魔法科高校の星光の殲滅者   作:狩村 花蓮

14 / 18
第十四話 入学編 Ⅹ

三人称side

 

翌日、シュテルは自室でレイジングホーンを調整していた。と言っても魔法が発動するかのチェックだけだったのでそれはすぐ終わった。

 

その横には四角い、手のひらに収まるサイズの板状のものが置かれていた。言わずもがな、新しいCADである。それにしても作りすぎではなかろうか?

 

これではCADの物流を覆しそうな気がしてならない。まぁ本人にこのモデルを売るつもりがないのが幸いか。

 

話を戻そう。シュテルは部屋を出てリビングへと向かった。しかしそこには誰もいない。今日は休日で、達也と深雪は買い物という名のデートに出かけたのだ。

 

シュテルはそんな甘々な空間にいたくないという本音を隠しつつやんわり断ったのだ。深雪はそれに反対こそしたが、シュテルが穏便に丸く収めたので今頃達也とデートを楽しんでいるだろう。

 

朝食は自分で作った。シュテルは家事もできるようである。この時代、自分で料理を作るというのはすでに無くなりつつある。

 

HALの普及で台所事情は大きく変わったからだ。シュテルのように自分の手で家事をする人間はまれである。

 

朝食を食べ終え、食器を片付けて、新たな試作CADの調整に入ろうとしたその時ウィッジホンに着信が入った。

 

相手は本家、真夜のものだった。シュテルは身だしなみを整え、モニターの前に立った。

 

「おはようシュテルちゃん。元気にしてた?」

「えぇ、何事もなく過ごしておりました。それで母さん、いったい何の用件で?」

「あなたに頼まれていた例のデータの件です。」

「・・・・・・・・あぁ、あの件ですか。すいません、すっかり忘れておりました。」

 

無論嘘である。なんならそのためにあの板状のCADを作ったまである。

 

真夜はこうでもしないと長話を始めてしまうので、シュテルはさっさと結果を聞こうとしたのだ。

 

「あら珍しい。シュテルちゃんでも忘れることがあるのね。」

「母さん。いくら私が変わってるといっても人間ですよ。忘れることもあります。それで、結果の方は?」

「あなたが送ってくれた音声データ、そして壬生紗耶香本人の高校生前の音声データのふたつを一緒に聞かせてみたら確かに少し”違和感はあった”って姉さんは言っていたわ。」

 

そう、シュテルはあの時の壬生との会話を録音していた。

 

本来はいざこざに巻き込まれたときに”正当防衛”を主張するための証拠にするためのものだが、シュテルはあの時咄嗟にレコーダーを起動させたのだ。

 

そしてそのデータを深夜に渡し、言動など、壬生紗耶香の周辺調査をしてもらっていたのだ。

 

「深夜母さんに聞かせたんですか?」

「精神のことなら私よりも姉さんの方が優れていますもの。それで、壬生紗耶香のことについてもう少し詳しく調べてたんだけどね。」

「何か分かりましたか?」

「どうやら渡辺家のご令嬢とひと悶着あったようなのよ。」

「ひと悶着、ですか?」

「なんでもあの子、渡辺家のご令嬢に剣道の稽古の申し出をしたんだけど、断られたらしいの。そのあと、数日ぐらいたった時、今のような感じになってしまったらしいわ。」

「それがどう関係しているのでしょうか?」

「壬生紗耶香は確かに二科生だけど、”差別撤廃を掲げるほどにその制度を恨むようなことは言っていなかった”らしいわ。だからこそおかしいのよ。」

「・・・・・・・・確かに。それでは私に声をかけるほどに、そして制度撤廃の話を積極的にするという行為に違和感がありますね。」

「シュテルちゃん、気を付けてね。前にも言ったかもしれないけど第一高校にはすでにブランシュの下部組織エガリテが入り込んでいるわ。そしてブランシュのリーダーである司一には催眠系の魔法が得意だという情報もある。

ひょっとすると壬生紗耶香はすでにブランシュに取り込まれてる可能性があるわ。」

「分かりました。肝に銘じておきます。」

「じゃあね。夏休みになって時間があったらこっちに顔を出しなさいな。姉さんも会いたがってるわよ。」

()()()()()()顔を出したいと思います。それでは、お手数をおかけしました。」

 

通話はそこで切れる。

 

(それにしても、ブランシュとエガリテですか。これはまた、面倒ごとに巻き込まれる予感がしますね。・・・・・・・・もし深雪の周りに手を出そうものなら、覚悟しておいてくださいね。)

 

シュテルはそんなことを思いながらCADの調整を再開した。

 

 

翌週、週最初の登校日の放課後、シュテルは風紀委員の本部にいた。

 

「すまないな。シュテルに司波君、手伝ってもらって。」

「いえ、この報告書は自分たちがやったことに関するものですから、手伝うのは当然です。」

「そうですね。これは本来私たちがやるべきものですし。それに委員長の書類作成の苦手っぷりはもう知っていますので。」

「それを言われると頭が上がらんな・・・・・・・・」

 

そう、部活動勧誘週間にシュテルたちが取り締まった一件の始末・・・・・・・・もとい報告書を作っていたのだ。

 

元々摩利は書類作成などの事務作業全般が苦手なのである。女性として、しかも恋人がいるとかのうわさがある彼女にとってその弱点は如何なものかとシュテルは思っていた。

 

それに、先ほど達也が言っていたように、摩利が作っていた書類は達也とシュテルの逮捕者数の報告書という名の始末書だ。

 

本来摩利が作るべきではない。しかし、達也は周りから疎まれていることもありなかなか忙しそうにしていて、シュテルに関しては

 

度重なる無理のし過ぎで倒れてしまったため、頼むに頼めなかったようだ。

 

「あー達也君。そこに置いてある資料を取ってくれないか?」

「すいません、こっちも手一杯なので、ご自分で取って頂けますか?」

「そうか、分かった。すまなかったな。」

「いえ、こちらこそすいません。」

「さてと、資料を取りに・・・・・・・・」

 

”パキッ” 何かが割れたような音は書類作業でそれなりにうるさかった部屋に何故かいやなほど響いた。

 

摩利がその下を見ると、足元には踏まれて画面が割れた書類作成用の端末があった。

 

「・・・・・・・・達也君、シュテル。これ、どうしよう?」

 

摩利が年甲斐もなく涙目になっている。

 

「・・・・・・・・完全に割れていますね。電源もつかなそうです。達也、直せそうですか?」

「少し見てみる・・・・・・・・どうやらメモリは無事のようだ。今回ばかりは端末がメモリ保存のタイプで助かった。でもなおすのは、ここにあるパーツだけでは無理だな。」

「買ってくるしかありませんか・・・・・・・・こっちの書類はあらかた片付きました。私が行ってきましょう。」

「・・・・・・・・頼んだぞ、シュテル。」

「了解です。」

 

シュテルは、脱いでいた制服の上着を羽織り、風紀委員会本部を出た。

 

 

シュテルside

 

私はいま、摩利先輩が割ってしまった端末の修理のためのパーツを買いに向かうところで、現在昇降口のところにいるんですが・・・・・・・・なんか、正門前でこそこそやってる方々がいるんですよね。

 

しかも二人は私の知り合いという・・・・・・・・どうしたらいいんでしょうか?

 

「何をやっているんですか・・・・・・・・そんな気配を漏らしていては尾行の意味がなくなりますよと言いたいんですけど、今から言いに行ったのではさらに怪しまれますよね。」

 

そんなことを言っていると、彼女たちが外に向かう様子が見えました。どうやら真似事ではなく本気で誰かを追っているんでしょう。

 

幸いにも向かう方向が私が行こうと思っていたお店と一緒だったので、私は尾行している彼女たちを尾行し始めました。気配を限界まで消して。

 

そしてその尾行は、功を期したようです。彼女たちが追っていた人物は途中で、行き止まりの路地裏に駆け込み(正確にはその先の兵を上りその先に)彼女たちはそれを追いますが

 

そこにその人物はいなくて、代わりに彼女たちの周囲に数人の男が寄ってきました。そしてその男たちは何かを言うと金色の指輪上の何かを彼女たちに向け、何かを発動しました。

 

私はこの不快な電波を知っています。

 

(・・・・・・・・キャストジャミングですか。ただの犯罪者集団が持てる代物ではない・・・・・・・・ついに本格的に動き出しましたか、ブランシュ!)

 

私は彼女たちを保護するために気配を殺し、足音を消しながら急いで男たちへ近づきました。

 

 

ほのかside

私はいま、幼馴染の雫と友達のエイミィとともにあるひとを付けてきました。けどその人は途中で逃げてしまい、それを追おうとしたら、知らない男の人たちに囲まれていました。

 

「お前ら魔法師だろ?いったい何の用があってここまで来たんだ?」

 

と、男の一人が訪ねてきました。けど私は怖くて一言も発することができませんでした。しかし雫は、腕に巻いていたCADをすでに待機状態にしていていつでも魔法が撃てるようにしています。

 

しかし、それは失敗に終わりました。男たちは指輪のようなものを私たちに向けると、そこから何かが発動し、私たちに襲い掛かりました。

 

「なに・・・・・・・・これ、体が重い・・・・・・・・」

 

体が何故か重くなり、気分が悪くなりました。魔法も使えません。

 

「どうだ?キャストジャミングを受けた気分は?まぁ、最悪だろうけどなぁ!」

「お前らには罰を受けてもらう。見せしめだ。お前たち、やれっ!」

(殺される・・・・・・・・だれか、たすけてっ!)

「ごはっ?」

 

私が目をつぶったと同時に、倒れる音がしました。

 

「あなた達・・・・・・・・当校の生徒に対する不当な暴力をふるうとは、覚悟はできているんでしょうね。」

 

聞き覚えのある声はそう言うと、魔法を使わずに一瞬で男たちのもとに詰め寄り、一人を殴り飛ばしました。

 

「なっ?貴様、重要人物のシュテルか!」

(シュテル?何でここに・・・・・・・・)

「それがどうしたというのです?さぁ、早く来なさい。手を出す覚悟が、御有りなのでしょう?」

 

と、シュテルは挑発します。

 

「クソガキがっ!なめやがって!」

 

男が殴り掛かりました。しかしシュテルはその男の腕を片腕でつかみ、方片方の腕を折り曲げ、肘の部分をのど元に打ち込んでいました。

 

男は首を抑えて悶絶し、その間にうずくまりました。

 

「他愛もない。もう少し格闘戦の経験をおつみになられたほうが良かったのでは?」

 

シュテルはそう皮肉めいたセリフを言います。それを聞いたのか聞かなかったのか、その男は気絶して今いました。

 

「さて、最後の一人ですね。さぁ、うちの高校(第一高校)の生徒にに手を出したことを後悔しなさい。」

 

シュテルはそう言うとその男を蹴りました。それは頭に当たり、その男は悲鳴を上げる間もなく気絶しました。

 

「ふぅ、厄介な連中に目を付けられましたね。大丈夫ですか?三人とも。」

 

シュテルは、だえが見ても可愛いと思うような可憐な笑みを浮かべながら、私に手を指し伸ばしてくれました。

 

 

シュテルside

 

ほのかたちを襲っていた不良・・・・・・・・もといブランシュのメンバーを片付けると、そこに深雪が駆けつけてきました。

 

「いったい何が・・・・・・・・お姉様、何故ここに?」

「そこにいる不良どもにこの三人が襲われそうになってたので、不良にはちょっと痛い目を見て頂きました。」

「・・・・・・・・はぁ、まぁいいです。当校の生徒が襲われそうになってるのを助けるのもまた仕事ですしね。」

「仕事・・・・・・・・まぁあながち間違ってもいませんが・・・・・・・・という訳で三人とも、二度と危ないことに首を突っ込むのはやめてくださいね。」

「そうよ三人とも。今回はたまたまお姉様が助けに来れたけど、次はそうならないかもしれない。だから安易にかかわろうとしちゃだめよ?」

「うん、そうする。ごめんねシュテル、深雪。」

「いいんですよ。とにかく無事でよかった。・・・・・・・・もう下校の時間ですね、皆さんは帰るんですか?」

「こんなことになっちゃったし、帰るよ。」

「そうですか。では、十分に気を付けて帰るんですよ。」

「うん。また明日、シュテル。」

「えぇ。また明日、雫。」

 

こうして三人は帰路へ着きました。しばらくして彼女たちが離れたのを確認して、私は真夜母さんへと電話を掛けました。

 

「おや、シュテル殿。最近はたびたびご連絡をいただきますな。して、今回はどのような用件で?」

 

電話に出たのは執事の葉山さんでした。私は手短に要件を言います。

「人を回収してほしいのです。それも早急に。」

「かしこまりました。近くのものに声をかけておきます。」

「感謝します、葉山さん。」

「いえいえ、私めにできるのはこのぐらいなものですから。」

「謙遜なさらないでください。では、また。」

「次は面倒ごとの連絡ではないことを願っております。」

 

そう言って葉山さんは電話を切った。

 

「いま、四葉の手のものに回収を要請しました。すぐ来るでしょう。ここを離れますよ、深雪。」

「はい、お姉様。」

 

私はそう言ってその場を離れました。ちなみに、端末の修理用部品を買い忘れたことに気づき、深雪に一緒に来てもらったことは私の心のうちに止めておくことにします。

 

_________

 

一高生に対する障害未遂事件、まぁ私が勝手につけたものですが。それが片付いた日の翌日、私は深雪が作ってくれたお弁当を持って教室を出ようとしました。

 

深雪は達也と一緒に居ます。なんで私がいないのかって?本来私はあの中に入れないのです。というかまぁ達也と私はある種姉弟の様なものなのですが・・・・・・・・

 

という建前は置いておいて、ただ単純に私はあの桃色空間がすこぶる嫌なだけなのです。こんなことを言いたくはないのですが、あの空間にいると調子がくるってしまいます。

 

そんなこんなで一人学食へ向かおうとしました。が、それはある一本の放送で出来なくなりました。

 

『全校生徒の皆さん!』

(あら。声が大きすぎてハウリングしましたね。)

 

『・・・・・・・・全校生徒の皆さん。』

(今度はしっかり声を押さえましたね。)

『僕たちは、学内の差別撤廃を目指す有志同盟です。僕たちは生徒会と部活連に対し、対等な立場における交渉を要求します。』

 

ついに始まったか。私はそう心の中で言いました。普通、第一高校では放送室の生徒の独断での使用は禁止されています。

 

教師による規格の厳正なる審査を通ったものだけが、教師同伴のもと行われるようになっています。

 

そして今の放送、あれは絶対に生徒の無断使用によるものです。教師があのような放送を許可するはずがありません。

 

というか、それを許可したらそれはそれで大問題ですが・・・・・・・・とにかくまずい事態へと発展したのは確実です。

 

すると、通信機にコールが入ってきました。

 

「こちらシュテル。」

『シュテルか?すまないが放送室へと向かってくれ。既に達也君が現場に来て対応してくれているが万が一ということもあり得る。

教員にはすでに話を通した。シュテル、ここまで来るまでの自己加速術式の限定使用を許可する。』

「了解しました。すぐに向かいます。」

 

私は急いで放送室へと向かいました。

 

 

私がつくと、達也は電話を切っていました。どうやら中にいる人の中に壬生紗耶香がいたようで、話を付けたようです。

 

しかし、達也に、壬生紗耶香に行ったことを聞くと、”壬生先輩のみ”を”達也個人の権限の範囲内で安全を保証する”という意味をサラっといったようです。

 

つまり彼女以外のメンバーは拘束するという意味です。私が言うのもあれですが、少し冷たすぎませんかね?まぁ私はその文言の通りに風紀委員のメンバーとともに中へ入り

 

彼女以外のメンバーを重力魔法で確保しましたが。

 

「どう言うこと!?身の安全は保証する約束でしょう?」

 

「えぇ。ですから、魔法の範囲に壬生先輩は除外されてますよ。

 

 達也が保証したのは壬生先輩の身の安全だけですよ?」

 

 

などと言える私もなかなかに冷たいのかもしれません。その後の話し合いで後日、公開討論会が行われることとなりました。

 

今回ばかりは私にはどうもできません。これを決めた七草会長の手腕に賭けるしかありません。

 

しかし、仮初の平穏はすぐそばに、崩壊の調べを運んできていました。

 




次回はついに入学編最終回です。作者の拙い文章で書ききれるかはどうか分かりませんが、相当な文章量になると覚悟はしております。どうかこんな作者の文章ですがよろしくお願いします。

ではまた次回お会いしましょう。感想、誤字脱字などは受け付けておりますので、じゃんじゃん送って頂けると励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。