わい、転生してエロモンスターになったけど、可哀想なのは抜けない。   作:政田正彦

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エロモンスター、つよつよ。

 落とし穴の先で冒険者を捕食するクソ化け物、多分それが俺だ。

 名前は分からん。

 

 目覚めてからどれくらい経ったかは分からないが……とりあえず、俺に出来る事は分かった。

 

 まず触手。

 変形していろんな形にしたり、ブルブル震えたり、裂けたり、触手に目とか口を作って遠くを見たり、捕食したりできる……と思う。まだ何も食ってないけど。

 

 あと、なんかぬちゃぬちゃした液体……ローションみたいなのを分泌したり、噴射したり出来る。 それ自体を溶解液みたいなのにしたりも出来るっぽい。 あと、多分、毒とか、媚薬とかも……。

 

 んで、本体はぐちゃぐちゃした肉の塊みたいな……目も鼻も口も無い、謎の肉塊が俺の本体だ。 たぶんここをつぶされると死ぬ。 だってここから鼓動みたいなの聞こえるし、この中に心臓があるんだろうな。

 

 って言ってもこの本体だけで3mくらいあるし、触手も……制限が今んとこ分からない位伸びる。

 

 ま、でもどうせこういうのって最終的に人化するスキルとか手に入れて人型になれたりするのが殆どだし、まあなんとかなるだろ!

 

 なんたって異世界転生だし。

 

 ……とりあえず、外出るか。

 こんな存在になっちまった以上……何かは食わないとだろうし。

 

 でも人を食うのは流石にNG。

 元人だからってのもあるだろうけど、普通に気分悪いからね。

 

 俺は細い触手を伸ばして、落とし穴に小さな穴を開け、壁から天井を這うようにして洞窟内を探索する事にした。

 

 出口は案外簡単に見つかった。

 そこまで大きな洞窟じゃないみたいだ。

 

 って言っても簡単に迷えるくらいには大きいけど、思ってたほどじゃない。

 出ようと思えばすぐ出れる感じだ。 出ないけどね、出たら討伐とかされそうだし。

 

 洞窟内はスライムみたいなやつとか、こうもりみたいなやつ、あとゴブリンとオークを足して二で割った見たいな豚の小人みたいなのがちらほら居た。

 

 流石にこいつらなら食ってもそこまで罪悪感沸かないな。

 お腹減ったら捕食して食っちまおう。

 

 てかそもそもお腹ってあんのかな……?

 

 ……あと、もう一つ分かったのは……この落とし穴、ほんとなんでもないとこに設置されてるんやなって。

 

 普通こういうのはさ……宝箱の前とか、広間の前とか、そういう注意が散漫になる所に置くのが普通だと思うんだけど、通路の中途半端なとこにある。

 

 ……いっその事穴を俺が改造しちまうのもアリかもな。

 また人が落ちてきても困るし、どでかい穴でも開けとけば入ってこようとは思わんやろ。

 

 思わんよね?

 

 

 

=============

 

 

 エイミが謎の肉塊の魔獣に出会ってから数日が経過した。

 あの魔獣については、エイミが冒険者ギルドに報告し、身体に付着していた粘液が、あのダンジョンに生息するどの魔獣のモノとも合致しないという事が判明した為、調査する事となった。

 

 とはいえ、かの魔獣は別にダンジョン内を闊歩している訳でもなく、数日経ってもこれといった被害も出ておらず、あくまでダンジョン内に配置された罠の一部として生み出された魔獣なのではないか、というのがギルド側の見解で、まぁ、一応……念の為に見るだけ見ておこう、というのが今回の主な調査内容である。

 

 

「まぁ、聞いた話じゃそこまで危険度が高い魔獣でも無さそうだけど……散々暴れたのに何もされなかったんでしょ?」

 

「うん……。」

 

「逆に良く食われなかったよなあ……」

 

「ホンットにね! なんでだろうね!?」

 

 

 そうして調査に訪れた冒険者パーティー三名。

 第一発見者である件の幸運な冒険者エイミと、彼女の親友であり同じパーティーメンバーである二人……おっとりした性格の白魔導士のユキと、男勝りな性格の弓使いティクル。

 

「でも、もし新種の魔獣だったら、報奨金が貰えるんでしょ?」

 

「そうね~、もし貴女が見たのがでっかいスライムとかじゃなければね。」

 

「違うって言ってるじゃん!」

 

「いや、そんな恐ろしい魔獣が人間を生かして帰すとはとても思えないんだが……。」

 

 そもそも魔獣というのは、ダンジョンが生み出し、ダンジョンの糧を狩る為に生まれてきたような存在であり、それ以上でもそれ以下でもない。

 

 

「でも実際生きてるんだから仕方ないじゃん……。」

 

「よほど臆病なのか……あるいは馬鹿な魔獣なのかしら?」

 

「食っても旨くなさそうと思ったんじゃね?」

 

「ねえ!!馬鹿にしてるでしょ二人とも!!あとどこを見て旨くなさそうって言ったの!?ねえ!!」

 

 女三人寄れば姦しい。

 

 ぎゃいぎゃいと騒ぎながらダンジョン内を突き進み……エイミがあの魔獣に出会った場所へと向かう三人。

 

 あんなことがあったのにも関わらず緊張感のない三人だが、これでも同じような罠があるのではないか、また別の罠が追加されているのではないかと警戒しつつ進んでいる。

 

 もしそうなら、ダンジョンが急な変化を遂げ、凶悪な(?)罠が急増したダンジョンという事となり、危険度が急上昇し、情報を改める必要がある。

 

 

「……今んとこ普通ですね。」

 

「いつもと変わんねえな。」

 

 

 が、ダンジョン内に何か変化があったようには思えない。

 白魔導士であるユキは魔道の流れを見る事で、ダンジョンに異変があれば感知する事が出来るが……それも、普段と何も変わらない。

 

 弓つかいであるティクルも、スキルで人よりも優れた聴覚を持つが、いつも通り、ちらほらと低レベルな魔獣の鳴き声や物音が聞こえるだけで、エイミの話に出た巨大な気配は感じられずにいた。

 

「あたしの剣、やっぱりあの穴の中に落としちゃったのかなぁ……。」

 

「あ、そういやそんな話してたな。」

 

 実を言うと、エイミがあんな目に遭ったのにも関わらず自分で調査をする事にしたのは、彼女があの時に剣をどこかに落としていってしまったからである。

 

 そう高い剣ではない。

 むしろ駆け出しが使うには安い剣と言えるだろう……だが、新しく揃えようとすれば食費が消えてしまう。

 

 

「まぁ……エイミの話じゃ落とし穴の下に棲んでるって話だしな。そこに落ちてたら、もう諦めろ。」

 

「地下となると私も感知外なので分からないですね。」

 

「そっかあ……あ、そろそろだよ。 確か、そこを曲がってすぐ。」

 

 

 そうして、エイミが前回訪れた落とし穴の場所が視認できるところまで訪れた、その時……エイミを含めた三人は絶句した。

 

 そこは、つい先日まではただの通路だったハズである。

 狭い通路と、中途半端な位置に落とし穴。

 

 だが、そこにあったのは通路ではなく……巨大な穴だった。

 底を見通す事すら出来ない程の深い大穴。

 

「な、なにこれ……前はこんなんじゃなかったのに……」

 

「……恐らく、貴女が出会った肉塊の魔獣……それがやったと見て間違いないでしょう……穴の様子から見ると、削った、というより、溶かしたというような空き方……つまり、このような大穴を開ける事が出来るほどの強力な酸を持つ魔獣、という事でしょうか……。」

 

「思ったよりヤベー奴じゃねえか……エイミ、お前よく生き残ってこれたな……」

 

 

 しばらく、茫然としながらその大穴を眺めていた三人だったが……やがて、ユキがとあることに気付く。

 

「あれは……?」

 

「えっ?」

 

「あの、壁についている赤黒いものは……」

 

 

 そう言ってからすぐに、その壁に付着していた赤黒い物体が……バチリ、と目を開く。

 

 真黄色の、猫のように縦に割れた瞳孔と、三人の目が合う。

 

 ヒュッ、と息を呑む。

 

 それは赤黒い物体……その正体は肉塊だった。

 よくよく見渡せば、壁の至る所にそれはあり、まるで血管のような物で繋がっていた。

 

「(拙い。)」

 

 誰からともなくそう思う。

 あんなものが、危険な存在でない筈はない。

 エイミが生き残ったのは、あの怪物の気まぐれに過ぎず、たった一度だけの奇跡だったのだと直感する。

 

 引き返そう。

 

 そうして一斉に後ろへ駆け出したところで……すべてが手遅れだった事を知る。

 

「クソッ!!こいつ、いつの間に回り込みやがった!?」

 

 見れば彼女ら三人の退路は既に数本の触手で絶たれており、行く手を阻んでいた。

 魔獣にあるまじき知能である。

 

 知能が高い魔獣、それ即ち、高レベルの魔獣であることを意味している。

 人間の赤子と同じで、育った魔獣……つまりレベルが高くなった魔獣というのはそれだけ知能も高くなるものである。

 

 一度息をひそめて誘き寄せ、獲物を逃がすまいと退路を断つ、なんて事が出来るのは相当な高レベルの魔獣だけである。

 

「これでもくらえ!」

 

 先行はティクル。 素早く矢を数本手に取り、触手目掛けて矢を射る。

 触手は見た目通りそこまで素早くはないようで、何本か触手に命中する。

 

「ミッギャ(いって)!!」

 

「効いてる!」

 

「【ホーリーアロー】!!」

 

 次に、ユキ。

 白魔導士における数少ない攻撃手段である聖魔法の、光の矢を飛ばす魔法で触手に対して追撃を行う。

 

 これも次々に触手に命中し、悲痛な叫び声を上げながら触手がのたうち回る。

 

「思ったより柔い……ってなんだそりゃ!?」

 

 これならいける……そう思った途端、触手は傷ついた部分を自分から切り取り、凄まじい再生速度でもう一度触手を生やしてしまう。 切り取られた部分はビチビチと跳ねており、体液をまき散らしている。

 

「これじゃキリがない……!」

 

「こうなりゃ、一点に攻撃を集中して、退路を確保するぞ!」

 

「ええ!」

 

「分かった!」

 

「ミギャ!ミギャア!(待って!待ってくれ!)」

 

 

 威嚇のつもりなのだろう、先ほどまでの悲痛な叫びとは違う、鬼気迫る鳴き声を上げながら触手はこちらの動きを伺う。

 

「いくぞ!」

 

「ミギャ……ミギャア!(待てって……言ってんだろ!)」

 

「【ホーリー】あむうっ!?」

 

「えっ!? ユ、ユキ!」

 

「しまった!後ろからも!」

 

 触手は、あろうことか魔導士であるユキの口を封じる為、後ろから忍び寄るように現れ、ユキの口の中へと侵入して呪文を唱えられなくしてしまう。

 

「このやっ……!うわっ!」

 

 次にその触手を短刀で切りつけようとしたティクルが退路からきていた触手に腕を掴まれ、抵抗しているうちに、もう片方の腕、そして両足、と四肢を絡めとられ、あっという間に宙づり状態になってしまう。

 

「ティクル!ユキ!」

 

「馬鹿!後ろ!!」

 

 思わず、予備の短刀を片手に動きが止まってしまうエイミ。

 その絶好のチャンスを触手が突かない筈はない。

 

「ぶぇっ」

 

「え、エイミーーーーッ!!」

 

 触手でひょいと持ち上げられ、また前回のように頭から下だけぱくり。

 こうして、駆け出しの女冒険者三名は全滅したのだ。

 

 

=============

 

 

「(ふー、なんとかなった。)」

 

 まあそりゃ、襲ってくるよなとは思ってたけど、思ってた以上に抵抗されたせいで手間取っちまった。

 

「こ、この野郎!なにするつもりだ!」

 

「んむむーーー!(やめてーーー!)」

 

「助けてーーー!誰かあーーー!」

 

 なにって……この娘が落としていったと思われる剣を返したいだけだが?

 たぶんそれが目的で来たんでしょ?

 

 いや、誰か来たと思って見てみたら前と同じ子とその連れでビビったよね。

 都合が良いからそのまま返そうと思ったんだけど、すぐに撤退しようとするから焦って逆に警戒させちまった。

 

 てか……ほんとに剣が目的だよね?

 俺の討伐の為に来たとかじゃないよね……?

 

「あ、それ……!」

 

 おっ、気付いてくれた。

 そうだよ~返したかっただけだよ~。

 

 警戒されるだろうから、床にザクリ。

 

 んじゃ俺穴に帰るんで。

 弓使いさんと魔法使いっぽい人を開放して、サヨナラ!

 するする~っと。

 

 しっかしここってほんとに異世界なんだな~、まさかあんなコッテコテの魔法が実在する世界だったとは。

 

 てことは俺も覚えようとしたら覚えられたりすんのかな?

 ホーリーアローだっけ? 今度発声練習がてらやってみよ。

 ミギャーとか言えるから普通に声帯とか作れば喋れると思うんだよね。

 

 何故か言語通じるし、もっと早く喋れればよかったんだけど。

 

 ま、今後の課題って感じだな。

 

 

 

 

=============

 

 

 

 謎の魔獣は、エイミが落としていったと思われる剣を地面に突き立てた後……何をするでもなくするすると去っていった。

 

「え、ええ~……?」

 

「……どういう事、かしら?」

 

「わかんない……とりあえず剣を回収して……帰ろっか。」

 

 見た目や知能レベルからして苦戦は免れない、命をかけた戦いになると踏んでいたのに……終わってみれば、何故か魔獣に落とした剣を返され、そのまま魔獣が帰っていったという何ともな結果に終わった。

 

「……もしかして、この剣を返したかっただけ……なんてことはないよね?」

 

「そんなはずは……。」

 

「いや、まさか……。」




ビジュアルを分かりやすく言うとなんとかグールに出てくる赫子で出来たバケモン。
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