今回はVS謎の襲撃者。楽しんでいただけると幸いです。
バドレックスと名乗ったポケモンに乗っ取られ宙に浮かぶモコウと、対峙する俺とユウリ。ユウリにやられた仕返しでもしてくるかと思ったが、バドレックスは頭を下げた。
「ユウリといったか。お主に一言礼を言わせてほしい。余の像を元に戻したこと、至極感謝である」
「なんだ、そんなことしたのかユウリ」
「う、うん。あの頭部が壊れていて、それを見つけてくっつけたんだ」
俺と蟲使い兄妹が戦っている間に色々あったらしい。さすが主人公(多分)、イベント多いな。
「遥か昔、余はこの地の王として君臨していた。草花を生やし畑に実りを与え、人間から崇められていたのだ。しかし長い時を経て人々は余の存在を忘れ去ってしまったようだ。毎年の余への捧げものも今や無くなって久しい。余にとって信仰は力の源…かつての勢いを失い我が愛馬にも逃げられてしまった」
「あの像の馬か」
「バンバドロにも見えるが違うんだろうな」
「我が愛馬を有象無象の馬と一緒にするでない!…しかし、お主が余の像を直してくれたおかげで、こうして人の肉体を介して思いを伝えられる程度には力が戻ったのだ。慈悲深き人の子よ…お主たちに頼みたいことがある…」
その時だった。バドレックスが、いきなり宙に舞ったのだ。同時に浮遊が解かれて倒れるモコウを慌てて受け止める。
「モコウ!…無事か」
「ラウラ!なにかがいる、気を付けて!」
同じく落ちてきたバドレックスを受け止め警告の声を上げるユウリに、高速で襲いかかる何かが見えて。咄嗟にボールを繰り出していた。
「ハッサム!バレットパンチだ!」
相手より先に行動できるバレットパンチが襲撃者を捉え、殴り飛ばす。しかし襲撃者はスピードを衰えることなく、村の外に逃げて行った。今の感じは…?
「ユウリ、モコウとバドレックスを頼む!俺は奴を追いかける!頼みとやらも俺抜きで引き受けてやってくれ!」
「う、うん!でも私の方がよくない?」
「バドレックスが求めているのは像を直したお前だ。それに襲撃者は多分蟲だ。捕まえてやる」
「お、おう。さすがだね?」
「行くぞハッサム!」
ユウリ達をその場に置いて、ハッサムを連れて村を飛び出す。雪の上に細長く軽い足跡がついていたのでそれを追いかける。どうやら山の上を目指しているらしい。
「俺の知らない蟲ポケモンだった。オニシズクモみたいなブラホワ時点で実装されてなかった蟲ポケモンは図鑑で調べた、けどあんなに素早い上に見えない蟲ポケモンなんて俺は知らない」
おそらくだが、テッカニンのトップスピードより速かった。まだ視認できたキリエさんのドリュウズよりもだ。視認さえできない圧倒的なスピード、あれほどの力は伝説ポケモンに並ぶだろう。例えるならデオキシスのスピードフォルムみたいな。わくわくしてきた。
「…ここか?」
山の中腹辺りまでやってくると、大きく踏み込んだ足跡を最後に途切れてしまった。足跡があったことから恐らく飛べないポケモンなのは間違いないが、跳躍して逃げたのか?いや、殺気を向けられているのを感じる。むしろ、追い詰めたと思って誘導されていたのはこちらだったらしい。
「そこだ、エアスラッシュ!」
何の変哲もない草むらにエアスラッシュを放つ。すると空中に何かが出てきて、体勢を整えると急降下。鋭い一撃がハッサムに叩き込まれ、吹き飛ばされる。すぐさま高速で離脱する何か。あまりに徹底した行動に、笑いがこみ上げてくる。
「臆病な性格か?頑なに姿を見せないとはな。俺のハッサムもグリーンのハッサムみたく見えない物を斬る力があればいいんだがそういう訳にもいかないんだこれが」
俺の知る最強のハッサム…ポケスペのグリーンの最古参ポケモンであるハッサムが羨ましく感じる。しかし今の一撃はハッサム相手に高威力を叩きだすとは…炎は見えなかったから、等倍の格闘の可能性が高いな。むし・かくとうか?高速で動き回りながらこちらを警戒する奴に意識を向ける。まるで俺の力を計っているかの様な、そんな感覚がする。
「ドラピオン!」
繰り出した瞬間、鋭い一撃がドラピオンを襲う。歴戦の猛者であるドラピオンでさえ捉えきれないスピード。こおりのきばの氷結で捕らえようと思ったが無理そうだ。明確な隙を作った瞬間、強力な一撃をお見舞いされて終わりだ。
「周囲にミサイルばり、連続だ!」
ならばとミサイルばりをばらまく。すると草むらから飛び出してきたので、集中砲火するドラピオン。しかしミサイルばり全てを振り切ってしまう襲撃者。速すぎるにも程があろう。そのまま襲いくるのを察知し、咄嗟に指示を出す。
「一か八かだ、こおりのきば!」
言われるなり、地面に突き立てるドラピオン。このコンビネーションは俺達ゆえの阿吽の呼吸だ。しかしなんと、襲撃者は氷結を砕いてそのまま突撃し、ドラピオンの顎に強烈な一撃を叩き込んで宙に舞わせると、四方八方から襲いかかり戦闘不能にしてしまった。
「なんにしてもまずは動きを止めないとか。ウルガモス!」
ならばとドラピオンを戻し、上空にウルガモスを繰り出す。空中ならあの強力な一撃は叩き込めまい。そしてウルガモスは、それだけじゃないぞ。
「ひのこをばらまけ!」
バサッと翅を広げ、俺を中心にひのこを広範囲にばら撒くウルガモス。すると触れた場所が炎上し、炎が噴き上がる。ちょっと環境問題になるだろうが、周囲一帯に炎を撒いた。これで、出てこざるを得ない筈だ。たまらず炎から逃れる様に出てくる襲撃者。
「かぶりん」
「出たな…!?」
その姿を見た瞬間、冗談無しに見惚れてしまった。おそらく見えなかった原因であろう、雪の様に白い体躯。ぱっちりとした青く光る目。透き通った美しい後ろ翅。脱皮直後の白く透き通った黒いあいつを連想させる細いフォルムの半人半虫、しかしてモデル体型と言ってもいいその美しい姿に、魅了される。ちょっといい匂いもした。
「これ、は、ポケモン、なのか…?」
恨めしそうに炎を見つめたかと思うとこちらを睨みつけてきたその一連の所作も絵になる美しさを感じた。ヤバい、一目惚れってこのことか。既に記録されていたポケモンだったのか、ロトム図鑑が認識し、後ろ手に確認する。えんびポケモン、フェローチェ。捕獲例が極めて少なく、これまでに二匹のみ。捕獲したのはいずれもアローラのチャンピオン…ってことは、アローラ地方のポケモンなのか?なんでここに?蟲が生息しにくいであろう雪国だぞここは。
「かぶりん」
俺を一瞥したフェローチェはその細く鋭い脚を振りかぶり、一閃。ただの一撃でソニックブームが発生し、炎を掃ってしまった。なんて脚力だ。そのまま跳躍して姿を消したフェローチェに、俺は心あらずと言った感覚でそれを見送ってしまった。
「………フェローチェ。あんな蟲ポケモンも生息しているのか、ここは」
舞い降りて来て俺を心配する様にすり寄ってくるウルガモスを撫でながら、不敵に笑う。
「上等だ。フェローチェは絶対捕まえてやる!」
…そのためには、スピードがいる。テッカニンならもしかしたらトップスピードで匹敵するかもだが、加速し続けてじゃ遅い。瞬発力であの速さに匹敵する、テッカニン以上のスピードが必要だ。
「ロトム。蟲ポケモン図鑑を頼む」
慣れない機械を使って、蟲ポケモンのみが閲覧できるようにしたモードのスマホロトムを手に目的のポケモンを二体、探す。カンムリ雪原にも生息しているらしい。
「…ユウリに協力を頼むか。バドレックスも押し付けたし、今度何かおごってやらないとなあ」
そんなことをぼやきながらフリーズ村への帰路に着く俺を、崖の上から見守るフェローチェがいたことに俺は気付いていなかった。そして、このフェローチェがきっかけに近い未来、とんでもない大事件が起こるなんてことを、俺はまだ知らない。
題名はVSフェローチェ、でした。ポケモン図鑑はネットで繋がっていて、未確認のポケモンでも全国の誰かが記録していたら閲覧できる機能、ということにしています。
・ラウラ
フェローチェに一目惚れした主人公。ネタバレとかは見ない主義だったのでウルトラビーストのことなど露も知らない。カンムリ雪原での目的がムツキ捜索から優先度がフェローチェゲットに変わった。とある二匹の蟲ポケモンをまずゲットすることにした。
・ユウリ
ラウラを見送った後、バドレックスのお願いをいくつか叶えることにした原作主人公。でもなんか嫌な予感がするからラウラと早く合流したい。
・モコウ
前回、たくさんのメールに頭を悩まされたりバドレックスに乗っ取られたりさんざんだった人。今回はフェローチェの攻撃の余波で服が裂かれて寒い目にあっている。
・フェローチェ
とくせい:ビーストブースト
わざ:とびかかる
とびひざげり
トリプルキック
とびはねる
もちもの:なし
備考:おくびょうな性格。よく物を散らかす。特性を利用して数多のポケモンを倒してスピードが最大値まで上がった状態でバドレックスに襲いかかったあと己に対抗して見せたラウラに標的を変えた。理由は不明。敵対者を魅了するフェロモンを出す。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。