シュテルside
私は、先ほど止めたOBの方の腕から雫とほのかを引っ張り出しました。そのOBの方はというと、摩利先輩にこっぴどく叱られています。
「大丈夫ですか?二人とも。」
「うん。私は大丈夫だよ。ほのかはどう?」
「大丈夫。だけど、腰が抜けちゃった。」
「まぁ突然攫われたようなものですからね。仕方ないです。」
私はほのかの手を取り、立ち上がらせました。本人たちに外傷がないことを確認すると、さっきまでOBの方々を絞っていた摩利先輩の方に行きます。
「大丈夫ですか?摩利先輩。」
「おっ?心配してくれるのか?ありがとうな。見ての通り私は大丈夫だ。それにしてもお前がやったのか?あの重力魔法は。」
「えぇ。昨日やっと最終調整が一通り済んだ試作モデルがありましたので。」
「じゃあ、お前が今持っているCADがそうなんだな?」
「えぇ、名前はアーミリッヒ。といってもまだ仮の名前なので、いっそのこと誰かにつけてもらおうと。摩利先輩、つけますか?」
「いいや、遠慮しておくよ。私はそう言うのに疎いからな。」
「そうですか・・・・・・・・残念です。」
「ではな。引き続き見回りを頼むぞ。」
「了解です。」
摩利先輩は行ってしまった。
「二人も早く帰ったほうがいいかもです。」
「うん。分かった。じゃあねシュテル、また明日。」
「じゃあねシュテル!」
「えぇ、二人とも。帰るときはくれぐれも気を付けてくださいね。」
2人も帰っていきました。その後も違反者を取り締まったり、喧嘩などを仲裁したりといろいろやって、今日の見回りは終わりました。
私は達也たちに先に帰るといい、先に司波家へと帰ってきました。私はそのままルシフェリオンを起動しました。使うのは回復魔法。
ただ、この回復魔法はこの世界の魔法とは違い、一回で骨折が完治してしまう。そんなレベルの魔法です。流石なのはの世界の魔法は凄いですね。
そんなこんなで、少し腫れている右足を直し、私は九重寺を尋ねました。敷地内に入るといつもは飛び掛かってくる僧兵たちがいません。そう思った瞬間
背後に一気に人の気配と殺気を感じました。私はとっさにレイジングホーンをホルダーにいれたままの状態で引き金を引きました。発動する魔法は流星弾丸、この魔法は
CADがどのような状態であっても引き金を引けば発動できるように調整を施しています。私は後ろを振り向く間もなく前へと進み、後ろに向けて右手を突き出しました。
その右手と私を襲った相手・・・・・・・・もとい先生の左手が突き出されたのはほぼ同時でした。
「全く、趣味が悪いですよ先生。」
「いやいや、これぐらいなら対応してくると思っていたよ。それに、これはこの前の仕返しの意味も含むからねぇ。」
「・・・・・・・・本当に、とんでもない人ですね。先生は。」
「そんなことないよ。・・・・・・・・で、今日来た要件は?」
「この前私はある反魔法師団体のアジトを一つ潰しました。」
「知ってるよ。たしかあの者たちはブランシュの一員だったかな。」
「やはりそうですか。それで、その者たちの手は”どこまで”伸びていますか?」
「うーん、君のすぐ近くまでとだけ言っておこう。」
「そうですか。それだけで十分です。では、自分はこれで。」
「ふむ、気を付けてね。たまには達也君と一緒に顔を出してね。」
「善処します。」
私はそう言って九重寺を後にしました。
家に帰ると既に達也たちは帰宅していました。達也はともかく、深雪はなぜか不機嫌そうな顔をしています。
「ただいま帰りました。」
「・・・・・・・・おかえりなさい、お姉様。」
「ん?どうしました深雪。調子でも悪いのですか?」
「・・・・・・・・では、単刀直入に伺います。今まで一体どこに行っていたんですかっ!」
「あっ・・・・・・・・」
すっかり忘れていました。時計はすでに7時を回っています。何の報告もせずに出て行ってしまったのでそれに怒っているようです。
「私がどれだけ心配したと思ってるんですか!せめてメッセージを残すぐらいのことはしてください!」
「すいません、つい忘れていました。今度からは気を付けますね。」
「本当に気を付けてくださいよ!」
深雪はそう言うとキッチンの方へ戻っていきました。私は自分の部屋に荷物を置き、軽くシャワーを浴びてからリビングへと向かいました。
夕食を三人で食べた後、私は地下の研究室に向かいました。そこではちょうど、深雪のCADの調整が終わったところでした。深雪が部屋を出て行ったあと
私は達也に声をかけました。あることを聞くために。
「お疲れ様です。」
「あぁ、それにしても今日は疲れたな。」
「まさかあれほどひどいとは、先輩の言う通りでしたね。」
「”バカ騒ぎの一週間”だったか。本当に、言葉通りの意味だったな。」
「そう言えば達也、今日の見回りの時、違和感を覚えたことはありますか?」
「いや、特にはないが。どうしてそんなことを聞く?」
「私は先ほどまで先生の所へ行っていました。」
「師匠の?どうして?」
「ブランシュのアジトを潰した件で。まぁそのことを先生はすでにご存じだったようですがね。」
「そうか。で、そこで何を聞いてきたんだ?」
「ブランシュはその規模がとても大きく、日本にも支部と呼ばれる場所が存在します。当然下部組織と呼ばれるものも存在します。」
「確か、エガリテだったか?」
「えぇ。そしてそのエガリテ、ひいてはブランシュが、一校に手を伸ばしつつあるようです。」
「何だと?ではすでにうちの生徒が取り込まれている可能性があると?」
「数人程度なのか、はたまた何十人規模なのかは定かではありませんが、恐らくは。」
「師匠が言っていたのか?」
「そうです。師匠もこのことを危惧していました。なので私は、これからの一週間”ルシフェリオン”を携帯することにします。達也も留意しておいたほうがいいでしょう。」
「分かった。それとなく意識しておこう。」
達也はそう言って再びモニターを見つめ始めました。私はこの時、この心配が杞憂で済んでくれればいいなと思っていました。しかし、想現実は甘くありませんでした。
そのことに気づかされたのは、勧誘週間も佳境に差し掛かった頃でした。私は校舎の屋上にいました。ライフル型CAD”アーミリッヒ”の性能を最大限生かすには高所からの照準が一番良いのです。
本来、こういうCADを高所から扱うには相当なスキルが必要らしいのですが、私の持っているそのCADの操作スキルとサーチャーから送られてくる情報で補完できるという利点から私の魔法の命中率はほぼ100%でした。
これには七草会長も舌を巻いており、
「今度練習に付き合ってくれない?」
と誘われたほどでした。そんなにすごいことなんでしょうか?多分七草会長の正確さに比べれば、チートじみた能力を使っている私なんかかすんでしまうのでは?と思っています。
そんなことを考えながら辺りを警戒していると、達也が走っていく姿が見えました。それと同時に通信が入ってきました。
(こちら生徒会本部。風紀委員の方、誰でもいいので応答願います)
「こちらシュテル。本部、いったい何があったのですか?」
(この先の広場で暴動が発生しました。現場に急行してください。)
「了解です。すぐ向かいます。・・・・・・・・この先の広場なら、あっちの屋上からなら狙えるか。」
私は跳躍術式を発動し、隣の実技棟に移ろうと立ち上がりました。その時、下の方で魔法発動の兆候をサーチャーがキャッチしました。
(座標は・・・・・・・・達也の目の前!?くっ!)
私はすぐさま跳躍術式で向かう方向を変え、魔法発動の発生地点に飛びました。それと同時に術式が破壊されたことをサーチャーが確認しました。私がそこへ降りると、手に赤白青のトリコロールカラーのリストバンドを手に付けた
生徒がいました。そのせいとは私を見るとすぐさまその場を逃げ出してしまいました。しかも自己加速術式を使って。このままでは追い付かないと判断した私は、アーミリッヒを地面に置き、ポケットから青い水晶玉のようなものを取り出します。
「起きてください”ルシフェリオン”」
するとその水晶は一瞬で杖のような形に変わりました。一度はAIを組み込み最適化を図ったCADだったルシフェリオンですが、今はそのAIを取り外し、音声コマンドで指定し魔法を発動するものへと変わっています。
「ブレイズ・フィン展開。”飛びますよ”。」
その瞬間、私の足元には赤い光の羽のようなものがついていました。その場で少し浮かぶと、音速もかくやというスピードで、先の生徒のもとへと飛んでいきます。
しばらく飛んでいると、先ほどの生徒がいました。制服の形状から男子生徒のようです。
「そこの男子生徒、止まってください。あなたを魔法不正使用者として拘束します。」
そう警告しましたが、その男子生徒は止まりません。むしろどんどん加速していきます。しかもこの先は先ほど通報があった広場、厄介ごとを増やされてはかないません。私は足止めをすることにしました。
「アクセルシューター、威力最小。」
本来言う必要はないのですが、無意識に魔法を発動するのではなく言葉にしてしっかりと自身で認識したほうがしっくりくるのでこの方法を取っています。
ルシフェリオンはタイムラグなしで私の背後に赤い魔力弾を形成します。それが発射されるとその生徒を追いかけました。しかしそれは不発に終わります。
「対象者発見できず!?・・・・・・・・私としたことが、こんな失態を犯すなんてっ!」
恐らく建物の中に入られたのでしょう。流石に中に入られるとどうにもできません。私はその生徒のことをあきらめることにしました。
まぁ結果的に達也への魔法攻撃は回避できたので、良しとします。それと同時に広場での暴動も治まったと連絡がありました。私は他の違反者がいないか確認しに向かいました。
私は今、逃げています。私を勧誘せんとする生徒たちからです。最初は見回りをしていました。アーミリッヒでは小回りが利かないのでレイジングホーンを使っていました。
先ほどの一件から少し経ち、私は通常の見回りを再開していましたが、その間に出た逮捕者はすでに二人。いくら勧誘期間でいろいろヒートアップしているからと言って
この数は多すぎます。しかも片方は大勢の前で大立ち回りをしていたため、いくら目標以外をすり抜ける流星弾丸と言っても使う訳にはいかず
仕方ないので体術で倒すことにしました。しかもその人、その人が所属している部のエースだったようで、エースをコテンパンにした生徒がいる、と噂になり私のことを追いかけてくる生徒が後を絶ちません。
という訳で現在に至ります。私はインカムを起動し摩利先輩に助けを求めました。
「先輩、助けてください。追われています。」
「追われている?・・・・・・・・ひょっとしてあの大立ち回りのせいか?」
「えぇ、それを見たか聞いたかして、ぜひ自分の部活に~、と誘ってくる人たちが後を絶ちません」
私はインカムで話をしつつ、実技棟へと入りました。私は屋上に行こうとしましたが、すでにここにも人がいたらしく私は一階にある、どこかの部活の倉庫兼部室な部屋に入って身を隠すことにしました。
すると、それを見計らっていたといわんばかりに、部室とどこかの部屋をつなぐ扉が開きました。その奥からは一人の男子生徒が出てきました。
「あれ?シュテル・・・・・・・・さん?どうしてこんなところに・・・・・・・・」
「すいません。ちょっと厄介ごとに絡まれましたので隠れさせてもらってます。あなたは?」
「1-Bの十三束鋼です。厄介ごとというのは・・・・・・・・あぁ、シュテルさんの大立ち回りの件ですか。」
「そうらしいです。全く、少しはこちらのことを考えてほしいものです。」
「シュテルさん、これはあくまでも提案なんですけど・・・・・・・・」
「シュテル、で結構ですよ。敬称もいりませんし固くなる必要もありません。」
「そう?・・・・・・・・じゃあシュテル、これはあくまで提案なんだけど、マーシャル・マジック・アーツ部を見学していかない?」
「それは別に構いませんが・・・・・・・・どうしてですか?」
「ちょうど今、試合形式でのデモをやってる最中なんだよ。それに、どこかの部活の見学にいるってだけで今日の面倒ごとはなくなると思う。」
「・・・・・・・・確かに、筋は通っていますね。」
「どう、かな。いやだったら、ほとぼりが冷めるまでここにいてもいいけど。」
「では、お言葉に甘えて見学させていただきます。」
シュテルはそのまま鋼と見学することとなった。
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。さて、まもなく折り返しのところまで来ましたね。しかし作者は、シュテルと誰をくっつけようか迷っています(;^ω^)
まぁそんなことはさておいて。ではまた次回お会いしましょう。