Persona 5 / Your Friendly Neighborhood   作:あおい安室

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大変長らくお待たせいたしました。
次回更新も……多分お待たせしそうですが、読んでくださるだけでとてもうれしいです。
今回の話も楽しんでいただけると幸いです。



MiSSiON STaRt ! / 動き始めるヒーロー達

 20XX年9月17日、純喫茶ルブラン屋根裏部屋。

 

 心の怪盗団のアジト兼雨宮連の自室となっているそこに怪盗団の全メンバーが集っていた。事前に話は聞いていたけど見るからになかなかに個性的なメンバーだ。スーツを脱げばさえない高校生のボクとは大違いな君たちなのによく正体バレないね。

 

「私一人の調査であっさり正体がバレたことがあるけどね」

 

「それは真の調査力が高かっただけなんじゃ……」

 

「実際のところバレたのはリュージの不用意な発言が原因だけどな」

 

「し、仕方ねぇだろ!まさか聞かれてるとは思わなかったんだし!」

 

「今の時代はどこに目があるかわからないからね。アメリカも日本もそこは変わらないからヒーローにはやりにくい時代だよ。公衆電話でヒーロー姿に着替えるのも難しいか」

 

「警察に通報すればそのまま不審者として連行もワンチャン」

 

 そうなったらスパイダーマンの名前は数十年間笑いものにされかねないぞ。この時代も悪いことばかりじゃないんだけどね。やれやれ。肩を落としながら席に着き同じテーブルを囲む。

 

「それじゃ、改めて。ボクはピーター・パーカー。アメリカ、ニューヨークのマンハッタンにあるミッドタウン高校に通ってる高校二年生だから君たちと大体同い年で、その正体は――」

 

 スパイダーマン。

 

 蜘蛛の巣をモチーフにした装飾、闇に輝く白い瞳が特徴の赤いマスクをちらつかせながら正体を語った。ただの高校生に着替えて出直してきたボクを見た時点で察しただろうけどね。

 

 


 

 

 スパイダーマンとの一時的な協力体制、そしてパレス攻略に同行する件について怪盗団のメンバーは了承してくれた。マスクを脱いで素顔と正体を明かしたことも効果的だったけど、

 

「ジョーカーが、俺たちのリーダーが信頼するのなら俺たちも信頼する」

 

 とのこと。硬い信頼関係で結ばれている彼らが少しうらやましいよ。ボクの信用している仲間といえば……ワタナベ警部をはじめとした一部の警察くらい?量はともかく質で負けた気がする。

 

「よし、これで全員揃ったな。状況を確認していこう」

 

 ジョーカー、もとい雨宮君が皆を見渡して声をかける。怪盗団の参謀であるという一歳年上の女の子、新島真が何枚かの資料をテーブルの上に置いていくが日本語で書かれているからボクにはほぼ読めないのがネック。マスク被らないと翻訳機能使えないからなぁ。

 

「今回のターゲットはミステリオ。本名はクエンティン・ベック、昔ハリウッドでSFXをはじめとした特殊効果で名をはせた男で日本で公開された映画でも何本か彼が関わった映画があるわね」

 

「私もネットで調べたら見たことがある映画があってびっくりしたよ。ほら、中学一年の頃にやってたパニックジュラシックって映画あったでしょ?恐竜が大暴れして研究所を壊すシーンでの爆発や食い殺される研究員はミステリオの演出らしいよ」

 

「あーっ、あれか。すっげえ迫力だったのは覚えてるわ。もしも恐竜が現実にいたらーって考えてよく眠れなかったっけな」

 

「ただし肝心のシナリオがいまいちだったから本国では不評。派手なアクションと演出は日本好みだから日本ではそこそこ高評価みたいね……まあ、日本でもシナリオはやっぱり不評だけど」

 

「技術はあっても作品として世に出る場所が悪かった……ということか」

 

「そういうことだよ、フォックス――おっと、喜多川君だったっけ」

 

「ああ、喜多川でも祐介でも構わない。後で一枚スパイダーマンの絵を描きたいんだ。機会があればよろしく頼む、ピーター」

 

「No problem.その代わりかっこよく描いてくれよ」

 

 拳を突き出すと、喜多川君がそれに合わせる。契約成立、なんてね。新島さんが咳ばらいをしながら睨んできたのでミステリオに関係ない話はこの辺にしよう。

 

「で、演出家としていまいちパッとしなかった彼は特殊効果の才能を生かしてヒーローになろうと考えた。そこで目を付けたのがスパイダーマン、つまりボクね。スパイダーマンに成りすまして悪事を働いてからの「ミステリオ参上!覚悟しろスパイダーマン!」的な感じでスパイダーマンを倒して有名になるつもりだったんだ」

 

「うわっ、典型的なマッチポンプじゃん。その時は大変だったんじゃないの?」

 

「本当にね。全く、弁護士の一人でも雇ってこういう偽物に対処してもらおうかと思ったよ」

 

「そういう手もあるのか……もし怪盗団の仲間増やすとしたら、弁護士探す?」

 

「竜司。ピーターは冗談で言ったんだと思うが。後政治家の知り合いはいても弁護士はいない」

 

「わ、わかってるっての!てか政治家の知り合いがいる蓮もスゲえよ……」

 

「微妙に面白くないジョークはその辺にしましょう。ピーター、ミステリオの能力について詳しく解説を頼んでもいいかしら。イセカイにミステリオがいるってことは戦うことになるでしょうし」

 

 ぐぇっ、新島さんが辛辣だ。言わなくてもいいだろ。

 

「OK.ミステリオの能力を一言で言うなら幻術だ」

 

「幻術かぁ……私のペルソナが使うテンタラフーみたいなものかな」

 

「テンタラフー?」

 

「あっちの世界、つまりイセカイで使える魔法で相手を混乱させる作用があるみたい。後で私たちが使える技の名前と効果をリスト化して送りましょうか?」

 

「そういうことね。リストも後でもらうよ、新島さん。ミステリオの場合はテンタラフーを使ってくると思えば間違ってはないと思う。正確には特殊な薬品が調合されたガスをスーツから噴射して相手にいろいろな幻覚を見せてくるんだけど……残念だけど対策は結構難しいかな」

 

「難しい?あのスパイダーマンでもか?」

 

「ミステリオに目をつけられてるスパイダーマンだから、だよ。研究し尽くして改良したガスを使ってくるから、マスクを二重にしても完全には防げない。厄介なことにあいつのガスを吸ってるとボクが持ってる危険感知能力スパイダーセンスが不調になるくらいだし効果はかなり危険だ」

 

「ってなるとイセカイでも同様かも。おイナリや真はあっちだと結構攻撃かわしてるけど、勘が鈍って回避能力が落ちるかもだ。永続デバフってやつかな」

 

「ガスの効果で幻覚が見えていたとしたら距離感もつかめん。物理攻撃に頼ることも多い俺にとっては厳しい相手だな」

 

「残念なことにガスの効果を無視できたとしても、あいつは精巧なホログラム発生装置を持ってる。ジャパニーズコミックで例えるとニンジャの分身の術みたいなことしてくるよ」

 

「薬で脳を騙し、映像で目を騙す、ってか。やれやれ、ガスをワガハイのペルソナで吹き飛ばしたとしてもそう簡単にうまくいきそうにないぜ」

 

「で、それはあくまで現実世界での話だろ?あの鴨志田のスパイクがイセカイだったらすごく強化されてたみたいに、ミステリオの幻術もイセカイなら強くなってそうだ」

 

「リュージにしては賢いじゃねぇか」

 

「うっせぇ!」

 

「とにかくガスに対して何らかの対策が必要だな。使えそうな装備を後で探しておく」

 

「じゃ、私はホログラムの方で何か対策できないかちょっと考えてみる。ナビの方もジャミング対策必要だしこれは骨が折れそうな予感だなぁ……チラッ」

 

「……ついでにお徳用うみゃあ棒も買ってくるよ」

 

「ヨシッ!」

 

 ガッツポーズする佐倉さん。隣にいた坂本君にいつもこうなのか、と耳打ちして聞いてみる。佐倉さんは雨宮君の保護者の娘ということで、ちょっとした兄妹みたいに懐いているらしい。

 

「ターゲットについてはこれくらいでいいだろう。それでミステリオは今回のスパイダーマスク騒動の推定首謀者かつ、アメリカでもすでに悪事を働いていることから改心対象としては問題ない」

 

「で、後は念のために全会一致を取るんだが……これ、スパイディには言ってなかったか?」

 

「初耳だね。詳しく聞かせてよ」

 

「俺らは元々性根が曲がった大人に苦しめられた経験があったんだよ。そんな俺たちが心の怪盗団を始める時に、改心させる相手は大物を狙おう、って話があった」

 

「そうすることで心の怪盗団が有名になって、困っている人を勇気づけられるって考えたの。ただし、誰彼かまわずにターゲットを選ぶんじゃなくて、皆が改心に賛成できる相手を選ぶ」

 

「故に心の怪盗団が改心を行う際は相手が行っている悪事の規模にかかわらず全会一致という方法をとっている。これなら俺たちが進むべき道を誤ることもないだろう」

 

「誰か一人なら道を間違えてしまう時も仲間が止めてくれる。そう信じあえる私たちならではの掟、かしらね」

 

「人呼んで心の怪盗団鉄の掟!だ。ヒーローにはこういうのつきものだからなー。初めて聞いた時はちょっとだけワクワクしたのを覚えてるぞ」

 

「――Amazing」

 

「え?」

 

「あ、いや。純粋にすごいと思っただけだよ」

 

 全会一致。心の怪盗団ならではの掟であり、基本一人のボクには、スパイダーマンには縁がない言葉だ「お互いに監視しあっているだけで犯罪者であることに変わりはない」なんてジェイムソンは笑うかもしれないが、彼らの心が生み出したその掟がうらやましかった。

 

「ミステリオは……あいつとは何度もやりあってその技術力には舌を巻くことが何度もあった。どうしてそれを映画を作る才能にとどめられなかったのか、と。改心させることで罪が消えるわけじゃないけれど、少しでも正しい道へ進んでくれるというのなら。改心させることに賛成だよ」

 

「決まりだな。パレスに侵入する時はこちらから招集をかける」

 

「で、ボクは人通りが多いところでウェブスイングすればいいのかな。それで大衆の認知をスパイダーマンがいる場所に上書きして、パレスへの侵入条件を整える、だろ?」

 

「すげぇなスパイディ。理解するのが早いぜ」

 

「HAHAHA.こう見えても地元では結構頭いいんだよ?ひねくれたヴィランが出してくる謎解きはもちろん、蜘蛛糸を発射する装置やいろいろなガジェットを作ったりと技術力も抜群だからね」

 

「いろいろな意味で漫画の中から出てきたヒーローね、あなたは……」

 

「あ、そういえばふと気になったんだけど、ピーターは学校どうしてるの?私たちと同じ高校生っていうことはアメリカでも学校が始まってるんじゃ?」

 

「ヴィランが大暴れして校舎が崩壊したからまだ休校中なんだ。後一、二週間すれば校舎の修理も終わって授業が――」

 

 そこまで言った時、スマホが軽快な着信音を鳴らす。よくあるアメリカの人気曲のメロディと共に画面にはJJJの文字。ジェイムソンからの着信だ。

 

「ごめん、ちょっと電話するから静かに」

 

 口に人差し指を充てるジェスチャーをして、皆がうなずいたのを見てから少し離れる。そして、電話に出た――あ、ジェイムソンとの電話は英語なんだけど、描写上は日本語ね。

 

「はい、パーカーです」

 

『出るのが遅い!』

 

「ここは外国、日本ですよ?そりゃあ電話にもズレがあるんじゃ……」

 

『そんなもんあるわけないだろ。私が今どこにいると思っている。日本だ!日本の東京だぞ!』

 

「えええっ!?ジェイムソンさんも日本に来るとか、そんなこと聞いてないですよ!」

 

『突然決まったことだからな。それに事前に言っておけば焦って怪盗団に関する資料を書き上げようとするだろう?そうやって作った資料はどこかにボロがあるもんだ。いきなり見に来てやれば進捗も確認できるからな。で、どうなんだその辺は?』

 

「そ、そりゃあもう完璧……あ、いや、8割、7割くらいですかね?」

 

『私に聞くんじゃない!はっきり言え、馬鹿者!』

 

「情報をまとめた分は7割がたで、班目一流斎宛ての予告状を入手したりと順調です、はい」

 

『ほぉー、予告状を入手したのか。そこは褒めてやる……と言いたい、が。お前うちの新聞でいつ心の怪盗団特集をやるのか忘れてないか。今週だぞ、今週!というか今日だ!』

 

 ヤバイ、スパイダーマン活動をいろいろ頑張りすぎて完全に忘れてた!

 

『どちらにせよ今週はシニスターシックス特集をやる予定に差し替えたから問題はないがな。来週には記事を完成させる必要があるから早急に本社に送れ。お前の滞在期間も後一週間だってこと、忘れるんじゃないぞ!』

 

「りょ、了解です!……で、何しに日本へ来たんですか?」

 

『そんなことを知りたいのか?テレビだよ。日本のテレビ番組にスパイダーマンの専門家として呼ばれただけだ。断るつもりだったが本社の連中がぜひ行って来いとうるさくてな』

 

 ……それ、本社の人がジェイムソンがうるさいからどこかにどけたかったんじゃないの?

 

『何か言ったか?』

 

「いえ、何も。今取材中ですのでこの辺で」

 

 電話を切る。溜息を吐く。ややこしいことになってきたぞ、これは。

 

「あー、えーっと……なんか怒られてるのはわかった!お疲れ様」

 

「当たり。スーパーヒーローと学業を両立させるのにはお金が足りなくてね。それで新聞会社でカメラマンやってるんだけど、学校が休校中だからって上司に日本に怪盗団の取材に行ってこい!って言われてるんだよ」

 

「マジか……どこの国にもクソな大人はいるもんだな。って怪盗団の取材ィ!?」

 

「今こうして普通に素顔さらしてるけど、私たちの正体も記事に書くの!?」

 

「書かないってば。ボクだってスパイダーマン、世間に正体を隠すマスクヒーローだよ。もしも正体がバレたら周りの人に被害が及ぶってことは自分でもよくわかってるから」

 

「……なるほど。私たちの正体をあなたは知った、あなたの正体を私たちは知った。互いにバラしたら危険が及ぶ秘密を持つことで抑止力になるってわけね」

 

「そういうこと。記事の方は普通に取材して手に入る情報の範囲で済ませるから安心してくれ。何なら下書きを送るけど、当然全文英語なのが問題かな。怪盗団に読める人いる?」

 

 すっと手を挙げたのは4名。おお、英語に強い人多いね。グローバル怪盗団だ。

 

「パパっとピーターのスマホをハッキングしておいて私たちのチャットへ加入させておいた。そっちに下書きを送れば皆見れるし問題ないぞー」

 

「またハッキングされてるのか……やれやれ、後でスマホのセキュリティ強化しておかなきゃ」

 

「ふっふっふ。超える壁が高いほど燃えるっていうことを教えてしんぜよう」

 

 今もノートPCをカチャカチャ叩いている佐倉さん。やれやれ、天才ハッカーとは言っていたけどここまでとは。スーパーヒーローであるボクも負けていられないね。

 

「程々にしておけよ、双葉。ところでさっきの会話の中で一週間がどうとか言ってたがなんだったんだ?」

 

「おっと、そうだった。日本には取材で来てるから滞在期間が決まっててね。こっちの時間で言うと25日の朝の便でアメリカに帰る予定なんだ。……ってことはパレス攻略できるのは24日がリミットになるか。ごめん、重要なことをもっと早く言っておくべきだった」

 

「気にするな、ピーター。皆、今までのターゲットは大体二週間は猶予があったが一週間となると急いで解決する必要がある。いつでもパレス攻略できるように準備を整えてくれ」

 

 雨宮君の号令にみんなそれぞれに返事を返す。OK、MiSS iON STaRt!

 

「……ってあれ?そういう話をするっていうことは今から行かないの?」

 

「その気持ちはわからなくもないが、イセカイに行ってワガハイ達はペルソナという心の力を使役しているだろ?だから心身ともに相当疲労するんだ。一日に二度もイセカイに侵入するっていうのは安全面から考えてお勧めしないぜ」

 

「死んでしまえば俺たちはそこで終わる。時間的に余裕は少ないが無理をするべきではないだろう」

 

「そうそう。ペルソナを使うとその日の夜っていまいち頭が回らなかったりするし。おかげで勉強もなかなか進まなくて……ピーターもヴィランと戦った日はゆっくりベッドで寝たくならないの?」

 

「気持ちはわかるけども……まだこれからヴィランと二、三戦こなせそうなくらいには体力余ってるんだよ。そんなに言うほど疲れる?」

 

「蓮、聞いたか。本物のスーパーヒーローは言うことが違うぜ」

 

「ヒーロー業を続けるうちに疲労感覚マヒしてないか、ピーター」

 

 蜘蛛の力で身体能力がかなり上がって以来そんなに気にしたことがなかった。今後肉体労働した後は反応に気を付けよう。思わぬところから正体がバレかねない。

 

 


 

 

 20XX年9月17日、渋谷、セントラル街。

 

 今日は解散して、明日から本格的にパレスの攻略を開始する。会議の最後にそれを確認した後ボクはピーター・パーカーの姿で渋谷のセントラル街に来ていた。

 

「Wow、なかなかの人通りだ。っていうかここもかな。日本に来てから人通りが少ないところってあのルブラン周辺みたいな裏通りでしか見てないんだけど」

 

「東京が特にそういうところってだけよ。ちょっとした国レベルの人口があるし」

 

「よく目立つようなことでもなけりゃ周囲の人にも目を向けねぇし、気にしなくていいぞ」

 

「さっき通り過ぎた駅前広場があるだろう?あそこからある人物のパレスに入ったことがあるが、特に見つかっていない。ミステリオのパレスもあそこから入ったな」

 

「なるほどね。じゃ、気楽に行こう」

 

 それに同行するのは雨宮君と新島さん、そして雨宮君のバッグ入りのモルガナ。あのバッグの中モルガナが入ってたとは驚きだ。しかも、現実でのモルガナの姿は猫そのものだったし。イセカイでモルガナがしゃべったのを聞いたおかげでこっちでも普通に話せるのも驚き。

 

「オイ、ワガハイは猫じゃねぇぞ」

 

「なんでわかったのさ」

 

「勘だ。怪盗団古参メンバーなめんなよ」

 

 ……古参?

 

「最初の頃は俺たちは4人だけだったんだ。俺、モルガナ、竜司、杏。他の三人は後から加入したメンバーだ」

 

「祐介、私、双葉の順に入ったからこう見えても結構新入りよ。それにしてもセントラル街を歩いていると懐かしくなるわね。まだ三か月くらいしか経ってないのに私が仲間に入ったのが何年も前の出来事みたいに思えるわ」

 

「ほほう……面白そうな話と見た。時間がある時に取材させてほしいな」

 

「ええっと……ごめんなさい、取材拒否で」

 

「あの話をするとなれば真がキレた部分を含むからな」

 

「人が濁したことを言わないで」

 

「向こうでの姿を考えたら大体察した。雨宮君と合流する前にはバイクで追いかけてきていきなり背後からドカンとやってきた新島さんだ、ド派手にやったんじゃないの?」

 

「……真?」

 

「あ、あの時はモルガナがさらわれたと思ってつい……」

 

「状況的に仕方なかったのはわかるが、死ぬかと思ったぜ……ワガハイはマコトが使う核熱属性の耐性持ってないからなぁ。弱点じゃないだけマシか」

 

 ウェブスイングしていたらいきなり爆発が襲ってきた時は驚いたよ。一歩間違えれば背負っていたモルガナといっしょに焼き蜘蛛と焼き猫になっていたところだ。

 

「と、とにかく。ロシナンテに用があるから後は別行動ね。それじゃあまたアジトで」

 

「ああ。取材の件、考えておいてね」

 

 ひきつった笑顔が返ってきた。ダメっぽいね。肩を落としながら蓮と一緒に路地裏へと入っていく。そこにあるのは小さなミリタリーショップ、Untouchable。

 

「ここが例の店?」

 

「そうだ。モデルガン以外にも防具やライト、マスク等を取り扱っている。向こうではどれだけリアルに作られているかによって性能もだいぶ変わってくる。そういった品物を取り寄せたり、あるいは売却する際に使っている。ここならピーターが探している素材もあるんじゃないか?」

 

「見てみる価値はありそうだ。助かるよ」

 

 パレスの攻略にあたってとある疑問があった。イセカイでは認知が力になる世界であり、ペルソナを持っていないボクがあそこまでシャドウと戦えたのはスーパーパワーだけでなくスパイダーマンのスーツにスパイダーマンは超人的な力を持つという認知がかかっていたのではないか、と雨宮君とモルガナは推測した。ということは、スーツを強化すればパワーアップできるのではないか?

 そこで何かスーツの強化に使えそうな素材を売っている場所がないかと相談して今に至る。

 

「いらっしゃい……ってなんだ、お前か。店を手伝いに来たのか?生憎だが今日は特に任せられる仕事はないぞ」

 

 店内に入るとたくさんの銃や軍人風の服装と共に帽子を被ったコワモテのおじさんがお出迎え。おお、いいねこういう危ない雰囲気。ニューヨークで戦ったマフィアのアジトを思い出すよ。

 

「いえ、今日は友達を連れてきました」

 

「初めまして、パーカーです。日本にはちょっとした観光で来てます。彼からすごく品ぞろえがいいミリタリーショップがあると聞きました」

 

「……そうか。俺は店長をやってる岩井ってもんだ。こんな小さな店だが質は保証するぜ。で、何を探してるんだ?銃か?ウェアか?」

 

「どちらもかな?向こうではそれなりにイジったりしてるからパーツとか使えそうなモノを見に来たってところ。ただ貧乏だからジャンクから組んでたことが多くてね」

 

「ほぉ、自前でカスタムする派か。雨宮の紹介だから腕は信頼するが国に持ち帰る時に面倒を起こすなよ。一応うちもカスタムで生じた余剰パーツや破損品をいくらかまとめてはいるが何が起きても自己責任だ。わかったな」

 

「イエッサー」

 

 さっと敬礼してジャンクパーツを見に行く。構造次第だけどウェブシューターの強化や予備のシューターが作れるかもしれない。しっかりと見ていこう。

 

「……で。雨宮。おまえあいつにうちをどんな店として紹介したんだ?」

 

「……物騒なものなら大抵揃う店?」

 

「ウチで扱うブツの幅を減らすか」

 

 勘弁してください。頭を下げる雨宮君はここまで来ると一種のすがすがしさを感じた。普段の君は一体ここでどんなものを買ってるんだ?おっ、このハンドガンのノズル精度が良さそうだ。うんうん唸りながらパーツを吟味しているとふと気になる声が聞こえた。

 店内に設置されている小さなテレビを店長と雨宮君が見ていた。いい感じのパーツを抱えてレジに乗せる。雨宮君と一緒にパーツを広げて店長に渡しながら覗き込んだテレビには――

 

『だから私は言っているのです!スパイダーマンは悪党である、と。彼がいくら善行を働いたとしても彼の模倣犯に満ちたこの東京に住むあなたたちにはそれがわからんのですか!』

 

「ゲエッ、ジェイムソン……」

 

「知ってるのか?」

 

「あー、まー……ニューヨークの敏腕編集長と書いて年中無休の怒りやかんみたいな人です」

 

「ふっ、そうか……老けたな、あの記者も」

 

「ん?店長さん、昔のジェイムソンを知ってるんですか?」

 

「ちょっとだけだ。ほら、人の個人情報に首突っ込んでる暇があったらこのパーツ持って帰ってとっとと組み上げてやりな。バラバラのままじゃ銃が泣くぜ?」

 

 帽子の奥で鋭い瞳を輝かせながら紙袋を受け取る。……あっ。パーツサービスされてるみたいだなこれ。なかなかいい店長と見た。雨宮君の交友関係のおかげかな、うん。

 

 

 

 

「――あいつの交友関係、どうなってるんだか」

 

 雨宮とパーカーが去った店内で岩井はぼやく。雨宮の友人であるということである程度はパーカーのことを信頼していたがパーツを選ぶ目つきがどうも奇妙だった。

 何人かいる常連のように血走った目でジャンクパーツを覗き込む奴はいるが、パーカーの目はそれとは異なっている。一度、戦場を味わったことがある奴の目だった。自らの命を預けるのに値する武器を探す者の目である、と勘が囁いていた。万が一の時は行動する必要があるかもしれない。

 

 思考を巡らせながら視線をとりあえずTVに向ける。相変わらずジェイムソンがやかましくしゃべり司会者を困らせていた。

 

『――えー、特別ゲストのジェイムソン編集長のトークで場が温まったところで彼にも登場してもらいましょう!ご存じ二代目探偵王子、明智吾郎君です!!』

 

『あはは、盛大な拍手ありがとうございます。初めまして、ミスタージェイムソン。スパイダーマンの専門家に会えて光栄です』

 

『ふん、不名誉な称号だな。で、おまえは今日ここに何しに来たんだ?』

 

『ストレートに聞きますね。ズバリ、日本を騒がすスパイダーマン、もといスパイダーマスクについて専門家の意見を伺おうかと。参考になる話を聞けるといいんですが……握手しません?』

 

『すまんが儂は探偵にあまりいい思い出がないからそこまで関係を深める気はない*1。第一その気取った手袋の色が気に入らん。おまえには向いてないぞ』

 

『えっ、そうですか?じゃあどんな色がいいんです?』

 

『――黒だ。おまえには腹に隠したどす黒いものがあると儂の勘が言っている』

 

『ちょ、ちょっとジェイムソンさん何を言ってるんです!?』

 

『別にいいですよ司会者さん。このご時世常に潔白でいられるような探偵業というのはなかなかありませんから特に僕みたいな探偵はなおさら、ね』

 

 

 だから、せめてこの手だけは白いままでいたい。そう思ったから今日は白い手袋をつけているんですよ。

 

 

 ジェイムソンは不機嫌そうにそうか、と返答してニュース原稿に目を通し始めた。それらしい返答に納得はしていないがひとまずそういうことにしておくつもりだ。やれやれ、嚙みつくのはスパイダーマンだけにしてもらえないか、と明智吾郎は内心ぼやく。

 

 

 見ているか、スパイダーマン。こちらの情報の準備はできたぞ。

 

 

 白い手袋のサインが伝わっていることを信じながら明智吾郎はジェイムソンと言葉で殴り合いを始めた。その様子はやや明智吾郎嫌いの節がある竜司も同情するほどだったとか。

 

*1
ピーター・パーカーの調査を依頼した探偵をヴィラン、スコーピオンにしてしまったことがある




 スパイディ・アイテム・コレクション
・イセカイナビ
 スパイディメモ
 心の怪盗団がイセカイに入るために使うアプリケーション。実はボクのマスクに仕込んでいたコンピューターにもいつの間にかダウンロードされていたんだけど……一体どうなってるんだこれ。どうやってこんなヘンテコなアプリをダウンロードしたんだ?一体誰が?何のために?得体が知れないアプリを使ってる心の怪盗団って勇気が凄いのかも。

 心の怪盗団メモ:ナビ
 わたしにも詳しいことはよくわからんアプリ、以上!……えっ、これだけじゃダメ?ショウガナイナー。パレスへの案内機能は言うまでもないが、大衆の欲望が集うパレス、メメントスへアクセスできる。基本的な機能はわたしのコードネーム同様のナビ機能だが、実はちょっとした裏技考えていてだな……
 おっと、これ以上は内緒だぜ。しゃべりすぎってやつだ、うん。

・ジョーカーのハンドガン
 スパイディメモ
 ジョーカーが使っているハンドガン……当然ながらモデルガンなんだけど非常に出来がいい。見た目が本物そっくりだからボクも勘違いしそうなくらいだけど何より重量バランスが本物と同じなんだよ。
 細かいところまで精密に作りこむ技術はある種の芸術だね。製作者が捕まらないことを祈る。

 心の怪盗団メモ:ジョーカー
 イセカイにおいて自らの命を預けるに値する逸品だ。ダンジョンで入手、あるいはペルソナを変換して作成した銃も全て一度岩井さんの手を通してから使っている。
 細かい道具にもちゃんと手入れとカスタマイズを欠かさない。ちょっとしたミスで怪盗団が全滅するようなことがあれば、その時俺たちは怪盗団の未来だけでなく命を失うことになるだろう。
 ……今後ともよろしく頼む。さぁ、Show Timeだ!
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