真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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104話 断シャリってダイエット方みたいだよね

 対魔忍や中国政府が行った実験の結果、キョンシーによって瀕死となった者に聖水を使用すると、死亡後もキョンシーにならなかったことが確認される。

 ……実験結果の確認のために、助かるはずの被験者がちゃんと治療されなかったんじゃないかと不安になったが聞けなかった。

 

「聖水による処置がわかるまではキョンシーに傷つけられた者は隔離され、極秘に処分されていたらしい」

 それも知りたくなかったな。

 他に方法はなさそうだけどさ……。

「だから中国政府が泣きついてきたのね」

「パンデミックが起きる前になんとかしないといけない。満月の魔族の侵攻もあるし、聖水の増産を急ごう」

「むこうの兵はペキンに侵入しないように。キョンシーが増えるのは避けたい」

 

 トウキョウ解放のニュースは世界中に広まっている。

 一応、俺たち使徒のことは一般には知られない程度には秘密にしているので、対魔忍のさらに上をいく特殊部隊がトウキョウを解放したと大衆には認識されているようだ。

 

 そのせいで自国の都市もと民衆が騒いでる国も多いらしい。「我が国の軍部はなにをしているんだ」と突き上げられ、場当たり的に兵をゾンビタウンに突撃させ、異世界魔族の返り討ちにあっている国もある。その国の1つが中国だった。

 人海戦術はゾンビには通じず、むしろキョンシーの材料となる。爆撃やミサイルも生き残ったゾンビがスケルトンやキョンシーに進化するだけなんだから、軍は満月の魔族の侵攻に備えていてほしいのだが。

 

「現地軍との応対は対魔忍に任せる。私たちはゾンビタウン以外は出歩かない」

「いいのか? 華琳たちだって大陸は気になっているんだろ? 違う世界とはいえ、故郷なんだし」

「だからだ。少しでも外を歩けば私たちを取り込もうとする勢力が接触してくる」

 冥琳の横で雪蓮が頷いている。

 ニホン本土に戻った時にもそういった輩はいたらしい。その連中はすぐに護衛として潜んでいた対魔忍たちに排除されていたようだ。

 

「各自、迂闊な約束はしないように注意なさい」

「いや、みんな一応それなりの立場にあった人たちなんだからそういうのは慣れて……」

 見回す視線が麗羽で止まった。なんかあっさりと担ぎ上げられそうでヤバイ気もするな。

 それに気づいた鈴々ちゃんが否定する。

 

「麗羽はぞんびたうん攻略の戦力には役立たずだから誘われないのだ」

「なんですって!」

「それでも俺たちを動かすための人質ぐらいにはされるかもしれないだろ?」

 人質に狙われる可能性が一番高いのは璃々ちゃんだろうけど。次いで月ちゃんか。

 

「それならありえるのだ」

「この私が無様に捕まるなどありえませんわ! 美羽さんならともかく」

「そうですねー。お嬢さまはとっても可愛いですから誘拐犯さんに狙われるのも当然ですよねー」

 人質にするって話なんだから可愛いかどうかは関係ない。美羽ちゃんが可愛いのは否定しないけどさ。

 

「わ、妾誘拐されてしまうのかの?」

 落ち着かない様子で急にキョロキョロしだす美羽ちゃん。誘拐犯を探しているんだろうか。

「もし捕まってしまったら、誘拐犯さんたちは可愛い可愛いお嬢さまに我慢ができなくなって、あんなことやこんなことをしちゃうんですよー」

「あんなことやこんなことじゃと?」

「はい。それはもう色々とー。煌一さんが楽しみにとっておいているお嬢さまの処女なんて真っ先に奪われちゃうんですよー。そして救出後、煌一さんに中古品はいらないとポイって捨てられてしまう可哀想なお嬢さま」

 よよよと泣く真似までする七乃。なんか俺が酷い人間みたいなことを言われている気が……。だいたい、そんなことができないようにチョーカーを作ったんだし。

 

「妾、捨てられてしまうのかぇ……?」

 うるうるした目の美羽ちゃんが俺を見る。ううっ、可愛い。みんなが見てなきゃ抱きしめて慰めているところだ。

「そんなわけないでしょ。俺、ものを捨てるのは大の苦手なんだから」

 断捨離などという言葉は俺の辞書にはない! おかげで部屋がオタクグッズに溢れていたんだからさ。嫁さん多いのにいまだにエロゲーも処分できてないし。

 

「ほ、本当かの?」

「うん。でもね、美羽ちゃんたちが危ない目に会うのは嫌だから、知らない人についていっちゃ駄目だよ」

「もちろんなのじゃ! 妾は子供ではないのじゃぞ!」

 18歳以上だったね、建前上では。

 

「煌一も可愛い子に誘われてもほいほいついていかないようにね」

 ヨーコ、俺はそんなのに引っかからないってば。

「そうだな。すでに攫われたこともあるのだから注意するのだぞ!」

 むう、それを言われると……。でもあれは知らないやつじゃなくて華琳ちゃんだったから引っかかっちゃっただけだし!

 

「知っているやつでも用心しろ。特に馴れ馴れしい男には要注意するんだ」

 俺のかわりに美羽ちゃんを抱きしめて撫でているレーティア。

 そろそろいいかと彼女に『大帝国』をプレイしてもらったんだけど、アルティメットアイドルルートもクリアしたようだな。

 別名をアウトレットアイドルルート。レーティアがヒムラーに利用されその身体を弄ばれてしまうルートだ。しかもそのエロシーンは画像なしという誰得でファンに大不評のルート。

 彼女はそのヒムラーのことを言っているのだろう。……決して俺のことではないはずだ。

 

「その心配はありませんよー。お嬢さまには私がついていますから。そんな男なんて近寄らせませんよー」

 なんでそこでちらっと俺を見るかな、七乃。

 

「そんなやつら、斬ってしまえばいいだけだろう?」

「だからって声をかけてきただけの人を斬っちゃ駄目だからね」

 なんでそこで俺に剣をむけるかな、春蘭。

「それでは華琳さまを守れんではないか!」

「春蘭、私が騙されるから守らなければいけないとでも言いたいのかしら?」

 脳筋武将の方が心配かもしれない。騙されるというか、裁判沙汰に持ち込まれたら面倒だ。

 ……まあ、さっきも言ったように人形になる前からそういうのに狙われてもおかしくない立場だったんだし、気にしすぎか。

 

「い、いえそんなことは……」

「騙されるのは春蘭の方でしょ。この前なんてこの男が上司の妻を孕ませたあげくに会社の金を使い込んだって騒いでいたじゃない」

 春蘭に追い討ちをかける桂花。オレオレ詐欺に引っかかった春蘭が大騒ぎしたあれのことだろう。

 俺の上司って剣士? あいつには妻なんていないし、俺の担当世界を救済するまでは妊娠させることもない。それ以前に俺が嫁さん以外とするなんてことがありえるわけがないでしょうに。

 

「そのことに関してだけど、これからみんなに新型ビニフォン渡すから、今までのビニフォンからのデータ移行時に登録した番号以外からの電話やメールは繋がらないように設定するよ。ちょっと不便になるかもしれないけど我慢してね」

 こうしちゃうと宅配便の在宅確認の電話とかで困るんだけど仕方がない。通販する時は方法を考えよう。どうせこっちの世界で通販なんか頼んでも嫁さんたちにチェックされるからそんなに買えないだろうし……。

 

 色々と機能を追加していった結果、使っていたビニフォンは空きスロットが心許なくなってきたため新型を用意することになった。EPを籠めるベースにしたのはニホン製の最新型のスマホ。しかもそれをレーティアが改造。彼女が開発したCPUと交換したからそのままでも超高性能機だ。

 レーティアいわく子犬装置ほどではない、とのことだがこれのおかげでEXギアやATが完成するのだから、既存のものとは比べ物にならない。

 

「見た目は今までの物と変わらないな」

 受け取った新型ビニフォンをいじくりながらの梓。

 スマホの見た目を変えようとしたら薄さや大きさを変えるぐらいしかないんじゃないだろうか? 丸や三角のスマホなんて使いづらそうだ。

 そして、見やすい画面のために大型化する必要はこのビニフォンにはない。

 

「ほら、レンズが2つ並んでるでしょ。まあ見てて」

 自分用のデータ移行済み新ビニフォンを思念操作で動かし、マップを表示させる。液晶画面から光が広がり、ビニフォンの上に立体表示で屋敷のワイヤーフレームが投影された。

「立体映像か!」

「うん。映し出される大きさも変更可能だ。ただし、元のデータが普通の画像データだと、こんな風になる」

 空中に映されるのは、平面の画像データ。真横から見るとどんな画像なのか全くわからない。

 

「ふむ。今まで撮ったデータが全て立体で見れるというわけではないのね」

「そうだったら俺も嬉しいんだけどね、さすがにそこまではね。だけどこのビニフォンで撮影した画像なら立体表示ができるようになるよ」

 ステレオカメラのイメージで追加した機能だ。ただ、俺のイメージがあやふやだったのか、並列したレンズでは写せないはずの背面までが撮影され、立体表示できるようになっているのには驚いたが。

 

「愛紗ー、隠形切ってやー」

 さっそく試写を始める霞。萌将伝のような隠し撮りどころか、堂々と愛紗にポーズまで要求している。

「ふむ。……素晴らしいわね」

 撮影したばかりの愛紗画像を立体表示、そして回転させ下からのアングルを確認する華琳。……フィギュアをローアングルから撮影してる俺ってあんな風に見えたんだろうか。

 

「華琳、そーゆー使い方は控えてほしいんだけど……。他にも機能が追加されている。色々試してくれ」

 各種ゲーム機も内蔵してるけど、今はまだ教えないでいいか。

 

 

 

 聖水、聖インクの作製班とペキン偵察班に分かれた。

 トウキョウに造ってくれるという剣士の神社はすでに着工したが、完成はまだなので、聖別班はいつもの2面の神社だ。

 みんなの巫女レベルが上がって、非常に残念ながら全員でやらなくても聖水の増産はできる。

 巫女さん勢ぞろい見たかったなあと思いながら、聖別班の巫女さん姿を撮影していく。あとで立体表示するのが楽しみだ。……別に巫女さんのために立体映像機能を追加したわけではないが、もっとテストしなくちゃいけないしね。

 

「満月までに大量に用意しておきましょう」

「キョンシーが出て来れないようにペキンをお(フダ)の結界で囲めればいいのに」

「さすがにそれはGPが洒落にならない」

 聖水や聖インクの作製のような生産スキルの使用にはGPが消費される。

 レベルアップでコストは下がったとはいえ、そこまで作るわけにはいかない。

 ただでさえ本拠地のグレードアップでGPを大量消費してるのだから。

 

「兄ちゃんのすきるでおフダをいっぱい作れないの?」

成現(リアライズ)の制限もあるけどね、それ以前に俺のEPが持たないよ」

 MPは足りるかもしれない。だが俺の(EP)が持ちそうにない。

「あ、そうか」

 納得したらしい季衣ちゃん。彼女はあとで髪を下ろしたのも撮影させてもらおう。

 

 

 

 偵察班はポータルで航空基地に移動後、自衛隊機でペキンへと飛んだ。できれば拠点の起動、それが無理でもマーキングして帰ってくる。

 

 夜。偵察班が帰ってくるのは明日の予定だ。定時連絡では問題はなかったが、ちょっと心配だ。夜はゾンビやスケルトンが強くなる。キョンシーもそうだろう。やはり日帰りにしてもらうか、俺も行くべきだったかもしれない。

 

「なに言ってるんですか。夜の当番はどうするつもりなんです? ゾンビタウンの中でなんてお嬢さまが泣いちゃいますよー」

「1日ぐらいいいじゃないか」

「よくないぞ。初夜がまだで不安な妻もいるんだ」

 むう。たしかに先延ばしにされてたら落ち着かないかもしれない。

「妾だって待ちくたびれたのじゃ!」

 今夜はレーティアと美羽ちゃんと七乃だ。

 

「お嬢さまなんて煌一さんが脅すもんだから、不安でお昼寝もできなかったんですよ」

「いや、脅したのは七乃でしょ」

「捨てないでたもぉ……」

 泣きそうな、というか半泣きの美羽ちゃん。これはもしかして萌将伝のエロイベント? この流れに持っていったのってさ……。

 

「えっと、七乃、もしかして萌将伝やった?」

「なんのことでしょうかー?」

 ああ、その笑顔はプレイ済みってことか。家庭用の無印と真はやってもらったけど、18禁の方は渡さないようにしていたのに。どこで入手したんだろ。俺のパソコンのパスワード変更した方がいいかもしれないな。

 

「俺はものを捨てるのは苦手って言ったよね。だから、俺のものにするよ」

 言葉だけじゃなくて行動でも証拠を示そうと美羽ちゃんの返事を待たずに抱きしめる。

「ずいぶんはしょりますねー。私の台詞までとっちゃうなんてー」

「七乃も俺のものにするから!」

 七乃にペースを握られるのは嫌だったのでそう宣言したらレーティアが驚愕の表情を見せていた。

 

「煌一がこんなに強気で強引なんて……まさか華琳が言っていた並行世界の皇一ってやつと入れ替わったのか?」

 そんなことないから。俺は華琳を無理矢理襲うような鬼畜と違うんだからね!

 

 

 昨夜は人数が少なかったのにいつも以上に疲れた。主に精神的に。

 俺の態度に疑問を持ったレーティアが遺伝子検査するって……サンプルの採取のためにレーティアが初めてアレをしてくれたのは嬉しかったけど。もし俺が俺じゃなかったら本番をするのは嫌だって理由を教えてくれたのはもっと嬉しかったけど!

 目の前でスタッシュから出した機械で検査されるのは、なぜか緊張したし。いつの間にそんな機械用意してたのさ?

 

 朝から疲れていた俺だが、偵察班からのメールで気持ちを切り替える。

 キョンシーでもない化け物が現れたというのだ。

 メールに添付された映像を立体表示させ、みんなで確認する。

 

「……生ガンメン?」

 そう見えてしまう巨人の映像が空中に投影されていた。

 

 


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