真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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25話 Mojibake

 亀有。

 こちら葛飾区亀有公園前派出所、通称こち亀の舞台として有名である。

「アニキ、実際には亀有公園前派出所なんてないッスよ」

 知ってるって。亀有公園はあるんだけどね。

「亀有駅前にはなにがあるか知ってるか?」

「え?」

「あるんだよ。1分の1、等身大サイズのフィギュアが!」

「……それってまさか、銅像ッスか?」

 そう。

 亀有駅前にはこち亀の主人公、両さんこと両津勘吉の銅像がある。

 

「アニキの固有スキルは銅像でもできるんスか?」

「たぶんできる。精巧に出来ていればその分コストも下がるっぽいし、俺がEPを籠めないでもすみそう」

 いっしょに並んで記念撮影をする者も多いとかで、EPがかなり貯まっていると思う。

 ゾンビにされた住人たちの想いで人間になってもらうって、無念を晴らすのにも力を貸してくれそうじゃない?

 性格や素行にちょっと問題があるけど、成現の時間を調整すれば言う事を聞いてくれると思うし。だって、動けなくて何もできないいままっていうのはあの人にとって最高の拷問でしょ?

 

「なら、柴又には寅さんの銅像があるッスよ」

「柴又は京成金町の次の駅だっけ?」

「柴又帝釈天の参拝用にできたのが京成金町線ッス」

「でもさ、あの人戦力にしちゃ駄目でしょ?」

 ゾンビVS寅さんとか想像がつかない。

 

「亀有に話戻すよ。両さんだけじゃない、こち亀の他のキャラクターの銅像もあるんだ。まあ、等身大じゃないんだけどね」

 両さん以外は戦力になるかって言うと微妙だけど、確保しておいてもいいと思う。

 警官だから、銃は使えるしさ。

「なるほどッス」

「ただ、いくら隣の駅とはいえ、徒歩じゃ大変だ」

「だから今日は自転車も持ってきたのか」

 自転車ならそんなに時間も体力も使うまい。

「動きの遅いゾンビなら振り切りやすいと思う」

 

 広げるのは東京都の地図、葛飾区のページ。

「水戸街道、国道6号線に出て、環状7号線を経由して亀有駅を目指すのがわかりやすいかな?」

 大きな道を通った方が迷わないですむだろう。

 ゾンビに追われても回避しやすいはずだ。囲まれなければなんとかなる。

「今日は残りは自転車の練習ってことで」

 持ってきた物品は多かったけど、みんなでやったおかげでまだ明るい時間だ。

 俺はもちろんのこと、柔志郎と梓は乗れるだろうが、残りが自転車に乗れるか不明なので、練習はいると思う。

 

 

 百貨店の出口でスタッシュから自転車を取り出し、各人に合わせて調整する。といっても、サドルの高さぐらいなんだけどね。

 ブレーキと一応ライトの動作確認もして、試乗開始。

「……ふむ。足の動きを車輪の動力にするわけね」

 華琳が跨るのはMTB。……たぶん子供用のサイズ。クランも同じだが、余計なことは言わない方がよかろう。

「じゃ、早速やってみよう。こがないと倒れるから」

 華琳にゆっくりとこいでもらう。俺は倒れないように支える役目だ。

 MTBなので後部の荷台がないため、仕方なくハンドルを持つ華琳の手を上から重ねて支える。……距離が近い。なんかドキドキする。

「もっとちゃんと支えなさい」

「い、いや、軽く支える程度じゃないと練習にならないでしょ?」

 微妙に焦ってるのかな、華琳。でもいいなあ、こういうの。カップルっぽく……もしかしたら親子っぽい?

 いやいや、いくらなんでも華琳のような子がいる年齢じゃないはず。ちゃんとカップルっぽいはずだ!

 

「……あんたらがイチャイチャしてる間にこっちは乗れるのが確認できたぜ」

 梓がジト目でこっちを睨む。よかった、ちゃんとイチャイチャしてるように見えていたのね。

 じゃなくて、ヨーコもレーティアも乗れたようだ。

 聞けば、2人とも自転車に乗ったことはあるらしかった。

 

「問題はこっちッス」

 ロードレーサーを選んでいた剣士が全然駄目だった。

 下駄でロードレーサーとか、どこのアンドロイドかと感心したのだが、やはり乗りにくいらしい。

「補助輪がいるッスかねえ」

「その車種にはないだろ」

 あ、またこけた。

 やはりママチャリの方がいいか?

 でも、2メートルの剣士にはちょっと小さいかも。

 

「こうなったらGP使うぜよ!」

 百貨店に戻っていく剣士。気になったのでついていくと向かった先はサービスセンター。

 取り出した用紙から見るにどうやら強化するらしい。

「これでばっちしぜよ!」

 書いたのは『運転・自転車』のスキルレベルを2にするというものだった。

「へえ、強化ってこうやるのか。でも結構GPがかかるな」

「現場でもできるけど、そうすっともっと高いぜよ」

 ふむ。地道に鍛えた方が良さそうだ。

 強化はGPが余ってから考えることにしよう。

 

「どうじゃ!」

 スキルのおかげか、今度はスイスイと自転車を乗りこなす剣士。

「すごいじゃろ!」

「ああ、すごいすごい」

「スキルってすごいのね」

 うん。すごいのは剣士じゃなくて、スキルだ。

 華琳の方は俺がちょっと離れている間に、もう1人で乗れるようになってしまっていた。

 完璧超人すげえ。

 

 その後はポータルではなくみんな自転車に乗ってアパートに帰った。

 ……ミニスカートの華琳とレーティアが気になって仕方がない。自転車に乗る時はスカートは止めてもらおう。

 剣士と柔志郎を先行させて、俺は最後尾から見守ることに。

 ……おおっ、ストライプ!

 

 

 仲間の救助か、それとも自転車に乗れたことか、とにかく上機嫌な華琳と梓たちに食事の用意を任せ、俺は今日の戦利品を設置する。

 1F大部屋でテレビ台、本棚をいくつか組み立てる。料理班からは埃が立つと怒られてしまったので、外でやることに。

 新聞とることにしといてよかった。昨日の新聞をしいて作業再開、完成させた。

 本棚は大部屋の壁に並べて固定していく。

 テレビ台はスタッシュに収納して各部屋に置いて、テレビとデッキの配線。

 204号室には冷蔵庫と洗濯機、乾燥機も設置。手の届く範囲ならすきなとこに出せるスタッシュは本当に便利だ。

 

 洗濯機がきたということで嫁さんたちが服を洗濯し始めたので、慌てて箪笥を2(さお)とクローゼットを用意する。

 次の本拠地には収納が多い部屋が必要かもしれない。

「でも、コインランドリーの洗濯機もすげーッスよ。汚れが落ちるだけじゃなくて、破れたのが直っちゃうんス」

「嘘?」

「マジッス。おかげで助かってるッス」

 そんな機能があったのか。1Fキッチンの冷蔵庫みたいにマジックアイテムだということか。

 破れたのは捨てたり売ったりしないでもいいのか。覚えておこう。

 できれば回復ベッド、自動補充冷蔵庫とともにほしいところだ。

 

 下着類まで干し始めたので居辛くなって204号室から逃げだした。

 器具も確保したので、放置したままだったLANケーブルを壁や天井に固定する。

「床じゃ駄目なんか?」

 天井に固定する作業を手伝わせている剣士がぼやく。

「変に段差ない方がいい。掃除もしやすいし」

 あ、ロボット掃除機も持ってくりゃよかったか。明日チャンスがあったら何台か狙おう。

 

「エアコンは明日以降だな」

 室外機や配管もあるので、素人がやるんじゃ時間もかかるだろう。ネットで詳しいことを調べておこう。

 両さんならこんな作業も得意なんだろうな。早く会いたい。

 会ってプラモやトイの話をしたい! 最近趣味の会話をしてないから話し相手がほしいのよ。

 

 段ボール箱やクッション、保護フィルム等をまとめて捨てる。

 一瞬、ダンボールは何かに使えるかなと思ったが、邪魔なので捨てることにした。

 保証書等もいらない。どうせ保証してくれる相手がいないだろう。修理はここのサービスセンターに頼むことになりそうだ。

 

 木屑や紙屑まみれなため剣士と柔志郎が銭湯に行くというのでポータルを開けてあげた。

 俺も誘われたけどGP節約のために断った。嫁さんと混浴ならともかく、筋肉な大男と男の娘の裸なんて見たいような見たくないような……目覚めたら困るし。

 俺は203号室でシャワーを浴びる。

 念のためにラッキースケベのスキルはずっとOFFにしている。もしONだったらきっと誰かが先に入っていたか、後から入ってきたに違いない。

 

 

 晩飯のメインは餃子だった。水餃子と焼き餃子。

 うう、ビールが欲しい。餃子にはビールでしょ! 早くGPを稼いで晩酌できるようになりたい。

 ゾンビ世界から持ってきてもいいけど、劣化してるだろしなあ。早めに酒屋の倉庫を漁った方がいいかも。

 コインランドリーの破れた洗濯物を直す洗濯機みたいに、傷んだ食品を最高の状態にする冷蔵庫ってないかな? ……無理か。傷まないだけでも十分すごいのに自動補充もあるしなあ。

 

 

 食後、みんなでニュースを見るが交流戦の情報は得られず。通販コマーシャルの魔法の鎧に目を輝かせる剣士がいた。

「あれ、カッコいいぜよ!」

「あんなのも通販あるのね」

 鎧をでっかいハンマーで叩いたり、攻撃魔法をかましたりしているのを見て、深夜の通販番組を思い出す。今なら、この値段でもう1揃え、とか思ってたら本当に言い出したので噴出してしまった。

 

 新聞のテレビ欄では面白そうな番組がなさそうだったので、デッキもセットしたことだしグレンラガンを観ることにする。

 ヨーコの固有スキルの危険性も知っておいてほしいし。

「カミナ……」

 1話から目を潤ませるヨーコ。

「止めておく?」

「ううん。見たいわ」

 けれど、カミナの最後である8話でついにヨーコが泣いてしまった。

「もう遅いから今日はこの辺にしとこうか」

「続きが気になるぜよ」

「明日明日。はい、解散」

 みんなで夕食の後片付け。

 俺も手伝おうとしたが、ヨーコの慰め担当にされてしまった。

 

「そんなに気にすることないのに。ちょっと、懐かしくなっただけなのよ」

「ヨーコ……」

「なに、煌一まで泣いてるの?」

「俺は……俺は絶対にヨーコを悲しませないから!」

 すぐ側のキッチンで洗い物をしてる娘たちがいるというのに、大声を出してしまった。

「煌一……んっ!」

 つい、雰囲気に流されてヨーコの唇を奪う。

 死亡フラグっぽい台詞の後にこれはヤバイかもしれん。……まあいいか。

「餃子の匂いのキス……」

「ごめん。歯を磨いてからの方がよかったか」

「ううん。……残念ね、あたしの当番が昨日で」

「え?」

「今日だったら流されてオッケーしちゃったかも」

 そう悪戯っぽく笑って、さらに俺の頬にキスをしてヨーコは2階へと上がっていった。

 オッケーってもしかして……。チクショー、俺は泣いた。もしかしたら、血の涙だったかもしれない。

 

 

 ヨーコとのキスの後でちょっともったいなかったが、念入りに歯を磨いていたら、今日の添い寝当番が現れた。

「よ、よろしく頼むぞ!」

 真っ赤な顔のクランは2体のぬいぐるみを抱えている。

 昼間、救助に成功した恋姫†無双ぬいぐるみの内の2人、関羽と孫権だった。

「華琳が持っていけと言うのだ」

 なるほど。華琳のように夢で出てくるかもしれないから、ということか。

 今回救助したのは関羽、孫権、許緒、楽進、程昱、鳳統、孫尚香、周泰、袁術、陳宮の10人。璃々ちゃんを助けられなかったのは無念だ。

 

「ヨーコが元気になったようなので、よかったのだ」

「クランは大丈夫なのか?」

「……そうか。貴様は知っているのだったな」

 クランも死んだ恋人(ミシェル)のことを思い出してしまったはずだ。

 泣きそうなクランを抱きしめる。

「子供あつかいするな!」

「嫁さんが泣いているからこうしてるだけだよ」

「な、泣いてなどおらぬ!」

 でもその声は鼻声で。俺はそっとクランの頭をなで続けた。

 

「ふ、不束者だから優しくするのだぞ!」

 泣き止んだクランはベッドの上で三つ指をつく。

「誰にそれを?」

「梓だ。合っているであろう?」

 むう。一番年下に見えるクランを梓もほっておけなかったのかも。

 グレンラガンを観終わったら、マクロスFを観るか。

 

「知っての通り、最後まではできないからいっしょに寝てくれるだけでいいんだよ」

「だ、だが! ……華琳はもう少ししているのだろう?」

「な、なぜそれを!」

「私は華琳のお姉さんなのだ! 華琳にばかり負担をかけさせるわけにはいかぬのだ!」

 華琳があの夜のことを話したのだろうか?

 嫁さん同士の話が気になるが、怖くて聞きたくない気もする。

 

「負担と思うなら無理しなくていいよ」

 クランといっしょに同じ布団に潜り込む。

「……やはり、私の身体では不満なのであろう!」

「クラン」

 クランの手をそっと、俺の下半身へと誘導した。

「クランが魅力的だから、もうこんなになっちゃってるんだけど」

「……で、でかるちゃあぁぁ!」

 いやホント、節操のないムスコで申し訳ない。

 でも、餃子でバッチリとスタミナついてるところに、美少女との密着じゃすぐにスタンバっちゃうのも当然だよね?

 

「華琳だって嫌々してるわけじゃないんだよ」

 たぶん。そう信じたい。

 他の娘を助けるためだとしても、それだけじゃないって思わないと俺が可哀想すぎる。

「そ、そうなのか」

「だから、クランが俺のことを好きになって、全部俺のものになってくれるって思えた時でいいよ」

 それまでは待つから。逃がさないし。

「わかった。……それまで死ぬな! 約束だぞ」

「うん。約束する。……するから、そろそろ手を離してくれないかな?」

「手? ……でかるちゃあぁぁぁ!!」

 やばかった。もう少しで暴発するとこだった。餃子ってすごいなぁ。

 

 

 真っ白な夢の中、その2人はいた。

「救助、感謝する」

「我が名は関羽!」

 呉王孫権と武神関羽。クランの持ってきたぬいぐるみの2人だ。

 関羽は髪型で、孫権は頭の飾りのおかげで引っ掛かりがあって比較的取りやすかった。

 

「あ、どうも。俺は天井煌一」

「私は孫仲謀よ」

「うん。2人のことは知ってる。……華琳の思い通りになっちゃったか」

 この2人に夢で会って状況を説明しておけってことだよね、これ。

 まだこのイレギュラーな契約空間入りができるのは、ぬいぐるみに魂が入ってるのと俺の固有スキル、どっちのせいだろうね?

「貴様、曹操の手の者か!」

「手の者っていうか、夫?」

「夫?」

 そんなに驚いた顔しないでも。

 ……俺が夫じゃ驚くか。

 

「落ち着いてね。曹操はもう、君たちと戦うつもりはなさそうだから」

「そんなことを信じられるか。だいたい、曹操の夫だというのも怪しい」

「曹操は男嫌いだという噂よ」

 今度は疑いの眼差し?

 なんかもう泣きたいかも。

 

「あーとにかく、状況だけ説明するから信じる信じないは好きにしてね」

 別に信じてもらえなくてもいいや。

 これが許緒ちゃんや鳳統ちゃんだったら間違いなく泣いてたけどね。

 

 俺の説明を聞いて懐疑的だった2人も俺を信じ始めたようだった。

 クレーンゲームから助け出した恩人というのを思い出したらしい。

「すまない」

「気にしなくていいよ」

 ちょっと泣きそうになったけどさ。

「それでは私の気がすまない。私の真名を受け取ってくれ」

「私のも」

「いいの? 俺、真名ってのないから返せないけど」

 それに知ってるし。

 

「構わない。私は愛紗だ」

「そんな理由で断るほど恩知らずではない。私は蓮華よ」

「ありがとう。俺のことは煌一でいい」

 3人で握手。まあ、相手はぬいぐるみなんだけど。

 

 

「なるほど。曹操は部下を助けるために煌一さんの妻になったのね」

「……きっと愛もあるもん」

 体育座りしてのの字を書きたい気分だ。

「煌一殿、疑った私がこんなことを頼めた義理ではないのだが、私たちの仲間も助け出してもらえぬだろうか?」

 ぬいぐるみが折れそうなほどに頭を下げる愛紗。

「私からもお願いする。みんなを助けて」

 蓮華ぬいぐるみも両手をついてお願い。

 

「いいよ。だって君たちも助け出すのが華琳との約束なんだし」

「曹操が?」

「……それでは曹操に借りができるということ?」

 そうなるの?

「それは困る。煌一殿、曹操との契約とは別で、桃香さまたちを助け出してはもらえぬだろうか。……この身を差し出すゆえ」

「はい?」

 なんでそうなるの?

 

「華琳いい子だよ? そんな借りをつくっただなんて思わなくても……」

「そういうワケにはいきません!」

 そ、そうなの?

「わ、私も……好きにしてもらってかまいませんから、皆を助けて」

 そ、そんな悲壮な覚悟って顔で言われても。

 俺、どんだけ悪人なのよ?

 

「あのね」

「正直な話、煌一殿を曹操だけの夫にしておいては、救出された後も人形に戻るという恐怖から逃れられぬのです」

「煌一さんの力が必要なの。私たちも人間に戻して下さい」

 ……なんとなく理解できた。それぐらい、ぬいぐるみのままでいるってのは嫌なのか。

 元に戻せる俺を華琳が独占していると、困る、と。

 

「君たちを人間に戻すことはできるけど、もうちょい待ってね」

「なぜです!?」

「住むとこがない」

 これ以上部屋増やすよりも、本拠地をグレードアップした方が安いらしいから、それまで待ってほしい。

 そりゃ愛紗なら戦力になってくれるだろうけどさ。

 ……あれ?

 

「それにね、今戦っている相手がね、たぶん愛紗むきじゃない」

「どのような相手だろうと恐れはしません!」

「……相手がキョンシーみたいに動く死体でも?」

 あ、いきなり愛紗の顔が青くなった。

 ぬいぐるみなのに顔色がわかるってすごいなあ。

「し、死体ですか?」

「うん。しかも腐っていて、すごく臭い」

「……」

 蓮華まで黙っているし。

「まあ、よく考えて。嫁になってくれるってのは嬉しいけど、やっぱり愛がないと嫌だから」

 

 

 

 翌日、亀有駅を目指す俺たち。

 俺たちに気づいたゾンビを引き離すべく、必死にペダルをこぐ。

「レーティア、がんばって。もう少しだから」

「あ、ああ」

 レーティアは天才なんだけど体力的には俺以下だったりするので、水戸街道の途中でバテてしまった。亀有警察署の近くというのは皮肉な話だ。

 

「すまない」

「気にするな。それよりもっと密着してくれるとデートっぽい」

 レーティアの自転車をスタッシュに収納し、俺の後ろに乗せている。体力でいったら剣士なんだろうけど、ロードレーサーの後ろには荷台つけてない。それに俺の嫁さんだ、俺の後ろなのは当然。

 自転車なら慣れてるし、レーティアも軽い。それにKOCがまだ効いていてステータス強化されてるから大丈夫。

 そう思ってたけど、目的地についた頃には息が上がっていた。

「はぁはぁ……あった」

 目の前には制服姿の両さん銅像。ちゃんとあってほっとした。

 駅の反対口には半被姿のバージョンもあるらしい。

 

「ふん!」

 銅像を傷つけないように、固定されている箇所を剣士が破壊。ゾンビが集まってきたので、スタッシュに収納し、すぐに場所を移動しながら他の銅像も回収していく。

 回収が終わったらマーキングして、京成金町駅へとポータルで戻った。

 

「これが人類最強? たしかに呪いは発動しそうにない顔だけど……どう?」

 銅像は華琳のお気に召さなかったらしい。後で漫画を見せても同じことが言えるだろうか?

 そんなことを考えながらコンカで両さんの状態を確認する。

 いろいろとレベルが上がってきているので、成現を試す前にステータスの確認だってできるのだ。

「うん。EPは貯まってるから大丈夫! いくよ!」

 

「えっ? ……げっ」

 なんてこった!

「どうしたの?」

「ごめん、やっぱり無理みたい」

 成現しようとしたら『MPが足りません』という初めての失敗パターン。

 

 華琳の時だってコンマ何秒かでも成現できたのにそれすらできないとか、成現コストが半端ない。

 コンカでもう一度ステータスを確認したらHPが文字化けしていた。

 200億超えの俺のMPでさえちゃんと表示できてるのに。

 どんだけ……。

 

 


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