この後の事の顛末について、簡単にだけ触れておこうと思う。まず、私の原稿は何とか無事完成した。確か吹き矢をネタにした短編だったと思う。結局、翠ちゃんと部活巡りをした経験がきちんと生きたのだ。原稿の出来自体は良くも悪くもない普通、と言った程度だった記憶がある(当時の部誌はもちろんまだ手元に残っているのだけれど、自分のページは怖くて見返せない)。翠ちゃんの原稿も、私よりさらに遅れてではあるけれど無事完成した。こちらは怪盗モノの短編で、本当に素晴らしい出来だったのを今でも覚えている。翠ちゃんの中では怪盗モノを書きたいという気持ちとアイデア自体はもともとあり、それもあってネタ作りのために怪盗のコスプレで校内に出没していたようだ。ただそのアイデアには何かが足りていなかったので、原稿用紙は真っ白のまま進まず、あんな奇妙な事件が起きることになったのだ。何が足りていなかったのか? これはあくまで私の考えだけれども、足りなかったのは「一般人の目線」だったと思う。最初のアイデアでは、盗みの天才である怪盗の描写を中心に話が進んでいた。しかし、シャーロック・ホームズだけでは推理小説は成立せず、ワトソン役が必ず必要であることからも分かるように、天才は比較となる一般人の存在があって初めて創作の中で輝くものだ。そこで、怪盗を追い続け、常に怪盗に出し抜かれてしまう「警部」という登場人物にドラマを付与しキャラを立たせることで怪盗のキャラをより輝かせるように私はアドバイスしたのだ。自分で言うのも何だけど、このアドバイスは結構上手く働いたと思う。探偵役として怪盗ラパンを追いかけた経験がここでも生きた、ということなのかもしれない。そして何を隠そう、卒業した後に小説家と編集者になった私たちの間でこの短編をリバイバルしようという話になって出来たのがかの大ヒット作「怪盗ラパン」だ。今考えると私が編集者を目指そうと思ったのも、「小説を書くよりも人にアドバイスする方が私は上手くできそう」と思った、この時のことが原体験になっているのかもしれない。
原稿は完成したけれど「翠ちゃん」という呼び方は私の中で定着してしまい、結局今に至るまでそう呼び続けている。翠ちゃんも翠ちゃんで「それだったら私も凛ちゃん呼びしないと不公平です」等と言い始めてその呼び方が定着してしまった。そして、「自由奔放な行動で私を振り回す翠ちゃん」と「翠ちゃんを何とか連れ戻して原稿を書かせる役目の私」というポジションも同じく定着してしまった。それにしても、「架空の怪盗を創造して原稿を盗まれたことにする」を超えるアクロバットな原稿逃れは流石にもう出てこないだろう、と思っていた。けれど、翠ちゃんいわく「どんな手を使っても凛ちゃんは追いかけてきてくれるから、どんどんエスカレートしちゃって……」とのことで、その言葉通り、翠ちゃんが三年の時の文芸部合宿ではこれを超える超エクストリームな大技が炸裂することになったのである。その時のことも中々にドラマ性のある大事件で(まさか普通の女子高生でしかない私が現実でクローズド・サークルに挑む日が来るとは思わなかった)、話始めると面白いのだけれど――、長くなるので、それはまたの機会があれば書くことにしたいと思う。
ごちうさBLOOMのアニメ第5羽を見た勢いで書きました。
翠ちゃんと凛ちゃんの高校生活めっちゃ楽しそうですよね。
変人小説家&振り回される編集者のコンビなんてそのままミステリ小説の主役になりそう……という連想から学園ミステリライクなものになりました。
そして恒例のちょっとだけ宣伝をさせてください。
ごちうさ(リプラビ)の小説同人誌を出しました。
サンプルだけでも読んで行ってくれると嬉しいです。
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