件について。いや入る予定だったけどさ」
「伝説の飛ぶポケモンが集まる赤くてでっかい木も調査するって言ってたから多分ムツキも見つかるぞ」
「なるほどな」
「あとな。フリーズ村には「豊穣の王」という伝説があると村長殿から聞いた。まずはそれから調べるとのことだ」
「豊穣の王ねえ。…むしタイプじゃなさそうだな」
「お前はやはりそこなのだな」
会話しながらフリーズ村とやらを目指して歩く。よし、げんきのかけらでデンチュラ達も元気になった。これで野生ポケモンに襲われても大丈夫だな。
「ところであの兄妹はなんだったんだ?」
「詳しいことは知らんが俺と戦うのが目的だったらしい。強かったぞ、特に妹のダフネ」
「あのアノプスを見ればわかる。兄の方は?」
「強いっちゃ強いが戦い方が妹任せで愚直的でな。ありゃジムリーダーと戦ったら手玉に取られて負けるだろうな」
「厳しい評価だな」
「グソクムシャを強化してたのは評価するぞ。そして蟲使いに悪い奴はいない!気持ちのいい奴だったし、また戦いたいな」
「そりゃよかった。同タイプエキスパートと会えるとは羨ましい限りだ。ところでラウラよ」
「なんだ?」
「この間交換したRAINでサタリアがたくさんメッセージを送ってくるのだがどうしよう」
そう言ってくるモコウの顔は若干青ざめていて。寒さからでないことはすぐわかった。…いやでも、相手は幼い子供だしなあ。
「…多分悪意はないから諦めるんだな」
「…だよなあ。どう返せばいいんだろう」
「俺もお前もコミュ症だからな。わからん」
そんなこんなで辿り着いたフリーズ村。中心にはでっかい頭の獣が乗った馬?の様な像があり、あまり外に人が出ていない閑静な雰囲気の村だ。あれが豊穣の王かね。二匹で一匹のポケモンかなんかか?
「あの旗がある民宿が目的地だ」
「寒かったから早く温まりたいぞ…!?」
瞬間、中心から離れた一角で粉塵がちょうど舞い上がるのを確認した俺達は嫌な予感がして駆けつけると、そこでは戦闘が行われていた。
「カム カムゥル!」
「ウーラオス、すいいりゅうれんだ!」
オレンジ色のツナギを身に着けたユウリのウーラオスの流れるような連打を、紙一重で避けていくさっき見た像の馬の上に乗っていた獣とそっくりなポケモン。緑色のアフロみたいな頭部はまるで冠の様にも見える、ウサギの様な顔のポケモンだ。こういっちゃなんだが凄い小柄だ。浮いてるし緑だしタイプはくさ・エスパーか?むしが四倍弱点だな!そんなポケモン相手に本気で相手しているユウリもユウリだが、それに簡単に対抗している奴も凄い。
「つばめがえし!」
「カ ムカンムル!」
鋭い蹴りも避けながらじわじわと体力を奪って行ってるらしい謎のポケモン。ギガドレインだ。ダメージをそんなに浴びせられてないのに、じわじわ体力を削られてウーラオスもフラフラになってきている。くさ・エスパーならみず・かくとうのウーラオスじゃ天敵もいいところだ。
「つばめがえしも避けられるか…っ…相性が悪いみたいだね、なら!インテレオン!」
「カ カムゥ!」
「ふいうち!」
ギガドレイン、が炸裂する寸前、尻尾の一撃が謎のポケモンの顔面に炸裂、怯ませる。おそらく効果は抜群だ。
「タイプはくさ・エスパーかな!?とんぼがえり!」
「カムゥ!?」
そして強烈な二段蹴りが炸裂。インテレオンはボールに戻って行き、謎のポケモンはそのまま崩れ落ちた。
「ふう…あ、ラウラ、モコウ!」
「なにしてるんだお前は。それ、あの像のポケモンじゃないのか?」
「ピオニーさんに調査を頼まれたから、とりあえず戦ってみたんだけど」
「お前、バトルで会話できると思ってる人種だな?」
「逃げられたらどうするつもりだったんだ…」
首を傾げるユウリに呆れる俺とモコウ。すると謎のポケモンはモコウをジーッと見つめると、目を瞑って何かを念じ始めた。
「ンム ムイ カムカムゥ」
「な、なんだ…て、てょわわわぁ~ん」
▽モコウ は 輝きながら 浮いている!
「「モコウ!?」
なんか背筋をピーンと伸ばしたかと思えば目を瞑り、青い光を纏って宙に浮かび上がるモコウ。なにがどうした何が起きたとユウリと二人して慌ててると、民宿からピオニーまで出てきて場は混沌となる。
「おうおうどした隊長!?何か騒がしいな…ってどうしたモコウ!?それに頭でけえなおい!?」
「話がド・ややこしくなるんでちょっと黙っててもらっていいですかピオニーさん」
「お、おう。俺はアジトで待ってるから詳しいことを後で聞かせてくれよな!」
ピオニーはユウリが追い返し、謎のポケモンにモコウに何をしたのか問い詰めようとすると、モコウ?が喋り出した。
「ふむ、やはりしなやかで清廉、美しい体である。陰の努力が目に浮かぶようである」
「モコウ!大丈夫なの!?」
「いや、どう見ても大丈夫じゃないだろ。まさか裏人格とかじゃあるまいし」
「モコウというのか、いい名前だ。すまぬが少々借りさせていただこう。無理もない反応だが答えは否である。余はバドレックス。豊穣の王と呼ばれし者だ」
謎のポケモン、バドレックス。モコウを乗っ取ったらしいそのポケモンの力は、伝説の名にふさわしかった。
てょわわわぁ~んはぜひともオリキャラにさせたかった。てょわわわぁ~んピオニーファンにはごめんなさい。
・ラウラ
さくっとダフネに手持ちを全滅にされた主人公。その才能がちょっと羨ましい。あやうくてょわわわぁ~んされそうだったがモコウの方がお眼鏡に適った。
・ユウリ
バドレックスとバトルで語ろうとしたバトルジャンキー。ピオニーに探検隊の隊長にされた。
・モコウ
てょわわわぁ~ん
・ピオニー
てょわわわぁ~んされずに済んだ人。物わかりはいいけどユウリの威圧には逆らえない。
・ローレル
妹の才能を誇りに思っている兄。修行馬鹿。ラウラの番号を手に入れてご満悦なラウラのファン。
・ダフネ
普通に蟲が嫌いで当り前とのたまう妹。デンヂムシ、アノプス、あと一匹が手持ち。アゴジムシがデンヂムシに進化したことで進化させることがトラウマになっている。不意打ちとはいえアノプス一匹でラウラの手持ちを全滅させるほどの実力の持ち主。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。