最悪の悪魔   作:カワイイもの好きのスライム

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皆さん、お久しぶりです。

更新するのに時間が掛かってしまってすみません 

今回のストーリーは長いので何話かに分けて投稿しようと思います。


悪魔の訪問ー上ー

転移門(ゲート)を通りハデス達が出現した場所は、思っていた景色とは少々違う所だった。

床も壁も天井でさえも石で囲まれた所に転移門は現れ、てっきり屋外に開かれると思い込んでいたハデスとアズリエルは少々拍子抜けしていた。

 

 

「なんか肌寒いですね。ハデス様は寒くないですか?」

「大丈夫だ。それより、ここは地下かなにかなのか?」

 

 

ニグンは、ハデスとアズリエルの会話を聞きながら内心焦っていた。

 

 

(今、なんと!彼女は今、”ハデス様”と呼んだのか!?呼んだよな!?ハデス様と言ったら誰もが知っている昔話に出てくる世界を作ったとかいう神だぞ!!その話が本当なら俺たちは神に喧嘩を売ったことになるのか!?マズイマズイマズイ・・・このままではスレイン法国が滅んでしまう!)

 

 

内心、荒れに荒れまくっているニグンだが表情は持ち前のポーカーフェイスでなんとか気づかれていないだろう・・・

しかし、いずれは気づかれてしまうのではないか、そんな感情が彼の頭の中をグルグルと駆け回っていた。

 

 

そんな彼がハデスたちを連れて来たこの場所は、聖典本部のかなり重要な場所だった。

何故そんな場所に転移門が開いたのか・・・

それはニグンの助けを求める心が導いた結果である。転移門を開く際ハデスはニグンに「人目に付かない場所はないか?」と質問したことでニグンはこの神を倒せるかも知れない唯一の人物が居る場所を教えたのだ。つまり、ニグンはハデスたちを罠に嵌めたのだ。

 

 

しかし、いくら歩いてもその倒せるかもしれない人物は姿を現すことはなかった。

この場所に来てからどれくらいの時間が経ったのか、どれくらい歩いたのか、さっぱりわからないが体感的にはかなりの時間、かなりの歩数歩いた感じがしていた。

そんなことを感じていると後ろから声がかけられたー

 

 

「なぁ、どこまで歩くんだよ?」

 

 

聞いてきたのは痺れを切らし始めたハデスだった。

ハデスたちが痺れを切らすのも当たり前だ。だって、ニグンは転移したときどこに行くとは言わずに歩き始め、その彼の後ろをハデスたちが追う形で歩いているのだから。

ニグンは正直もうダメかと思った矢先だった。遂に希望の人物が姿を現したのだ。

 

 

「ねぇ、貴方たちそこで何してるの?」

 

 

彼女はハデスの後ろから現れ、喉元に刃を突き付けながら質問していた。

(何者だ?)と感じたハデスは視線を後ろに向けるとそこにいたのは、十代半ばと思われる少女だった。肌は純白の如く白く透き通り、長く伸びた髪は奇怪な事に左右で色が分かれている。右側は光を反射しキラキラと輝く銀色をしており、左側は全てを飲み込む様な漆黒。そして、その瞳は髪とは逆の虹彩で彩られていた。

 

 

 

そしてそんな彼女が身に纏うのは、まるで拘束衣の様な色気の無い物で手には十字架を思わせる様な巨大な鎌が握られている。

 

 

 

その突然の行動にアズリエルは不快感を露わにし、少女に対して殺気を放ちながら普段なら使うことのない腰刀に手をかけていた。

しかし、ハデスは暴走しそうなアズリエルを手で制止させようとしたが、刀から手をどける素振りは見られない。ましてや自分よりも強い敵に殺気をビシビシ当てて来る彼女に興味さえ湧いたのだ。そんな彼女をみすみす殺すわけがないため、ハデスは口を開いた。

 

 

「おいおい、随分といきなりだな。流石に無礼すぎじゃないか?」

「そうかしら?」

 

 

ハデスは少女に問いながらも鎌の柄を握っていた。

少女は手に力を入れ得物を動かそうとするが、ピクリとも動く気配がない。逆にハデスから送られてきたのは明確なプレッシャーだった。彼は口角を吊り上げたまま真っすぐに少女を見ていた。

 

 

(なによ、こいつ!力、強すぎない!?てか、私、戦いを挑んじゃいけない人に挑んだかも・・・これは、勝てないわね。確実に死地確定ね・・・あーあ最後に・・・強い男の子供産みたかったな・・)

 

 

少女は死を覚悟していた。力では勝てないし、得物だって取り返せる気がしない。仮に得物が取り返せても戦闘力が足らずに負ける。滅多にこの階から出ることのない彼女だが、幾度となく戦場を駆け巡った経験からそのようなことを思わせていたーーお前では勝てない、と

しかし、次の彼の行動に彼女は目を疑った。なにせ、いつでも殺せたはずなのに殺そうとはせずにそのまま得物から手を離したのだ。最初は、余裕をこいて手を抜いたのでは?、と感じたがすぐにそれは違うと感じた。だって、彼から殺意が感じられないから・・・では、相手として見られたないのでは?とも考えたが、その可能性はあるかもしれない。が、それでも自分に刃を向けた人物には多少なりとも殺意や殺気が湧くというのに彼からは微塵もそれが感じられない。

 

 

彼女には、理解できなかった。彼が一体何を望んでいるのかということに・・・

だって、普段から人と接することが無かったのだから・・・いや、接することが無いと言うと語弊があるかもしれない。聖典以外の人が正しい。

 

 

咄嗟にハデスとの距離を取った少女は自分の焦りや不安、絶望といった負の感情から目を背けるために彼に話しかけた。

 

 

「あなた、何者なの?」

 

 

この問いかけに、ハデスはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。

 

 

「人に名を聞くときは、まずは自分からが常識だろ?」

 

 

 

そう返答して少女との距離を詰め、腹に全力の殴りを入れた。少女の体はバキバキという音を立てながら壁際まで飛んで行った。どうやら、骨の何本かが折れたらしい・・

するとすぐにガシャン!という音を立てながら土煙の中から血反吐を吐きながら少女が出て来た。

 

 

「私は、スレイン法国の最強部隊漆黒聖典の一人。漆黒聖典番外席次、絶死絶命よ。」

「漆黒聖典ね・・で、番外席次ってことはお前がスレイン報国の切り札ってわけか・・まぁ、いいや。俺の名はハデスだ。」

 

 

番外席次の名を聞いたハデスは、漆黒聖典と聞いて驚きはしたものの切り札である彼女の弱さにガッカリしていた。彼の中じゃスレイン報国が誇る最強部隊漆黒聖典。その部隊よりも強い人物が切り札であると思い良い勝負になるのでは?と感じていたのだが実際にふたを開けてみるとこんなにも弱い人物が切り札だったことに落胆していた。

 

 

そんな彼の表情を読み取ったのか、番外席次は顔をしかめながら再び口を開いた。

 

 

「なにをそんなに落ち込んでいるのかしら?」

「いや、なにお前が思っていたより弱かったからな期待外れをしていただけさ。」

 

 

 

 

 

 

 

                ★★★★

 

 

 

 

ニグンは改めて驚愕していた。

ハデスが自分たちより強いのは理解していた。が、自国最強部隊に所属するそれも切り札である番外席次よりも強いことを理解してはいなかった。心のどこかでは番外席次は最強だからなんとか彼を倒してくれるだろう、と思っていた。しかし、実際は違った。番外席次をもってしても歯が立たず一方的にあしらわれている。その姿にニグンは驚愕したのだ。ここでニグンはようやく自分が犯した過ちを理解した。

 

 

 

最初から罠に嵌めるのではなかった・・・

カルネ村を襲うべきではなかった・・・

いや、もっと言えばたとえ上官からの命令でも今回の任務は断るべきだった・・・それで首が飛ぼうとも・・・

 

 

過ちを理解したニグンが再びハデスへと視線を向けると、番外席次が倒れている壁際に向かう所だった。

 

 

 

ニグンがハデスに視線を向けるまでなにがあったのか、どうして番外席次が壁際で倒れているのか理解できなかった。いや、戦闘中だったのだから嫌でも音は聞こえてくる。たとえそれが考え事に集中していたとしてもだ・・だからか、2人がどんな戦闘をしていた記憶にない。しかし、周囲を見渡してみると先程まで激しい戦闘が行われていたことは間違いない。壁は崩れ、支柱は何本か折られているし、床はフローリングが剥がれ地肌が顕著に出ているのだから・・・

 

 

 

あぁ、終わった・・・スレイン報国が終わった、と理解した瞬間でもあった。

 

 

 

しかし、ハデスは番外席次の元に向かって空間からなにやら赤い液体を取り出しかけていた。

何をしているのかわからなかったが、暫く観察していると先程まで身動き一つできなかった彼女が少しだが指を動かしていた。

ニグンはその光景を見て(死に底なっただけか・・)と思ったが、よくよく考えてみると先程までピクリとも動かなかった彼女が赤い液体をかけられてからというもの少しだが動いたのだ。それを思い出したニグンはこれを神の御業なのでは?と感じていた。

 

 

しかし、次には更なる疑問が浮かんできた。それは、私は一体どっちにつくのがいいのだろうか?という疑問だった。

このままスレイン報国側に付くのか、それとも神・ハデスに付くのか・・・確かに自分はこの国に生まれ、育てられてきたし遂には念願だった聖典の隊長にまで上り詰めた。それに感謝もしている。しかし、そんな自国にも裏の顔があった。表向きは人類守護を謳っているが、実際はガゼフ・ストロノーフという人物の殺害計画に村々の人々の殺害と表向きとは違うことをしていた。人類守護を謳っているのなら何故同じ人類を殺さなければならないのだ?常日頃から思っていたことだが、この国で生きていくにはいらない考えだった・・だから、このことについて考えないようにしていた。しかし、今目の前に神と思われる御方が存在する。それにここに来る前、ハデスは独り言のように「スレイン、滅ぼすか・・」と口にしていた。その言葉から察するにスレイン報国はいずれ滅亡するのだろう・・なら一緒に消えるよりは鞍替えして生き延びる方が得策なのではないかと思えて来たのだ。

 

 

 

第三者から見れば私は薄情に見えるかもしれないが、国と自分の命どっちが大事かと聞かれればほとんどの人は自分の命と答えるだろう。だから、ニグンには国を裏切るという感情はなかった。

だって、自分の命が大切なのは当たり前なんだから・・・

 

 

(なら、私は・・・)

 

 

どちらに付くのか決めた瞬間ハデスが番外席次を担ぎながらこちらに歩いてきているのが目に入った。

暫くその場で待っていると「お前もこっち側に付くか?」と質問された。

 

 

「・・は?」

 

 

思わず素っ頓狂な声を出してしまったニグンだが、彼の後ろにいたアズリエルからの殺気を孕んだ視線を感じすぐさま口を手で押さえた。

しかし、仕方ないと思う。だって、目の前に来て言った最初の言葉が「お前もこっち側に付くか?」だったのだから・・

 

 

現状を飲み切れずに黙っているとハデスは更に言葉を続けた。

 

 

「番外席次は俺らと一緒に来ることになった。だから、そのついでにお前もどうだ?って思ってよ」

 

 

ハデスの言葉を聞いて驚きを隠せなかった。

だって、スレイン報国の切り札が自国を出るというのだから驚くしかあるまい。

しかし、これはチャンスでもある。だって、さっきどっちに付くか決めたのだから・・・

 

 

「私もお供させてください。」

 

 

ニグンの返答にアズリエルは嫌な表情をしていたが、ハデスはニヤリと笑い「もちろん」と答えてくれた。

 

 

「では、まずこの国の腐った連中から処分していきますかね。構わぬな?ニグンよ」

「は!御身の思うがままに」

 

 

ハデスの問いにニグンは何の躊躇いもなかった。

自分が国を売っているという感覚さえなかった。だって、もう自分はこの人に付いて行くと決めたのだから。

国に残っている家族には悪いけど、もうそう決めてしまったのだから・・・

 

 

返答に満足したハデスはまたもやニヤリと笑い歩き出した。

 

 

 

この初歩がスレイン報国滅亡への最初の一歩なのだと、未だに気づかないスレイン報国であった。




久しぶりに投稿しましたが、如何だったでしょうか?

感想やコメントを頂けると嬉しいです。


P.S.

R3/03/16 本文を少し修正・削除致しました。
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