そんなわけで今回はエール団戦。では、楽しんでいただけると幸いです。
傍らに手持ちの虫ポケモンたちを置いて、ワイルドエリアのエンジンリバーサイドで昼寝していたらいつの間にか夜になっていた。四日間もワイルドエリアで立ち往生していたわけだ。
「うーん、どうするかな」
ドラピオンをボールから出してみたものの、そっぽを向いて言うことを聞いてくれない。無理やり捕まえたが、本来ならバッジをたくさん集めてから捕獲するべきレベルのポケモンらしい。だが、襲っては来ないのでバッジが後一個もあれば言うことを聞いてくれそうだ。
「そろそろ向かうか。ナックルシティ」
モコウはもうどこまで行ったんだろうか。もう最後のジムまで行ってたりしてな。そう思いながらナックルシティに足を踏み入れると、道のど真ん中で項垂れている見覚えのあるゴスロリ姿があった。噂をすれば、だ。何故か通行人からは見慣れた風景の様な視線を向けられているのが気になるが。
「よう、モコウ。元気か?」
「ん?おおう、ラウラか。まさか今ワイルドエリアからやってきたのか?元気かと言われたら…元気じゃないな、うん」
あの自信に満ちていた表情が疲弊しきって、なんかドンヨリしている。どうしたというのか。
「…あのあと、アラベスク、キルクス、スパイクと攻略してここまで戻ってきたんだが…キバナ殿が強すぎてな」
「一週間も経たずに攻略してるのか…たしかダブルバトルなんだっけか。お前、一匹を扱うのは得意だけど二匹同時は苦手そうだもんな」
「それだけではない…なんでドラゴンジムなのに地面単タイプがおるのだ!?ただでさえドラゴンにはでんきの通りは悪いというのに!いまだにキバナ殿の相棒であるジュラルドンまで引き出せないのだ!」
「未だにってどれぐらい挑んだんだ?」
「…50近く。いまだに我しかここまで辿り着いた者がいないから毎日毎時間挑んでいるが、心が折れそうだ…」
「もうジムトレーナーの顔見知りになってそうだな…あれから仲間は増やしたのか?」
「ああ、パッチルドン、ロトム、ストリンダー…仲間は揃ったのだ。だけど、どう足掻いても勝てんのだ…!」
もう泣きそうになってるモコウに、慰めようとして、やめる。こいつは強い奴だ。なにより、ライバルに慰められることをこいつはよしとしないだろう。すぐに立ち直って、また挑むだろう。できることは、なにもない。するとぷるぷると震えながらついに泣き出すモコウ。
「…私は挑むぞ、何度でも。最速の称号を手に入れるんだ。じゃないと、私には何の価値も…!」
「落ち着け。口調が崩れてるぞ。何がトラウマなのか知らないが、お前はすごいよ。多分、過去のジムチャレンジでもトップクラスの速さだと思うぞ。あのチャンピオンダンデだってこんなに速くはない」
「そ、そうか?我、すごい?」
「ああ、すごい。俺なんか三日三晩一匹のポケモンと戦ってたんだぞ。その間に三つも踏破するなんて本当にすごいよ」
そう褒め称えてると元気を取り戻すモコウ。脳が小さい昆虫の様に単純な奴だな。いやまあ、本当にすごいんだが。雷の様に凄まじく速い。その速さだけはチャンピオンをも超えているだろう。キバナという大きな壁にぶつかってしまったが、それすらも貫く雷になるだろう。
「いいや、全然すごくないからさっさと諦めーる!」
「悪いこと言わないからジムチャレンジをすぐやめーる!」
「あ?」
せっかくモコウが自信を取り戻してきた矢先にかけられる否定の言葉。振り向くと、そこにいたのはパンクロッカー風の服装に身を包んだ変なメイクをしている男女。たしか…迷惑サポーター集団のエール団、だったか。
「なんだお前ら。モコウはすごい奴だ。それを否定するなら許さないぞ」
「貴方達、噂のジムチャレンジャーのモコウとラウラであってーる?だったら酷い目に遭わせてやーる!」
「我らがマリィを勝たせるためエールを届けーる我らエール団の凄さ恐ろしさ、じっくりたっぷり教えーる!」
問答無用だと言わんばかりに、街中だというのにガラルのマッスグマとフォクスライを繰り出すエール団二人。俺達をコテンパンにして自信を失くそうというのかいい度胸だ。すると怒りに顔を歪ませたモコウが立ち上がる。
「頭に来たぞ。我を怒らせたな?ちょうどいい、ダブルバトルの練習だ。付き合えラウラ!」
「ああ、やるぞ。迷惑サポーターにはうんざりだ」
「見えーる!おまえたちの敗北が!かみくだく!」
「聞こえーる!おまえたちの泣き声が!!バークアウト!」
モコウが繰り出したのはストリンダー。俺が繰り出したのはバチュル。愚直に攻撃してくるマッスグマとフォクスライに対し、互いに目配せし、指示をする。
「バチュル、エレキネット!」
「そこに叩き込めストリンダー!オーバードライブ!」
エレキネットで動きを阻害し、そこに叩き込まれるのは胸の弦の様な器官を掻き鳴らして放つ、強力な激しく響く大きな振動が二体に炸裂。大きく吹き飛ばした。
「なあ!?」
「そ、そんな馬鹿な!?」
「とどめだ、きゅうけつ!」
「我を怒らせたことを後悔させてやる!どくづきだ!」
そして致命の一撃が炸裂。戦闘不能になった己のポケモンに、信じられないという表情を向けるエール団二人に、俺とモコウは睨みを利かせると、そのまま逃げて行った。
「口ほどにもない奴らめ。我を馬鹿にするならそれ相応の実力を持ってこい。奴らの応援するジムチャレンジャーもろくでもない奴なんだろうな」
「そうだな。…ところでモコウよ」
「なんだ」
「今俺達がやったのはマルチバトルだ。ダブルバトルじゃないぞ」
「なにぃ!?」
気付いてなかったのか。トレーナーが別々に指示するのと、トレーナー1人が二体に指示するダブルバトルは全然別物だぞ。
「でもストリンダーの音技は二体に同時に炸裂するからいいと思うぞ。ひかりのかべとかリフレクターを検討するか、逆に天候を利用するといいかもだ。雨で必中のかみなりとかな」
「なるほど?…やはりラウラよ、お前のバトルの知識は中々のものだな」
…そりゃあ、前世でバトルサブウェイを勝ち進むために勉強したからな。今の環境は知らないが、基本的な戦術なら身に着けている。その知識と、ほぼ直感の指示でなんとかなってきたが、そろそろきついかもしれないな。
「そうでもないさ。俺はまだまだアマチュアだ、実戦の経験を多く積んだジムリーダーとは比べ物にならない。それをむしタイプ達の可能性で埋めてるんだ。俺は全然凄くない。お前と違ってな」
「むう?違うぞ。我は我のライバルであるお前を、すごいと認めているのだ。それを否定するのは許さんぞ?」
さっきエール団に言い放ったことを自信満々な顔で返され、顔が赤くなる。…ああ、なんだ。カブさんといい、ジムリーダーたちといい…認めてもらえるってのは、こんなにも…!こそばゆくなった俺は荷物の入ったリュックサックを担ぎ直し、西へ向かう。
「お、俺はもうラテラルタウンに向かうからな。俺が戻ってくるまでにキバナを攻略してなかったら承知しないぞ」
「うむ!お前のおかげで突破口が開けた気がする!礼を言うぞラウラよ!」
「礼を言われるようなことは何もしてないって…なあ、バチュル?」
麦わら帽子の鍔まで下りてきたバチュルの顎を撫でながら駆け足で街並みを抜ける。ブティックとかカフェとかは完全に無視だ。ライバルに負けないためにも、モコウとの約束を守るためにも、必ずラテラルタウンとアラベスクタウンのジムリーダーを攻略して戻って来てやる!そう決意した俺は旅路を急ぐのだった。
さすがにエール団は敵じゃない。
・ラウラ
リュックサックを愛用している褒め上手。バトルサブウェイを攻略してるぐらいにはポケモン廃人。認めてもらえることに感激しているようだが…?
・モコウ
キバナで完全に詰んで立ち往生していた現最速攻略者。あまりの速さにキバナもビビった。あまりにも挑み過ぎててジムトレーナーとはもはや顔見知り。本当の一人称は「私」で、実はラテラルタウンの名家の出。だからウカッツ博士の論文なども読んでいた。落ち込むと自分に価値を見いだせなくなるタイプ。ちなみにラクライがライボルトに進化した。
・ストリンダ―(ハイなすがた)♀
とくせい:パンクロック
わざ:オーバードライブ
ばくおんぱ
どくづき
ほっぺすりすり
もちもの:じしゃく
備考:ようきな性格。イタズラが好き。モコウがアラベスクジム攻略のためにワイルドエリアでゲットしたエレズンが進化したポケモン。パッチラゴンと双璧を為す主砲の一人。
・パッチルドン
とくせい:ちくでん
わざ:フリーズドライ
ゆきなだれ
じゅうでん
でんきショック
もちもの:じしゃく
備考:れいせいな性格。暴れることが好き。今回は出てこなかったが、モコウがドラゴン対策にと化石を集めて再びウカッツ博士に復元してもらったポケモン。なお、ギガイアスで即座に倒されてる模様。
・ウォッシュロトム
とくせい:ふゆう
わざ:たたりめ
ほうでん
みがわり
ハイドロポンプ
もちもの:じしゃく
備考:むじゃきな性格。すこしお調子者。今回は出てこなかったが、モコウが地面対策に入れたポケモン。ワイルドエリアを渡ってる際に自分からでんき好きの性質を見抜いて寄ってきた。キバナ相手には一番善戦しているが肝心な時にハイドロポンプが当たらない。
・エール団
男女のコンビ。マリィの障害になるであろうラウラとモコウを潰しに来たら返り討ちにされた。オーバードライブを一回耐えるなど結構強い構成員である。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。