実際にあったしょぼい話 作:?男
僕は何故か中学生の格好をしていた。
涎を垂らしながら答案用紙に頭を突っ伏していたようで、周りを見れば見覚えのある教室でかつての同級生たちがテストに勤しんでいた。
答案用紙とわかったのもその風景を見てだろう、僕の斜め後ろからなんだか暗いものを感じる。
僕が色々と寝ぼけたまま(夢なので寝てはいるのだが)振り返れば当時の担任で、怒り心頭といった様子。
テスト中に寝るとは何事か、だとか色々と怒られている中。
ふと僕は気づいた。
「あ、これ夢だ」
覚醒夢、夢を見ている本人が夢と自覚したものをそういうらしい。
僕は懐かしくもあるが中学校に中学生時代に良い思い出はなく、テストの邪魔になるからだとか色々とある事ない事を言って無理矢理に帰宅する。
だが、それは僕が望んでやったことでは無い、まるで記憶を辿っているかのように身体が勝手にそう動く。
覚醒夢とはいっても、自分の意思では動かせないらしい。
僕が聞いた話では覚醒夢では自分で身体を動かせると聞いた事があるのだが、どうやら僕のそれは覚醒夢ではないのか、それとも覚醒夢でも色々なパターンがあるのか。
僕にはわからなかった。
けれど所詮は夢、醒めたら消えるものだからと僕は僕の身体の動くままに身を任せた。
見覚えのある下校ルートに少しながらしんみりとした気持ちになった。
僕は高校生になった時に引っ越したため、この道を歩いていたのは中学生までだ。
線路沿いの道や何回も渡った橋、僕の記憶力も大した物だと褒めてやりたい。
僕の住んでいた団地が見える、小さい頃から約10数年を過ごした土地だ、今でも団地らしくできっと現実では僕の住んでいた部屋には知らない誰かが住んでいるのだろう。
けれど、今この夢の間はまた僕の家だ。思い入れがある為か少し感動してしまった。
僕が部屋へと歩いていると、部屋の前には見覚えのない6人の人影があった。
一目で豪華そうだとわかる和服を着ている風格のある壮年の女性。
スーツに身を包み体格も良くて立っているだけなのに威圧感が凄い色黒な男性が2人。
若い女性が2人、姉妹だろうか?顔や髪色といったものがよく似ている。
だが、女性2人は対称的で1人は髪を巻いていたり派手なファッションからかチャラついているというか明るそうな印象を受ける。
もう1人は大人しそうな見た目で髪は整っておらずボサボサで前髪も長くメカクレ、そしてタートルネックのセーターというなんだか一部の人の性癖に刺さりそうな人だった。
大人しそうな女の人が手を引いている小さい女の子はぼーっとしていてなんだか危なげな印象を持ってしまう。
そして、壮年の女性、若い女の人2人、そして小さい女の子は似た風貌をしていた。血の繋がりを感じる。
僕がじーっと見つめていたせいか壮年の女性はこちらに気づくとぺこりとお辞儀をしてきたため、僕はそれに返すようにお辞儀をする。
彼女が近づいてきたのを見て、僕は呆気に取られてしまう。
この6人組に見覚えはなく記憶にない、知らない人だ。
知っている土地という夢に知らない人物たち。
警戒心が、きっと生物としての本能がなにかしら危ないと語りかけて来る気がした。
僕に向かって壮年の女性が口を開いた。
「○○さんですよね?」
芯のある強い女性の声だ、気が強そうだなぁという印象を受けるか、それよりも僕の事を彼女は旧姓で呼んだのだ、母方の苗字で僕の名を呼んだ。
僕は色々と家庭に問題を抱えているが、それは割愛しよう。そんな事で尺を削っている場合ではない、これは僕の夢の話であって僕の身の上話ではない。
母は色々姐御肌というか、行き場のない若い人を時々食卓に連れてくるような人だった。
また、母がなにかしでかしたのだろうか?
母の苗字で僕を呼んだ彼女に何を思ったのか夢の中の僕は彼女たちを家へと迎え入れてしまった。
二重人格とも違うが、僕自身は止めておいた方がいいと思いつつも僕の身体は言う事を聞かない。
彼女らを居間へと通した、中学生まで住んでいた小さなアパートだ。
家具や机、散らかり具合までも再現されていて本当にタイムスリップしたかのような感覚に、その風景に少し涙が出そうになる、そんな感慨もなにも置いてけぼりに小さな居間を埋め尽くすかのように6人が座った。
小さな部屋の半分以上を彼女たちは埋めつくした。
お茶を入れて僕が対面に座れば壮年の女性は1枚の紙を差し出してきた。
数字が書かれているそれに見覚えなんてなかった。
疑問に思う中、それをまじまじと見てみれば。
小切手だった。
8000万というなんだか現実離れしているようで、夢ならばもう少し高くてもいいんじゃないかと少し自身の想像力に残念な気持ちもあるというなんだか不思議な金額がそこには書かれていた。
「貴方のお母様にはお世話になった事があってね、これはほんの気持ちなのだけど」
夢とはいえ、小心者の僕は受け取れませんよ。と断った。
夢の中なら受け取ってしまえよ、と僕の中で他の僕が笑った気がする。
けれどけれど、金銭トラブルはゴメンだと僕は丁重にそれを断った。
「姐さんの好意が受け取れねぇって言うのか?!!」
男が叫ぶ、片膝ついて今にも襲いかからんといったような表情でコチラを睨む。
やっぱりその筋の人間かよ、と僕は夢だからと余裕をもっていたがそれでも呆気に取られてしまう。
色黒な男性の腕は太く、ひ弱な僕だったらひと捻りだろう。
「おやめ!!」
今度はお婆さんが声を上げた、舎弟かなにかかは知らないがこの人の方が立場が上なのだろう。
大柄な男性たちを叱りつけている、夢だからかどんな内容だったかは曖昧だ。
そんな中、今度はカチ……カチ……となにか固いもの同士が擦れるような音が聞こえる。
そちらを見てみれば、小さい女の子が僕が現実で持っている玩具を机に叩きつけて遊んでいた。
それは大人になってから買ったものだ、中学生の僕はそれを持っていない。
なんならそれが発売されたのはそれから数年後に発売したものなのだからこの時代にあるわけが無い。
もしかしたらもう少しで夢が冷めるのかもな、なんて事を思いながらも僕はその小さい無表情な女の子に一声かけることにした。
「危ないよ、お母さんの近くに行きな?」
無表情な女の子はその玩具を握り締めながらも大人しそうな女性の方へと歩いていく、女の子を視線で追う中明るそうな女性をちらりと見てみれば色々な事があったにも関わらずピンク色のスマートフォンを弄っていて周りには興味なんて無さげだ、その態度に少しムッとする。
そして言うならばスマートフォンもこの時代にはない、時代錯誤もここに極まれり、と言った感じか。
そして若い衆との話が纏まったのかお婆さんが再び話しかけてきた。
「アンタの母親には世話になったんだ、これじゃあ少ないかもしれないが受け取ってくれないかね」
そう言った彼女はこれを受け取る時は……なんて色々と専門的な話をし始めた。
夢の中でこんな事務的な話を聞くのか……と現実逃避しながらも、いや夢だから現実逃避じゃないのか……?とか更に色々と変なことを考えているとボソッと誰か呟いた。
背後、立ち位置的には大人しそうな女性の座っているところからそれは聞こえた。
「騙されないで……」
か細い、消えてしまいそうな声は確かに僕の耳へと届いた。
彼女の声に反応するかのように周りにいた者たちが一斉に怒号を上げた。
「誰のおかげでその子を産めたと思ってるんだい?!」
「そうよ!お姉ちゃんは黙っててよ!!」
「お前は黙ってろ!」
「お母さん何言ってるの?!」
お婆さんや明るめな若い女性、小さな女の子までもが彼女に罵倒し始めた。
きっと今の一言がきっかけなのだろう、だけども何故彼女はそう呟いたのか?
我が子にまで罵られている彼女はなぜそんな発言をしたのか?
僕はその声に反応して振り向きたい衝動に駆られるものの、振り向けずにいた。
それどころでは、そんな程度のことに反応している場合ではない。
僕は視界の中にとある変化を見つけてしまい、それから目を離せずにいた。
若い女性が僕の背後を睨みつけながら叫んでいる、男性二人が怒声を浴びせながらその目を怒りに染めている。
お婆さんが威圧感たっぷりに鋭い声を上げる。
そして彼女は再び語り出した、先程よりも語気が段々と強くなっていく。
「この子が私の本当の子供じゃないことなんてとっくに知ってる」
「私が産めなかったのはあなた達のせいなのも知ってる」
「あの子たちを殺しておいてまた誰かを騙そうとしてるの?」
「証拠でもあるのかい?!!」
お婆さんが狼狽えながらそれに応えた。
先程までの芯の強さを感じさせながらも優しそうな印象とは打って変わって今では舞台の上で踊らされている道化のような滑稽さすら感じる。
「証拠なんてないけど、ほら」
僕の視線の先、ソレを指差すように僕の背後から細い指がお婆さんの方へと向けられた。
僕がずっと見ていたもの。
お婆さんの後ろにいたのは、赤ん坊の骨、そしてそれにまとわりつくかのように漂う青い、透き通るかのように蒼い炎だった。
「そこにいる」
お婆さんの喉をいとも簡単にソレは引きちぎった。
若い男性たちの腕を引っこ抜くと胴体をぶん投げた。
赤い血と人の身体だったものが部屋に散乱する。
若い女の下腹部を、きっとあの場所は子宮がある場所だろうか?そこを貫いた。
小さな女の子の髪を引っ張って無理やり頭と胴体が離れ離れになった。
僕は振り向けずにいた、後ろにいた女性はどんな顔をしているのだろう、どんな顔でこの惨劇を見ているのだろう。
部屋が血と肉で埋め尽くされた後で僕は後悔した。
僕以外の気配が部屋から消えた。
夢から醒めた僕は色々と思い返していた。
そういえば僕の住んでいたその団地の裏には池があったのだが、僕が中学2年生の頃に埋め立てられている。
その時期に住民たちから心霊体験にあったと大家さんへと何件かクレームが入ったらしい。
僕も何度か体験した事がある。
とはいっても人影が立っているのが見えた程度のものだったが。
霊は水場に集まるとは言うが、その集まっていた池が埋め立てられてしまったせいで彼らは居場所を無くし近くにあった団地へと移動したのかもしれない。
もしかしたら、あれからもう何年も経ってはいるが。
あそこにいた霊たちがもう引っ越して遠い地にいた僕の元へと、追いついたのかもしれない。
各CVぽかった人
壮年の女性:富〇純子
若い衆AB:知らん
明るそうな女性:花澤〇菜
暗そうな女性:早〇沙織
女の子:竹達彩〇
僕:僕
担任:担任
こんな夢を見て僕は僕の精神状態が不安になりました。