今回だけはラウラ視点と新たな主人公視点でお送りします。楽しんでいただけると幸いです。
VSアップリュー
ガラル全土を震撼させたUB事件、あれから二年。14歳になった俺はジムリーダーになっていた。ジムリーダー試験を受けた一年前から戦い詰めで、ようやくマイナークラスのトップジムリーダーにまでなった。モコウとムツキはとっくの昔にメジャークラスにまで行ってるってのに情けない話だ。だがそれも、今日までだ。
「ヤローさん。悪いけど、アンタのホームはいただかせてもらいます」
「たった二年でここまで来れたのは素直に称賛しとるのですが…そんなに甘くないのがメジャーいうもんですよ、ラウラさん。たまげさせられるもんならしてみるんだな!」
ジムチャレンジの二ヶ月前に行われる、ジムリーダー交代戦。一年に何度か行われる交流戦に置いて勝率のいいジムリーダーと勝率の悪いジムリーダーが入れ替わる、大事な一戦。ヤローはこれに勝てば防衛成功、俺が勝てば陥落だ。ターフジムを賭けた戦いが今、始まる。
「頼むぞ、テッカニン!」
「行くんじゃい、ダーテング!」
5VS5のシングルバトル。先鋒はお馴染み、テッカニンだ。ヤローはダーテング。本気のメンバーだ。
「ねこだましじゃい!」
「退いてつるぎのまい!」
ユウリのダーテングで見慣れてるんだよ!ねこだましの範囲から離れることで怯まない、独自の戦法だ。
「つばめがえし!」
「むう…やりおる」
かそくした一撃が炸裂し、ダーテングは崩れ落ちる。シンプルなれどやはり剣舞からのこうかばつぐんは耐えようがないな。
「ねばりにねばるんじゃ!ワタシラガ!コットンガード!」
「つるぎのまい、つばめがえし!」
防御を厚くしてきたのでこちらも攻撃力を上げて攻撃、戦闘不能にする。俺は知っている。ヤローにこの状態のテッカニンを倒す方法はない。何か余計なことをする前に終わらせる。
「ならばこうじゃ。チェリム、ウェザーボール…」
「遅い!つばめがえし!」
チェリムを出すと同時ににほんばれを展開してきたが、技を撃つ動作が終わる前にこちらの攻撃は届いた。故に問題ない。タイプ相性とすばやさの絶対的な差だ。
「キレイハナ!ヘドロばくだんじゃ!」
「つばめがえし…!」
つばめがえしを当てる瞬間、毒の塊を当ててくるキレイハナ。根性あるな、さすがヤローのポケモンだ。毒をもらったか。あと一体、早めに決着を付けないとな。
「最後まで追い詰められても粘り腰!価値を目指して伸びるまでじゃ!アップリュー!」
出たな、くさ・ドラゴン。キョダイマックスされると分が悪いがこのまま出張って一撃を与える。
「さあキョダイマックスだ!根こそぎ刈り取ってやる!」
「つばめがえしだ!」
「ダイジェット!」
キョダイマックスしたアップリューの、ダイジェットを受ける前に一撃叩き込んで戦闘不能になるテッカニン。よくやった、後は任せろ。
「ヤローさん、生憎だけど容赦無しで行きますよ。モスノウ!」
「むっ」
アップリューの技は全部調べてきたんだ。モスノウに勝つ方法は存在しない!
「ダイマックスだ、モスノウ!全てを凍りつかせろ!ダイアイス!」
「ダイウォール!粘るんじゃアップリュー!」
巨大化したモスノウのダイアイスを辛うじて防ぐキョダイアップリューだが時間の問題だ。
「俺はジムリーダーになって、ユウリへの挑戦権を得るんだ!ダイアイス!」
「ダイウォール……僕の負けなんだな」
二度目のダイウォールは失敗し、直撃。四倍ダメージをもらったアップリューは戦闘不能になり、俺は晴れてメジャージムリーダーへと昇格した。
数時間後。手続きを終えてハロンタウンのユウリ宅に帰宅する俺。一週間もしないうちにターフタウンに自宅を持つことになるからこことももう見納めだな。まどろみの森、やっぱり蟲ポケモン結構いたから夢の場所だったんだがなあ。
「帰ったぞ」
「おかえり~じゃないよ!なにあのひどい試合!」
帰るなり、おふくろさんと料理していたらしいエプロン姿のユウリにお叱りを受けた。解せぬ。二年前と違って伸ばしている髪がポニーテールに纏められていて綺麗だ。
「効率はいいけどあんなつばめがえしだらけの一方的な試合、観客からしたらつまらないよ!ガチだったのは分かるけど、もう少し魅せる戦いを…」
「チャンピオンが言うと説得力あるな」
「黙って説教を聞く!」
「はい」
親とは離縁し、もう完全にユウリ宅に居ついて最近までヒモだった俺は、ユウリに頭が上がらない。でもどんな方法でも勝たないと胸を張ってお前の隣に立てないから、ガッチがちに固めたんだけどなあ。今回の手持ち?テッカニンとモスノウとウルガモスとドラピオンとデンチュラだがなにか?
「ラウラは普通に戦っても強いんだから、そんなガチにならなくても…」
「でもこれでやっと、チャンピオンカップでお前と戦えるぞ、ユウリ」
「それは嬉しいけど……」
俺がキバナに勝って自分の前に来ると信じているユウリに、顔がにやける。その信頼がこそばゆい。
「ああ、そうだ。あいつらにも連絡しないとな」
「あいつらって?」
「メジャージムリーダーになった俺から推薦状をもらう気満々な兄妹だ」
「あー…私、妹の方は苦手だな」
「もう洗脳とかはしないって誓ってたから大丈夫だぞ」
さいみんじゅつについては覚えてないとはいえ、ウツロイドの寄生のせいでそういうのがトラウマになってるらしいユウリ。たまにウツロイドを出して愛でてるのは大丈夫なのか…?
「そうじゃなくて、同じ蟲好きだし、ラウラを取られそうで…」
「俺はお前に一途だから心配しなくても大丈夫だぞ」
「なんで恥ずかしげもなくそう言うこと言えるかなー?」
「言わないと分かってもらえなそうだからな」
「むぅ…それはそうだけどさ」
ユウリを宥めて、とりあえずスマホロトムを取り出して連絡を入れた。
兄さんとのポケモンバトルを終えて休憩していたら、ラウラさんから連絡が来たので電話に出る。
『あ、ダフネか?テレビで見てたかは知らないがメジャークラスに上がったからお前の要望通り推薦状を書くから後日取りに来てくれ』
「見てましたよ。手段を選ばなかった以前の私に人の事を言えない戦い方でしたね…」
『………それはまあ、うん。ユウリにも怒られたから勘弁してくれ』
「それで、推薦状をいただけるんですね?」
『ああ、お前の実力なら問題ないだろう。何時なら来れる?』
「ハロンタウンですよね?私はバウタウンに住んでいるので、電車ですぐです。明日お伺いします」
『わかった。それじゃあな』
電話が終わり、スマホロトムを遠ざける。……やっとだ。ラウラさんにもユウリさんにもモコウさんにも迷惑をかけた。私には蟲ポケモンへの愛が足りなかった。私の、蟲ポケモンへの愛を示すための旅が始められる。
「本当にいいのか、ダフネ?俺もついていっても…」
「兄さん。私は兄さんに甘えすぎて二年前の様になったんです。いい加減独り立ちしないと、示しがつきません」
「そうか。俺も仕事を頑張るから、ダフネも頑張れ」
そうなのだ。兄さんはこの二年で就職した。あの事件以降、何時までも親の財産で過ごして気ままにポケモンを鍛えるのに抵抗が出来たらしい。ようやく軌道に乗ってきた仕事を辞めてまでついてこようとしたのでさすがにキレた。過保護にも程があります。
「そうだ、最近プラズマ団と名乗るポケモン強盗が出没するから気を付けるんだぞ」
「二ヶ月後だというのに気が早いです、兄さん。気を付けますけど」
あと二ヶ月もすれば今期のジムチャレンジだ。それに参加して、ラウラさんやユウリさんをも超えて私がチャンピオンになる。そうすることで、私の蟲ポケモンへの愛を示すのだ。
諸君。私は蟲ポケモンが好きだ。愛している。だからこの愛を持って証明する。蟲ポケモンはかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強なのだと。
同感だ。未だに苦手意識が根付いてしまっているが、私は蟲が好きなのだ。いつぞやのラウラさんの台詞を反芻する。ミニスカートのダフネ。蟲使いとしての私の旅は、ここからだ。
というわけで「二年後」編は更正したダフネが主人公でお送りします。
・ダフネ
14歳→16歳の主人公。二年の間自主的に奉仕活動を行い、ようやく自分を許せたのでトレーナーとして復帰。未だに苦手な蟲ポケモンへの愛を示すためにチャンピオンを目指す。
・ラウラ
12歳(UB事件までの間に一年経った)→14歳の元主人公。マイナークラスのジムリーダーだったが晴れてメジャークラスのジムリーダーへと昇格、ターフジムを任されることに。自分の目的がかかったガチ試合となると遊び心などの余裕が無くなるようになった。ユウリ曰く「目が死んでる」状態。ユウリと同棲していたが独り暮らしに。ターフタウンに駅があればと嘆いている。ユウリに頭が上がらない。
・ユウリ
12歳→14歳の原作主人公。就任してからほぼ三年間、負け知らず(ガラルスタートーナメントを除く)のチャンピオン。ラウラと実家で同棲していた。ダンデには及ばないものの結構な支持を受けている。最近アローラ地方のチャンピオンと伝説ありのエキシビジョンマッチして勝利した。
・ヤロー
ラウラに敗北しマイナークラス落ちしたジムリーダー。モコウとムツキがメジャークラスに上がったことで負けが増えていた。
・ローレル
16歳→18歳のダフネの兄。二年の間に就職した。バウタウン在住で、グソクムシャは第二鉱山で出逢った相棒。今までは亡くなった両親の財産で生きて来ていたがあの事件以降情けなく思い就職した。
・プラズマ団
イッシュで活動していたポケモンを解放しようとする宗教団体。一年前イッシュ地方で首謀者の「ゲーチス」が廃人となり壊滅したはずだが、最近になって何故かガラルで活動を始めた。神出鬼没に現れ「救済」と称してポケモンを強奪しているようだが…?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。