真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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125話 敗北感

 あれから中国の魔人の動きはない。

 やつらの拠点も判明していない。シャンハイやペキンの外にあるのだろうか?

 

 俺たちは各国への訪問も主要な所にマーキングを済ませたので毎日の様に行くことはなくなった。

 

 行ってない国からもあからさまな苦情はきていない。

 訪問国で俺たちを狙った自爆テロが行われそうだったからだ。

 やはり宗教関係なんだろうけど未然に防いだ。俺たちが行くよりも先にディスクロン部隊が偵察していて、訪問予定地で爆発物を探知。現地の警察と対魔忍に通報してくれたからね。

 

 この時についにディスクロン部隊をみんなに紹介した。

 マインに名乗ったマサムネはいつも通りで、コンバットさんの時と反応が違った。コンバットさんとペストXさんの前だと挙動不審になるのに。ID全てがタイプってワケじゃないみたいだ。

 

 

「やはり宗教関係は面倒じゃな」

「いきなり、あなたの信じてた神様がこの世界を捨てたっていわれても信じたくはないんでしょ、そりゃ」

 最近はほぼみんながいることの多い本拠地のシミュレータルーム(ゲームコーナー)で、大型スクリーンを眺めながら愚痴りあう。

 

聖鐘(ホーリーベル)の追加もまだこないし」

「考えたんだけどさ、お兄ちゃんの力で聖鐘って作れないの?」

「無理だ。どんな音してるかもわからないし」

 神職スキルは大魔法使いの影響を受けないのかイマイチ上がりが悪く、俺はまだ霊聴スキルも入手してないんで、聖鐘の音色を聞いたことないんだよね。スキル持ちはみんなが綺麗な音だって言うから聞きたいのに。

 ……やっぱりあれか、神職スキルのレベルが上がらないのは俺が大ッ好きな巫女さんに欲情しちゃうからなのかな?

 

「ならさ、神龍(シェンロン)は? あれなら元は模型だったしお兄ちゃんの力にピッタリだよね?」

 そうきたか唯ちゃん。でもさ。

「俺は神様じゃないから無理だってば」

「いや、煌一ならできるだろ。できるって信じてやってみてくれ」

「そう言われても、ナメック星人じゃない俺ができた時点でそれって神龍じゃない気がするんだよね。ポジション的にミスターポポ? んで神様が剣士? どう考えても願い事かなえるなんてできなさそう」

「イメージの限界か。お前は変なところで設定重視だもんなあ……」

 ため息つかないでよ、レーティア。俺だって願い事がかなうなら、呪いを解いてもらいたいんだから!

 だけどやっぱりね、すごい能力には説得力(せってい)が必要なんだってば。

 

「どちらにせよ、聖鐘がなければゾンビタウンの真の解放はならないのだが」

「早くしてほしいものだ。……スカイツリーの聖鐘に不審な観光客が増えている。台座に工作しようとした者が捕まった」

 トウキョウを解放した聖鐘はスカイツリーに設置され、展示物として一般公開されている。これにお祈りする者がいるとパワーが上がると取扱説明書にあったからだ。

 

「どうせ1年は動かせないのに……まさか、魔族か?」

 紫の対魔忍情報で、盗み出して自分の国に持っていこうとする外国人が浮かんだが、魔族の破壊工作もありうるかと思いなおした。

「いや、隣国の人間だ。あの国の政府は関与を否定している。裏をとっている状況だが一般人のようだ」

「また面倒な……」

 異世界魔族の相手だけでも大変なのに、人間の方がやっかいごとをくれるのは勘弁してほしい。これが嫌で元いた神様がいなくなっちゃったんだろうか?

 

「下手したらあの国は魔族として自国民ですらないと処分されるかものう」

「……まあ、俺たちが口を出すことじゃないでしょ。対応はニホン政府にまかせるよ」

 あの国のゾンビタウンの解放は行くのが怖いなあ。核が使われたから放射能も気になるし。そっちの方は対策があるんだけどさ。

 

 レーティアが以前に浄化装置のことを言ってたけど、調べたらメカコレスペシャルボックスの中にコスモクリーナーDがあったんでネット通販で頼んでおいた。

 俺よりもヤマトに詳しいドワーフの十三(ドライツェン)にセットごと渡したんで彼が作って俺が成現(リアライズ)する予定だったりする。

 バルキリーの熱核反応タービンエンジンでもしものことがあっても、放射能除去装置(コスモクリーナー)があればなんとかなるだろうからね。

 

「そですねー。もしその人に風たちが会ったら模倣犯が増えそうなのです」

「モーホーはんじゃねえぜ、嬢ちゃんたち」

 宝譿のボケに顔を赤くするロリ軍師2人。

 

 俺たち、というか嫁さんたちは人気が高いもんなあ。犯罪してでも会いたいって奴も出てくるのはありそう。

 映画化のオファーもきてるしさ、そういうのはせめてアメリアのゾンビタウンを解放してからだよね?

 

「で、もう1人のわたしは、これで勝負したいって言ってるの?」

 親指で背後のシミュレータを指す雪蓮。

「あ、ああ。孫策、最近ゲーマーになりつつあってさ……」

 ちょっと前までは直接戦いたかったみたいなんだけど、シミュレータが完成したらあれで戦い(やり)たいって言い出したんだ。

 あの孫策って無印開始前じゃなくてOVAの孫策だったりしないよな?

 

 ちなみにこのシミュレータ、各人の専用機のデータを取り込めるようになってるけど、これ実はプラモデルからでも取り込めるようになってたりする。

 プラモシミュレータ、バトルシステムもどきなんだよね。違うのはプラフスキー粒子なんて使ってないからプラモが動くわけじゃないってこと。もちろんデータを取り込んだプラモが壊れたりもしないよ。

 不満があるとすれば筐体が動かないことかな。わずかに振動はするけど、それだけ。本当はマクロスプラスのシミュレータのようにガンガン動くようにしたかったんだけど、場所取るし危ないからね。

 

「これ、実戦とは違うのよねぇ」

「孫策を倒した奴に勝つには生身じゃキツイってことなんじゃないかな?」

 彼女をバーチャロンにはめたのは俺だけど、そのせいじゃないよ、きっと。ゲーセンのツインスティックの大型筐体の方がいいって教えたけど、そのせいでもないさ、たぶん。

 

 大型スクリーンの画面上では、戦場ではなくサーキットのようなコースがセッティングされ、戦闘ではなくレースが展開されていた。

「やっぱりあまり元の設定を見せなかった分、みんなの願った性能が出てるみたいだね」

 ボトムズの設定上のATの最高速度と、UHとして成現したデータでは数値が違う。

 限界走行速度が時速100キロを超えているATはそうなかったはずだが、大型スクリーンに表示されている速度はその倍を超えていた。

 

「はわわわ……シミュレータは身体に負荷がかからないとはいえ、よくあんな速度で操縦できますね」

「まあ、先頭走ってる連中はサンダーやモトスレイヴに乗ってるからな。それでもっと速い速度も試してたみたいだし」

 そのせいで、専用機の最高速度があんなに出るように願っちゃったんだろうなあ。ジェットローラーダッシュもなしになんであんな速度が出るんだろう?

 

 成現した各人の専用機をドワーフたちがスキャンして素材を確認したら原材料で驚いていた。

 すごいのだと龍や鵬、化蛇などの中国妖怪の名前が出てきてさ、装甲材なんて玄武の甲羅だったりしてね。

 神獣クラスを素材にしてるんじゃ、そりゃ高い能力を持ったアイテムになるのも当然か。

 

 さっきの話じゃないけど、俺の場合だとドデカいブースターでも追加装備させないとあんな速度出せるように成現できないと思う。

 

 ボトムズのアニメやATの設定を見せない作戦は成功したってことだろう。まさかそんな材料でできてることを考えるなんて予想できなかったよ。

 でも俺の妄想力が敗北したみたいでなんか悔しい。

 ……もしかしたら最高速度がモトスレイヴより遅いのは成現した俺が足をひっぱってるんじゃないかって気もする。

 この際、あの連中に爆走兄弟なアニメを見せたら、あの走りまで再現する人型兵器のEPを籠めてくれるかもしれない。試そうかな?

 

「機体によって性能差がありすぎるわね」

 呆れているの、華琳?

 君のゼルベリオス、パイルバンカーに麒麟の角をはじめとして、龍や九尾狐とか使ってたよね。蓮華機も黄龍が材料になってたし。

 逆に(ばち)当たりなんじゃとか、死体は縁起悪いんじゃなかったっけとか不安になりそうなんですけど。

 まあ、鑑定では呪い等のマイナス修正はなかったから大丈夫かな。

 

「やはり、漠然と自分の機体をイメージした者が多かったようですね。各人の思い描く具体的な要求性能の違いでしょう」

 最高速度だけではなく、加速性能や反応速度、機体のバランス等によって生じる機動性の違いを確認したいからとレースをさせようと言い出したのは稟だった。

 

「これで速度の具体的なイメージはできたはずです」

「次はパワーでしょうか。綱引きでもしてもらいます?」

 大型スクリーンに表示されていない機体の状態をメンテナンス用の端末で確認しながらの穏と亞莎。軍師たち、いつの間にそこまでコンピュータの使い方に慣れちゃったの?

 

「雪蓮も言ったけど、実際にやるのと微妙な違いは出るからね。あまりこのシミュレータばかり信用は……」

「2面の訓練場でのデータも織り込み済みに決まってるじゃない」

 桂花の言葉に軍師たちは頷く。むう、このシミュレータよりもチート軍師たちの脳内シミュレーションの方が性能良さそう。

 

「一番は実戦でしょう。明々白々な低性能の機体やおかしな動作の物は除いて、一度使って見る必要がありそうね」

「そうね。実戦が一番よね」

「も、もう?」

 華琳と雪蓮の実戦投入の意見に桃香は若干引き気味。もうちょっと訓練してからの方がいいのかな。

 あと、華琳が除くといったのは間違いなく麗羽のだろう。

 金メッキどころか、まさかの純金装甲。ナイト・オブ・ゴールドみたいに特殊加工なんてしてないので強度はないのに重い。さらには夜間でも目立つように電飾も仕込まれている。これじゃちょっと、ねえ。

 

 軍師たちのは戦闘力よりも情報収集能力を追加されてたりする。やはりいざという時のために速度も重要視されてたけど、翠たちほどの速度が出せるとは想定していなかったらしい。

 なまじ勉強していた分、出せそうな速度が予想できたのがキャップになったのだろうと冥琳が判断していた。

 

 ……あとさ、火炎放射器はたしかに便利かもしれないしATの武器にもフレイムスロウワーってあるけどさ、思いっきり悪役のイメージがあるんで武装としては拒否させてもらった。

 火計って、マスコミの前でそんな武器使えないでしょ。それに火がほしいんだったら魔法でなんとかなるし。

 って、マスコミの前だとUHもあんまり使わない方がいいのかな? 大型の敵相手なら過剰戦力扱いされないですむとは思うんだけど、どうなんだろう。

 

 

 

 

「きょ、今日は私たちだ」

 明らかに白蓮が緊張してるのがわかる。だが、それ以上に普段と様子が違う少女がいた。

「だいじょうぶか、焔耶?」

「もももも、もちろんだ!」

 そういいつつ、焔耶からはいつもの俺に対する刺々しさが感じられない。

 

「焔耶も特訓したからね。あたしも協力したし」

「とってもがんばったんだよ」

 ヨーコと桃香が焔耶を応援している。

 今夜の当番は焔耶、白蓮と桃香、ヨーコ。なんという戦闘力(ボリューム)

 実は焔耶は前にも当番がきてたんだけど、敏感すぎる体質が災いして本番前に気絶してしまった。レベルが高くなってる俺の指技スキルがうらめしい。

 ので、今回はヨーコが助っ人にきてくれた。本当は華琳がきたがったんだけどやりすぎそうだからね。

 以前の当番でいっしょだった梓はなぜか、焔耶とは嫌だと拒否されてしまった。仲悪いのか? 焔耶の武器なんて鬼っぽいのにさ。それとも桃香に心酔してるとこが梓の後輩の日吉かおりちゃんを思い出すからかな?

 

 特訓ってなにをやったんだろう。感度が高いのに耐えるって対魔忍のアサギさんに教えを請うたのかな。あっちはもっと凄いけどさ。

 というより、穏の読書欲情や稟の鼻血みたいに対策スキルを最初から用意しとくべきだよね。すっかり忘れてた。

 

 焔耶のもう1つの難儀な体質、犬の好きな匂いの方は、学園島やゾンビタウンに犬があまりいないので問題にはなっていない。こっちの方はその匂いを中和するスプレーでも用意してあげよう。ヨーロッパやアメリカで狼男とか犬系の魔人が出てきても困るだろうし。

 

「じゃ、いくよ」

「あ、ああ」

 宣言してから身構えた焔耶の腕にそっと触れ……。

「わああぁぁぁっ!?」

 さわったのを俺が感じられないほどに素早く腕を引っ込め、跳びはねるようにして大きく後ずさる焔耶。

 

「駄目か」

「いや、今のは感じたんじゃなくて、恥ずかしかったんだろう」

「な! ちっ、違っ!」

 白蓮の指摘にすでに赤面していた焔耶がさらに真っ赤になってしまった。

「よかったわね煌一、ちゃんと意識されてるわよ」

「わっ、ワタシは意識してなど……」

 ヨーコの追い討ちで焔耶がさらに動揺。今にも煙をふき出しそうだ。

 

「それなら問題ないよね。白蓮ちゃん、ヨーコちゃん、いっしょに焔耶ちゃんをおさえようよ。煌一さん、その間に一気にどうぞー」

 楽しそうに焔耶を押し倒す桃香。焔耶も彼女相手には逆らうことができず、さらに脱がされていく。

 桃香がいるから暴れるとは思えないが、怪力の焔耶だからとヨーコと白蓮も焔耶をおさえる。

 

「私の時も不安だから……ささえてくれるか?」

「うん、白蓮ちゃんの時は逃げられないように縛ってあげるよ」

「なんでだよ!」

 真の白蓮の縛れるイベント、エロイベントじゃないから家庭用でも残ってたっけ? それのイメージなのかもしれない。

 

 

 

 桃香の縛ってあげるはもちろん冗談で白蓮の時も3人がささえ、励ましながらの初夜だった。その前の仕返しとばかりに焔耶ががっちりとおさえつけていたよ。

 ……ほほえましいけど、俺がかなり酷いことをしてるかのごとく見えるようになったのは気のせい?

 

 

 いつ実戦テストを行うか悩んでいたら聖鐘が届いてしまった。

 それも2個も。

「中国の異世界魔族の動きが見れない今こそ先手を取って、ペキンとシャンハイの同時攻略をすべきです」

 蚩尤(しゆう)が気になるが、出てこないなら今のうちにやっちゃえという軍師たちからの意見と、1個ずつだと次は他の国がほしがるだろうというのがわかりきっていたので、中国のゾンビタウン解放作戦の実施が決まった。

 恋姫嫁さんたちの故郷っぽいとこは早く解放したいし、中国政府の相手ももう面倒になってきたのもある。

 というか、政府の相手って基本的にどの国も面倒だ。だってさ、俺の嫁にって紹介してくるのがやたらに多いらしいんだよ。嫁さんたちが俺の目には触れないように郵便物も検閲されてるんで俺が見たことはないけどさ。

 ……政府関係なく嫁さんたちに接触しようとするファンもいるし。だからあっぱれ対魔忍世界じゃなくて本拠地にいる時間が長くなるのも仕方がない。

 

 早いとこ救済(しごと)が終わらせて4面(ここ)に引き籠もりたいなあ。

 あ、俺の世界では正体がばれないようにすればいいのか。やっぱり仮面作っておこうかな。

 

 ……余計に目立つか。

 

 


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