では、入学編最終回、行ってみましょう。
シュテルside
皆さんは”人を致して人に致されず”という言葉を知っているでしょうか?これはあの有名な孫子が言ったことで、意味を簡単に言ってしまうなら「自身が主導権を握り、相手のペースに動かされない」という意味です。
戦巧者の方々はそうやって盤面を制することで勝利を勝ち取っていたということらしいです。実際、今回起きた事例はまさにこれにぴったり当てはまります。
「それにしても正気ですかね?本当にそれをやるなら、それは自殺行為ですよ?」
「それだけ向こうも切羽詰まっているのだろう。それか、強硬手段に出るか、だな。」
「できればそういうことはあまりしないでほしいのですが・・・・・・・・」
「ここまでのことをしたんだ。まぁ、無理だろうな。」
「私はただ二人との学校生活を満喫したいだけなのですが・・・・・・・・」
壬生先輩一派の小さな暴動?が起こった後、その一派は学校側・・・・・・・・いえ、生徒会側に対し公開討論会の開催を要求したそうです。
七草会長らによる話し合いの場が設けられましたが、それは実りあるものとは言えなかったようです。一方的な言い分で押しつけがましく制度改変を訴えるのはいいですが
いざ、それに関する方法を聞くと揃って黙ってしまい、口を開けばそっちで考えろの一点張り、これではまともな話し合いなど出来はしません。
そして公開討論会が開かれる運びとなったのですが、七草会長は焦り一つ見せることなく意気揚々としていたようです。それはそうですよね、相手が悪すぎます。
一方は最近初めてあまり知名度はない制度改革派。それに相対するは学校一のマドンナであり、十師族、七草家の長女という立場であり、
それを抜きにしても彼女は有名すぎますし、それを支える実績もあります。
ここまでの好条件がそろっていれば、この先を知らずとも答えは導き出せます。まず間違いなく七草会長の勝利で終わります。”彼女にとって主導権を握り、相手のペースに動かされない”
ことなど造作もないことなのです。ではなぜここまでの無謀な賭けができるのか?その答えは案外容易に推理できます。達也とともに風紀委員本部にいたときに私は達也に聞きました。
「達也、この学校を落とすにはどのくらいの人数が必要でしょう?」
「・・・・・・・・ざっと100人規模じゃないか?未熟とはいえ魔法師を相手にするんだ。万全を期すならその程度の人数は割かなければならんだろうさ。」
「・・・・・・・・達也、準備をしておいてください。間違いなく明日、一高は襲撃されます。恐らくそのほとんどが”例のアレ”を持ってるでしょう。私も明日は
「分かった。準備はしておこう。」
「お願いします。私ではおそらく深雪のことを”守り切れませんから”。」
「・・・・・・・・お前もくれぐれも無茶をしてくれるなよ?」
「分かっていますよ。そのためにできることはやりました、あとは相手方がどう動くかです。こればかりは、運ですね。」
私はその赤い目の中に静かに炎を宿しました。
(私と達也と深雪の楽しい学校生活を邪魔してくれた礼は必ずしますよ、ブランシュ。いや、司一!)
_________
その後、私は達也と深雪とともに自宅へと戻り、達也たちが色々と準備を済ませている間に私は四葉真夜へ掛けました。
「あらシュテル。どうしたの?」
「・・・・・・・・母さん。そこに深夜母さんはいますか?」
「えっ?・・・・・・・・ちょっと待っててね、今呼んでくるから。」
そう言って真夜は執事の葉山に頼んで深夜を呼んできた。
「お久しぶりねシュテル。もう一か月近くになるかしら?」
「えぇ、そのくらいにはなりますね。」
「それで、私を呼んだ要件って何?」
「・・・・・・・・私は明日、一高が襲撃されると考えています。」
その言葉に真夜母さんと深夜母さんは口を手で覆い驚愕の表情を浮かべます。
「・・・・・・・・それで?」
「まず間違いなく私たちはその者どもを潰します。ですから、後処理を頼みたいんです。」
「・・・・・・・・そう、分かったわ。深夜の精神系魔法の行使による反動もなくなってきたし、何とかしてみるわ。」
「ありがとうございます。では、よろしくお願いします。」
私はヴィジホンを切りました。私は一息つくと、部屋へと向かいました。
私の部屋兼工房には試作CADの山が積まれていました。まぁ、これは全部リサイクルしてしまう予定ですが・・・・・・・・
その中で一つ、机の上で最終調整を終えたCADがありました。例の板状のCADです。私はそれをもって深雪の部屋へと行きました。
「深雪、いますか?」
「お、お姉様!?今行きます!」
少し慌てる声がしたかと思うと、部屋から深雪が制服の上を脱いだ状態で出てきました。
「深雪、急いでるのは分かりますけど、その恰好では風邪をひきますよ。」
「・・・・・・・・はい。」
「まぁいいですけど。とりあえず着替えてください。達也のところに行きますよ。」
「え?お兄様のところにですか?」
「深雪用の新しいCADがついさっきできました。魔法の保存領域を通常の汎用型の二倍にしていますから、保存と調整のために達也にいろいろやってもらいましょう。」
「・・・・・・・・はい!」
私は達也のいる地下室へと向かいました。
「・・・・・・・・なぁ、シュテル?」
「はい?」
「こうポンポンと新しい技術とCADを作られてはこっちとしては面目丸つぶれなんだが・・・・・・・・」
「あらあらそんな、別に達也の仕事を奪ってるなんて思ったことはありませんよ?」
「自覚しているじゃないか・・・・・・・・よし、終わったぞ。深雪、使って見てくれるか?」
「はい、勿論ですお兄様!」
その後無事に新しいCADの調整はすぐに終わり、一応前のを予備に持っててもらうことにして、新しいのを深雪にプレゼントしました。
「良かった。特に異常はなさそうですね。」
「はい!これでどのような敵が現れても後れを取る心配はありません!ありがとうございます、お姉様!お兄様!」
「それは良かったです。でも、ケガをしない程度でお願いしますよ。」
その時の深雪の顔はとても可憐で、見ているこっちまでなんだか嬉恥ずかしいような気持になりました。
そんなことはさておき、私は二人に言います。
「達也、深雪、ついに明日が勝負です。まず間違いなくブランシュは一高を襲います。」
「あぁ、俺たちの日常を邪魔してくれた礼はたっぷりしてやる。」
「四葉家には後処理をお願いしてあります。ですから・・・・・・・・四葉の人間とバレないレベルでやっちゃって下さい。」
「分かった。」
「お姉様・・・・・・・・」
「大丈夫、心配いりませんよ。それに、こういう手合いは私が一番慣れている相手です。」
こうして、私たちは明日へ臨むのでした。
______________
ついに公開討論会が始まりました。とはいってもまだ話し合いなどが行われているわけではなく、そろそろ開始しますという感じでですね。
七草会長はいま最終調整をしています。今回ばかりは失敗が許されません。私は達也とともに会場警備へと回りました。
それにしてもとにかく人が多いです。こんなところでもしBC兵器*1でも使われたりしたら
まず間違いなく多くの死傷者が出ることでしょう。
(そんな事態を想定してルシフェリオンを持ち込んだんですけどね。)
今回私はルシフェリオンを持ち込んでいます。会場が閉まったタイミングでバレない程度の結界を使う予定だからです。この魔法が発動しているのに気づくにはそれこそ達也と同等かそれ以上に魔法に精通している
ものにしかわかりません。しかし、この結界もあくまで気休め程度にしかなりませんが・・・・・・・・
しばらく会場周辺を見回っていると、そこへ七草会長がやってきました。
「会長、どうされたんですか?リハーサルの最中では?」
「それはもう終わっちゃったのよ。」
「ではなぜですか?会長のことです、別に怖気づいたわけではないんでしょう?」
「・・・・・・・・うん。私、少し怖気づいちゃってるの。」
「なぜです?会長・・・・・・いえ、真由美さんならこういうことはしっかりと言えるはずです。」
「なんでかな?ほんと、自分でもわかんないんだ。今まで精いっぱい頑張ってきたつもりでも、私ができたことなんてほんとに少しだけだった。
でも、それでもってかんばってきたのにこんなことになっちゃって、ほんと、自分が今までしてきたことって何だろうって、そう思っちゃったのよ。
私って、本当に弱いね。十文字君や摩利たちにもいつも迷惑をかけてばっかりで・・・・・・・・」
「迷惑をかけて当然じゃないですか。」
「えっ?」
真由美さんの話を聞いて、私の中の・・・・・・・・多分前世の私の心が出て来たようなそんな気がしました。
前のことは覚えていない。それが今何故急に発現したのかは私にもわかりませんでした。しかし、これだけは絶対に解決しなければいけないという
強い意志のようなものを感じました。私はそう思ったからこそ、言いたいことを言いました。
「友人とはそういうものです。迷惑をかけて、かけられて。そんな関係をずっと続けているから、自然と友情という不確かでもそこにあるものができるんだと、私は思っています。
それに、人一人ができることなんて本当にごくごくわずかです。だから我々には本能的に誰かといたい、そんな感情があるのではないでしょうか。いいんですよ、あなたはまだ学生ですから。
いくら周りに迷惑が掛かろうと、許してくれる仲間がいる。それだけのものをすでに持っているあなたが、何も迷う必要はないのです。さぁ胸を張って、あなたの舞台はここではないはずです。」
私も何故、このようなことを言ったのかはわかりません。ただ、何故かこういうことを言うのが一番いいと感じました。そして案の定というかなんというか、真由美さんは笑っていました。
「なんかシュテルちゃん、先生みたい。でも、ありがとう。覚悟が決まったよ。私、行ってくるね。」
私は最後の一押しをかけました。
「えぇ、行ってらっしゃい七草会長。ご武運を。」
それを聞いて真由美さんは会場へと足を向けました。その背中は、先ほどあった時より、すっと伸びているような気がしました。
「あっ、結界張るのを忘れていました。」
シュテル、本日最大のミスをやらかしました。
__________
ついに演説が始まりました。詳しいことを書くと長くなってしまうので割愛しますが、とりあえずこの討論会は七草会長の独壇場と化しました。
いくら同盟のメンバーが反論を並べたところで所詮は駄々をこねる子供のそれ。会長の手にかかれば余裕で論破できるでしょう。
しかもそれと同時にその場にいた生徒全員に激励の言葉を送り、会場を沸かせた手腕は恐るべきものです。私もそこにいればよかったと後悔しています。
それはさておき私はいま会場周辺を警備しています。すると、校門の方から爆発音が響きました。
「来ましたか。」
私は通信機を立ち上げます。
『シュテルか!』
「えぇ。そちらの状況は?」
『こちらも襲撃を受けた。ガス弾が使われたようだ。幸い、服部が対処してくれた。』
「良かったです。では、自分は校舎本棟とグラウンドの方を見てきます。」
『達也君と深雪もそちら側に行った。君の実力は心配してないが、くれぐれも気を付けてくれよ。』
「了解です。」
どうやら達也たちは本校舎の方に行ったようです。であれば自分はグラウンドの方に行くのが先決。私はグラウンドの方へ向かいました。
___________
三人称side
シュテルたちが本格的に動き始めた頃、ほのかたちはグラウンドに併設された演習場で部活動の練習をしていた。
しかしその練習は校舎の方からの爆音と煙のおかげですぐに中止となり、避難を始めた。
「ほのか、私たちも行くよ。」
「う、うん。」
(シュテルに達也さん。大丈夫かな?)
雫に声をかけられ、ほのかも避難を始めようとする。しかし、シュテルたちのことを心配していたほのかは、案の定つまずいてしまう。
それがまずかった。その音に気付いた襲撃者がほのかたちの方へやってきた。
「たいちょーう。こいつらここの生徒ですぜ!」
若めの男が、隊長と呼ばれた人物の方を向く。その目には下心があるように見えた。
「ふむ・・・・・・・・なかなかいい体をしているなぁ。」
「隊長、こいつら”食っていい”?」
「あぁ、たっぷり痛めつけてから頂くとしよう。」
すると辺りから数人の男たちがやってきた。その男たちはそれぞれ小銃で武装していた。
ほのかはあまりの怖さにその場から逃げ出すことができなかった。
男の一人が手を伸ばす。それは髪の方から段々胸の方へと向かっていく。
(助けてっ!助けてっ!)
ほのかはそう心の中でつぶやく。それは声となってあたりに響く。
「誰か、助けて―!」
「ヒヒヒッ!そんな声出しても無駄だよ、さぁ、おとなごばぁ・・・・・・・・」
ほのかに手を出そうとした男の眼が白目をむき、ほのかの体へと倒れこむ。
「なんだっ!?」
「敵襲だ!総員構えろ!」
「あなた達、いったいそこで何をしようとしてるんですか?」
男たちが叫んだ後に聞こえたのは女の声。それはあまりにも冷たすぎる声色だった。しかしほのかにとっては聞きなじみのある声だった。
「シュ・・・・・テル。」
男たちの後ろには、赤色が混ざったような深い茶髪をした少女、シュテル・シバ・スタークスその人が立っていた。その手に握るのは赤と黒が混ざり、上部には青色の水晶が取り付けられた杖、ルシフェリオンが握られていた。
____________
シュテルside
「貴様、いったい何者だ!」
男の一人がそう叫びました。ほんとはこのような下衆に名乗る名はないのですが今日の私ははらわたが煮えくり返っています。なので冥途の土産に名前を名乗ることにします。
「第一高校風紀委員、シュテル・シバ・スタークス。覚える必要はありません、あなた達にはここで倒れていただきます。」
「ふざけるなよ!たかが生徒の分際で!」
「遅い。」
男の一人がその手に持つ小銃を私に向け発砲しました。私はそれを男の懐に踏み込むことで躱します。
「なにっ!?こいつ、早すぎぃがっ!?」
「この程度ですか。やはりといいますか、弱すぎますね。」
私は、どんなに鍛えようが絶対できてしまう人間の”急所”の一つである後頭部に蹴りを入れました。私は武術をたしなむ程度しかやっていませんが
暗殺術での蹴りは威力がしっかりと考えられ、それをいかに効率よく相手に浸透させる力がしっかりとできているので私の体でも十二分に力を発揮してくれました。
男は打撃をダイレクトに浸透されたせいで脳震盪を起こし倒れました。
「このガキ・・・・・・・・ぜってぇ楽には殺さねぇぞ!」
残りの男たちが一斉に飛び掛かってきました。しかし、集団で一人を相手にするというのは時に、相手に攻撃するチャンスを与えるということがあります。
今回の場合、私の体と相手の体には体格差的に男たちが体を斜め前に倒さないと襲えない程度の身長差があります。しかも固まっているとあればこうなるのは必然と言えるでしょう。
周りには男が四人。私は正面と右横からくる男の足元を蹴り体勢を崩させました。すると勢いを殺し切れず、それぞれの反対からくる男と頭をぶつけあいました。
その瞬間、私は即座に魔力弾を生成、残りの男たちの後頭部にぶち当てました。衝撃で、頭をぶつけあった二人はその場で気絶し斃れました。
「くそっ!何なんだよこいつ!」
「シュテル!危ない!」
ほのかがそう叫び私は即座に男の方を見ました。その手には小銃ではなくナイフが握られています。私はナイフを持っているその手を外側に弾き、顔に一発軽い裏拳を叩き込みます。
男はよろけ後ろに一歩下がりました。間髪入れずに膝のあたりに蹴りを入れて、男を強制的に軽い膝立ちの姿勢へと移行させ、不用心に伸ばしているナイフを持った腕をつかみそのまま後方へと投げます。
投げられた男は気絶し、そのナイフを落としました。そしてそのまま、男の後ろで小銃を構えている男の方へ、九重先生に教わった瞬歩という特殊な歩行術で、相手に近づき、小銃を外側に弾き、そのまま男の顔に五発程度掌底突きを打ち込みよろけさせます。
そしてとどめに掌底突きの強打を入れて脳震盪を意図的に起こさせノックアウトさせました。これで、隊長格以下、ほのかたちを襲おうとした不埒者どもは無力化できました。
この一連の動きは、CQC*2という格闘術を使いました。
「ふぅ。こんなものでしょうか?気絶は・・・・・・・・うん、しっかりしているようですね。後は縛っておくだけ・・・・・・・・っと。」
私は、この時のためにと準備していた結束バンドで男たちの手の親指どうしを縛り付けました。これでとりあえず反撃されることはないでしょう。
ほのかの方を向き私は手を伸ばしました。
「ほのか、大丈夫ですか?」
「うん・・・・・・・・ありがとうシュテル。」
「気にしないでください。友人を守るのもまた友人の務めです。さぁ、ここは危険です。早く避難を。」
「シュテルも気を付けてね!」
「勿論です。ありがとうございます。」
私はほのかが避難したことを確認し、ブレイズフィンを展開、図書館の方へと向かいます。
_________________
(おそらく敵の目的は、魔法大学の非公開文献辺りを盗むこと。だとすれば一番優先されるのは特別閲覧室!)
私は急いで向かいます。飛んでいるおかげで目的の場所まではすぐ着きました。しかし、入り口付近ではまだ戦闘が続いています。
(早く資料室に行かないといけないのにっ!?・・・・・・・・ん?あれは達也に、深雪。なら好都合ですね!緊急事態ですし、今更破損が増えたところで構いませんよね。)
よくないのである。by作者
私は、二階の窓を蹴破って中に入りました。その音に驚いた二人はCADをこっちに向けてきましたが、私だということを確認するとすぐにCADを下ろしました。
「お前はいつもとんでもないことをしでかすな。」
「今更ですよ。それより、”この中に”?」
「あぁ、この中だ。」
達也はCADを扉に向けます。私も透明魔力弾を生成し、待機します。
「行くぞ。」
「えぇ。行きましょう。」
達也が”分解”を発動します。手榴弾や対戦車榴弾が直撃してもびくともしない強度を誇る扉がまるで豆腐のように裂かれ、前に倒れます。
その奥で何やら機械を操る集団を目の前に、私は待機させていた魔力弾で見覚えのある人物以外を気絶させます。
「達也君に、シュテルちゃん!?」
「壬生先輩、そこまでです。非公開文献を持ち出して、何をするおつもりだったのですか?」
「私は・・・・・・・・ただ、この理不尽な魔法師制度を変えたかっただけ・・・・・・・・それだけだった。」
「そんなものを盗み出して、この制度は変わりますか?いえ、そんなことはあり得ません。むしろあなたは犯罪者、産業スパイとして社会から見放され、生きていけなくなりますよ?」
「壬生先輩、あなたは非公開文献を盗み出すために利用されただけです。」
「あなたが望んだのは、本当にそんなことだったんですか?自分を都合のいい駒としか思ってないような組織に、使い潰されるとわかっていながら、それでもあなたはまだそちら側にいることを望みますか?」
壬生先輩はついに本音を漏らします。
「分かっているわよ!自分が利用されてることぐらい!でも、それでも私は!この差別をなくしたかった!私から生きる希望を奪ったこの差別を!」
「いいですか壬生先輩、これが現実です。才能と適性で平等になるなんてことはあり得ません。それが必然です。もしそれでも、才能と適性を無視して平等な世界があるとすれば、それは等しく”冷遇された”世界。」
「じゃあ、どうすれば良かったって言うのよ!」
壬生先輩の我慢はすでに限界を迎えていました。私は達也と深雪を外へと移動させ、壬生先輩の心を正面から受け止める覚悟を決めます。そして、彼女の本心がついに、紐解かれます。
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紗耶香side
「じゃあ、どうすれば良かったって言うのよ!」
私はもう、我慢の限界だった。達也君に言われたことも、シュテルちゃんに言われたこともすべて正しい。
でも、それでも私のことを、私の心の内を分かったような口をきいてほしくなかった。
「差別をなくそうとしたのが間違いだったの!平等を目指したのが間違いだったというの!差別は確かにあるじゃない!あなたは悔しくないの?達也君があなたと比べられて、さげすまれて!それでもあなたはこの考えを間違いだって言えるの!?」
完全に子供の癇癪だった。全然言葉のまとまりがない。支離滅裂な言葉。
「悔しくない?・・・・・・・・悔しくないわけないじゃないですかっ!」
「えっ?」
シュテルちゃんが叫んだことに驚いて私は素っ頓狂な声を上げた。
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三人称side
「達也が蔑まれているのを見て悔しくないと思えるわけないでしょう!私は魔法事故でかけがえのない家族を失った。
けど、彼は、彼らは私を拾ってくれた。母方の兄妹の子であるにもかかわらず、本当のの兄妹のように接してくれた!」
これは半分事実で半分嘘である。彼女の家族はあの四葉真夜だ。死んでいるわけではない。しかし、殺し屋としてのスキルと感情操作のために色々されたシュテルを快く迎えてくれたのは誤魔化し様のない真実である。
「黙って見られるわけがないでしょう!でも仕方ないんですよ!才能と適性がある以上、当人のがんばったという証拠は結果という蓋で隠されてしまう!それが常なんですよ!」
壬生は絶句している。シュテルがそんな重荷を背負っているとは思わなかったからだ。そして達也と深雪も同様だった。シュテルは二人に何かあると感情的になるきらいがあった。
それは摩利のおかげで改善したが、未だトラウマの様なものとして彼女の中に残っていることに二人は一切気づかなかったのだ。
「・・・・・・・・いいですか壬生先輩。あなたが差別をなくそうと思う気持ちは痛いほどわかります。でもこのままいればあなたはただ利用されただけなのに人生を棒に振ることになってしまいます。
だから、こちらに来てください。あなたは、こんなところでくじける人ではないでしょう?私と違って、ただひたむきに努力しものがあなたの胸の中に、あるでしょう?」
「私は・・・・・・・・私はっ!」
「もう誰もあなたを責める人なんて、いませんよ。」
壬生は、泣きそうになりながらも胸の内をさらし、手を差し伸べてくれたシュテルを見て、思わず彼女の胸の中に飛び込んできた。こうして壬生紗耶香は無事、ブランシュの魔の手から解放されたのだ。
__________________
『あら?学校での騒動はもう終わったの?』
「えぇ、こっちはひと段落つきました。後はブランシュのアジトを潰すだけです。」
『そう。くれぐれも無茶はしないでね?』
「分かっていますよ、母さん。」
そう言うとシュテルは通信を切った。壬生を取り戻した後、シュテルは壬生を達也に任せ、辺り一帯の敵を殲滅していた。
シュテルの魔力弾の精密操作可能量はすでに三桁まで達しており、それをノータイムで繰り出せるとあればどんなに物量でこようがかなわないだろう。
何せその魔力弾は”急所”を”的確かつ一撃”で貫くのだから。文字通りの無双。誰も太刀打ちの使用がない圧倒的なまでの力の権化。
正確無比に打たれるそれはまさしく凶弾。こうして校内にいたテロリスト集団は壊滅した。
その後、一高生のブランシュのメンバーは全員、一旦保護という形で軟禁され、調べたところ案の定というかなんというか、催眠系の魔法の痕跡が確認された。
現在達也たちはは壬生紗耶香の取り調べをしている。シュテルも壬生が拘束されている保健室へ向かおうとする。すると扉の前にとある女性が気配を殺しながら立っていた。
(達也にはすでにバレている模様。by作者)
「あら?小野さん、お久しぶりですね。」
「!?シュ、シュテルちゃん。お久しぶりね。」
その女性は一高でカウンセラーとして働きつつ、公安のエージェント的な役職にもついている立派なキャリアウーマンの小野遥だった。
実は以前初めて達也と会う前に、四葉の仕事の時にまだ公安に所属していない彼女と面識があり、そこから仲良くなった友人みたいなものとなっていた。
「今は一高のカウンセラーですか。それに、どうやら極秘な任務も請け負っているようで。」
「!?」
小野遥、まだ十七歳の子供に驚かされる。春香の表情は完全に図星を突かれたといわんばかりの顔だった。
もう少しポーカーフェイスというものを覚えたほうがいいんではなかろうか。
そんなことをシュテルが考えていると、保健室の扉が開き、その奥から達也が出てくる。
「なんだシュテル、お前もそこにいたのか。」
「なんだとは何ですか。・・・・・・・・まぁいいです、こっちは片が付きました。そっちも何やら行動を始めるようで。私も一緒に行きます。」
「それは助かる。それで小野先生、ブランシュのアジトの場所なのですが・・・・・・・・ご存じでしょう?」
「えっ?えぇっと・・・・・・・・」
あからさまに困っている。その証拠に目が泳いでいる。
「はぁ・・・・・・・・ここから少し離れたところにある廃工場。そこにブランシュは潜伏している可能性が高いです。」
「なんで場所を知ってるの!?」
遥は驚く。そしてそれは中にいた深雪以外のメンバー・・・・・・・・真由美、摩利、克人、レオ、エリカも同様の顔をしている。
「なんでと聞かれましても・・・・・・・・少しあちらさんにO☆HA☆NA☆SI☆してもらっただけですから。」
そのセリフはそこにいたメンバー全員をドン引きさせるには十分だった。
まぁ、そんなこんなでブランシュという後顧の憂いを絶つために、先ほど保健室にいたメンバーから真由美と摩利を抜いたメンバー+紗耶香の敵を討ちたいという思いで参加した桐原を加えたメンバーで
ブランシュのアジトに突撃することとなった。シュテルは車には乗らず、そのまま飛行している。
それこそ最初は驚かれていたが、シュテルが普通に魔法を使えるが元々BS魔法師であることを説明すると納得してくれた。
(まぁ、飛行魔法については達也が今鋭意制作中ですがね。)
達也が飛行魔法を開発する時期は近い。
______________________
そんなことをしているうちにブランシュのアジトへと到着した。途中、しまっていた門を硬化魔法で固めた装甲車で突破するという荒業で入りはしたが、おおむね予定通りである。
克人と桐原が別ルートで侵入、エリカとレオが残党がりのため外で待機、そして達也、深雪、シュテルの三人で正面からという布陣となった。
達也たちはまるで物怖じしていないように歩いて行く。そして大きな扉の前の曲がり廊下で達也が立ち止まった。シュテルはサーチャーの精度を最大にしてその先を調べる。
するとその先には生体反応がとても多かった。ざっと30人はいるだろうか?それでここの戦力は全部ということだろう。そう考えるとブランシュがいかに大きな組織であるかを知ることができる。
達也はCADを扉に向けて分解を放つ、すると奥の方で部品が落ちる音と人の喧騒が聞こえて来た。どうやら全員、銃で武装していたのだろう。達也はその隙を見計らって扉までダッシュ。
扉を分解で壊し中へ入る。
「全員動くな。動くと命はないと思え。」
達也がCADを向けながら中にいた人間全員に向かって言い放つ。
「フフフっ。来たね、魔法師。」
すると奥の方から紫がかった髪色?をして、眼鏡をかけたいかにもワルな青年が出て来た。
「貴様が司一か?」
「いかにも。私はブランシュ、日本支部のリーダー。司一だ。」
この男こそ、シュテルたちの学園生活に水を差し、めちゃくちゃにした犯人だ。シュテルはその右手を握りこむ。それに応じて持っていたルシフェリオンからも少しきしむ音が聞こえる。
「無駄だと思うが一応言っておく。無駄な抵抗をやめて投降しろ。そうすれば、安全は保障する。最も、貴様には獄中生活が待っているがな。」
「そんなものに応じると思っているのかい?」
達也の警告を司一はあっさりと断る。生粋のバカなのか。この男の暴走は止まることを知らない。それどころか
「それより司波達也。そしてシュテル・シバ・スタークス。君たちはブランシュに入る気はないかね?」
そんなバカみたいな質問を言い出す始末だ。
「俺たちに仲間に加われと?」
「そうだ。君のそのアンティナイト不要のキャストジャミング、そしてシュテル・シバ・スタークスの魔法操作テクニック。どっちも手に入れば我々の力は揺るがないものとなる!」
「そんなもののために我々がお前に協力するメリットはない。とっとと投降しろ。」
「ふむ・・・・・・・・残念だよ。」
一は眼鏡をはずし、上に投げる。そして再度一の方を見ると、目のあたりが赤く光っている。何かの電波を飛ばしたのだろう。
達也は一瞬ふらついた。私もつられてふらつく。それを見て一は笑いだす。
「ハハハハハっ!どうやらかかったようだね。さぁ司波達也、シュテル・シバ・スタークス、その手で最愛の妹を殺せ!まぁ、妹君も最愛の兄と姉に殺されるのは本望だろう!」
「・・・・・・・・司一。猿芝居はよしてください。見ているこっちまで恥ずかしくなってきますよ。」
「なにっ!?」
「・・・・・・・・意識干渉型系統外魔法、
こんなもの、魔法式の一部を分解してやれば只の光信号だ。」
「貴様たち、何故かかっていない!くそっ、こんなはずではっ!」
ついにシュテルは我慢の限界だった。
「・・・・・・・・司一。」
「ど、どうしたシュテル君?我々のもとに下る気になったかね?」
「・・・・・・・・えぇ、なりましたよ。」
「おぉ!司波達也が手に入れられなかったのが残念だが君がはいれば百人力だ!ではぜひとも我々のためにそこの司波深雪と司波達也ををころ」
「あなた方を残らず叩き潰すことをねッ!」
シュテルの堪忍袋の緒がついに音を立ててちぎれた。シュテルはそう言ったと同時にルシフェリオンを縦に構え、底の方を床にたたきつけた。そしてそれが合図となり
シュテルの背後には、総数200個の魔力弾が生成された。
「ふざけるなっ!貴様のせいで深雪たちとの高校生活がめちゃくちゃになった!それなのに仲間に加われ?いい度胸ですねッ!」
「ま、まて!シュテル・シバ・スタークス、君が仲間に入れば我々は最強となれるんだ!君もこの社会を変えたいんだろう?だったら私とこい!」
「まだそんなことを言うんですか?・・・・・・・・もういい、さえずるな。耳が腐る。」
「まて、待ってくれ!待ってくださいお願いします!」
口調が崩れた。しかし、こういう輩の最後は決まっている。
「祈るがいい。あなた達がこれでは死なないことを。せいぜい痛みに苦しみながら闇に落ちろッ!」
それは悪魔のささやきか。シュテルは右手を掲げ横に一閃。それが合図となり一気に魔力弾が司らを襲い始める。一切として狙いがされていない魔力弾だが、それが一方向に、それも十機関砲のごとく連発してとんでくる魔力弾に
ブランシュはもうなすすべがなかった。司一は部下を盾にして何とか逃げ延びたようだが、それ以外のメンバーは全員気絶している。もうしばらくは起き上がることはないだろう。
「シュテル・・・・・・・・大丈夫か?」
達也は魔力弾を生成して少し息が上がっているシュテルに声をかけた。
「大丈夫です。それよりあのクソパツ金野郎を追いかけましょう。」
「ぱつ金・・・・・・・・まぁいいか、了解した。」
シュテルたちは一を追いかけるのだった。
_____________
シュテルたちが司一を追いかけていると、また巨大な扉があった。おそらく・・・・・・・・いや、言わずもがな。この先にはまた兵士が待ち構えている広間があるんだろう。
「達也。」
「あぁ、俺の手を取れ。”送るぞ”。」
「いつでもどうぞ。」
達也の手を取ったシュテル、その頭の中、魔法演算領域に達也の”
それは奥の部屋にいる人物を全て捕らえていた。シュテルはルシフェリオンを待機モードでしまい、代わりにレイジングホーンを取り出した。
「目標確認、
引き金を引く。発動するのは”流星弾丸”、それはどのような障害物も意味をなさない、目標を確実に仕留めるためだけの魔法。
シュテルは引き金を引く。威力は最小、いくら敵だからと言っても殺してはならない。それはもう高校生の範疇に収まることではない。
ゆえに非殺傷。しかしその威力は人を気絶させるのには十分すぎるほどの威力。何人にも阻めない暴力の権化たる魔法が発動された。
その魔法で中にいた司一以外のメンバーは全員昏倒してしまった。痛みを一瞬だけ感じ、そのあまりの痛みに体が意識をシャットアウトしたのだ。
「なんだ?何が起こった?なぜ私の下僕が全員たおれたのだ・・・・・・・・くぅ、この無能がぁぁぁぁ!!」
「司一。」
「ひっ!?」
司一がそんなことを叫んでいると、部屋の中にシュテルたちが入ってきた。
シュテルと達也がCADを司一へと向ける。
「終わりだ、司一。」
「さっさと投降するのが身のためですよ。・・・・・・・・おっと、あちら方も来られましたか。」
シュテルたちとは逆側に位置し、今ちょうど司一がいる場所にある扉がいきなり鉄が切断された時の轟音とともに叩ききられた。
その後ろから桐原と克人が出てくる。
「司波兄、司波姉、もう来ていたのか。んでそいつは?」
「ブランシュのリーダー、司一です。」
「こいつがっ!?」
その瞬間辺り一面の想子が一気に活性化した、様な気がした。桐原が持っている刀型CADが魔法式を構築する。それは、壬生との試合の時にも使ったらしい魔法
高周波ブレードだ。
「壬生の剣をたぶらかしやがったのはぁ!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
桐原がCADをふるう。その刀身は司一の腕をしっかりととらえ、両断する。その腕からは血が出て、司一は絶叫する。
すると腕のところが焼けたようなにおいとともに出血が収まった。どうやら克人が断面を焼いて止血したようだ。
「三人とも、ご苦労だった。後はおれに任せろ。」
こうしてブランシュ日本支部による一高での一件は収束を迎えた。首謀者である司一を筆頭とするメンバーは全員逮捕され、一高のメンバーには全員催眠魔法の痕跡があったため
全員が検査入院している。そして日本支部壊滅に協力したメンバーのことは伏せられ、ただ事件があったとだけニュースで報道された。
これは一高の校長が大事にしたくないという理由で伏せられたからであるため、学校内でもあまりその話は上がらなかった。
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通称:ブランシュ事件(シュテルが勝手につけた非公式の名前)から数日後の放課後、シュテルは達也と別行動をしている。達也たちはどうやら壬生のお見舞いに行ったようである。
翌日が休みということもあってシュテルは現在四葉邸へと向かっている。屋敷につくとそこにはまるでまっていたといわんばかりに葉山が待機しており、シュテルはそのまま真夜の部屋へと通された。
「シュテル、久しぶりね。」
「えぇ、お久しぶりです。母さん。」
「大丈夫だった?どこもケガしてない?」
「大丈夫ですよ。かすり傷一つ負っていません・・・・・・・・あぁいえ、切り傷は少し。」
「えぇ!?どこでついたの?誰にやられたの?やったやつには四葉の悪夢を見せてやらないと・・・・・・・・」
「いえ、母さん。これは自分が窓ガラスを突き破った時についた切り傷ですから。」
「そう。でも、あなたがけがをしないでよかったわ。」
「母さん。いえ、真夜様。今回は本当にありがとうございました。そして、御手を煩わせてしまったことを謝罪します。」
シュテルはその場でしゃがみ、首を垂れた。真夜の呼び方も礼節を伴ったものになっていた。
「いえ、今回の件はわたくしも手を焼いていたので結果オーライです。このまま学業に励みなさい。」
そのことを察したのか、真夜も口調を四葉家当主としてのものに変えた。
「仰せのままに、真夜様」
こうしてシュテルたちには一時の平穏が訪れた。しかしまだ、彼女たちの身に降りかかる不穏な空気は払いきれていないのである。
ーーーー入学編 Finーーーーーー
ここまで読んでいただきありがとうございました。無事、入学編を終えることができました。本当に感謝の念に堪えません。さて、次回からは九校線編となります。ではまた次回またお会いしましょう。