私の響転は十刃中最速です(ソプラノ)   作:バラフバフ

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第2話

「ぁぁぁぁああああああああ!!!」

 

雨の中、黒崎一護の己の無力に対する怒りの慟哭が響く。

 

それを遠くから見つめる小さな影が一つ。

 

「………喜助の目論みは外れたか…」

 

黒猫の姿に変化した四楓院夜一である。

 

彼女は浦原喜助が一護の元へと向かったのを見届けるとその場を後にしようとした、

 

その時

 

「……おや、もう終わってしまいましたか………ハア……」

 

「!?」

 

突如として彼女の前に白髪に褐色の肌の女性が姿を現した。彼女は外見こそただの猫であるが、その正体は手練れの死神、それも隠密技能のプロフェッショナルであり、気配を察知することに関しては死神の中でも特に秀でている。そんな彼女が目の前に現れるまでその女性の出現を察知できなかったのだ。

 

よく目を凝らせば女性の背後には黒々とした穴が虚空に浮かんでいた。

 

(…これは!?……大虚の……此奴)

 

「貴様……何者だ」

 

「……ん?」

 

警戒を強める彼女を他所に暫く独り言を呟き続けていた女性だが、視界の端で動く黒い影にようやく気付いたようだ。

 

「……おやおや、参りましたね」

 

どうやら、夜一の存在は女性にとっても想定外だったようで、少し困ったように眉を顰める。

 

「……警戒は不要ですよ。此度はただの様子見に過ぎませんから」

 

しかし、その言葉鵜呑みに出来るわけもなく、夜一は臨戦態勢に入る。

 

「…ハア、どうしてもと言うのなら……」

 

女性が言葉を続ける前に夜一が攻撃を仕掛ける。猫から人(全裸)へと変化しながらの奇襲

 

「!?」

 

虚を突かれた女性の無防備な首に夜一の蹴りが放たれる。そして

 

その蹴りは容易く女性の首を吹き飛ばした。

 

「は?」

 

あまりに呆気のない幕引きに動揺する夜一。しかしその背後から

 

「…随分と乱暴ですね」

 

「!?」

 

件の女性の声が聞こえた。

 

急ぎ背後に蹴りを放つも、今度は相手を捉えることはなく、空を切る。

 

「……またですか…ハア……やはり死神は野蛮極まりない」

 

相手の能力がどんなものかは分からないが、少なくとも相手は自身の、即ちかつて瞬神と称された最速の死神の攻撃に反応できるほどの実力者であるということは確かである。夜一は警戒度を一層引き上げる。

 

「…戦うというなら構いませんが、しかし…」

 

相手は言葉を止めると視線を夜一の周囲に向ける、すると

 

「!?」

 

彼女の周囲の空間に突如ヒビが入り、巨大な腕が複数出現し、彼女へと迫る。

夜一はすぐさま回避行動をとり、少し離れた位置から先程まで自身がいた位置を見るとそこには

 

「な……これは……!」

 

無数の下級大虚の姿があった。

 

「これほどの数の大虚を……貴様、一体……」

 

「さて、ここは退いて頂けませんか?私もあまり事を荒立てたくはないのですよ」

 

相手は相当の実力者、さらには大量の大虚もいるとなれば、その言葉に従う他なかった。

 

黙って見送る夜一を背にゾマリが再び虚空に穴を開け、その場を後にしようとする。ふと、思い出したように振り向くと

 

「ああ、そういえば…何者か、でしたね……名乗っておきましょう、

 

私はゾマリ・ルルー……今はこの名だけでご容赦を…またいつか」

 

謎の存在、ゾマリ・ルルーはそれだけ言い残すと虚空に消えた。

 

夜一の心に不穏な翳を残して。

 

 

 

「あれ?……夜一サン…怪しいとは思っていましたが、やっぱり露出性癖が……あ痛ッ」

 

「…馬鹿なことを抜かすな……伝えることがある」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

虚夜宮。

 

「ああ…クッソ……暇だァーーーー」

 

第10(?)十刃ヤミー・リヤルゴは悪態をつきながら宮内を歩き回っていた。娯楽の少ない虚圏。藍染からの指令がなければ食って寝る以外にすることないヤミー。

 

「ん?」

 

ふと、前方に見知った顔を見つけた。

 

「……チッ、ゾマリか………」

 

先ほど現世より帰還したばかりのゾマリ・ルルーであった。

 

(…ただでさえ死ぬほど退屈な時に……よりにもよって死ぬほど退屈なヤロウに出くわしちまった)

 

ヤミーにとってゾマリ・ルルーほど興味を惹かれない存在もなかった。感情のない人形を気取るウルキオラのような面白さもない、ただ藍染に唯々諾々と従うだけの薄っぺらい存在。顔を見るだけで退屈な気分に拍車がかかる気さえするので、無視して通り過ぎようとした。

 

「…ん?」

 

しかし、ゾマリから声をかけられることはなかった。ゾマリは礼節を重んじる女であり、このように何も声をかけないということも珍しかったためヤミーは思わず彼女へと視線を向ける。

 

 

ゾマリは笑っていた。

 

 

心の底から嬉しそうな、しかし、華やかさなど一欠片もない、ただただ醜悪で粘ついた欲望が滲む下卑た笑み。彼女は堪えきれない喜びを抑えることに精一杯で周りなど全く見えていない様子である。

 

普段の能面のような無表情とはかけ離れたその姿。

 

ヤミーはすぐにまた前方へと向き直り、歩みを進める、しかし

 

(………なんだよ…あんな表情も出来んじゃねえか……)

 

人知れず、ゾマリに対する評価を上方修正し、退屈が少し和らいだことにほくそ笑むのであった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

ゾマリ・ルルー、その邪悪な笑みの裏に隠された真意とは

 

(やっべー、夜一さんえっろ!!)

 

実際醜悪で下卑た内容だった。

 

 

 

 

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