ただ○○sideと頭につくだけですね。それでは本編行ってみましょう。
2021/2/1 加筆修正しました。
シュテルside
雨が降っています。私は、なんというか、雨が嫌いではありません。むしろ好きといえます。雨の音を聞いていると、私の中から聞こえるものが、聞こえなくなるから、気持ちが幾分か楽になるんです。
昨日はいろいろとありました。が、今日は何というか、平和?な一日になりそうです。あの後、深雪と達也は私のことを慰めてくれました。あの時ほど人のぬくもりをありがたいと思ったことはありません。
そして私は、私がまだ少女であること、非情に徹せない子供だということを痛感しました。これではお母様に笑われてしまいます。そして私は何とか平常心を取り戻し、普通に動けるようになりました。
しかし、今日はあいにくの雨です。私たちは今日の予定を考えていました。
三人称side
潜水艦襲撃事件の翌日、その日はあいにくの雨で、長時間降り続けるものだった。
「お母様、本日のご予定は如何いたしましょう?」
「そうねぇ・・・・・・・・こんな日にショッピングというのもねぇ・・・・・・・・シュテル、何かない?」
「申し訳ありません、私はそう言ったものにあまり詳しくはありませんので分かりかねます。」
「であれば、琉球舞踊などは如何でしょう?着つけも体験できるようですよ。」
「へぇ・・・・・・・・それは面白そうね。」
「穂波さん、これ、どうやら女性限定らしいですよ?」
「えっ?あっ、ほんとですね。達也君、どうしましょう・・・・・・・・」
「・・・・・・・・では達也、あなたは今日一日自由にして構いません。」
「お母さま、私も自由にさせてもらってもよろしいでしょうか?」
「あらシュテル、構わないけど、どうして?」
「昨日、風間大尉殿から基地見学のお誘いを受けました。この際ですから、それを達也と受けておきたいのです。」
「分かりました。シュテル、達也との同行を認めます。」
「あのっ!お母様、私も同行したいのデスがよろしいでしょうか?」
「深雪さんまで・・・・・・・・でもそうね、あなたにはガーディアンの力を見定めるいい機会かもしれないわね。どうせおいおい見せる機会を作ろうとしてたわけだし。分かりました。認めます。」
「ありがとうございます。」
深雪は知りたかったのだ。自分の兄がどこまでの力を持っているのかを。
「あぁそうそう。三人とも。基地に行ってからは四葉の関係者と悟られてはなりません。よって、達也のことはほんとの兄として扱いなさい。まぁシュテルは問題ないとは思うけど。」
「「「仰せのままに。」」」
深雪の心はすでにすさまじい動悸で動いていた。
(私がこの人をほんとの兄弟のように?ま、まさか私はこの人のことを、に、兄さんと?やだやだ私ったら、こんなので恥ずかしがってたら、まるで私がブラコンみたいじゃないっ!)
事実である。
「何をしているんですか深雪。行きますよ。」
「はっ、はひっ!」
盛大に噛んだ。その後、穂波さんが深夜を連れて琉球舞踊に行くのを見送った後、シュテルたちは恩納基地へと向かうことにした。
「待ってください。今日は私から2人へのお礼を兼ねて、基地まで”飛びましょう”その方が早くつきます。」
「えっ?シュテル、聞き間違いでなければ今”飛ぶ”といったかしら?」
「えぇ、飛びます。ルシフェリオン。」
するとシュテルの手から青い宝石、ルシフェリオンが、その姿を現した。
「ルシフェリオン、浮遊モード。ブレイズフィン展開。」
見間違いでなければ、彼女の足に、赤色の羽が生えた。その周辺、というかシュテルの周りを杖がぐるぐると回っている。
「達也は私の肩をつかんでください。深雪もそうして欲しいですが、怖いなら背中に掴まってもいいですよ。」
「い、いえ。このままでも大丈夫よ。えぇ、大丈夫ですとも。」
「達也は大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ない。いつでもいいぞ。」
「では二人とも、決して騒がないでくださいよ。」
そうしてシュテルは飛行を開始した。恩納基地まではそれほど時間がかからず10分程度でついた。
「ようこそお越しくださいました。防衛陸軍兵器開発部の真田です。」
そう言って真田は軽いお辞儀をした。するとその後ろから風間が出てきて、達也に声をかけた。
「早速来てくれたということは、二人とも、軍に興味を持っていると考えていいのかな?」
「確かに軍には興味があります。しかし、私も達也もまだ軍役につくことは考えていません。」
「まぁ、そうでしょうな。」
そのままシュテルは風間に連れられ奥のフロアへと向かった。
そこには建物を模して作ったモニュメントからロープを使って降りる訓練をしている軍人がいたり、格闘訓練をしている軍人がいたりした。
すると、達也が口を開く。
「ここは・・・・・・・・魔法を使っての着地訓練ですか。」
「あぁ。ここでは現場での魔法を使用を目的とした実戦形式の訓練を行うルームになっている。」
「これほどのスキルを持った魔法師をよく揃えられましたね。」
「ここは国境最前線だからね。」
風間と達也は話し込んでいる。それを壁際で見ていた深雪は、つまらなさそうに見ていたためか、あくびをしていた。
「寝不足ですか?深雪。」
「違うの。なんかつまらななくて。」
「軍の施設とは恐らくこういうものです。一般人である私たちが来てもつまらないと思うのは仕方ないでしょう。」
「そうね。それにしても、あなたはやけにウキウキしてるように見えるのだけど?」
「・・・・・・・・えぇ、不覚にも私はここに来るのが楽しみで仕方なかったのです。お母様が達也にあれを言ってくれたのはこちらにとってはとても好都合でした。」
何時も表情を変えることが少ないシュテルが、深雪にもわかるほど表情を変えているのはとても珍しいことである。
その後、シュテルは風間から呼ばれ、そちらへと向かう。その内容は、なんとシュテルと桧垣上等兵の魔法アリの対戦だった。
シュテルは、それを承諾し愛機であるルシフェリオンを起動し、桧垣上等兵とは反対側に立つ。
「いいのですか?桧垣上等兵。全力で行っても。」
「あぁ、構わないぜ。全力を出して負けるなら俺に悔いはないさ。」
「・・・・・・・・フフッ。分かりました。全力で、お相手させていただきます。ルシフェリオン。」
『yes,sir』
「そのCADって喋れたのかよっ!?」
「いえ、私がしゃべれるようにしました。といっても管理用の自己思考型AIを搭載しただけですがね。」
「あれだけの力がありながら技術力もあるとは。俺は何て相手に喧嘩を売っちまったんだ。」
「まぁ、互いに知らなかったわけですし。それに、ほら。」
シュテルが顔を明後日の方向に向ける。桧垣上等兵もそっちを見ると、達也が他の隊員を伸している姿があった。
「あれよりは、まだ弱いですよ。」
「それでも十分だと思うがな。」
桧垣上等兵が構える。それを見てシュテルも構える。そのとたん、桧垣上等兵の姿が突然”消えた”。
そう認識した瞬間、桧垣上等兵はすでにシュテルの懐まで迫っていた。シュテルもたまらず自己加速術式で後ろに飛ぶ。
が、やはり追い付かれる。シュテルは桧垣上等兵の拳が自身の体を捉え、叩き込んでくるタイミングを見計らった。
桧垣上等兵はその拳を前に突き出す。威力は直撃すればその時点で勝負が決まるほどの威力。しかし、彼の拳が届くことはなかった。
「バインド。」
シュテルがそう呟くと同時に桧垣上等兵の四肢が固定される。よく見ればその部分に、赤いリング状のものがついていた。桧垣上等兵はそのまま一歩も動けず、決着がついた。
勝負が終わり、シュテルは桧垣上等兵のバインドを解く。すると桧垣上等兵が近づいてくる。
「今のわけわからん魔法は何だ?あんな魔法聞いたことないぞ。」
「今のは”バインド”と呼ばれるものです。文字通り、空間にあらゆるものを固定し捕縛します。そしてこれは今の魔法体形には存在しない、いわゆるBS魔法?と呼ばれるものですよ。私は普通の魔法も使えますが
本来はBS魔法師なんですよ。」
「なるほどな。じゃ、最初に俺にやったのもそれ系統なのか?」
「はい、あれはバリアバーストと呼ばれるものです。これは説明するより見てもらった方が早いでしょう。桧垣上等兵さん?私にボールを魔法ありでいいですから本気で投げてもらえますか?」
「ジョーでいいぜ。シュテルさん。で、本気でいいのか?」
「はい。本気であればあるほど、この性能を見せられますから。」
桧垣上等兵は、そのトレーニングルームにあったバスケットボールを一つ掴み、シュテルの方に投げた。シュテルは自身の前に赤い魔力で出来たバリアを生成。そのバリアにボールが当たる。
「バリア・バースト。」
その瞬間、そのバリアが突如”爆発した”。桧垣上等兵はそれを見てヒューと口笛を吹いた。
「すげぇ威力。あれがバリアバーストってやつか?」
「はい。バリアバーストとは、そのバリアに使う魔力を意図的に暴走させ、そのまま爆発させるものです。これは、受ける側だけでなく、最悪術者本人にまでけがを負わせる。ある意味最後の切り札のようなものです。」
「・・・・・・・・そんなのを俺は食らったのかよ。」
「ほんとに、すいませんでした・・・・・・・・あの時は頭に血が上っていまして・・・・・・・・」
「いいっていいって、あんときは俺も悪かったんだしな。」
桧垣上等兵はシュテルと友情を結んだようだ。
深雪side
私は今、国防軍の風間大尉といろいろお話をしています。そして私はその中でふと疑問に思ったことを質問しました。
「風間大尉さん。」
「風間、でいいですよ。なんでしょう?」
「先ほど兄の戦いぶりを見て、CADも持ってない兄を魔法師と判断したのはなぜでしょう?」
そう、それは兄が乱闘?訓練をしている最中に風間さんが呟いた言葉でした。
「実戦的ですね、彼は。相手が暗器を持っている可能性を想定した間合いの取り方です。」
「あれは・・・・・・・・おそらく体術だけではない、魔法師としてもかなりのものだな。」
「えっ?」
そして先のところに戻ります。
「ふむ…………勘、ですかな。沢山の魔法師を見ているとそれが魔法師か否か。強いか否かがわかるものです」
勘?この人は勘だけで兄を魔法師と見抜いたんですか!?なんだろう、私はこの人がとても怖いです。
三人称side
その後、一通りのことが終わり、シュテルと達也は真田に連れられて、研究開発をしている部門へと足を運んでいた。
「司波君。君にこれを。」
真田はそう言うと達也の前にアタッシュケースを出した。達也がそれを開けると
中には、拳銃形態のCADが二丁入っていた。
「これは?」
「自分が開発した特化型CADです。加速系と移動系の複合術式を組み込み、ストレージをカートリッジ式にしています。」
達也はそれをまじまじと見つめている。
「どうです?興味はありますか?」
真田は聞く。
「試してみたいです。」
達也はそう答えた。その時深雪は、兄にもちゃんと心があるということを理解した。しかし、それと同時に自身に対する嫌悪感が沸き出て来た。
(兄は、こんな私をどう思ってるのかしら?少なくとも、良くは思っていない、と思う。だって兄を縛り付けているのは私、私さえいなくなれば・・・・)
(私さえいなくなればあの人は、自由なのに。)
そうして3人は、恩納基地を後にするのだった。
翌日、シュテルは昨日までのことを思い出していた。彼女は元々転生者であった。しかし、あの女神スクルド過去の世界に来る段階で、思考と心をこちらの世界に合わせたので、今は転生者と感じることはほぼなくなっている。
しかし、思考は消えてもこの世界に関する記憶。所謂原作設定は今も残っている。残っているからこそ知っている。彼があそこまで分家に嫌われている理由を。
(達也は生まれて間もないころ、分家の人に殺されそうになった。それは彼の力があまりに強大すぎたから。しかしそれをやめさせたのはその時の四葉の当主、四葉 英作だった。彼は達也が動けるようになってすぐ彼に人殺しをさせた。
彼の感情を抑えるために。そのかいあって、達也はその力を暴走させることはなかった。そして、深夜に衝動を深雪へのものをのぞいて、達也は消された。)
達也の今まで歩んできた人生、それは彼にとって、いいものではなかっただろう。そうシュテルは思っている。だからこそあのパーティの時は、自分の感情を抑えるので精いっぱいだった。
もし、抑えきれていなかったら、おそらく彼女は黒羽貢を殺していただろう。そのぐらいシュテルはキレていたのだ。そして彼女は一つだけ間違いをしていた。それは達也の感情が向けられる相手にシュテルが入っていることである。
いけない、こんな気分ではと、彼の部屋にCADを調整しに行こうと部屋を出て行こうとしたとき、外が騒がしくなった。そして穂波が部屋まで来て、こう言った。
「大亜連合が攻めてきました!」
達也は国防軍の風間と連絡を取っている。深夜は真夜と話をしていた。どうやら国防軍を手配してくれたらしい。しばらくすると桧垣上等兵が来るまで迎えに来た。
「皆様を安全な場所までお送りします。」
「状況を教えてください。」
「国防軍は現在敵潜水艦隊と交戦中。敵軍の詳細はまだ判明していませんが、奇襲を水際で抑えることに成功しています。」
「陸上では戦闘が行われていないということですか?」
「おそらくは。しかし、ゲリラなどの可能性もあります。皆様におかれましては、恩納基地につき次第、すぐにシェルターへと避難してください。」
その後、シュテルたちはシェルターへと入っていった。そこにはすでに人がいた。
「迎えが来ないわね。」
「何かあったのでしょうか?」
深夜と穂波はあたりを見回す。そう、シェルターといってもここは連絡通路。準備が整い次第迎えを出す、と桧垣上等兵はいった。しかし、いまだに来ないのである。
深雪はとっても不安がっていた。もし、ここが戦場と化したら、戦わなければならない。しかし、今の彼女の使える魔法がどの程度相手に通用するかはいまだに未知数。
それゆえに、疑心暗鬼になっていたのである。すると達也はそれを見かねたのか深雪に声をかける。
「大丈夫だよ深雪。俺とシュテルがついている。お前を傷つけさせはしない。」
「そうですよ深雪。私があなたを守ります。」
それを聞いて深雪は顔を真っ赤にした。どうやら恥ずかしがっているようだ。しかし、その光景を長く見られるほど状況は芳しくなかった。
「達也。」
「あぁ、銃声だ。」
「銃声!?達也君、シュテルちゃん。様子は分かりますか?」
「いえ、自分には何も。」
「私も同じです。ここに来るときにサーチャーを飛ばしましたが、場所の特定には至っていません。」
「それにこの部屋には、何らかの形で魔法を阻害する何かが張られています。」
「そうね、しかもそれは多分この部屋だけじゃない。建物全体をこの膜が覆っている状態だと思うわ。」
「うかつに飛び出さないほうがいいと思います。・・・・・・・・っと、こっちに向かってくる人影が。その数4、おそらく軍人です。」
「分かったわ。達也、外の様子を見てきなさい。」
「ですが、今の自分の技能では、”深雪”を遠くから守るのは不可能です。」
「”深雪”?身分をわきまえなさい。達也?」
「・・・・・・・・失礼しました。」
「達也君、ここは私とシュテルちゃんで抑えます。君は早く行ってください。」
「分かりました。お願いします!」
達也はその扉を開けその様子を確かめに向かった。それと入れ違いになるように、軍人が入ってきた。
「失礼します!私は空挺第二中隊の金城一等兵であります!皆様を地下シェルターへとお送りします。ついてきてください。」
「すいません。連れが一人、外の様子を見に行っていまして。」
「ですが、ここにいるのは危険です。」
「でしたら、そちらの方たちを先に連れて行って下さいな。大切な息子を置いていきたくはないので。」
深雪と穂波は目を見張る。
「そうだ!我々を先に連れて行きなさい!」
と、恰幅のいい男が罵っている。
「奥様、達也君と合流するのはそこまで難しくないと思うのですが?」
「別に達也を心配してるわけじゃないわ。あれは”建前”よ。」
「建前、ですか。」
「えぇ、そう。あの人たちについて行くのはよくないという私の勘。」
それを聞いて二人はまたしても目を見張る。司波深夜の直感はよく当たる。彼女は今の魔法社会で唯一、精神に関する魔法を多く持っている。
そして精神に関する魔法を使う彼女にとって、人の心を本当の意味で読めるということは得意分野に等しい。そんな深夜が直感だといった。それはすなわち、敵!
すると、ドアが勢い良く蹴り開けられた。先に入ってきた軍人たちはそこに向かって銃を撃つ。その隙に、穂波は対物障壁を張る。
そしてシュテルは、すでに目に見えない形にした。魔力弾を男たちの急所へ発射する準備を整えていた。すると、深雪たちが頭を押さえる。
見ると、男たちが持っていた指輪のようなものを向けていた。男たちが使っていたもの、それはアンティナイト。キャストジャミングと呼ばれる妨害電波のようなものを発すことのできる
軍事物資の一つだ。穂波が耐え切れず対物障壁を解く。深夜もたまらず頭を抱えその場にうずくまる。男たちはそこに銃を向ける。そしてその引き金を引いた。しかし、それは深雪たちに届くことはなく
すべて、赤い障壁で防がれていた。
「てめぇ、何故キャストジャミングが効かない!?」
「生憎と、そう言うものが聞かない体質なので。では、ゆっくりとお眠りください。」
その瞬間、隠していた魔力弾が一斉に男たちへと向かっていく。それはすべて男たちの首の急所に当たり、男たちはたまらずその場に倒れた。
「ふぅ。」
「すごいわね。流石は真夜の娘。」
「おほめに預かり光栄です、母様。穂波さん、対物障壁を念のため張っておいてください。またいつ敵が来るか分かりません。」
「分かったわ。」
「深雪も早くこちらへ来てください。」
「今行くわ!」
しかし、シュテルは見てしまった。深雪の後ろで、ギリギリ気絶していなかった軍人が最後のあがきといわんばかりに、拳銃を向けているのを。その時、シュテルはとっさに動いてしまった。
「危ない!」
「きゃ!?」
男は銃を一発撃ったと同時に、魔力弾を受けて再度気絶した。穂波はそれを見て安堵した。しかしその安堵は深雪の悲鳴によってかき消された。
「シュテル!?ねぇ、シュテルってば!起きてよ!ねぇ、起きてよぉ!」
穂波はその光景を見て、思わず手を口に持ってきていた。それは深夜も同じだった。そこに横たわっていたシュテルのドレスには血が垂れており、その胸には、徹甲弾を撃たれたのだろう。穴が開いていた。
するとシュテルが口を開いた。
「みゆき・・・・・・・・ぶじ・・・・・・・・ですか?」
「私は無事よシュテル、だからお願い、もう喋らないで!傷がどんどん開いていっちゃうから!」
「いいん・・・・・・・・です。もう・・・・・・・・わたしは・・・・ながく・・・・・・・・ありま・・・・・・・・せん・・・・・・・・から。」
「お願い!死んじゃいや!」
「み・・・・・・・・ゆき・・・・・・・・あなたたち・・・・・・・・と・・・・・・・・会えて・・・・・・・・かぞくに・・・・・・・・なれて・・・・・・・ほんとうに・・・・・・・・よか・・・・・・・・った。」
「そ・・・・んな、駄目よシュテル。お別れみたいな。やめて!」
「わたし・・・は・・・・・・・・さきに・・・・・・・・いき・・・・・・・・ます。どうか・・・・・・・・おしあわせ・・・・・・・・に。」
シュテルはそう言い笑顔を見せると、その目を閉じた。
「いや・・・・・・・・いやっ・・・・・・・・いやいやいやいやっ!お願いシュテル、返事をして!シュテル・・・・・・・・シュテルーー!!!!」
深雪は泣き出し、穂波は顔を背け、深夜はただ、絶望の表情を見せていた。それだけ、シュテルがこの家庭に与えた影響は大きかったのだ。
そこに戻ってきたのは、達也だった。
「お兄様、シュテルが!シュテルがっ!」
「深雪、落ち着け。・・・・・・・・シュテル、もう少しだけ耐えていてくれ。」
すると達也は唐突にCADをシュテルに向け、彼が、彼だけが使える魔法を、再生を行使した。
(コアエイドスデータ、遡及を開始。修復地点、確認。バックアップとして切り出し、上書き。・・・・・・・・完了)
達也はCADをホルスターへと戻す。その時、シュテルが目を開けた。
「ここ・・・・・・・・は?」
「シュテルっ!」
深雪は思わずシュテルに抱き着き、泣き出した。穂波はそれを涙を流しながら見ており、深夜もその目じりに涙を浮かべていた。
その後、深雪たちを襲った軍人たちは、風間大尉の部下らによって連れていかれた。
「申し訳ない。今回は完全にこちらの落ち度だ。我々にできることなら何でも言ってくれ。出来る限り便宜を図ろう。」
「では、まず、母たちをここより安全な場所へと連れていってください。ここよりも安全なところはあるんでしょう?」
「・・・・・・・・あぁ。では防空指令室までお連れしよう。」
「そして二つ。アーマースーツと歩兵装備を一式貸してほしいのです。最も消耗品はお返しできませんが。」
「なぜ、そのようなものを?」
「奴らは、深雪たちを危険にさらし、あろうことかシュテルにまで手をかけました。その報いを受けさせねばなりません。」
「一人で行くつもりか?」
「自分がなそうとしていることは軍事行為ではありません。ただの復讐です。」
「それでもかまわないのだがな。非戦闘員や投降者の虐殺を認めるわけにはいかないが、そのようなつもりもないのだろう?」
「投降をする暇さえ与えません。」
「ならば良し!司波達也君。君を我々の戦列に加えよう。」
「ちょっと待ってください。」
そこに口をはさんだのは、まぎれもなくシュテル本人だった。
「達也一人で?何を冗談を。二人ですよ。」
「シュテル!?お前何を!」
「達也は黙っててください。」
シュテルはそう言うと風間の方を向く。
「私は今猛烈にはらわたが煮えくり返っています。彼らにはその報いを受けさせねばなりません。私を傷つけるだけならまだいい。しかし、彼らはあろうことか、私の最愛の家族に、深雪に手を出そうとしました。
私はそのことが許せません。このままでは私は何をしでかすか分かりません。」
「分かった。君も我々の戦列に加えよう。」
そしてシュテルは深夜の方を向いた。
「お母様、今までありがとうございました。これから私は、シュテル・シバ・スタークスではなく、シュテル・ヨツバ・スタークスとして、動きます。では”叔母様”どうかお元気で。」
「・・・・・・・・わかったわ。私からの最後の指令よ。達也をよろしくね。」
「えぇ、分かっています。叔母様。では。」
シュテルは、そのまま、戦場へと足を踏み入れた。
敵にとってこの二人はどう見えただろうか?片方はどんどん敵を”消し”殺したと思った兵士を復活させてゆく。もう片方はもはや蹂躙だ。的確に急所を射抜き、文字通りの死神と化している。
敵は、二人にどれだけの絶望を感じたことだろう。少なくとも、艦砲射撃をしようとしてくるぐらいには冷静さを失っていたのかもしれない。
「達也、敵艦の情報を見ましたか?」
「あぁ、捉えた。」
「ではその情報を私に。あとは私がやります。」
「分かった。俺も手伝う。」
達也はシュテルの手を握る。すると彼女の頭に達也が見たものが流れ込んできた。座標までである。彼女はそれをCADに保存し、飛び上がる。達也も片腕を前に突き出し、魔法を発動する準備をしている。
「カートリッジ、ロード」
『road cartridge』
すると彼女のCADがまるで銃の撃鉄をたたくみたいなことをする。空薬莢が落ち、彼女の前には巨大な赤い魔力の塊ができていた。
「ルシフェリオン・ブレイカー」
それは、戦争に終止符を打つ、終焉を告げるラッパだったのだろうか?彼女は前方に収束した魔力の塊、いや、サイオンの塊を小さいレーザーで打ち抜いた。それはサイオンの塊に当たると大きさを増していき
ついに一条の閃光となった。その光は、大亜連合の艦隊の約半数を焼き払った。そしてその瞬間、達也もまたその力を解放した。彼は戦艦の弾薬庫にある砲弾を起点とし、それを分解し、それと同程度の爆発エネルギーをその場に置いた。
簡単に言ってしまえば、その場で”炸裂弾数百発分の爆発が起こった”。その爆発で残っていた戦艦も跡形もなく消滅した。その2つの魔法は後に、非公式戦略級魔法 ルシフェリオン・ブレイカー、マテリアル・バーストと呼称されることになる。
そしてこの魔法は、正体不明の戦略級魔法として世界へと知れ渡り、世界中に波乱と混乱を引き起こすこととなるがそれ真はまた別のお話である。
沖縄事件。あれからすでに2年の月日が流れた。シュテルはこの事を真夜に報告した。すると真夜は、司波兄妹についていろという命令を下した。それはシュテルにとっての罰であると、真夜は言った。
こうしてシュテルはまたシバの姓を名乗ることとなり、深夜のことを見守りながら、達也と深雪と一緒に過ごしている。これはシュテルが直接聞かされたものなのだが、真夜は最初からシュテルを司波兄妹と
一緒にするつもりだったらしい。そこで、深夜に頼んで、達也の感情向ける対象ににシュテルを入れたそうだ。なので、達也は深雪並みのシスコンぶりをシュテルに発揮することになるだろう。
深雪はその後達也を慕うようになり、前よりもブラコンっぷりが激しく、顕著になっている気がする。あの日、深雪は自身で覚悟を決め、深夜の口から直接達也のことを色々と聞いたそうだ。
それでもなおお兄様と呼び慕っているということは、それだけ達也が好きなのだろう。深夜は今は入院している。病気の悪化で、集中治療室へと入っている。しかし、前よりはよくなっているそうだ。
それもそのはず、シュテルは、深夜に回復魔法をかけた。それが効いているのだろう。そして三人は、中学校を卒業し、無事に国立魔法大学付属第一高校への進学が決まった。それが波乱にまみれた始まりだとはこの時は誰も知らない
ーーーー追憶編 Fin------
随分と駆け足に放ってしまいましたが、追憶編はここで完結です。次回からはやっと本編。入学編が始まります。ではまた次回!