真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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117話 オフシーズンの

 ヨーコとクランから方舟候補にあげられた船は無茶苦茶でかかった。

 アークグレンに新マクロス級。

 俺だったらヱクセリヲンも捨てがたいと思う。艦内には鉄道もはしっているから柔志郎も喜ぶだろうし。

 

 ただ、それを用意する手段がないのよ。

 俺の固有スキル『成現(リアライズ)』を使うにしてもさ、あまりにも巨大すぎる。

 呼び出す場所をなんとか確保したとして、MPが足りないだろう。GPだったらさらに無理だ。

 

 ……さっき思いついたように分割すればいけるか?

 でもなあ、MPでやる以上、時間切れが発生するから解析(スキャン)して複製するしかない。

 そうなると材料が必要になる。そう簡単には準備できそうにない。

 

「船ならばヤマトしかあるまい!」

 自分の名前の由来となったアニメの戦艦を強くおすドライツェン。

「ドワーフたちもきてくれたか」

「エルフもいるわよ」

 やや疲れた顔でチックウィードも現れた。

 開発室の昨日のマーケットの集計はおわったようだ。

 

「で、なんの話? EXAT(ベルゼルガ)の母艦でも造る気?」

「昨日の客も母艦や基地がないのか聞いてきたなあ。陸戦用なんだからダブデかギャロップっしょ」

 お客さんもベルゼルガの輸送や整備できる母艦が気になっていたか。そしてヘンビットは相変わらずジオン好きだな。

「いや、ポロりんの予言でね、方舟が必要らしくてね」

 俺はかいつまんで事情を説明した。

 

 

「ふーん。そりゃ大変ねえ」

 チ子たん、あからさまに他人事だね。

 酒よりもデザートを次々と制覇しているようだ。

「ヤマトもしくはアンドロメダを……」

 十三もできあがってるのかな。さっきから同じことを言っている。

 アンドロメダだったらゲームに出てきたアンドロメダ改級に『しゅんらん』ってあったんだよなあ。春蘭よりも秋蘭が喜びそうな戦艦だ。波動砲が3つもついていたっけ。

 

「そんなの悩んでたってしょうがない。とっととあんたの担当世界を調べな。造れるとこが見つかるかもしれない」

 ダイコがアドバイスしてくれた。彼女は開発部にはあまり顔を出さないから会うのは久しぶりだ。

 使徒としてベテランのダイコの意見はたしかに参考になる気がする。

 

 だけどね。

「そう言われてもなあ、今は柔志郎の担当世界に力を入れたい」

 本拠地がこんなにグレードアップしたとはいえ、生活基盤はまだむこうにある。あっちをないがしろにはできない。

「そうね。蚩尤もまだしとめてないし」

 いつの間にかダイコと差し向かい(サシ)で呑んでいる雪蓮が目を光らせる。異世界、別外史の自分を倒されたのが気に入らないのかな。

 

「まあ、状況がわかるまでは焦ってもしょうがない。艦の製作なら私の経験が役に立つだろうから心配するな」

 たしかにレーティアなら宇宙戦艦にも詳しい。開発設備と材料があればなんとかしてくれそうだ。

 ……別に宇宙戦艦に決める必要もない気もするけどね。

「そうだね。それこそ大船に乗ったつもりでどっしりと構えていた方がいいか」

 慌てるのはもっと情報を集めてからだな。

 すぐにできることもなさそうだし。

 

「なら次はEXATの次の機体についてだな」

 眼鏡エルフ(パトリニア)がビニフォンを操作して立体映像を表示させると、それに倣うようにドワーフやエルフたちが次々と機体案のモデルを投影させる。

 なにそれ? 3Dモデルの作成アプリとかあるの? 俺も欲しい!

 

「EXATはシンプルだからな、基本形さえできればいくらでもイジりようがある」

「俺としては次はバルキリーを狙っているんだけど」

 俺も負けじとVF-1のモデルを投影。ただし、玩具のバルキリーを撮影したものだけどね。

狂戦士(ベルゼルガ)の次は戦乙女(ワルキューレ)か。悪くはないが、また固有原理の解決に時間がかかりそうだな」

 十三もヤマトから頭を切り替えたようだ。ドワーフやエルフも北欧神話に出てくるからその関係で詳しいのだろう。

 

「VF-1バルキリーの場合は熱核反応タービンエンジンとエネルギー転換装甲あたりが固有原理かな?」

 固有原理って他の世界じゃ働かないっていうから他の方法を考えなきゃいけない。

 これのおかげで巨大ロボットがある担当世界から固有原理を使うそれを持ってきても、他の世界では本来の力を発揮できなかったり、ひどい時には動かなかったりする。

 だから、どの世界でも動かせそうなEXATはかなり注目されているそうだ。

 

 俺のスキルだと固有原理も内包して再現しちゃうんで他の世界でも使えたりするけどさ。

「あと問題は股関節か」

 バルキリーのプラモやTOYでの一番の課題だ。

 可変プラモは差し替え式で完全変形とはいえなかったっけ。

 

「うむ。燃えるものがあるな」

「まずは試作機VF-0フェニックスから始めるか? あれはターボファンエンジン(ジェットエンジン)なんだよ」

 

「なに? そんなものがあったのか?」

「うん。後付け設定で」

 ここにいる転生者のほとんどはマクロスゼロの前に転生してるのかな。

 マクロス7ぐらいはわかるやつがいるといいのだが。

 

「どうせなら両方を用意してくれ」

「わかった」

 せっかくだからバリエーションも持ってこよう。一般兵士用のA型、指揮官用のS型は当然として、複座型のD型や偵察用のVE-1もね。

 マクロス関係なら武器(TOY)の貯蔵は充分だからさ。

 

「そうなると人手が足りないわね」

「なに、今までエルフとなんぞ協力できんと言い張ってきた年寄りどもも、EXATを見て参加したそうにしててな、あれならこっちがちょっと頭を下げて頼めばホイホイやってくるぞ」

「あー、エルフ(うち)の里の連中もそんな感じかも」

 エルフとドワーフが不仲っていう古臭いしきたりがあったみたいだけど、それよりも自分たちもロボットを作りたい、という男のロマンを燻らせているやつらが増えてきたらしい。

 

「ザクはまだなのか?」

「ブレないね、君は」

 MSの場合はミノフスキー物理学が大問題となる固有原理だろうな。

 でもそれがないと他のロボとの区別が……無理に区別しなくてもいいのか?

 5、6メートルサイズのEXATと10メートル級、18メートル級のロボで開発をすれば。

 マッスルシリンダーで大型機ができるかが課題か。それと動力源。EXATのようにMPバッテリーだけで足りるかな?

 

「ロケットパンチは必須じゃろう!」

「銃と剣と盾だってば!」

「EXATは空からの敵に弱い。俺なら空から攻めるね」

 ちょっと悩んでる間にあっちは盛り上がってるな。

 いい歳した大人が「ぼくの考えた最強のロボ」を語るのを肴に呑む酒は美味いねえ。

 

 

 

 いまだ呑み続ける飲兵衛たちを宴会場に残して適当に切り上げる。

 ……俺の部屋どっちだっけ?

 新しい本拠地はでかくて迷うな。

 

「せっかくだから入っていくか」

 迷っているうちに大浴場にたどり着いたので入浴していくことにする。

 双頭竜のスキルをオフにしてと……双子が一人息子に戻るのは久しぶりだ。

 さ、さみしくなんかないんだからね!

 うん。指輪にも呪顔封じは仕込んであるけど、念のために眼鏡はかけておこう。

 あ、華琳ちゃんたちに見られないように、のぞき窓もオフにしておかないと。

 

「カポーン」

 誰もいないのでつい定番音を口にしてしまう。

 大浴場は予想以上に立派で俺1人で入るのが気が引けるほどだった。

 これはたしかに掃除が大変そうだ。従業員がいて助かるよ。

 

 ゆっくりと堪能していたら、お客さんがやってきた。わざわざ見せるつもりもないけど双頭竜切っておいてよかった。

「本当に温泉とかすごいな」

「一刀君か。調子はどうだい?」

「まだちょっと慣れないかな。でも、強くなったのは自分でもわかるよ」

 一刀君はペキンの戦いでドロップしたファミリアカード、R北郷一刀と合成された。

 俺は同じく手元にファミカがある華琳や雪蓮の合成はしたくない。

 

 したくはないけれど、どうなるのかは気になる。

 すごく気になる。

「ちょっといい?」

 一刀君を鑑定スキルで視てみた。

 ふむ。……さすが主人公キャラ、MP以外の数値が俺より上か。スキルも魔法系以外はほとんどのレベルが負けている。

「俺のレベルじゃRとかSRとかはわからないのかな?」

「カードになればすぐわかるけど、そういうわけにもいかないから」

 カードになるってことは死ぬってことだもんなあ。GPを払えば復活できるとはいえ、そんなことは頼めない。

 

「名前の後に+1とかないの?」

「どうなんだろ? ワルテナはなにも言ってなかったよ」

 むう。以前のステータスを知らないからどのくらい強くなったかがわからん。鑑定しておくんだった。

 

「記憶の方は?」

「両方あるよ。でも、どっちの俺もあんまり差はないみたいだ。麗羽たちと会ったか、会わなかったかぐらいで」

「あれ? カードになってた方って麗羽たちと会ってないの?」

「古代中国に行ったあたりでカードにされたようだ。もしかしたら行ってないのかも」

 ファミリアカードが収納されている指輪をそっとなでる。合成されたR一刀君は、カードの華琳ちゃんや孫策と同じ無印世界出身なのかもしれない。孫策が生きてたみたいだから、ゲーム開始以前のさ。

 そんな早い時期に干吉たちが仕掛けたわけか。

 

 あと残るは最重要事項の確認。これは聞いておかないといけない。

「うちの嫁さんたち可愛いでしょ」

「いきなり惚気?」

「手出しちゃ駄目だよ」

「安心してくれ。人のものには興味ない。それに俺はもっと年上の方が好きだから!」

 よし! 合成されても俺の設定改竄は効いているみたい。嫁さんたちを奪われないですみそうだ。

 

「……好きになりそうだと思ったらみんな人妻なんで困っちゃうよ。誰かいい人がいたら紹介して」

 うっ。言われてみればたしかに熟女は人妻が多い。難儀な属性を追加してしまったかも。

 責任を感じるから、頭を洗いながら誰か紹介できないか考えてみる。

 

 大江戸学園教師……熟女っぽいのはいたけど、悪役ですでに本土で牢に入れられているはず。他に誰かいたっけ?

 

 井河アサギ……対魔忍のアサギさん。現在26だったはずだから熟女枠にしたら怒られるかな?

 何度か会ってるけど、恋人がいるかは不明なんだよね。

 

 あと他には……いない。

 この俺の交友関係に女性がそんなにいるわけもないでしょ!

 回収した恋姫ぬいぐるみにも熟女キャラはいなかった。何進か孫堅ママがいれば紹介したかな?

 

「うちの柔志郎じゃ駄目かい? ああ見えてね、成人女性なんだよ」

「どう見ても年下だから無理」

 すまん柔志郎、本人の知らないとこでフラレてしまった。

 

『女性よりも先に剣の腕を磨くのだ、一刀』

 モバイルモードのゲキリュウケンから注意される一刀君。防水のためにか、彼はチャック付きのポリ袋に入れられている。

 

「ゲキリュウケン、マダンキーはもうちょっと待っててね。通販で頼んだのが届き次第、準備するから」

『よろしく頼む』

 うん。いいなあ。

 俺もこんな相棒がほしい。嫁さんたちに言えないことを相談したりしたいよ。

 剣士やワルテナが言うようにザンリュウジンも成現するか?

 

「あ、俺もポロりんに予言されたんだけど」

「え? お礼に身体とか要求されなかった?」

「……尻をなでられた」

 マジでポロりんは危険だな。入浴中だというのに青い顔の一刀君を前にそう思う。

 

「ま、まあそれだけで済んでよかったじゃないか」

「そ、そうだな。あれ以上されなかっただけでも……」

 思い出したのかさらに顔色が悪くなった。どんだけなでられたんだろう。

 あまりにも気の毒なので話を戻す。

「で、予言って?」

「あ、うん。なんか煌一さんの担当世界の攻略ん時は俺もいっしょに行った方がいいって言ってた」

 なんだろう、俺の時と違ってずいぶんとわかりやすい予言だ。

 

「俺の担当世界か」

 拠点から出られないから先に進んでないんだよな。というか、その拠点にすら全然行ってない。

「攻略の時は呼んでくれ」

『マダンキーのお礼は働きで返す』

 ダイコも言ってたし、そろそろ行くべきだろうか。

 

 ……EXATで戦力強化できてきたけど、せめて蚩尤を倒してからだな。柔志郎や智子たちだけにまかせるのは心配だ。娘のフォローをしないといけない。

 

「その時は頼むよ」

『了解した』

 嫁さんを寝取られる心配も薄そうだし、協力を頼むのも悪くないか。マダンキーが用意できればかなりの戦力になってくれるはず。

 

 それにしても、温泉で若い子と先の仕事の話とか、オフシーズンのあぶさんにでもなった気分だ。

 

 

 

 大浴場から出た俺は、従業員を捕まえて部屋に案内してもらった。最初からこうすればよかったよ。

 

「おっそーい!」

 部屋にはすでに先客がいた。

 俺が遅かったと不満そうな天和と地和と結真。

「お待ちしておりました」

 艶っぽい笑みを浮かべる結花ちゃん。

「今日は私たちの番」

 人和が部屋にいる理由を教えてくれた。

 

「しすたーずと猫目の3姉妹どうしの組み合わせか」

「唯はもう済ませているから今夜はいないけどね」

 唯ちゃんはロリっ娘たちの時にいっしょにしちゃったんだよな。壊さないように気は使ったけど、あの時もすごくよかったなあ。

「この人数でも大丈夫でしょうか?」

 5人も相手にするのはお尻でならあるけど、本番は初めてかな。それで気を使って唯ちゃんは抜けてくれたのかも。

 

「たぶんだいじょうぶだよ」

 消臭魔法を自分に使って酒臭さを消しながら答える。

 使徒になったおかげか、エロ方面も使った分だけ熟練度が貯まってスキルレベルが上がってるんだから!

 

 あ、魔法以外でこっちのスキルレベルも一刀君に勝ってたね。

 一刀君に恋人ができたらすぐに抜かれちゃうかもしれないけど。

 ……後ろでするレベルは抜かれないかな?

 

「昨日がんばったんだから、ちぃたちからだから!」

 しすたーずが3人同時にきたので慌てて双頭竜をONにしながら、俺はそんなことを考えていた。

 

 


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