最悪の悪魔   作:カワイイもの好きのスライム

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今回のお話は、ルシファーの仕事回です。
いつも普段から大変な彼女の正義感がとんでもない状況になってしまいます


自業自得

ナザリック地下大墳墓 第10階層『幻夢城』内―

 

守護者たちとの『手合わせ』をした日から既に2日が経っていた

 

 

「ふぁあ~良く寝た~」

 

呑気な声を上げながら起きたのはこの『幻夢城』城主のハデスだった。そして、ハデスの横ではもう一人がスヤスヤと寝ていた。横で寝ていた人物とは、ルシファーだった。

なぜこのようなことになっているのかというと話は少し遡る。

 

 

 

昨日、いつもみたいに秘書の仕事をしていたルシファーはかなり忙しかった。いつもしている仕事量だから今回も捌ききれると甘い考えを持っていた彼女の下に次から次へと部下たちから上がって来た提案書や請求書、報告書が舞い込んでしまい自分の仕事がなかなか終わらせることができずにいた。そんな彼女には日課にしていることがあった。それは外の闇が深くなる時間にハデスの下に行き今日一日の報告をすることだった。しかし、今日に限ってその日課どころか一日分の仕事すら終えていない。そんな彼女は誰もいないシンとした静かな部屋で誰にも聞かれることのない溜め息を溢していた

 

 

「はぁ、まさかこんなことになるなんて思ってもみなかったわ・・いつもならハデス様に報告に行く時間なのに・・ハデス様に会いたいです・・」

 

何でもかんでも引き受けてしまった自分に嫌気をさしていると、誰かがコンコンとノックをしてきたため返事を返すことにした

 

「はい、どうぞ。開いていますわよ」

 

そう返事を返すとガチャリと音を立て訪問者が中に入って来た。のだが、入って来た人物にルシファーは嬉しさと畏怖を覚えた

それは、なぜか・・入って来たのが上司のハデスだったからだ

 

「よう、ルシファー」

「は、ハハハハデス様!?」

 

すぐさま席を立ちハデスの前で跪いたが、ハデスはなぜか笑顔だった。ルシファーにはその笑顔がなにを意味しているのか分からず怖かった。

 

「(ハデス様のあの笑顔はなに?!私、なにか失敗でもしたかしら?いや、そんな失態を犯すようなことはしてないはず!なら、なに?もしかして、なかなか報告に来ないから怒ってるのかしら?)」

 

ルシファーの頭の中は既にパニックになっていた。なぜ、ハデスが自分の書斎に来たのか、なぜ笑顔なのか。彼女は自分が思いつく限りのことを考えてみたがその理由が思いつかずにいた。

そんな彼女の姿を見ていたハデスも困惑していた。なぜ、彼女から恐怖という感情が見えるのか。跪いているため表情はよく見えないが、『情眼』の効果で彼女からは恐怖の念が見えたのだ。

 

「(明らかに怯えてるよなー・・なんで?俺、なにかしたか?それとも急に部屋に来たからか?わからん・・)」

 

ハデスもハデスで黙り込んでいると意を決したかのようにルシファーが声をかけて来た

 

「ハデス様、今回はどのようなご用件で来られたのですか?」

「ん、いや、時間になってもなかなか報告に来ないからなにかあったのか心配になって来たんだよ」

「そうでしたか・・ご心配、ありがとうございます」

 

ルシファーはハデスが自室に来た理由を聞きホッと胸を撫でおろしていた。が、ハデスはというと室内をキョロキョロしていた。女の子の部屋をキョロキョロするのは悪いと感じたハデスだが、リアルでも女の子の部屋に行ったことが無かったハデスは女の子の部屋はどんな風になっているのか興味津々だった。部屋をキョロキョロしていると片隅に書類の束がドバっと置いてあることに気づいた。その紙には、「提案書」やら「報告書」と書いてあった

 

「(うわー、あれ今日の分のだよな?すげー量あるじゃん・・・あれじゃ、なかなか仕事が終わらないわけよ・・待てよ、ということはさっきの恐怖は仕事が終わってなくて怒られると思ったわけか・・なるほどなー、でも・・よし、ここは休ませてやるか!)」

「ルシファーよ、今日の仕事は終わりだ。いいな?」

「・・!!しかし、ハデス様まだ今日の分が・・」

 

ハデスからの唐突な言葉に飽きられたと感じた彼女は必死に反論しようと試みるが、ハデスからの眼圧に負けて言い返せなかった

そんな心情を知らないハデスは部屋から出ていこうとしていたが、扉の前で止まった。

 

「あとで、俺の部屋に来い。いいな?」

「はい・・」

 

なんと、ハデスに部屋に来るように言い渡されたのだ!

普段の彼女なら「これは!」と喜ぶのだが、今回ばかりは素直に喜べなかった

 

それからというもの彼女は机の上の書類を一か所にまとめてすぐにハデスがいる部屋へと向かった。

部屋の前には今日のお付のメイドであるジャスミンが立っていた。

余談だが、ジャスミンとは黄緑色の髪をし紫色の眼をしたメイドである。こう見えて彼女の主な任務は偵察や暗殺だ。しかし、任務がないときはこうやってメイドとしても働いている

 

 

「ハデス様に呼ばれてきたのだけど、ジャス開けてくれるかしら?」

「ルシファー様、ただいま確認してきますので少々お待ち願えますか?」

「えぇ、わかったわ」

 

 

するとジャスミンは部屋に入っていきすぐさま部屋から出て来た

 

「お待たせいたしました。どうぞ」

「ありがとう」

 

 

なにされるかわからなかったルシファーは覚悟を決めて中に入ったが、特になにをされるわけでもなかった。どうやら、今回呼んだのは疲れているであろうルシファーと一緒に寝て気休めして欲しかったらしい

そして、冒頭に戻るというわけである。

 

 

 

 

 

 

いつもより、早く起きたハデスはササッといつものローブに着替え扉番に挨拶をしてルシファーの書斎に向かった。

その後を昨日のお付メイドジャスミンが着いてきた。一回はやんわりと断ったが、この時間じゃまだ他のメイドは寝ていて同行する者がいない、ということで同行を許可した。

 

 

「お邪魔しまーす・・」

 

ハデスは一言挨拶をして書斎に入り、昨日ルシファーが座っていたイスに座った

 

「意外と良いイスじゃないか!」

 

イスの座り心地がいいために今回来た目的を忘れそうになっていた・・

 

「おっと、今日来たのはこの書類を終わらせるためだった・・」

 

 

ハデスはイスに気を取られていたことに少し反省し、机の端にまとめられた書類を手に取り流れるようにサインをしていた

 

「ジャス次の書類を取って、これ置いて」

「はい、承知いたしました」

 

ジャスミンの協力もあって二時間ぐらいで書類全てを捌き切った

 

「ふぅー疲れた」

「紅茶をどうぞ」

「ありがとう。いい香りだ」

 

 

ハデスがイスに座ったまま腕を伸ばしていると横から淹れたての紅茶が出された。しかも、淹れたてのため香りがすごくよかった。それと同時にどこから持ってきたのか凄く疑問だった

 

「ジャス、今日のことは誰にも言っちゃダメだからね?これはジャスと俺だけの秘密だ」

「わかりました。」

 

ハデスから今日のことを口止めされたジャスミンはその場で静かに頭を下げていた

 

「朝食まで、まだ時間があるか・・部屋に帰ろっか」

「そうですね、ハデス様」

 

 

こうして2人は静かに部屋に帰って行った。

 

 

その後、時間通りに起きたルシファーは昨日の書類の続きをやろうと書斎に行くと昨日まで束で合った書類の山は全部なくなっており代わりにサインが自分の名でしてあった

このことにルシファーはクスッと小さな笑みを浮かべた

 

 

「(ハデス様ったら、お人好しなんですから・・うふふ、でもそんなハデス様が私は大好きですわ)」




皆さんも、友人・先生からの頼み事や部活動や会社の上司・同僚からのお願いをなんでも聞きすぎて手に負えなくなる経験をした方はいませんか?多分、いますよね(笑)
今回は、それをルシファーがやらかす回でした。

ちなみに、さりげなく新しいキャラ『ジャスミン』を登場させました。
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