私の響転は十刃中最速です(ソプラノ)   作:バラフバフ

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褐色で最速ってんなら……ねえ?
そらあさあ、ねえ?
葬討部隊とかあるし、ねえ?


第1話

「ハアッ……ハアッ……」

 

一体の破面(アランカル)が砂漠を駆ける。

 

「やった……ハアッ……じ、自由だ……フウ……」

 

彼は藍染惣右介が居城、虚夜宮(ラスノーチェス)からの脱走兵である。藍染が虚圏に現れ、多くの虚が新たな力を求め彼の下へと集まったが、力を得ながら彼の兵として戦うことを厭うもの、また彼の圧倒的な力を恐れるものは度々脱走兵として現れていた。

 

しかし

 

「………いけませんね」

 

「!?」

 

それを許すような藍染ではない。規律を統制する機関も当然ながら存在する。

 

「……藍染様の指令もなくどちらへ…など、訊くまでもありませんか」

 

「エ、葬討部隊(エクセキアス)隊長……ゾマリ…ルルー……!」

 

「おや、第7(セプティマ)十刃(エスパーダ)より先にそちらが出ますか……葬討部隊も名を上げたということでしょうかね」

 

彼の前に現れたのは浅黒い肌に長い白髪、そして首には骨が連なってできたような首飾りをつけた長身の女性。彼女の名はゾマリ・ルルー。第7十刃にして葬討部隊、虚夜宮における治安維持組織を率いる隊長である。

 

そして、彼女の前には裏切者が一人。

 

「さて、大人しくしていてくださいね……動かれると面倒なので」

 

「な、舐めるなァ……!」

 

件の破面にも力を得たという自負がある。すぐさま響転(ソニード)でゾマリの背後へと回ると斬魄刀を抜き放ち、彼女の首に横なぎに振るう。すると、容易く刃は彼女の首を通る。

 

「は?」

 

喜びよりも驚きが勝る。困惑する彼、その後ろから

 

「……肩書と名前は知っていても、私の能力までは知らないようですね」

 

「!?」

 

目の前にいるはずの相手の声が響く。恐る恐る振り向くと

 

「え?」

 

そこには彼女が()()()()いた。

 

「は?ふたっ……え?」

 

「…まさか、私に対し、響転で挑もうとは……」

 

困惑する彼を他所にゾマリは静かに告げる。

 

「改めて名乗りましょう……私はゾマリ・ルルー…”最速”の十刃です」

 

言葉と共に件の破面の首が飛んだ。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

斬魄刀についた血を払い、慣れたしぐさで納刀するゾマリ、するとそこへ

 

「……殊勝なこったな、ええ、オイ?流石媚びることにゃ並ぶ者のねェ七番サマだなァ」

 

「………」

 

痩身長躯の男性破面、第5(クイント)十刃(エスパーダ)ノイトラ・ジルガが姿を現した。ゾマリは彼を一瞥すると不愉快そうに眉を顰め、その場から立ち去ろうとする。

 

「待てって、犬っころ」

 

その背にノイトラが声をかける。すると、しぶしぶと言った様子でゾマリは立ち止まり、彼へと半身で振り返る。

 

「……何か?私も暇ではないのだが」

 

目線だけノイトラに向けるゾマリ。それに青筋を立てながらもノイトラは揶揄うような調子を崩さず話しかけ続ける。

 

「…オイオイ、カリカリすんなよ…お前が手柄欲しさに必死こいて駆けずり回ってんのが、あまりに惨めだからよォ……心配してやってんだぜ?」

 

ゾマリは眉を顰めながら、努めて冷静に返す。

 

「……それはどうも…しかし、このように開けた場では……

 

 

騙し討ちは難しいのではないか?」

 

 

「っ!?てめえ!」

 

ゾマリが言葉を放った瞬間、ノイトラは斬魄刀を振るうも既にゾマリの姿は無く、斬魄刀は空を切り、地面に突き刺さる。

 

「………チッ………気に食わねえ……」

 

ノイトラは地面から斬魄刀を引き抜くとその場を後にする。その瞳に深い怒りを湛えたまま。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

響転を駆使し、ゾマリは自身の宮へと向かう。

 

第7十刃であり、かつ虚圏に規律を敷く葬討部隊の長を務める彼女、その思考は

 

(やっべー、ノイトラと話しちまったよ、かっけーなアイツ……まだ正面から見ること出来ねえや)

 

低俗でガチにくだらないものだった。

 

彼女、ゾマリ・ルルーは『BLEACH』を創作物として読んでいた転生者である。先の思考内容からも分かるように、ゾマリは緊張感ゼロの転生エンジョイ勢であったため、生き残るためにどうだとか、誰々の死を回避したいだとか、そんな考えは一切なく、ただ原作のキャラを間近で見てえやウッヒョーぐらいな適当な意思でこれまで生きてきた。

 

彼女が葬討部隊の長の座についているのも、原作キャラといっぱい絡めそうだなーあっははーぐらいな気持ちから、原作での葬討部隊の長、ルドボーン・チェルートが藍染に当部隊の設立を奏上する際、ちゃっかり彼との連名を申し出たからに過ぎない。

 

 

虚夜宮、第7十刃の宮。ゾマリが帰還すると山羊の頭骨のような仮面をつけた破面が出迎えた。

 

「ルルー様……お待ちしておりました」

 

「……ルドボーン、ご苦労……待たせてしまってすみません。少しゴミ掃除に時間を取られました」

 

彼こそ先述のルドボーン・チェルート、現在は葬討部隊副隊長とゾマリの従属官(フラシオン)を兼任している。

 

「ああ、十刃であらせられるのに、何故そうも勤勉に……」

 

ところで、この虚圏、とにかく娯楽が少ない。見渡す限り一面の砂漠、藍染の指令がなければ殺し合うとか性に耽るとか、それぐらいしかやることがないのが破面というものである。

 

よってゾマリにとって、ロールプレイを楽しめ、かつ雑魚相手にイキれる裏切者の処刑は娯楽の類であり、別に藍染への忠誠心ゆえとかそういった意図は一切ないのだが

 

「…貴女様こそ、忠臣の徒。このルドボーン、感服いたしております」

 

哀れルドボーンが感涙に咽ぶ……いや、実際に涙が見えるわけではないのだが。

 

ふと、ゾマリが何かを感じ取ったのか、宮の外へと視線を向ける。

 

「?どうされましたか?」

 

ルドボーンが怪訝そうな顔で問いかける……いや、実際に顔が見えるわけではないのだが。

 

「………ふむ……いえ、そろそろ藍染様に現世への休暇でも申し出ようかと思いましてね」

 

「……休暇?ですか?」

 

ゾマリの答えにルドボーンはますます不可解そうに眉を顰める……いや、実際に眉が(以下略)。

 

ゾマリの視線の先では一体の下級大虚(ギリアン)黒腔(ガルガンタ)を開き、現世へと顔を出していた。

 

彼女の言葉の真意とは

 

(やっべー、あれ、石田雨竜とのくだりであったイベントじゃね?出遅れたわー、一話見逃したじゃねえかーくっそー。虚圏いると時間の感覚マヒしちまうからなー……うっし、白哉の辺りはぜってー見逃さねーぞ!)

 

またもや、くっだらない野次馬根性に過ぎなかった。

 

 

 

 

 

 

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