魔法科高校の星光の殲滅者   作:狩村 花蓮

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今回は、黒羽家とのパーティから潜水艦のところまでを書くつもりです。よろしくお願いします。


第三話 追憶編 Ⅱ 黒羽のパーティと大亜連合の強襲

私ことシュテル・ヨツバ・スタークスは、人を一人、再起不能にしたかもしれません。やりすぎました。いくら深雪に絡んでいったからといってもあそこまではやりすぎだと今でははっきり分かります。

 

理性というか、理論的には分かっているつもりです。しかし、心が納得しませんでした。それを押し殺す様は多分、誰が見ても無理をしているのがはっきり分かります。私がやらなくても

 

達也がやったかもしれません。しかし私にはどうしても抑えることができなかった。いくら血のつながりがなくとも私には、私にとっては深雪と達也が本当の兄弟のように愛おしくてたまらないのです。

 

それに、兄妹が変な輩に絡まれているのを黙って見ていられるほど私の心は出来上がっていない。いくら達也が深雪のガーディアンであろうと、私にとっては大切な家族。私はただ大切だと思える家族を守っただけ。

 

私はこれを悪いことだとは、思いません。

 

「これが今の私のまぎれもない本心です。お母さま、これに対し何か罰を与えるのなら、与えてもらって構いません。」

「いえ、シュテル。あなたの言い分はもっともです。やり過ぎたというのはいかがなものだとは思いますが、あなたはまだ子供。気にしなくていいわ。その代わり、今度からそう言った行動は控えるように。」

「御意。」

 

シュテルは深雪たちと散歩に出かけたことの顛末を包み隠さず話した。最初は深雪がシュテルのせいではないです、といっていたがシュテルがそれをやめさせ、話し始めた。深夜はそれが嘘じゃないことを確かめ、

 

シュテルが犯した失態を許してくれた。今回のシュテルの行動は端的に行ってしまえば、”自分の兄妹を守ろうとした”この一点に尽きる。つまるところ、兄妹に喧嘩を売られてキレたのである。

 

そのことを理解した深夜はそれを叱ることができなかった。今まで無表情無感情の様子を貫いていたシュテルの、”本気の怒り”深夜はそれにとても興味が沸いたのである。それはすでに精神を調べる科学者の思考へと変わっていった。

 

 

ときは変わって、その日の夕方。シュテルは久しぶりに深雪とお風呂に入っていた。なんでもこれから黒羽のおじ様が主催するパーティがあるらしいのでその身支度をしている最中なのだ。しかし、深雪もシュテルもあまり気が乗らなかった。

 

深雪は、自分がしっかりしていなかったからシュテルにひどいことをさせてしまったと、シュテルは、深雪に怖い思いをさせてしまったとそれぞれ今日の出来事をそう振り返っていた。湯船の中に一緒に使っていてもその沈黙はしばらく続いていた。

 

それを破ったのは、シュテルだった。

 

「ごめんなさい深雪。せっかくのお散歩だったのに、怖い思いをさせてしまって。」

 

シュテルが謝る。彼女は良くも悪くも自分に素直だ、と深雪は思っている。そんな彼女がここまで謝るのだ。あの時のことを相当気にしているに違いない。だからこそ深雪はそれに答えた。

 

「いいのよシュテル。本当に、気にしないで。」

 

深雪はシュテルの顔を自分の心臓のあたりへと持って行った。

 

「あなたが悪いわけじゃない。悪いのはあの人たちよ。それに、その人たちがいることに気づけなかった私のミスよ。」

「いえ、私のせいです。私がもう少し、感情をコントロールできていればっ!」

 

深雪はその腕に力を入れる。

 

「いいのよ。あなたが気にすることないわ。でも、もしそのことで耐えられないんだったら、私が胸を貸すわ。だから、吐き出して頂戴?」

「・・・・・・・・では、すこし、胸をお借りしますっ。」

 

シュテルはついに泣き出してしまった。今まで抑えていたものに抑えが利かなくなったのだ。日頃の性格や喋り方からは想像つかないような、子供みたいになくシュテルを深雪はただ抱き続けることしかできなかった。

 

そして、深雪は心にたまっていたものが少し、軽くなったような気がした。

 

 

その夜、母である司波深夜の体調が悪くなって、急遽代理で深雪とシュテルの二人だけで行くことになり、その護衛に達也を連れて行くことになった。シュテルは、お風呂での一件を振り返りながら、その身を着飾っていく。はたから見れば美しい光景だろう。

 

しかし、彼女の眼は、瞳はいつも以上に虚ろであった。

 

(私は、出来損ないだ。どんなに強い力があっても、切り札と言われても、私はまだ未熟だ。それこそ、切り札と呼ばれるなら達也の方が向いている。いくら小さいころから人を殺すことにためらいを持たなくなったって

 

彼とは年季が違う。それに、所詮私はもともと何もできないただの人間だ。転生で人より少し強い力を持っただけのただの人間だ。だからこそ人を殺すことを割り切れた。これはゲームだと割り切っていたから

 

躊躇はしなかった。だけど、私は、怖い。この身で怒りに身を任せ辺りを蹂躙するのが。私はどうすればいいの?誰か教えてよ・・・・・・・・ねぇ、誰か・・・・・・・・)

 

「・・・・・・・・誰か、教えてよ。」

「何をですか?」

「!?」

 

シュテルはとても驚いていた。シュテル以外誰もいないはずの部屋にいつの間にか穂波がいたからだ。

 

「全く、深雪さんの支度を終えて来てみれば、支度が終わっているのに考え事とは、何かあったんですか?」

「・・・・・・・・いえ、ちょっと思い出したくないことを思い出しただけです。なんでもありません。」

 

そうして後ろに顔を向ける。それを戻した時にはすでに顔に表情が戻り、いつもの事務的な顔に戻っていた。

 

 

黒羽貢、それは四葉に連なる分家の一つ、黒羽家の現当主である。そして、四葉の裏の仕事の多くを任せられている一族でもある。

 

小さいころから暗殺家業に協力していたシュテルにとっては、顔なじみといってもいい。しかい、今の彼女の心境では一番会いたくない人間でもあった。

 

「メンソォーレ!よく来たね、深雪ちゃん。そしてシュテルちゃんも。」

「はい、叔父様。本日はお招きいただきありがとうございます。」

「話は聞いているよ。お母様の体調が悪化されたそうで。二人だけで来るとは感心だねぇ。ささ、二人も待っている、早く行こう。」

「お待ちください、あの人はいかがいたしましょう?」

「ん?あぁ、深雪ちゃんのガーディアンか。この会場に一般人は入れない。壁際にでも控えさせておきなさい。」

 

その瞬間、深雪の眉が一瞬動いた。それはそうだろう。今の彼女にとって、兄を他の人に使用人呼ばわりされるのは不愉快極まりないのだから。

 

結局変わらない。階級なんぞにこだわる家系は、いつも平等に扱わない。それが例え同じ血を分けた兄妹であっても。

 

先に進むと、見覚えのある子供が二人、立っていた。

 

「あっ。」

 

その二人はこちらを視認するなり、走ってきた。

 

「深雪姉さま、お久しぶりです!」

「お姉さまもお変わりないようで。」

「あら、亜夜子ちゃん、文弥君。こんばんわ。」

「それで、姉さま、そちらの女性はどなたで?」

「私たちの異父兄妹よ。シュテル!」

「はい、何ですか?深雪。」

「こちら黒羽の叔父様のお子さんたちです。」

「どうも初めまして、わたくしは黒羽亜夜子と申しますわ。」

「同じく、黒羽文弥です。よろしくお願いいたします。」

「ご丁寧にありがとうございます。私はシュテル・”シバ”・スタークスと申します。これからよろしくお願いしますね。・・・・・・・・良ければ二人にはシュテルと、砕けた感じで呼んでいただきたいのですが、いいでしょうか?」

「えぇ、構いませんわ。そのかわり、私のことは亜夜子とお呼びください。年齢はあなたの方が上でしょうから。よろしくお願いいたしますわ、シュテル姉さま。」

「僕も、文弥で構いません。これからよろしくお願いします。シュテル姉さま。」

「えぇ、二人ともよろしくお願いします。」

「・・・・・・・・それで、深雪姉さま。達也兄さまはどちらに?」

「えっ?えぇっと、あそこの壁際に控えさせてますよ。」

 

すると二人は達也の方へと走っていった。その様子をじっくり確認していると、達也は笑っていた。シュテルは、それが本当に心から漏れてきた感情なのだということに気づいており、内心ほっとしていた。

 

その様子を見て、貢が何か話していたようだったが、シュテルはそれを無視し、誰もいなさそうな壁際へと向かい終わるのを待った。最後に深雪が貢と見事なダンスを踊っていたということも記載しておく。

 

 

翌日、朝早くに目が覚めてしまったシュテルは、ルシフェリオンを持ち、トレーニングウェアに着替え外へと向かった。外に出ると彼女はおもむろにルシフェリオンを起動し、その後ろに赤色の魔力弾を浮遊させていく。

 

その数はどんどん増えていき、最終的に64個へと増えて行った。そして今度はそれを一斉に飛ばして、それをすべて制御下に置く練習をした。本来、この操作は慣れた人間でも難しい。これは、シュテルの類稀なる

 

操作技術によって成り立っている。そして最後に、その魔力弾をお互いにぶつけ合い、消滅させる練習。意外と簡単に見えるかもしれないが、操作されている魔力弾同士を衝突させるのは至難の業である。少し加減を間違えるだけで

 

魔力弾はその威力を変える。これにはより精密なコントロールが必要になる。シュテルも最初こそは失敗ばかりだったが、今となっては慣れたもので、単純な操作であれば、最大100個まで動かすことができる。しかしそれを彼女はしようとはしない。

 

彼女曰く、戦闘において最も強いのは威力や手数ではなく、それを正確に急所に叩き込めることだ。らしい。そういう信条?があるからこそあそこまでの正確な魔法発動を会得できたのだろう。彼女の努力は計り知れない。

 

彼女はそこで練習をやめる。人が来たからである。

 

「あら、達也じゃないですか。どうしました?こんな朝早く。」

「そのセリフ、そのままそっくり返すぞ。お前の方こそ、こんな朝早くから何をしていたんだ?」

「私は、感覚を忘れないためのトレーニングをしてました。何なら達也も混ざりますか?」

「どういうことだ?」

「これから私が、魔力で出来た光球を飛ばします。最初は一つ、次に二つと段々多くしていき、それに一回でも当たったら終わりの簡単なゲーム形式のトレーニングです。」

「ほぅ、面白そうだ。分かった。やってみよう。」

 

 

深雪は外の音で目を覚ます。時折聞こえてくるのは何かがぶつかる音と、人が地面に転がる音。深雪はすぐに意識を覚醒させる。

 

「まさか、敵っ!?」

 

そう思い、おそるおそる外を見る、しかし、外では戦闘は起きていない。というか二人しかいない。その二人は深雪のよく知る人物だった。

 

「兄と・・・・・・・・シュテル?何をしてるのかしらこんな早くに。」

 

そして深雪はそれをよく見る。そしてを見開いた。なんと、シュテルが操作しているであろう魔力弾20個を相手に達也がただひたすら避けていたのだ。

 

そしてそれは、達也の身体能力をもってしても容易ではなかった。その額からは大量の汗が流れ落ちている。深雪はシュテルが暴走したあの時に達也の身体能力を見た。

 

シュテルが一気に相手に近づいた瞬間、彼女は達也に抱かれ、後方まで”魔法を使わずに”飛んだのである。そんな並外れた身体能力を持つ達也でさえあそこまで苦労している。

 

それに対して、シュテルは何食わぬ顔で魔力弾を操っている。シュテルの取り柄、それは魔法の精密運用の一点に尽きる。切り札の一つや二つは持っているかもしれない。それこそ戦略魔法クラスのでかい切り札が。

 

しかし、彼女は使わざるを得ないときまで使うことはないだろう。それだけ彼女の精密操作は凄いということなのだから。そうこうしてるうちに達也が魔力弾を食らってしまった。

 

どうやら、当たったら終わりのようだ。シュテルは出していた魔力弾を一斉に解除した。

 

 

「魔力弾総数19個までを避け切りますか。すごいですねあなたの身体能力は。」

「あれだけ・・・・・・・・出しておいて・・・・・・・・息が上がっていないお前も・・・・・・・・すごいと思うがな。」

「いえいえ、こんなの練習すればだれでもできますよ。はい、水とタオルです。口は付けてないので安心してください。」

「あぁ、助かる。・・・・・・・・それより、さっきのお前の発言を老師が聞いたら卒倒ものだろうな。」

「いや、あれは何度も言いますがまぐれですよ。」

「まぐれでもあの老師に勝ったんだからすごいと思うがな。それに、謙遜も行き過ぎると嫌味だぞ。」

「達也、あなた性格悪いって言われません?」

「いや、言われたことはないな。悪魔とは言われたことがあるが。」

「それ多分意味合いはさほど変わりませんよ。」

 

その後、深雪たちはビーチに行くといって、別荘を出て行った。やることがなくなったシュテルは、CADをいじり始めた。そしてしばらくして深雪たちが帰ってくる。

 

その後、シュテルは達也にCADをいじらないかと誘いに部屋を訪れる。がしかし、その奥で聞こえた声にシュテルは驚愕する。

 

「・・・・・・・・て理由で、他人の喧嘩に巻き込まれる必要なんてなかったんです!」

 

最初の方こそ聞き取れなかったが、おそらくビーチに行ったときに喧嘩に巻き込まれたのだろう。肩にあざを作っているらしい。

 

それを聞いてシュテルにはまたあの時と同じような感情が出て来た。彼女はそれをすんでのところで抑える。そして、自分がそこにいなくてよかったとつくづく思う。

 

その場にシュテルがいたら、おそらく屍の山がきずかれるだろう。しかし、その会話を聞いていたのは、なにもシュテルだけではなかった。そのすぐ隣で、顔を手で覆っている少女

 

深雪はとても思いつめたような顔をしていた。

 

 

その後、母がセーリングに行きたいといったので、ヨットを借りて、近場の海を深雪たちは航海していた。時々見える魚に深雪は心躍らせていた。

 

「シュテル!見て!お魚がいるわよ!」

「えぇ、そうですね。」

 

魚に興奮するその姿はまさに可憐な少女であった。しかし、その状態は長く続かなかった。シュテルが何かに気づいたような顔をして深雪を穂波さんの方へ移動させる。

 

「どうしたのシュテル?」

「敵です!数1、潜水艦。達也!」

「分かっている!」

 

するとその潜水艦から何かが発射された。それはものすごい速さでシュテルの方へと向かってくる。その数8本。それはもう目前へと迫っていた。深雪は思わず目をつぶる。しかし、轟音も何もしなかった。

 

彼女に向かってきた魚雷は、達也の何らかの魔法によって”バラバラにされて”いた。

 

「シュテル!」

「目標補足!アクセルシューター、シュート!」

 

その瞬間彼女の後ろから魔力弾が発射される。その数30個。それは寸分たがわず、潜水艦の胴体を貫きその潜水艦を撃沈した。

 

深雪はその時、初めて自分の兄に興味を持ち始めた。彼女の前でバラバラにされた魚雷。しかもそれをシュテルに言われる前からわかっていたような口ぶり。

 

今の彼女は、徹底的に謎を追う、探偵となった。

 

 

その後、軍の人たちが来た。風間と名乗るその軍人は、狙われた原因に心当たりはあるかとか、まぁとにかくいろいろと聞いてきた。それに穂波さんがいらいらしながら答えているのを私は覚えている。

 

そして一通り聞き終えたのか、その軍人さんは乗ってきた車で帰ろうとしました。その時私はたまたまその車の運転手と目があいました。その運転手の顔に私は心当たりがあります。

 

そして向こうも心当たりがあるのか、目をそらしました。風間大尉はそれを見て大きく高笑いをしました。

 

「君か、ジョーを見たこともない魔法でのしたという少女は。」

「えっ?」

 

私はその言葉を聞いて、唖然としました。本当に彼は軍人だったんだと。あとから知りましたが、彼らはレフトブラッドと呼ばれる元USNA軍の人たちだったのです。

 

そのジョーと言われたひとは見た感じではとてもピンピンしていました。とにかく再起不能になってなくてよかった。私はその時そう思いました。

 

「桧垣上等兵!」

「ハッ!」

 

その軍人さんは、私の前まで来ました。すると風間大尉は私に頭を下げてきました。

 

「昨日は部下が失礼をした。謝罪を申し上げたい。」

「桧垣ジョセフ上等兵であります!昨日は大変失礼をいしました!」

 

私はその姿を見て、涙を流しました。風間大尉とジョセフ上等兵はおろおろしていましたが、私はその口を開きました。

 

「私は・・・・・・・・てっきり・・・・・・・・あなたのことを再起不能にしたかと思って・・・・・・・・でも無事で・・・・・・・・良かったです。」

 

私はそこまで言うとへたり込んでしまいました。しかし、私の肩を達也はつかんで支えてくれました。私は彼に目配せをします。彼は頷き軍人さんの方へと顔を向けました。

 

「彼女、シュテルはあなたを倒したことがトラウマとなっています。なので、代わりに俺がその言葉を言います。私たちはもう気にしません。こちらこそご迷惑をおかけしました。」

 

そして彼らはその言葉を聞けて満足したのか、車に乗り込んだ。そして出発しようとしたとき、風間大尉がこういいました。

 

「シュテル・シバ・スタークス君に司波達也君だったか?」

「自分は現在恩納基地で教官も兼務している。もし暇があったら訪ねてほしい。」

 

大尉さんはそう言うと帰っていきました。そして私の中にあった靄も少し、軽くなった気がします。

 




次回はいよいよクライマックスですね。それが終わったら高校生編。つまりアニメ第一話、原作の第一巻へとつながっていきます。では次回。よろしくお願いします。
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