わい、転生してエロモンスターになったけど、可哀想なのは抜けない。   作:政田正彦

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エロモンスター、目覚める

 ダンジョン。

 

 いつからそこにあったのか。

 何のためにそこにあるのか。

 

 世界各地に数百と存在し、見た目は洞窟であったり山であったり森であったり、果ては城であったりと様々であり、入るたびに姿を変えるものがあったり、罠を張り巡らせたり、魔獣を配置したり、侵入者を捕食したりする生きる迷宮。

 

 侵入者を釣る餌は、魔獣から得られる肉や骨、牙やツノといった戦利品や、大きなダンジョンともなれば、宝箱を見つけ、一攫千金も夢ではない。

 

 そんな夢に釣られて今日もダンジョンに冒険者達が挑む。

 国の為、人の為、富の為、名誉の為、名声の為。

 

 アルトゥムス皇国西南に位置するダンジョンにて、剣を片手に、やや新しい装備を身に着けた剣士の少女、エイミもその夢に釣られた冒険者の一人だ。

 

「(よーし! あと一個で依頼完了っと!)」

 

 その冒険者の中でも、彼女は駆け出しと呼ぶべき未熟な冒険者である。

 それ故、自身が冒険するだけで得られる収入では食いつなぐ事は出来ない。

 

 そんな彼女達駆け出し冒険者は、一人前になるまではまず、冒険者ギルドと呼ばれる場所に登録する事で受注することが出来るクエストを完了する事で渡される報酬を得る事で、明日も生きていけるのだ。

 

 もちろん、その依頼も千差万別で、街の掃除だとか、肥溜めの汲み取りだとか言った冒険者とはなんぞや?と思うような地味なものから、ダンジョンから何かを取ってこい、ここに発生した魔獣を倒してこいといった危険度が高いクエストまで。

 

 無論、危険度が高ければ高いほど、報酬は弾む。

 

 今回彼女はそんなクエストの中でも比較的危険度の高い、ダンジョンにある鉱石の採収というクエストを受注していた。

 

 数は5つ。 ダンジョンにある事が重要なので、鉱石であればなんでもよい、もし希少鉱石が見つかったら更に報酬は弾む……といった内容の、この世界では割とよくあるクエストである。

 

 また、本来こういったクエストにはパーティーを組んで挑むのが普通だが……このダンジョンに限って言えば、むしろソロの方が効率は良いと言える。

 

 何故かと言えば……まあ、純粋にダンジョンが小規模で、道が狭い。

 

 前衛後衛と分けるのが常であるが、そもそも前衛が邪魔で後衛が何も出来ないなんて事になりかねないほどには道が狭いのだ。

 

 また小規模であるからして、危険度もそう高くない。

 この世界では強さをレベルと呼称して数値化して相手の強さを判断しているが、駆け出しの冒険者が大体10レベル前後なのに対し、このダンジョンに配置される魔獣は3~7、強くて10程度といった低レベルな魔獣しかいない。

 

 駆け出し冒険者の為にあるようなダンジョンとは冒険者達の共通認識である。

 

「(これなら、日が暮れる前には終わりそうだね~)」

 

 ダンジョンにて鉱石を手に入れる方法は色々ある。

 壁から突き抜けるように鉱石が生えている事もあるし、鉱石を核として動く魔獣、スライムを倒す事で手に入る事もある。

 

 このダンジョンにはそうそう無い事だが、宝箱の中に加工済みのインゴットがゴロリと入っている、なんてこともある。

 

「(次は……あっちに行ってみようかな)」

 

 再三言うようだが、このダンジョンは危険度が低いダンジョンである。

 だが、ダンジョンには違いない。

 

 他のダンジョンにも当たり前のようにある、古典的で、分かりやすく、少し警戒すれば分かるような罠が、数は少ないが確かにある。

 

 エイミも、その事は知っていたし、分かっているつもりだっただろう。

 だが……上手くいっていたことで油断していたのだろう。

 

 わずかに色が違う地面に気付く事が出来ず、踏み込んだ瞬間。

 くるんっ、と地面が縦に回転し、エイミの身体が床下の穴の中へと落下していく。

 

 しまった、と思ったときにはもう遅い。

 

 悲鳴を上げる間もなく、エイミは暗闇の中へと消えていき、床は何事もなかったかのように元の姿に戻っていた。

 

 

 

=============

 

 

 

 どちゃりっ。

 

 その音で、俺は目を覚ました。

 人ぐらいの大きさの何かが、粘着質な液体に勢いよく落下した、ような音。

 

 目を覚ましてすぐ、俺はここが昨日まで俺が眠っていた自室のベッドの上ではない事を知る。

 

 なんだ、この、何?

 

 例えるなら……そう、白っぽい鍾乳洞の、小さなドーム。

 なにゆえ俺はこんなところで眠りこけていたというのか。

 

 まぁいいや、とりあえず……えーと、スマフォどこ?

 と、触手を動かそうとした所で……あれ? 俺今何を動かそうとした?

 

 触手……?

 

 腕、無い。

 脚、無い。

 身体、よく分からんぐちゃぐちゃしたのがある。

 

 触手……いっぱいある。

 

 

「ピギャアアアアアアアアアアアアアアアア(なんか俺、触手凌辱物に出てくる触手みたいになってる)ーーー!?!?」

 

「ヒェ……ッ」

 

 

 そ、そんな……そんな馬鹿な……なにゆえ? なんで? どうして? 夢か? 夢なのか……?

 

 しかし頬を抓ろうとしてもそもそも頬が無い。

 ぐちゃあ……とヤツメウナギみたいな口はあるけど。

 なんであるんですか?(半ギレ)

 

 は~~~……もしかしてこれ、あれか、異世界転生とかいうやつか?

 現代日本とかにこんなバケモンが居るわけないもんな。

 

 俺はそういうなあ! NTRとか凌辱とか! 女の子が可哀想な目に遭うのが一番ダメなんだよ!! なんで俺がそういう系のエロ同人の権化みたいな生物になってんだよ!! せめてスライムだろ! ワンチャン最近の流行りのゴブリンでもいいよ!! っていうか普通人だろ!! なんにしても触手はねえだろ!!

 

 はぁ……。

 

 ……え、どうしよ。

 

 とりあえずこういう時って異世界転生主人公って何してたっけ……?

 周囲の確認……? とかは別に……だってドームしか無いしな……。

 

 あ、一応上になんか続いてるっぽいじゃん。

 ここを登って行ったら外に出れたりしないかな?

 うごうご。

 

「きゃあ!」

 

 ん?

 

 あれ、俺の身体の上に……なんか居る。

 ちっさい人みたいなん居る。

 おお、すげえ、RPGに出てくる女剣士みてえ。

 みてえっていうかここが異世界だとしたら実際女剣士なのか?

 あ、ひょっとしてアレか、この子が小さいんじゃなくて、俺がデカいのか?

 

 待って滅茶苦茶怖がられてるじゃん。

 いやそりゃそうか、自分の身体の何倍もある触手のバケモンだもんな。

 ごめんな怖がらせて……どうしよ。

 

 あ、もしかしてさっきのぼちゃって音この子か。

 もしかすると、この上から……あっ、親方ァ!空から女の子が!(脊髄反射)

 

 とりあえず俺も上に行きたいし、一緒に上に行こか。

 

「や、やめて!離してぇ!お願い!誰かぁ!」

 

 ちょちょちょ、落とすから! 俺の身体滅茶苦茶滑るから暴れないで!

 も~~~!

 

 すんげえ暴れるので、俺は触手を変形させ、太い触手で女の子を顔から下をぱくんちょしてそのまま上に行くことにした。

 

「いやあああ~~~~!!食べちゃダメ~~~~!!出してえ~~~~~!!」

 

 いだだだだ!! あの、中で暴れないでくれる? 食べないし……って言っても無理か、完全に弄びながら丸呑みしてやるぜって感じだもんなこれ。

 

 まいっか。

 

 てか当たり前みたいに変形とかできるな俺……すご。

 壁に取っ掛かりがないので吸盤みたいにペタペタ引っ付きながら上へ上へと昇っていく。

 

 すると、そこまで深い穴ではなかったようで、すぐに天井に辿り着いた。

 ……いや、天井じゃんこれ。

 

 ん~~~? でもこの子上から降って来たしなあ……? あっれえ~~~……。

 

 ん? あ、この天井なんか……あ~はいはい! 回転するのねここね!

 は~いお外……じゃないじゃん、なにここ? 洞窟……?

 

 なんで洞窟なのにこんなうっすら明るいんだ? てか狭っ……身体も変形させないと通路もまとも通れんし、通ろうとすると俺だけでぎゅうぎゅうになるじゃん。

 

 窮屈やわ……。

 

「え……?な、なに、なんで……?」

 

 今更だけど、何故か言葉理解出来るな……。

 これがご都合主義というやつか。

 

 ……とりあえず、この女の子はここまでやりゃ一人でも帰れるっしょ。

 

 カパア、と触手を開いて……ほれ、行きな。

 

 女の子はキョトンとした顔で俺を見た後、ハッとしてそのまま駆け足でどこかに去っていった。

 

 後をつけて行ったらこの洞窟の外に出れるかも……と思ったが、後ろからこんなクソ化け物が追ってくる恐怖は想像に難くない。

 

 ……良く分かんないしとりあえず一回帰るか。

 自分に何が出来るのか、一通り確認してから行こう。

 

 そう思い、俺は再び……穴の中へと戻っていった。

 ……ひょっとして俺ってこの落とし穴の先に居るエロトラップモンスターみたいな感じの存在なのではないだろうか。

 

 

 

=============

 

 

 

 蠢く巨大な肉塊。

 

 彼女が落とし穴に落ちた先で遭遇したそれはそうとしか呼称出来ない何かだった。

 見るだけで正気を損なうような、おおよそこんな所に居て良いような存在ではないと駆け出しながら直感した彼女は、その魔獣に捕まれたり、ぐるぐる巻きにされたり、顔から下を丸ごと呑まれたり等されたが……何故か今、生きて帰還する事に成功していた。

 

 それは一重に、あの巨大な肉塊が、自分を助けてくれたからだ……としか考えられない。

 

 何故助けてくれたのか。

 単にあそこはあの怪物の寝床か何かで、眠りを妨げる邪魔な存在を外に放り出した……とか。

 

 しかしそれなら食ってしまえばいい。

 食うのもダメなら殺してしまえばいい。

 

 あの化け物なら、人間の一人や二人、ましてや駆け出しの冒険者等、どうにでもできただろうに。

 

 とにかく、まあ、良く分からないが……。

 

「あたし、生きてるよお……」

 

 彼女は一人、日が暮れ始めているダンジョンの外で、幸運に感謝した。

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