魔法科高校の星光の殲滅者   作:狩村 花蓮

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大変長らくお待たせいたしました。九校戦編の二話となります。今回は後々への伏線となる(多分きっとmaybe)内容を入れました。ちょっと短くなるかもです。


第十七話 九校戦編 Ⅱ

シュテルside

 

時刻は四時をまわっているかという頃、外はすでに赤みがかってきています。そんな私はいま生徒会室の方に来ています。昼休みに達也から聞いた呼び出しの件で放課後になったと同時に私の端末に正式な通知が来たからです。

 

内容はいたってシンプル、『九校戦の件で話があるから生徒会室に来てくれ。』というものでした。正直九校戦に出られるのであればどのような形でもよかったですし・・・・・・・・なんなら、私自ら生徒会に直談判する勢いだったので

 

渡りに船でした。と、何故私がここまで九校戦に固執するのかといいますと、去年、おととしの九校戦の試合を見て、憧れを持ってしまったからなんですよね。昔から裏の仕事を強要され正直心がすさんでいた私の唯一の楽しみが

 

九校戦の試合映像を見ることでしたからね。魔法についての知識を深めるためにと、真夜母さんが毎年取り置きしたものをくださって、私はまるでヒーローショーを見て心を虜にされた男の子のようにどんどんのめりこんでいったんです。

 

あと、自分の持っている力がどこまで通用するのか試したくなったのも要因の一つです。幸いなことに真夜母さんからは本気を出してもいいといわれているので出し惜しみはなしで行きます。というか出し惜しみなんてしていては負けます。

 

わたしとて万能ではありません。私が得意としているのはあくまで魔法の精密制御であって、達也や深雪のような魔法力があるわけではありません。それでも普通の魔法師と比べれば総量は多いでしょうが。

 

まぁそんな話はどうでもいいですよね。では話を現実の方に戻しましょう。

 

「シュテルさん。あなたには我が校の代表として、九校戦に出てもらいたいと考えています。引き受けてくれますね?」

 

「お前も入学時に説明されたとは思うが、九校戦に出ると様々な恩恵のようなものが得られると考えていい。まぁそれをだしにするつもりはないが、考えて見てくれないか?」

 

「分かりました。お引き受けしましょう」

 

それを聞いてか、二人は安心したように笑顔を見せました。

 

「良かったぁ。断られるんじゃないかってひやひやしていたから。ありがとう、引き受けてくれて」

 

「別に面倒ごとでなければ協力は惜しみませんよ。それに、九校戦には個人的に興味があります」

 

「やる気十分といったところか。期待しているぞ、シュテル」

 

「えぇ、ご期待に沿えるよう精一杯頑張ります」

 

「あとは・・・・・・・・。一応知っていると思うけど競技の内容についておさらいするわね。時間は大丈夫?」

 

「問題ありません」

 

「シュテル、まずはこれを見てくれ」

 

そう言って摩利先輩が渡してきたのは九校戦のパンフレットでした。中には各競技の説明とルールが書いてある。

 

「そのパンフレットにもかいてある通り、九校戦には本戦と新人戦に分かれて六種目で得られた得点で勝負をします。選手は最大二種目を選ぶことができます。

 

新人戦は一年生のみで、本戦は学年制限なし。ですが基本一年生が出ることはありません。新人戦には今年から本戦同様男女の区分ができました。選手の人数は本戦、新人戦合わせて四十名。各校から各競技に出せる選手は三名のみ。

 

同じ種目でも男女で別カウントになりますから選手は男女各五人に5種目から2種目を選んで出場してもらい残りの五人が一種目を選んで出場してもらうという形になりますね。ここまでは分かりますか?」

 

「えぇ、勿論です」

 

「良かった。では、続けますね。六種目、モノリス・コードは男子のみ、ミラージ・バッドは女子のみとなっています。モノリス・コードは唯一直接戦闘が想定される競技のため男子のみとなっています。なので出場することができません。

 

モノリス・コード、ミラージ・バッド、アイスピラーズ・ブレイク、バトル・ボード、スピード・シューティング、クラウド・ボール、この六種目の総合得点が最も高かった高校が優勝となります」

 

「そう言えば、一高は今回三連覇がかかっているんでしたっけ?」

 

「そうなんだ。今回勝てば我々の完全勝利となる。この好機を逃したくはない、だからシュテル、我々に力を貸してくれないか?」

 

「勿論です。微力ですが、お力になれるよう精一杯の努力をさせていただきます」

 

それを聞いて真由美さんと摩利先輩は再び、安堵の息を吐き出しました。

 

「ほかの選手が全員決まり次第ミーティングの機会を設ける、時期は追って通達するから忘れず来るように」

 

「では、もう帰ってもらって構いません。よろしくお願いしますね、シュテルさん」

 

「こちらこそ。では、失礼します」

 

私は生徒会室を後にしました。

 


 

三人称side

 

国立魔法大学付属魔法科高校は現在、全国に九つ存在する。

 

関東(東京)に第一高校。近畿(兵庫)第二高校。北陸(石川)に第三高校。東海(静岡)に第四高校。東北(宮城)に第五高校。山陰(島根)に第六高校。四国(高知)に第七高校。北海道に第八高校。九州(熊本)に第九高校がそれぞれ位置している。

 

魔法科高校は、全国にこの九校しかない。国立魔法大学の付属高校が九校しかないのではなく、正規課程として魔法教育を行っている高校がこの九校だけなのだ。本音を言ってしまえば、政府はもっと魔法科高校を増やしたい。

 

だが、実際問題圧倒的な魔法師不足からくる教員の不足が最大のネックとなっているため、増やすに増やせないのである。モノだけあっても中身が不足している状態なのだ。東京都という日本の中心、首都である場所に位置する

 

第一高校ですら一科生と二科生に分けなければならないほど教員が不足しているのだから、その不足度合いは察せるであろう。ちなみに、第一、第二、第三高校の定員は一学年、二百名。他の高校は百名しかないということも記しておこう。

 

これが一年あたりで確保できる新たな魔法師の限界である。そして、その数は人口対比で見た有効レベルの魔法技術を扱える素質がある成人していない男女の数とほぼ一致する。ということが社会では考えられている。

 

しかしこれは早々と才能に目覚めた子供たちの比率であり、同時に適切な機会があれば才能の開花こそ遅いが、魔法に対する適性が高い子供を新たに発見する可能性も低くない、とも考えられている。

 

しかし、先に上げた一高の制度を見ても分かる通り、社会における魔法師の人員不足がどうしても足を引っ張る。開花が遅い魔法師の卵に適切な機会を与えてやれないのが現実だ。

 

故に高難度の試験をクリアできた一学年二百人の魔法科高校生たちを徹底的に可能な限り鍛え上げ、能力を底上げすることで魔法師という重要かつ貴重な人的資源をまわしていくしかない。そうすることで将来の教員不足を解消し

 

今よりさらに多くの魔法師を育成するという正のスパイラルも期待し得る。そして、そのために撮られている手段の一つが魔法科高校旧交を学校単位で競争させ、生徒の向上心をあおること。

 

そしてそれこそが『全国魔法科高校親善魔法競技大会』いわゆる夏の九校戦である。そこには毎年様々なドラマがあちこちで繰り広げられる。片や勝利の余韻につかるもの、片やその挫折に涙するもの。

 

全国から選りすぐりの魔法科高校生たちが、自身の尊厳と若きプライドを賭けて、しのぎを削り合う。西暦2000年初期にあったもので言い表すなら甲子園がこれに当たるであろう。

 

そしてこれは国内だけでなく国外にまで自国(ここでは日本)の魔法師の実力をアピールするという政治的な面も含んでいる。そのため政府関係者、魔法関係者のみならず一般企業や海外からの大勢の観客や研究者がこの九校戦を見に来て

 

お眼鏡にかなうものがいればスカウトするという名誉も与えられる。あまり目立った活躍を世間に見せられない魔法師が堂々と実力を見せられる少ない機会。魔法科高校生にとっての晴れ舞台。

 

ここに至るまでのあまたの研鑽を経てこの大舞台に立つことを許されただけでもとても名誉である。ゆえに、その舞台へ上がるものが身近にいれば周りも誇らしくなるのだ。

 

帰り道、シュテルは九校戦に出ることをエリカ、美月、レオに話した。達也たちはシュテルより先に帰って九重寺へと向かっている。

 

「へぇー、やっぱり出るんだ。九校戦」

 

「まだ決まったわけではありませんが、会長が直に声をかけてくださったので、出ようと思います」

 

「やはりすごいですね、シュテルさん。わざわざ会長からお声掛けされるなんて」

 

「美月の言うとおりだわー。それで、いったい何の競技に出るつもりなの?」

 

「アイス・ピラーズ・ブレイクとスピード・シューティングに出ようかと」

 

「成程ねぇ。確かにどっちもできそうな感じするわー」

 

「そういや、シュテルさんはどの系統の魔法が得意なんだ?」

 

「収束系統ですね。やろうと思えば、恐らくレオのパンツァーも使えると思います。まぁまずは、その起動式を見ないことには使いようがありませんが」

 

「本当にやりそうな気がするから俺は怖いぜ・・・・・・・・、でもまじか。収束系が得意とは。シュテルは深雪さんと同じで万能タイプだと思ってたぜ」

 

「あぁ、いえ。確かに収束系は最も得意とする系統ではありますが、一応ほかの系統も扱えますよ?人並みレベルですが。それに、深雪は万能タイプではありませんよ?ほかの系統も使いこなせますが、深雪の得意な系統は振動・減速系です」

 

「・・・・・・・・マジ?」

 

「えぇ、オオマジです。でも、私のこの能力は決して最初からできたという訳ではないんですけどね」

 

「えっ?それじゃあ、練習・・・・・・・・したんですか?」

 

「・・・・・・・・地獄のような日々でした、とだけ言っておきます」

 

「シュテル、あんたどんだけ波乱万丈な人生送ってきたのよ・・・・・・・・」

 

エリカはあきれ顔を、美月とレオは驚き顔を浮かべていた。そしてそのまま、シュテルたちは帰路へとついた。

 


 

エリカ達と別れたシュテルは、一人でキャビネットに乗り、自身の降りる駅まで向かった。いつもと変わりない帰り道。だがこの日は、いつもとは違った。

 

「ん?あれは・・・・・・・・」

 

自宅までもう少しといったところで、歩道に倒れている人影を見た。暗がりの中でよくは見えないが、その人影はまだ子供であろう程度の大きさだった。

 

シュテルはそれを見た瞬間、急いでその人影の方へ向かう。近くまで行くとようやく全景がはっきりとした。倒れていた人影はまだ中学生程度の女の子だったのだ。

 

夏に差し掛かろうかという季節ではあるが、夜はまだ十分に寒い。こんなところに倒れていたら、寒さのせいでそのまま衰弱死するか、幼女への凌辱を趣味とした頭のねじが外れた変な人間の餌食となるだろう。

 

「大丈夫ですか!?」

 

シュテルは急いでその少女の容態を確認する。呼びかけても反応がないが、幸い呼吸はしているし、脈拍も安定していた。急いで救急車を呼ぼうとすると、近くの路地裏から悲鳴と、その声とは別な声がした。

 

(声を聴く限り性別は男、トーンや喋り方の違う声が混じっているから恐らく人数は複数。悲鳴の方も男・・・・・・・・、誰かが複数人に襲われている?)

 

シュテルはサーチャーを出してその場を偵察する。するとそこには消音機付きの小銃で武装した男たち数人とその男たちの目の前で倒れている男性の姿があった。

 

シュテルは襲われている方の男性に見覚えがあった。

 

(あの男性は・・・・・・・・八神伸朗氏!?じゃあまさかこの子って!)

 

シュテルが見たのは八神伸朗だった。そして、シュテルが抱えている少女は、ついこの前八神堂にて襲われていた八神はやてその人だったのである。

 

(だとすれば目的は、はやて嬢の誘拐?)

 

シュテルはサーチャーから会話が聞き取れるようにして、男たちの会話を聞く。

 

『サンプル体、八神はやての血液は確保できた。既に別のチームが本部へと運んでいる。そして八神伸朗。いや、検体No003。貴様は始末せねばならない』

 

『な、なにっ!?なぜ私が!?なにも失敗などしていない!』

 

『もう”用済み”なんだとさ。ご愁傷様だねぇ。まぁそんなこと俺達には関係がないがな。ヒャヒャヒャ!』

 

『ボスから直々の命令だそうです。なので我々はここであなたを始末します』

 

『ま、待て!待ってくれ。私はまだやれる。八神伸朗として”生きていける”!だから頼む、殺さないでくれ!』

 

『駄目だ。お前はクローンでしかない。処分しろと言われたらおとなしく処分されるのがお前だ。既に母親役も始末している。それに、メインの対象を確保できず、すでにサンプル”二体”を逃がしているのだ。これ以上手間を賭けさせるな』

 

リーダー格と思しき男が、伸朗の眉間に小銃を突きつけ、引き金を引く。その銃弾は伸朗の脳を破壊し、即死させた。死んだことを確認するとリーダー格の男は小銃を下ろす

 

『撤収だ。死体は回収し、バンに詰め、爆破しろ。それで八神伸朗は事故死ということにする。サンプル体の方は回収しろ。処理場へ運ぶ。またおめおめと逃がすなよ』

 

そう言うとリーダー格らしき男は持っていた小銃をしまいはじめた。それと同時にその部下らしき人物が三人、シュテルの方に近づいてきた。

 

(どういうことですか?八神伸朗がクローン?分からないことだらけですけどとにかく今はこの子が危ない!すぐにはなれないとっ!)

 

シュテルはルシフェリオンを待機状態にしたまま起動する。そしてそのままブレイズフィンを展開し空まで上がる。その下でははやてを見失った男たちが何やら騒いでいる。シュテルは羽織っていた制服の上着を脱ぎ、はやてにかけてそのまま帰宅する。

 

自宅に帰ると鍵は開いており、中では深雪が待っていた。中には達也もいるだろう。どうやら用事は終わったらしい。深雪が目を丸くしながらシュテルに聞いてきた。

 

「お姉様、その子は一体?」

 

「話はあとです。この子は私の部屋に連れて行きます。おかゆとタオルを持ってきてください。大至急で頼みます」

 

「わ、分かりました!」

 

深雪はそのままダイニングの方へ向かう。シュテルは急いで自身の部屋へとはやてを連れて行き、ベッドに彼女を寝かせる。そのタイミングで深雪がおかゆと温かいタオルを持ってきた。

 

「この子の看病を頼みます。私はちょっと、達也と話があるので下にいます。目を覚ましたら私に言ってください」

 

「分かりました。お姉様」

 

シュテルははやての看病を深雪に任せ、達也がいるリビングへと向かった。

 


 

「八神伸朗がクローンだと?」

 

「えぇ、彼女を襲っていた連中がそう言っていました」

 

「にわかには信じられんな・・・・・・・・」

 

シュテルは事の顛末を達也に話した。はやてが血を抜かれたサンプル体であること。

 

「それにもう一つ。サンプル”二体”を逃がしている、と言っていました」

 

「二体?つまりはやて嬢以外にも対象者がいたという訳か」

 

「おそらく血を抜き取られているかもしれません。それにメインの対象がいるようです。放ってはおけません。私、この件をもう少し調べてみようと思います」

 

「気を付けろよ。俺もできるだけのことはする」

 

「助かります」

 

「じゃあ、俺は部屋に行く。何かあったらそっちに来てくれ」

 

「分かりました」

 

そう言うと達也は部屋へと戻っていった。

 

(でも、本当にクローンを作るのが可能なのだろうか?確かに調整体魔法師はクローン、つまるところ遺伝子操作で生まれた存在ではありますが、それでも本質的には同義ではないはず)

 

シュテルは考える。己が考え付くあらゆる予測を立てているのだ。すると唐突に深雪から声がかかった。

 

「お姉様、例の女の子が目を覚まされました」

 

「分かりました。すぐ行きます」

 

シュテルは思考をやめ、自分の部屋の、はやての元へ向かった。




今回は短いですがここまでとなります。今回から新たに『八神はやて』に関するお話を追加しました。そして捏造設定として『クローン技術』と『原作にはない謎の勢力』を導入しました。謎がますます深まる階だったなぁと書いている私ですらしみじみ思いました。

いったい何を書きたいんだ?(疑心暗鬼)。さて、今回の伏線ですが、入学編Ⅹにて、ほのかたちを襲っていたブランシュのメンバーが口走っていた『重要人物』という単語です。この言葉と、今回の謎の勢力の言った言葉を合わせて考えてみるとわかるかもしれません。

さて、次回はいよいよ、達也を交えての九校戦へと一気に時間を進めます。あ、でもその前にいろいろ整理するために設定集を上げるかもしれません(入学編の跡に出すとか言っておいて忘れてたのは内緒)。何かご不明な点、感想、ご指摘、誤字脱字の報告などは是非していただけると嬉しいです。

ですが、誹謗中傷だけはやめていただきたく思います。ではまた次回お会いいたしましょう。
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