今回はラウラ視点。二年でなにが起きたのか。楽しんでいただけると幸いです。
ダフネにヨロイ島を紹介し、見送って数日経ってのことだった。
「ねえ、なんか焦ってない?」
それは、チャンピオンの仕事から帰ってきたユウリとのバトル中のことだった。思わず、フシギバナに猛攻を浴びせていたハッサムへの指示が止まり、膠着状態になる。
「どく技を受けないようにハッサムを選んだのはいいよ。でも、粉がかからないように遠くからエアスラッシュ連打なんてラウラらしくないよ。この間のヤローさんとのバトルもそう、まるで何かに焦っているみたいな…」
「………俺らしいって、なんだろうな」
「え?」
そのまま立ち尽くしてしまう俺に、訝しげに首を傾げるユウリに、俺は内心をぶちまけることにした。
「カブさんのジムトレーナー時代を終えてジムリーダーになってすぐ、本気のマイナークラスのジムリーダーと戦うことになって……所詮はマイナークラスだと油断していたら、ボコボコにされて洗礼を受けたんだ。そこで俺は思い出したよ、俺が勝って来たのはあくまでジムチャレンジ用に調整されたポケモン達を使うジムリーダーたちだったんだって」
「……そう、だね。チャンピオンカップで私も本気のジムリーダーと戦った時に比べ物にならない、って思ったよ」
そう言うユウリに「違うんだ」と首を振る。UBやゲノセクト禁止の公式試合に、俺は
「俺らしく戦っていたら、勝てないんだ。メジャークラスの本気のジムリーダーには手も足も出なかった。ダイマックスなしでダイマックスポケモンを倒すなんて以ての他だ。だから、あまりに負け続けて最弱のジムリーダーって言われるようになってから……ユウリに、見限られると思って……方法を変えたんだ」
「私がラウラを見限るなんて…そんなこと、ないよ?」
「それでも、怖かったんだ。お前は俺の強さに惹かれたって言ってたから…こんな弱い俺を、見捨てるんじゃないかって。だから……俺は手段を選ばなくなった」
試合が決まる度に相手のポケモンを調べに調べて、相手の苦手なタイプを揃え、攻撃が届かない安全圏を見つけてそこから機械的に攻撃を浴びせ続ける。楽しむなんて余裕のない、何も面白みがないバトルだ。それからは連勝だ。負け続けていたのが嘘の様に、連戦連勝。蟲ポケモンを使い続けるっていうポリシーだけは崩さなかったが、戦闘スタイルがジムチャレンジ時代とは全然違うことを指摘されることが多くなった。いつしか、自分らしく戦うことを忘れていた。
「………ユウリにはばれちゃうよな。今の、情けない俺に」
「焦ることないよ。ラウラは一対一なら私に勝てるぐらい強いんだから」
「そりゃ焦るさ!モコウもムツキも、俺より後にジムリーダーになってたのに自分のスタイルを崩すことなく連戦連勝であっという間にメジャークラスに行ったんだぞ!?」
そうなのだ。同期のムツキとモコウは俺より後に、キバナのジムトレーナーからマイナークラスのジムリーダーに昇格した。俺と違って才能の塊な二人だ、すぐに追い越されてメジャークラスなんていう見えないところに行ってしまった。それでより焦った。アイツらと並べない俺に何の価値があるんだろう、と。
「…ヤローには悪いことしたよ。楽しむ暇もなく、機械的に倒してしまったんだから」
あの試合は見直したくないぐらいに酷かった。今季のジムリーダー交流戦で一番最低な試合だろう。
「ラウラはしてないから知らないだろうけど、Pocketerも大荒れだったからね…」
「…そう、だよな。メジャークラスのジムリーダーにふさわしくないよな…」
肩を落として落ち込んでしまう俺に、近づいてくるユウリ。顔を上げると、頬に衝撃。思わず尻餅をついて見上げると、ユウリが涙目で怒っていた。
「ラウラの馬鹿!どんな方法でも、私と戦うために、ムツキやモコウと並び立つために、勝ったんでしょ!ヤローさんに勝った、その事実だけは変わらない!なら、ヤローさんの代わりに頑張るしかないじゃない!」
「ヤローの、代わりに…」
「そうだよ!貴女は次のジムチャレンジの一番手、一番多くのジムチャレンジャーと戦うことになる門番なんだよ!こんなウジウジしているジムリーダーと戦ったら、楽しくもなんともない!ポケモンバトルの厳しさと楽しさを同時に教えるのが役目のラウラが、一番楽しまないでどうする!」
その言葉に、目が覚める。そうだ、経緯はどうあれ、俺はターフジムのジムリーダーになったんだ。こんなつまらない勝負なんかしたらダメだ。ジムリーダーは、トレーナーの憧れでいるべきなのだから。
「目が覚めた。俺は、見ている観客が楽しめるような戦いをしたい。ポケモンバトルがつまらないなんて、言わせたくない」
「そうだよ」
「…明日、ビートとのジムリーダー交流戦があるんだ。その時は…昔を思い出して、頑張ってみるよ」
「二年前ってそんな昔でもないけどね」
「生態系が変わるぐらいには昔の話さ」
「???」
「悪い、こっちの話だ」
…俺が言っているのはBW2の話だ。二年の間に生態系ががらりと変わったイッシュ地方と、救済派と野望派に分かれて再びイッシュを襲い始めたプラズマ団。…それも、この世界では一年前にイッシュ地方のチャンピオンのアイリスを倒した一人のトレーナーの手で壊滅したはずだった。それがどういうわけかガラル地方に現れた。
「なあ、プラズマ団について何か知ってるか?」
「なに、藪から棒に。…ソニアさんの研究所を襲ったり、ダフネのポケモンが強奪されたりって話は聞いたけど、私、一度も遭遇したことないんだよね。私が仕事中に限ってプラズマ団が活動していて」
「そうなのか?」
「うん、出くわしたら退治してとっ捕まえるんだけどね」
妙だな。チャンピオンが仕事中に限って活動するなんて、まるで知られているような……でも、一般にはチャンピオンのスケジュールは公開されてない筈だ。まさか、委員会にスパイでもいるのか?
「あー、あと。服装についてはPのエンブレムが目立つ灰色が基調の服装で、フードを被ってるのが特徴って聞いたなあ」
「フード?それは本当か?」
シュバルツが戦闘服みたいなのを着てたからてっきり2の黒ズマ団の残党かと思えばフードだと?それはまるで、1の白ズマ団の様な…だが、確か銀色が基調の服だったはずなのに灰色ってことは……第三のプラズマ団?
「それがどうかしたの?」
「いや、なんでもない。ただ……ろくでもない何かが起きるのは間違いないな。うん?」
そこでスマホロトムが着信を伝えてきて、ユウリに一言いれて出ると、マスタード師からだった。
「もしもし?」
『あ、ラウラちん?ダフネちんの修業、終わったよー』
「ありがとうございます、マスタード師。それで、ダフネは?」
『来た時とは比べ物にならないくらい強くなったよー。本土に戻ってラウラちんに会いに行くって言ってたから準備しておいた方がいいと思ってね』
「なにからなにまでありがとうございます、では」
電話を切り終えると、ユウリがニヤニヤした顔で見て来ていた。
「なんだよ?」
「いいや?面倒見いいなーと思って。ちょっと妬けるなーって」
「俺の一番は何時だってユウリだよ。お前がいないと俺は何もできない」
そう言うと顔を赤らめるユウリ。いい加減慣れてくれないかね、告白してきたのはそっちだぞ。
「えへへ。うーん、やっぱりさ。私もラウラから離れたくないから…ターフタウンにできるっていうラウラの家に、私も住んでいいかな?」
「え」
「別居して浮気されても困るしね!」
「お、おう」
どうやらまだ続くらしい同棲生活。やきもちを妬くユウリが可愛いけど早く籍を入れとこう、と決心する俺であった。…なんか、焦っていたのが本当に馬鹿みたいだ。
というわけで、ジムリーダーの現実を思い知らされてやり方を変えていたってのが真相でした。
・ラウラ
ムツキとモコウに置いて行かれた焦りから自分らしく戦うことを忘れていた元主人公。ユウリに見限られることが一番怖い。ユウリの喝で目を覚まし、「最初のジムリーダー」として自覚した。
・ユウリ
ラウラの家に同棲することにした原作主人公。プラズマ団とは一度も出くわしてないが、なんとかしなきゃと考えている。例えラウラが迷走しても支えるつもりの良妻(まだ籍は置いてない)。
・新生プラズマ団
灰色を基調とした戦闘服の上からフードを被った、1と2を合わせた様な服を身に纏っている。フードとマスクの二乗で顔がよくわからない。「どちらでもない」ことに意味がある。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。