後に大小説家「青山ブルーマウンテン」になる少女、この時はまだ普通の女子高生「青山翠」、その原稿が盗まれた。盗んだ犯人は「怪盗ラパン」を名乗っているという。奇しくも、将来の彼女の代表作となる作品に登場する怪盗と同じ名前だ。そして探偵役を務めるのは「真手凛」。将来の名編集者にして、青山ブルーマウンテンの担当編集となる運命にある少女である。果たして彼女は無事に謎を解き明かし、犯人を言い当て、原稿を取り戻すことが出来るのか――?
必要な手掛かりは既に出揃っている。ここまで記述された情報をもとに演繹的推理を行うことで、犯人をただ一人に特定することが可能である。そこで読者諸君は、以下の課題にチャレンジしてみて欲しい。
①:犯人は誰か、指摘せよ。
②:真手凛はどのような推論を経て犯人にたどり着くのか、推理過程を指摘せよ。
流石に登場人物が少ないので、「いやこれ、考えるまでもなく犯人は明らかなのでは……?」みたいな感はないではない。だが作中の凛ちゃんさんの立場からすれば、犯人候補はお嬢様学校の全生徒三百人だ。その中からどうやって一人の犯人を特定するのか。また、全ての状況証拠は同じ人物を指し示しているはずだが、何をもって犯人を決定する最後の一手とするのか。どうか是非、凛ちゃんさんと同じ立場になって、作品外の情報やメタな視点はいったん抜きにして考えてみて欲しい。謎解きの楽しさは、答えを当てるというその結果にあるのではなく、推論する過程にあるのだから。
一つだけ前提条件を付け加えておくと、本作「では」叙述トリックは用いられていない。凛ちゃんさんはこの物語の「信頼できる語り手」であり、嘘はついていないし、知覚した情報を意図的に伏せるような供述も行っていない。なお、動機に関しては、論理的に明らかになるものではないため、ここでは問わない。ただし伏線は存在するため、考えるだけ考えるのも楽しいだろう。
各々答えが出たところで、次のページに進んでいただきたい。
【追加ヒント(※ここまでの情報だけでも解けるけど、自信がなかったり歯が立たなかったりしたら見てみよう)】
犯人を絞り込むにあたってのセオリーはいくつかある。まず一つ目。一般に、犯人自身が書き記したものは情報の宝庫である。今回の事件で言えば予告状がそれに当たる。予告状の中に、特定の属性の者でないと知り得ない情報、特定の属性の者でないとし得ない表現が含まれていないかどうかは慎重にチェックすべきだ。もし含まれていれば、犯人はその属性の者ということになるのだから。
二つ目。アリバイは常に重要である。今回の犯人は四つの事件を起こしているようであるが、そのうち特定の一回の事件については、劇中の情報から犯行可能な人間を絞り込むことは出来ないだろうか。
そして最後に。吹き矢部長の証言は重要である。ただし、彼女の目撃したものが正しいからと言って、彼女の見解まで正しいとは限らない。それらは別にして考えるべきだ。