今回は最終決戦。楽しんでいただければ幸いです。
「私の名前が何か?もしや、以前の私を知っているのですか!?」
「い、いやなんでも…」
なんかめんどくさそうな気配がするから知ってることは黙って置こう。リラは落ち着くと深呼吸して告げる。…記憶がないのか。触れないでおこう。
「そうですか。国際警察とは地方をまたいだ犯罪の捜査、犯人の確保、犯罪に利用されたポケモンの保護を目的とした組織です」
「その国際警察が何の用で?まさかユウリのムゲンダイナを…?」
「いえ、ムゲンダイナについてはユウリさんに預けておくと言う結論に至りました。問題は、ブラックナイトによる影響です」
「ブラックナイトの影響…?」
「ウルトラホール、という異世界に繋がる穴があります。貴女も見ましたね?このナックルシティの上空に広がるアレを。ムゲンダイナの発するエネルギーの影響で発生した物だと思われます。そしてウルトラホールから現れる異世界のポケモン…ウルトラビーストによる災害が、かつてアローラ地方で発生しました」
それでアローラのチャンピオンに捕獲されたってことか。
「UBはこちらの世界にくると驚き、戸惑い、恐怖に駆られ、身の危険を感じて暴れ出してしまう。我々はかの地のチャンピオンに協力を求め、これを捕獲、保護。解決しましたが…それと同じことが、この地方でも起きてしまった」
「それはなんで…!」
「原因は不明です。何か呼び寄せているものがあるとしか……時に、我々はウルトラビーストを捕獲できるボールを有しています。ウルトラボールです。出会えたジムリーダーの方々には既に渡しています。これが無くても貴女が捕獲できたのは、恐らくUBたちに信用されたからでしょう。貴女にもこれを。鎮圧を手伝ってくれたら助かります」
そう言って手渡されたのは青くかっこいいモンスターボール。まあ、ユウリを見つけたら鎮圧は手伝うつもりだけど…
「それと、この上には行かないでください。ムゲンダイナが暴れた場所だからかもっとも大きいウルトラホールが発生してます、どんなウルトラビーストが出て来てもおかしくない」
「………」
「…行く気、なのですね。ならば餞別です、貴女にこれを託します」
無言の俺から何かを感じ取ったのか、溜め息を吐いたリラは懐から取り出したプレシャスボールを差し出してきた。ボールの中に入ってるのは……!?
「このポケモンは、部下がイッシュ地方のプラズマ団を逮捕した際に研究施設から押収された改造ポケモンです。対UB用の戦力として連れてきましたが……ラウラさんは蟲ポケモン使いだと聞いています。貴女ならば、国際警察の誰もが扱いきれなかったこの暴れん坊を使いこなせるかもしれません」
「…助かります」
「では私はこれで!決して無茶はしない様に!ご武運を!」
そう言ってキバナさんの加勢に向かうリラを見送って、ウルトラホールとやらが開いたタワートップを見上げる。……あいつは、あそこにいる。チャンピオンとして上で戦っているのか、それともただ俺を待っているのか。どちらかはわからないが、あそこにいる。そんな気がするんだ。
「とりあえずポケモンセンターだ」
人っ子一人いないポケモンセンターに入り、マッシブーンとの戦いで傷ついた手持ちを勝手に機械を使って回復させる。ウルトラビーストと戦うことも考えて、手持ちはデンチュラ、ドラピオン、フェローチェ、マッシブーン、ビークイン。そしてリラから受け取ったポケモン。こいつらで行く。アギルダーは…正直、力不足が否めない。すまない。
「デンチュラ、行くぞ!」
デンチュラを繰り出し、背中に装着。いつぞやと同じく糸を伸ばして空を駆る。瓦礫は落ちてこないが、タワートップから別個体のフェローチェやマッシブーン、他にもいろいろ飛び出していくのが見えた。止めないと、本当にやばい。
「ユウリ!……!?」
彼女の名を呼びながらタワートップに到着すると、そこには異様な存在がいた。半透明で電灯の様な頭部から垂れ下がったたくさんの黒い手の様な触手といったクラゲの様な姿だが、異様なのは小さな宇宙の様になっている中に、見覚えのある普段着姿の少女の後姿があった。その髪は黒く染まって宇宙と溶け込んでいるけど、間違いない。振り向いたその顔は、ユウリだった。
「やっときてくれたぁ、ラウラ!」
ユウリの腕と一体化しているらしい触手が一本こちらに伸びてきたので、慌てて糸を飛ばして避ける。ユウリの顔は酷く憔悴しきっているが恍惚と悦に浸っていて、まるで麻薬常習者のそれだ。ユウリは触手を振り回して俺を追い詰めながら嬉々として語った。
「ねえ、すごいでしょ!これがこの子、ウツロイドの力!人間やポケモン、特に強い不安や緊張を持つ者に寄生するの!貴方に裏切られた私みたいに!寄生された者は不安や緊張を幸福と快楽に変える強い毒に侵される!だから私は貴方に裏切られたことなんでもうどうでもいい!私達は共生関係になったんだ!」
狂喜のあまり、触手を天に掲げて恍惚とした笑みを浮かべるユウリに背筋が凍る。何を言っているのか、理解したくなかった。俺のせいで、ユウリはこうなった?
「ウツロイド…ウルトラビーストか!」
「でもね、私とこの子が一つになったら、あの穴からフェローチェとかウツロイドとか沢山のポケモンが出て来てね。最初は応戦して止めたんだけど、もう止めれなくなってガラル中に散っちゃったの。ナックルシティもこうなってしまったのに、私には止められない!でも、この子から離れるのは嫌だ!もうあんなに苦しみたくない!ラウラを嫌いになりたくない!」
そこまで泣き叫ぶように言ったかと思えば三日月の様な笑みを向けてくるユウリ。俺のせいで、ガラルはこうなった?
「それでね、私、思いついたんだ。私よりもラウラに執着されたフェローチェが羨ましかったなら、ラウラに私も捕獲してもらえばいいやって」
「は?」
「私を捕獲すれば、もうあのポケモン達…ウルトラビースト?は出てこないからガラルは安泰!私はラウラのポケモンになって愛してもらえる!winwinの名案だよね!」
触手を伸ばして俺を捕まえようとしながらクルクル回って喜びを露わにするユウリ。毒のせいでおかしくなってやがる。いや、毒だけのせいじゃない。ユウリの好意に気付いていながら、なにもしなかった俺のせいでもある。なんとかタワートップに降り立ち、俺を抱きしめようとしているのか伸ばしてくる触手を避けながらデンチュラをボールに戻して代わりにビークインを繰り出す。…責任を持って、俺がユウリからウツロイドを引き剥がしてやる!
「ビークイン!エアスラッシュ!」
「そうだよね。ラウラはポケモンがいるなら抵抗するよね。私なんか、捕まえたくもないよね。だったら…!」
触手の手に握られたボールがスイッチを押され、ザシアンが繰り出されエアスラッシュが防がれる。だがしかしその様子はおかしい。目は怪しく光り輝き全身に赤いオーラを纏っていて、よく見れば、細い触手がウツロイドからザシアンに繋がっていて、まるでエネルギーを供給しているようだ。ビークインの二面エアスラッシュを防いで見せたことから明らかにスペックが向上している。
「ラウラの手持ちを全滅させて、捕獲するしか解決手段がないようにしてやる…!」
「ザシアン!お前、なんで…!」
「私がこうなったらみんなでこの子を引き剥がそうとしてきたから、あの穴から供給されるエネルギーを分けてあげたの。そしたらみんな言うことを聞いてくれた。私の願いを邪魔するなら、例え手持ちの皆でも許さない」
その暗く淀んだ瞳からは、自分のポケモン達への思いやりは残っていなかった。そこまで堕ちたか…ユウリ!
「お前は…俺達が止める!お前からウツロイドを引き剥がせばいいんだろ!」
「私からこの子を奪うなんて、ラウラでも許さないよ!きょじゅうざん!」
「ぼうぎょしれい!」
振るわれた巨剣を、しもべたちで受け止めるも、あっさり吹き飛ばされてビークインは身を捻って避ける。しかし即座に距離を詰められ、ザシアンに斬り伏せられてしまうビークイン。
「くそっ……」
「ラウラの蟲ポケモンの事は知り尽くしている私に勝つのは無理だよ!諦めて私を捕獲してよ!」
ビークインを戻す隙を狙って伸びてくる触手を必死に避けながら言い返す。
「それは悪いが断る!」
「なんで!私のことが嫌いなの!?」
「お前は俺の大事な友達だからに決まってるだろ!」
「……………………ラウラの馬鹿あああああ!!」
激高と共に伸びてくる触手の量がどっと増えて捕まってしまった。触手に避けることに集中して言葉を選ぶのを忘れていた…持ち上げられ、ユウリの眼前まで引き寄せられる。
「ラウラ、引き剥がすのを諦めて捕獲してくれるなら放してあげるよ?」
「そいつは断る…」
「だったら
…万事休すか。このポケモンがいなかったらな…!俺の手から零れ落ちて、タワートップの床に落ちて繰り出されるのはリラさんからもらったポケモン。超古代から復活され、プラズマ団によって改造された蟲ポケモン…その名を、ゲノセクト。
「ゲノセクト!テクノバスター!」
「きゃあああ!?」
咄嗟に防御体勢を取ったことで俺を取りこぼすユウリ。尻餅をついて、ゲノセクトと並び立つ。勝負はここからだ。
まさかまさかの好きな人に捕獲されたい系女子。
・ラウラ
ユウリがとんでもないことになって、さらにガラルの惨状も自分のせいだと知って動揺したけど責任を持って止めようと奮闘する主人公。ゲノセクトの入ったプレシャスボールを手に入れてちょっとご満悦だけどそれどころじゃない。今回のパーティーはデンチュラ以外ぬしか伝説というガチメンバーである。
・グローリアビースト/ユウリ
ウツロイドに寄生されたユウリその人。グローリアとはユウリの英名。ラウラから逃げて不安や恐怖に苛まれていたところそれに惹かれたウツロイドが寄生してユウリの感情を爆発させた状態。捕獲するのではなく、共生する道を選んだ。というかウツロイドを「私に寄生したんだから手伝ってくれるよね…?」と半ば脅迫して制御している。
手持ちのポケモンを伝説だろうが強制的に支配して能力を上昇させ思いのままに操る他、隙あらばラウラを捕らえて愛でようと触手を伸ばしてくる。UBに街を破壊させるのではなくむしろ止めようとしていて、目的はポケモンとしてラウラに捕獲してもらうこと、という前代未聞のラスボス。
・リラ
自分では扱いきれなかったゲノセクトをラウラに託した後に、特殊なカセットを渡して無いことに気付いたポンコツ国際警察。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。