妹のVtuber配信に乱入したら異名で呼ばれ始めた。 作:サマントス皇帝
「おい、聞いてるか?」
コンコン。
俺は妹の部屋の扉を二回ノックする。しかし、返事は一切来ない。
──最近、妹の様子がおかしい。学校から帰った途端、すぐに部屋に籠り、しかもその部屋から時折物音がするのだ。
もちろん、家族として何をしているのか気にかけてしまうもの。
聞いておきたいものではあるが、妹とて十六歳。複雑で、所謂『お年頃』な時期だ。直球に「部屋で何してる?」なんて聞けば不快に──いや、ドン引きされるに違いない。
ただでさえ最近になって漸く反抗期が終わろうとしているのに、俺の所為で距離を開いてしまえば罪悪感で死ぬ。割りとマジだ。
それを考慮すれば聞けることは無く、放置された疑問は次第に膨らみ、『もしかしたら、危ないことなんじゃ…?』なんて考えも出てくる。
だから、これを否定する為に俺は聞くことにした。心の内で妹の非行を疑うのは心が痛む。だって妹は身内目線を抜いても良い子なのだ。
妹が昔から、そして今も変わらず良い子なのだと信じて、俺は疑う。聞いた最後には、誠心誠意に頭を下げれば良い。疑ってごめん、と。
そして今日、腹を括った俺は直接聞きに来た。
「おーい、入っていいかー?」
何かしらの反応を伺ってからにしようと思って、念のためもう一度ノックする。今度は強めにしたためか、中から声ではなく、大きめの音が返ってきた。
僅かではあるが、少し揺れる程度の。
この家は今の時代には珍しい、古風な──日本家屋と呼ばれる建物で、築年は凡そ三十年。中々に古いからか、人が走れば簡単に家全体に振動が通じてしまうのだ。
だが今のは、感覚的に分かるほどに大きい振動だった。
ノックに驚いたのか、それとも他の要因か。それは理解出来ないが、俺は妹の身の安全に気が行ってしまい、急ぎめに扉を開いた。
「おい、どうし──」
一瞬で、俺の思考は停止した。妹を見て、理解の範囲を簡単に超えてしまったのだ。
だって、──
「ああもう、ホントにヤだ?! 誰じゃ私にホラゲやらせようって言い出したのは!?」
妹は、ゲームに出てくるような近未来的な機械を頭に装着して、パソコンの画面を見て叫んでいた。──否、愚痴にも聞こえる。
あと、声が異様に高い。電話に出ているお母さんより高い。なんというか、こう──萌え声みたいな、感じだ。
贅沢にもパソコンのモニターは二枚机に置かれており、目に入った方のモニターには、最近話題が出ているVtuberの生配信の画面が確認できる。それで、その画面右端にいる女の子のキャラが、妹と全く同じ動きをしていた。
「え? あの悪魔って燃やせるの?! 私ずっと聖水ぶっかけてたんですけど!?」
誰かと話しているのか勝手に喋っている妹は、普段とは別人で、思わず──。
思わず、聞かずにはいられなかった。
「何してんの?」
──その時、空気が凍った。
あれほど熱中して見ていたモニターから首がブルンッ! と曲がり、怖いと思うほど速く目がバッチリと合った。というか眼力がすごい。
そして────、
「ヘアァッ!」
ウル◯ラマンみたいな声を出して、ゲームの敵キャラにやられていた。