今回はVSダフネと操られたユウリ。楽しんでいただければ幸いです。
バドレックスがユウリの力を試す、はずが乱入してきたダフネに操られたユウリの操るムゲンダイナとザシアンを対峙して追い詰められていくバドレックス。こうそくいどうで直撃こそ逃れているが、あのままじゃ不味い。ムゲンダイナは真面目にこの状況を楽しむつもりのようで、ザシアンは洗脳されているユウリを人質に取られているようなものだからか一瞬躊躇いながらも向かっていく。
「ユウリさん。遊んでないで全力でバドレックスを倒してください」
「ムゲンダイナ、ダイマックスほう。ザシアン、きょじゅうざん」
「っ…させるか!アギルダー!イオルブを倒せ!むしのさざめき!ビークインは俺達を守れ!ぼうぎょしれい!」
このままじゃバドレックスどころか昏倒しているモコウとローレルまで巻き込まれると悟った俺はアギルダーとビークインを繰り出し、ビークインに守りを固めさせてアギルダーを向かわせる。イオルブはエスパータイプの蟲ポケモンだ、むしわざに弱いはず…!
「イオルブ。サイドチェンジ」
「カムゥ!?」
「なに!?」
サイドチェンジ。ダブルバトルで、相方と場所を入れ替える技。交代したのはなんとバドレックス。イオルブはムゲンダイナ達がチャージ中のおかげで攻撃は受けずにすんでいた。むしのさざめきの直撃を受けて分かりやすく弱ったバドレックスを襲うマゼンタ色の光線と巨剣。レイスポスが自発的に動くことで直撃こそ免れたものの、大ダメージ必至だ。
「ダフネ、お前…!」
「私は手段を択ばない。恵まれているのに蟲を選ぶ貴女とは違うんですよラウラさん!」
「何の話だ!デンチュラ、ほうでん!」
「ミラーコート!」
避けられるならと全体に攻撃が当たるほうでんを放つも、ミラーコートで返されてしまう。このイオルブ、練度が桁違いだ。こいつがダフネの切札か。
「ムゲンダイナ、ザシアン、ザマゼンタ…貴女が巻き込まれた事件のことは知っています。何度も、何度も伝説ポケモンを手にするチャンスがあったのに貴方はそんな、普通じゃないこだわりでその権利を捨てた!それが私には理解できない!」
「好みじゃないんだからいいだろそんなこと!?」
「誰もが普通に欲しがるんですよ、伝説ポケモン。私も同じです。普通に、欲しい。私は普通に強くなりたい。普通に強いポケモンを使って、蟲を使わなくても強くありたいんです。そして、もうユウリさんは私のもの。つまり、彼女の伝説ポケモンも私のものと道理です。トレーナーごと操れば私の蟲を使う忌々しい才能なんて関係ありません。後は正真正銘、私のものとなる伝説ポケモンを捕まえるのみ!」
「お前、支離滅裂なこと言ってることに気付いているか?」
「そうだぞ。普通に普通にって言ってるが、普通の人間が伝説ポケモンを使ったり、人を操ったりするわけないだろう」
目を覚ましたモコウと共に反論する。ムツキのキリエさん嫌いと同じく滅茶苦茶な論理だ。目的も手段も紙っぺらの様で本意がまるでわからない。
「私は普通なんですよ、ラウラさん、モコウさん!兄さんも、貴女達も。私の在り方を否定する……目障りです、消えてください。ユウリさん、まずはこっちからです!」
「「え」」
「…ムゲンダイナ。かえんほうしゃ」
ダフネに命令され、虚ろな目のユウリがムゲンダイナに指示すると同時、俺は慌ててローレルを抱えてその場からモコウの手を掴んで退避。炎が今の今までいた場所を襲う。ダフネは一瞬罪悪感で顔を青くするが、すぐ吹っ切れたようで続けて指示。ムゲンダイナの攻撃が俺達を襲う。バドレックスはザシアンがそのまま相手していた。ダフネあいつ、もうおかしくなってる。真面目な性格なんだろうが真面目すぎてもうなにがなんだかわからなくなってないか!?
「おい、ローレル!起きろローレル!お前、ダフネがあんなことになっている理由知らないのか!?」
「いい加減起きろ!起きやがれください!?」
「ごはっ!?ハッ!ここは…ダフネ、何事だ!?」
モコウと二人でローレルを文字通りべしべし殴って叩き起こす。ローレルは状況を理解して無いようで、俺に担がれながらダフネに状況を聞こうとしていた。…こいつのこの性格がアレを作ったんじゃないのか?
「お前ダフネに攻撃されて伸びてたんだよ!なんか知ってるなら喋れ今すぐ!」
「さもないとあの火の中に叩き込むぞ!」
「え、いや、俺もなんでダフネがああなってるのか分からないというか。…少なくとも子供の頃は普通に蟲が好きだったぞ。俺のプレゼントしたアゴジムシを抱いて喜んでたぐらいだからな」
「「なに?」」
いや、ダフネの蟲嫌いは筋金入りだろ。じゃないと普通は嫌いだなんて言わないはず…………待てよ?蟲ポケモンが嫌だからって伝説ポケモンを狙うなんて極端、ミーハーもいいところだ。あいつもしかして、伝説ポケモンを飾りとしてしか欲してない…?
「なあローレルお前、ダフネに蟲を使うことを強要してないか?」
「蟲ポケモン以外を使うのは許してないがそれがどうした?」
「ちなみにお前は空手家だろうが、ダフネの役職は!」
「ミニスカートだが?」
「やっぱりな。そういうことか」
この世界にもポケモンスクール(前世で言う小学から高校)はある。ミニスカート、つまり女子中学生から高校生までのトレーナーの事を言う。ダフネがそれで今も在学しているなら、気持ちもわかってくる。蟲使いのミニスカート。…イメージが違うなんて生易しいものじゃない。普通ではない。引き籠もりだった俺には分かる。その辛さが。
「普通にってそういうことね…」
「どうしたラウラ。我なんもわからんのだが」
「とりあえずこうなった元凶はこの馬鹿ローレルってことだ」
「はあ!?なんでだ!?」
「とりあえずお前は自分で走れ!いい加減、重い!」
高校生ぐらいの男をせいぜい中学生ぐらいの私が持ってたってだけでアレだからな!?三人で走って逃げ続け、ついに炎で横の退路を断たれて壁際まで追い詰められる俺達。一か八か、俺はダフネの諭すことにした。逆鱗に触れるか鎮火するかは神のみぞ知るだ。
「違和感は感じてたんだ。お前、本当は蟲が好きだろ。本当に嫌いなら使わなきゃいいんだ。なのに、兄に言われたからとか理由をつけて、それでも使っているのはちゃんと好きだからに相違ない!そうだろ!なあ、ご同類?」
「な、なにを…!」
「だってそうだろ。進化が苦手なのは事実だとして、あんなに強くなるまで蟲を根気よく育てるなんて苦手な人間にできるはずがない!その証拠に、お前は自分の手持ちたちに嫌いと直接言ったか!?」
「っ!」
押し黙るダフネ。そうなのだ。「普通、女の子なら蟲なんて嫌いで当り前です!」この言葉が引っかかっていた。「普通」「女の子なら」「蟲なんて」「嫌いで当り前」他人事ばかりで一度も、自分の意見を言ってない。蟲が嫌いなら直接言うはずだ。なのにそうしなかった。真面目すぎて、嘘を吐けない性格なんだろう。
「馬鹿ローレルが気付いてない様だから言ってやる。お前が蟲が苦手なのは世間体としてだ。俺は別段気にしないが、「蟲ポケモンを使う女の子」それだけで悪く言う輩がいるんだろ。言い訳として「兄に言われたから」っていう大義名分だ。伝説ポケモンを求めるのは普通だと思いたいからだ。自分が伝説ポケモンが欲しい普通の人間だって思い込んで安心したいからだ。なあそうだろう、ご同類!」
「………うるさい。うるさい、うるさい、うるさい、うるさい!ユウリさん!やれ!」
「ムゲンダイナ。ダイマックスほう」
無機質な命令と共にチャージされるマゼンタ色の光。…逆鱗に触れてしまったか。前方には割と巨大なムゲンダイナ、周りは火の海で逃げられない。万事休すか。
「こんなところで死んでたまるか!カメックス!からにこもる!」
「このダフネを残したまま死んだら死にきれん!グソクムシャ!てっぺき!」
「…ビークイン、ぼうぎょしれい」
モコウとローレルが防御しようとするが、俺は知っている。ダイマックスほうはその程度じゃ防げない。少しでもと繰り出したビークインにも指示するが、焼け石に蟲だろう。と、その時。外は雪だというのに雷鳴が轟いた。いや、外からじゃない。下から…?と思ったその瞬間。
「ゴアアアアアッ!?」
地面から巨大なかみなりが飛び出してムゲンダイナを強襲、まるで天を衝く柱の様な雷電はムゲンダイナごとユウリとダフネを吹き飛ばすと、一つの形を形成してその場に降り立った。助かった、のか?
「じじ じじじ」
「まさか、伝説の一体!?どうして…どうして貴女達ばかりに!」
その異様な存在はモコウを守るように立ちはだかり、ダフネを睨んでぴょんぴょん飛び跳ねるのであった。
違和感に気付けた人はいたかな?
・ラウラ
同じ蟲好きとしてダフネに説教した主人公。大の大人を担いでムゲンダイナから逃げ回れる超人。一度死んでいるためか、逃れられない死を感じると諦めるところがある。
・ユウリ
操られてラウラ達を追い詰める。ムゲンダイナは真面目にこの状況を利用してラウラをボコろうとしており、ザシアンは人質を取られているようなものなのでしぶしぶ従っている。
・モコウ
今回一番のファインプレー。まさかの存在を呼び出した。
・ローレル
普通に過ごしたいダフネの意を汲みとれずにこんなことになってしまった空手家の兄貴。ラウラの言葉を聞いて止めねばなるまいと決意する。
・ダフネ
実はラウラや兄と同レベルで蟲ポケモンが大好きな、世間体として蟲嫌いのミニスカートの妹。蟲ポケモンを連れていたら否定されてしまい、それ以降蟲嫌いだと自分の心をも偽るようになり、自分の感情に脅迫されるように普通を目指し、ミーハーな普通として伝説ポケモンを欲しがるという滅茶苦茶なことに。蟲好きな自分と蟲嫌いな自分と言う自己矛盾に苛まれて壊れてしまった。
だけど蟲ポケモンを手放せず、兄に言われているからと自分自身にも言い聞かせて鍛え続けた。世間体を気にしないラウラとは対照的な存在で、ラウラの事が妬ましくてしょうがない。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。