今回はVS本気のマスタード。楽しんでいただけると幸いです。
チャレンジロードを下り、鍛錬平原から集中の森、清涼湿原と抜けてマスター道場に帰還する。途中で何度かメガシンカを試してみたが、気合いが足りないのかウンともスンとも言わなかった。心を通わせると言っていましたが、どうしたものかと考えながらマスター道場に入ると、そこには笑顔の師匠が立って待っていた。
「いぇーい!おかえりダフネちん。いい顔になったねー。ホップちんから色々学んだのかな?」
「はい。おかげさまで。今なら多分、師匠にも勝てます」
「うふふ。いいねいいね~今のダフネちんなら本気で相手しないと失礼だから、ちょっと奥に行こうか」
そう言って道場の奥の扉を開けて裏のバトルコートに向かう師匠に着いて行く。私を左側に立たせると、師匠は帽子を投げつけると、上着を掴み一気に脱ぎ捨てて空中で回転、着地すると構えた。これが本気の師匠…!まるで別人だ。
「言っておくが、本気のワシに勝たねばプラズマ団とやらに挑むのは許さん!力なきものはなにもできんからな!」
「!」
ああ、この人も私を心配してくれている。プラズマ団と対決することを許さないと言うならば勝って、示すしかない。
「お主らの修業の成果、ダイマックスは無しでワシの本気の一体を倒すことで出しきるのだ!ゆけい!ウーラオス!」
そして繰り出されたのは、伝説とも呼ばれるひでんのヨロイ、ウーラオス。以前の私が執着した、伝説そのものの力に震えが走る。全力で挑まねば、勝てない。かくとうタイプなら…!
「イオルブ!サイコキネシス!」
「無駄だ!わしのウーラオスは一撃を極めし悪の拳!念力なぞ効かん!」
「なっ!?」
あく・かくとうタイプ!?サイコキネシスを物ともせず、突進して一瞬で距離を詰めるウーラオス。赤黒い光を纏った拳が振るわれる。
「む、むしのていこう!」
「あんこくきょうだ!」
黄緑色の光を貫通して、グシャリという擬音と共にイオルブの胴体がひしゃげて殴り飛ばされる。なんて一撃の重さ。恐らくあくタイプの技だ、正確に急所をぶち抜いてきた。あれは不味い、でもあくタイプなら…
「アブリー!」
アブリーはむし・フェアリー。あくタイプの技は通じない。これであんこくきょうだは怖くない。
「マジカルシャイン!」
「弱点を突いてきたか!だが弱点を制さずいるのは弱者のみよ!どくづき!」
「しびれごな!」
毒を纏った拳が振るわれ、眩い光が掻き消される。そのまま蛇の様に動いて回避しようとしたアブリーを捉え、毒手が叩き込まれ、崩れ落ちるアブリー。だけど、ホップさんの教えが役に立った。かくとうタイプは距離を詰める必要がある、なら近づいてきたところを麻痺させればいい。
「むう、まひか。わしのポケモン達にろくに当てることもできなかったおぬしが…成長したな!だがまひ程度でウーラオスは止まらぬ!その拳は一撃で全てを打ち砕く!」
「状態異常にできれば格上でも戦えます!グソクムシャ!」
切札であるヘラクロスは最後まで残しておきたい、そう考えてのグソクムシャ。だがしかしやる気を見せてくれない。
「ほう!その気難しい猛者をついに手懐けられたか!」
「そうじゃありませんけど…てっぺき!」
とりあえず防御力を上げようと指示するが、構えてすらしてくれない。やっぱり、駄目なの…?いや、いつかはこの子を御さないといけないんだ。臆してるばかりじゃ、応えてなんかくれない!
「グソクムシャ!お願い、力を貸してください!私のことを許せないのは分かります、だけど……私は、私の大事なクワガノンやアーマルド達を…貴方の友達を取り戻したい!そのために、貴方の強さが必要なんです!」
「まだまだ御せぬか!だが容赦はせぬぞ!インファイト!」
心からの叫び。するとビクッと反応するグソクムシャに、ウーラオスが突撃。拳と脚の猛ラッシュを叩き込み、その衝撃で砂煙が蔓延する。次の瞬間、砂煙から吹き飛ばされて飛び出すウーラオスが受け身を取った。何事かと師匠と共に目を見開くと、砂煙が晴れて腕を振り抜いた体勢のグソクムシャが姿を現す。今のはアクアブレイク?戦って、くれるの…?
「むう、やりおる。やはり手練れか!どくづき!」
「シザークロス!」
毒を両手に纏い突撃するウーラオスと、私の指示通りに両腕を振りかぶるグソクムシャ。振り抜かれた右拳と、両腕の振り下ろしがぶつかるも、左拳が腹部に振るわれ、危険を感じたのかグソクムシャは飛び退き、私に振り向いてきた。もしかして、指示を待っている?
「アイアンヘッド!」
「てっぺき!」
鋼と化した頭部による頭突きと、鋼の如く堅くなった甲殻がぶつかりガキンと鋼鉄がかち合った重い音が響き渡る。これでもグソクムシャとは同じ屋根の下で暮らした幼馴染なのだ。信頼に応えないと、顔向けできない!
「アクアブレイク!」
「あんこくきょうだ!」
赤黒い光を纏った拳と、水流を纏った腕が激突。しかし水流は掃われ、腕を押しのけてグソクムシャの顔面に炸裂する一撃必殺の拳。しかしてっぺきをしていたおかげか、瀕死寸前で持ち堪えて強制的にボールに戻って行くグソクムシャ。ありがとう、後は任せてください。
「行きますよ、ヘラクロス!メガホーン!」
「アイアンヘッド!」
出すなりやる気満々なヘラクロスに応えて指示、頭突きと角がかち合い弾き返される。やはり一筋縄ではいかないか。メガペンダントを握りしめ、集中する。絆…捕まえたばかりのこの子とは、絆はあってないようなものだ。だけど、共通していることはある。それは、強くなりたい、ということだ。
「ヘラクロス!共に、強くなりましょう!メガシンカ!」
瞬間、キーストーンとヘラクロスに持たせたヘラクロスナイトが輝きを放ち、ヘラクロスは虹色の光球に包まれてそのシルエットが変化、光球が弾けてその姿を現した。全体的にマッシブになり、角が新たに巨大な物が増え、背中は黄色く、腹部には排気口の様な器官が現れ、触覚も長く伸びて、細かった腕は丸太の様に太く、強靭に。これが、メガヘラクロス…!
「ほう、メガシンカか。久々に見たぞ。だがおぬしに使いこなせるかな?!インファイト!」
「使いこなして見せます!私達は、貴方を越えて行く!ミサイルばり!」
スマホロトムのポケモン図鑑をちらりと見ると、特性がスキルリンクに変わっていた。連射系の技を最大限に活かせる特性だ。するとメガヘラクロスの腕の爪が引っ込んで砲身の様に変わりそこから凄まじい速度で大量に射出。突撃してきたウーラオスを怯ませ、吹き飛ばす。両腕から射出され続けるミサイルばりは物量を持ってウーラオスを攻め続け、追い込んでいく。
「むうう…なんという力か!」
「これが蟲の底力です!ミサイルばりを維持しながら、メガホーン!」
ミサイルばりを射出し続けながらのしのしと歩き、射程圏内に入るとミサイルばりをやめて突進。二本の角でその胴体を挟み込み、その巨体を上空に投げ飛ばした。なんてパワー…!
「落ちてきたところにインファイト!」
「迎撃しろ!どくづき!」
腹部と腕から蒸気を排出させながら背中の翅を開いて上昇し、排気口から排出する蒸気で勢いを付けた両拳を振りかぶるメガヘラクロスと、毒を纏った両拳を振りかぶるウーラオス。そして猛ラッシュと、毒手の二撃がぶつかり、双方組み合ったまま着地した。
「…むう」
「…ヘラクロス!」
膝をつくウーラオスに対し、毒が回ったのか倒れたメガヘラクロスの姿が虹色の光球に包まれて弾け、元の姿に戻る。同時に、とんでもない疲労感が襲ってきて倒れそうになる。これがメガシンカの…もう一つの心臓を使った代償。これでも、倒せない…なら!
「構えろ、ウーラオス!あんこくきょうだ!」
「グソクムシャ!であいがしら!」
瀕死寸前のグソクムシャが飛び出し、麻痺で動きが止まったウーラオスに渾身の一撃が炸裂。殴り飛ばされたウーラオスは崩れ落ち、戦闘不能となった。
「うむ、うむ!強さとは生々流転。手にしてもすぐ零れ落ちる。だがワシのウーラオスを打ち倒したその強さは今、揺るぎない!……心からおめでとう!ダフネ!お前の旅を認めよう!」
そう笑いながら言ってくれる師匠に、心から頭を下げた。ありがとうございました…!
さすがにマスタードのフルメンバーには勝てない。
・ダフネ
初メガシンカでようやくマスタードに勝利できた主人公。グソクムシャとは寝食を共にした家族だからこその絆がある。ヘラクロスも本来は言うことを聞かないが、共に「強くなりたい」という願いが在るから共に戦える。これがダフネなりの蟲ポケモンとの信頼関係である。
・マスタード
あく・かくとうで相性不利な蟲ポケモンをボコボコにしたやべー人。ウーラオスに勝てればプラズマ団相手でも問題なしと判断した。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。