今回はダフネとの長い戦いの決着。楽しんでいただければ幸いです。
目を覚ました俺に、信じられない物を見るような目を向けていたダフネだったが、すぐ正気を取り戻すと両手を広げて勝ち誇る。
「くっ…ですが、もう関係ありません!ラウラさんが眠っている間にユウリさんのさいみんじゅつはかけ直しました!貴女の説得でも目を覚ますことはありません!」
「ユウリを止める方法なら思いついたぞ。デンチュラ」
ウーラオスとシュバルゴを側に置いて警戒する様に睨み付けてくるユウリに対し、デンチュラを繰り出す。最初から、倒さなくてよかったんだ。
「連続でエレキネット!」
「!?」
「なあっ!?」
ウーラオスとシュバルゴだけでなく、イオルブとアーマルド、ダフネとユウリにまでエレキネットを引っ掛け感電させる。ダイレクトアタックは犯罪だが今回ばかりは許してほしい。モコウと戦ってるインテレオンとザシアン、ローレルと戦ってるフシギバナが反応してこちらに攻撃を仕掛けようとするが、モコウのレジエレキとローレルのアイアントが阻む。
「伝説だろうが、お前も閉じ込めてやる!サンダープリズン!」
「アイアントなら毒は効かん!まひだけならば!シザークロス!」
モコウのレジエレキがインテレオンとザシアンを雷の檻に閉じ込め、ローレルのアイアントが力ずくでフシギバナを撃破。これで邪魔者はいなくなった。
「バドレックス!ユウリをてょわらせろ!」
「カムッ!」
了解した!とでも言うように頷くバドレックス。さいみんじゅつの上位互換でもある乗っ取りだ。これならば!
「ぐうううう…させない、バドレックスは私のものだ!イオルブ、サイドチェンジ!アーマルド、シザークロス!」
しかし電撃で舌が痺れているはずなのに根性を見せたダフネが己のポケモンに指示、サイドチェンジでバドレックスと交代するイオルブとエレキネットを破壊して出てくるアーマルド。俺が眠っている間に回復していたのか。バドレックスのエレキネットを解きたいが、その前にこの二体をデンチュラだけでどうにかしないといけない。…無理では?
「ほうでん!」
「イオルブ、ミラーコート!アーマルド、まもる!」
「くそっ!?」
唯一とも言っていい打点であるほうでんがあっさり防がれたことに思わず舌打ちする。そのまま前衛と後衛に分かれて攻撃を仕掛けてくる二体。手持ちをげんきのかけらで回復させたいが、隙がない。げんしのちからを避け、しおみずを受けながらきゅうけつを叩き込むデンチュラだが効果は半減、ダメージが薄い。これは詰んだか?いや、イオルブさえ倒せばいいのか。問題は方法だが。……そうだ、ドラピオンは脳震盪を起こしただけで無事だった。
「いとをはくで壁に逃れろ!」
「イオルブ、むしのていこうで邪魔しなさい!」
「ドラピオン!イオルブにミサイルばり!」
「なっ!?み、ミラーコート!アーマルド、シザークロス!」
「クロスポイズンで迎え撃て!」
完全回復したドラピオンにかかりきりになるダフネ。俺の切札級のポケモンであると知った上での反応だ。ドラピオンに集中してくれるのはありがたい。
「デンチュラ、イオルブにいとをはく!引っ張り上げろ!」
「さ、さいみんじゅつ!」
神殿の壁に引っ付いたデンチュラがイオルブを拘束、己の側まで引っ張り上げる。ダフネはさいみんじゅつで抵抗するも、イオルブの最大の弱点は攻撃技がむしのていこうしかないことだ!
「きゅうけつ!」
眠りに落ちる前に、デンチュラのきゅうけつが炸裂。崩れ落ちるイオルブ。これでユウリは……戻ってない!?
「無駄です、さいみんじゅつを解けるのはイオルブのみ!それを倒した今、ユウリさんを元に戻すことは「てょわわわぁ~ん」…てょわわわ?」
ユウリの口から聞こえた奇妙な言葉に目が点になるダフネ。ようやく、取り戻したぞ。
「俺の勝利条件はバドレックスをユウリの側まで置いてエレキネットを解くことだ。お前のサイドチェンジのおかげで近づけた。なあ、バドレックス」
「うむ。ユウリの体は余が頂いた。もはや、余を襲わせることは叶わん。………何が起こったの?」
正気に戻ったユウリに、信じられないと目を見開くダフネ。お前のイオルブも大概凶悪だったが、伝説はもっと理不尽なんだ。きょろきょろ辺りを見渡して状況を把握しようとするユウリが参戦する前に方をつけようとしたのか声を張り上げるダフネ。
「アーマルドォ!バドレックスにしおみず!もう体力はないはず!」
「隙を見せたな?こおりのきば」
アーマルドがドラピオンに背を向けてバドレックスに技を放とうとしていたので、遠慮なく背中から氷漬けにしてやる。するとダフネは絶望したように崩れ落ちる。
「あ、ああ、ああああああ」
「これで終わりだ」
「ラウラ、モコウ。一体なにがあったの?」
「お前が操られて大変だったってだけだ。お前のポケモン戻してやれ。受けたくもない命令を遂行して疲労している」
「う、うん…」
モコウに言われるまま、手持ちをボールに戻すユウリ。首を傾げているが、説明は後だ。
「ダフネ」
「…兄さん。私は、普通ではないんですね……アハハ…」
自分の行動を省みたのか、死んだ目で涙を流し笑うダフネ。まあ、犯罪のオンパレードだったからな…
「普通じゃないのがそんなに嫌か?」
「嫌に決まっています。友達もできないんですから」
「でも、それでも蟲は使いたかったんだろ?伝説なんて、欲しくはなかった。そうだろ?」
「…………ラウラさんは何なんですか。女の子なのに、年頃なのに、蟲ポケモンを自信満々に使って、セミファイナルトーナメント準優勝までするなんて。人の奇異の目が怖くないんですか」
「怖くないぞ。気にするだけ無駄だ。俺は、蟲が大好きだ。それを誇りに思っている。そんな俺を、当初は奇異の目で見る輩はたくさんいたさ。だけどな?何が好きだろうが、熱意と実力さえあれば周りの目なんて変えれるんだ!」
そう、胸を張る。好きなものを忌避することこそが間違いだ。ダフネの手持ちのことを思うと、やるせなくなる。自分を大事に育てていた主人が人前では嫌いなのだという。可哀想じゃないか。
「……その心の強さが羨ましい。蟲ポケモンだけで伝説ポケモンを捕まえられれば、なにか変わったでしょうか」
「ユウリを操ったりせず、実力で挑んでいればあるいはな。今のお前はただの犯罪者だ」
「ダフネ。共に自首しよう」
俺に続いて、そう言うローレルに、目を丸くして首を横に振るダフネ。
「兄さんは関係ありません!私一人でやったこと…」
「お前の悩みに気付かず、止めれなかった俺も同罪だ。いや、お前がこうなったのは俺のせいだ。お前が悪くないとは言わん、だからせめて、共に」
「兄さん……私、周りにどう言われようが蟲を使うように言ってくれた兄さんにちょっと救われていたんですよ?それだけは、勘違いしないでください」
「ダフネ………ラウラ、ユウリ、モコウ。すまなかった、我ら兄妹が迷惑をかけた」
「特にユウリさん…それに、バドレックス。ごめんなさい」
「気にするな。レジエレキも手に入ったから我は気にして…てょわわわぁ~ん」
俺達に頭を下げるローレルとダフネ。するとモコウを乗っ取ってバドレックスが口を開く。
「余は余を助けてくれたユウリを認めて力を試そうとしたが、余のことが欲しいというお主の手段を選ばぬ気迫は本物だった。ユウリを操ったのは許せぬが、それ自体は悪い気分ではなかったぞ。余は許す」
「私は操られてた?間はすごくいい夢を見れたし…そんなに怒ることはないかな?」
「ユウリとバドレックスがいいなら怒る理由はないな」
ユウリは俺を襲わせたなんて聞いたら怒るだろうけど黙っておこう。なんか妙に上機嫌だしな。
「では、私達はこれで…警察に自首します」
「証拠不十分ですぐ出されそうだが一応な。ラウラ、また会った時は」
「ああ。二人の本気で挑んで来い。返り討ちにしてやんよ」
そう言うと兄妹は嬉しそうに笑って、山を降りて行った。
「行くよ、バドレックス!」
「カムゥル!」
「いいぞ、どっちも頑張れ!」
…さて、と。ユウリとバドレックスが再び戦い始めて、モコウもそれを観戦して…ちょうど俺一人になったわけだが。デンチュラ達の回復も終えた。こっちも大勝負と行くか。
「出てこいよ、フェローチェ」
そう告げると、俺の前に、白く美しい蟲ポケモンが降り立った。ずっと俺を観察してしていたのは知っていた。何を考えてか知らないが、出てきたならば挑むまでだ!
ずっと見ていたフェローチェ。その美しい碧眼はラウラに何を見る?
・ラウラ
ドラピオンが回復したことで逆転した主人公。最初からエレキネットで拘束すればよかったと後悔した。目を覚ました時に視界の端で咄嗟に隠れたフェローチェを確認していた。ダフネとはよく似ていて正反対の関係だった。
・ユウリ
永遠にラウラと戦い続ける夢を見ていた原作主人公。てょわれて目を覚ます。いい夢見れたので気にはしてないが、ラウラを殺しかけたと知ったらブチキレるのは目に見えているので誰も伝えてない。バドレックスを捕まえるために勝負を挑んでいる間にラウラがフェローチェと戦って…?
・モコウ
終身名誉通訳。レジエレキを手に入れたのでご満悦。特に迷惑かかってないので気にはしてない。
・ローレル
自責の念に飲まれる侍の様な兄。グソクムシャがフシギバナにやられたためアイアントで逆転した。チャンピオンのポケモンを一体倒すという実力を見せつけた。ダフネと共に警察へ自首するため下山。
・ダフネ
バドレックスに執着したために敗北した蟲使いの妹。ラウラとはよく似ていて正反対の存在。ラウラの心の強さに感銘を受ける。冷静になったら自分の犯した犯罪に耐えきれず自首するために下山。兄のせいではあるが、救われてもいた。その後、証拠はない上にラウラたちも証言する気はないため証拠不十分で釈放される。
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