真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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26話 両さん

 亀有で入手した両さんの銅像。

 かなりのEPが籠められていたが、MP不足という初めてのエラーコードがコンカに表示され、成現は失敗した。

「今までほんの数秒でも成功したでしょう?」

「籠められたイメージが強すぎて能力が高すぎるんだ」

 あの華琳を数秒しか元に戻せなかった頃のMPと比べ物にならないほどに俺のMPは増えているのに。それでも不足だというのだから洒落にならない。

 

「もしかしたらEPを籠めた人数が多すぎてイメージがまとまってなくて、必要な数値が大きいのかもしれない」

 なるほど。レーティアの説もありえるな。

「白だと思った人と、黒だと思った人がいたら、灰色ではなくその両方になるということ?」

「そんな感じかもしれない。EPを籠める人数は少ない方がいいのかも」

 各地の銅像や展示物、狙おうかとも思ったんだけど、これじゃあ無理そうだ。

 

「こっちの女性も無理なの?」

 秋本・カトリーヌ・麗子の銅像を指差す華琳。

 麗子の銅像は駅近くのデパート内にあったため、最後に回収、マーキングもそのデパートでしている。必要経費だと割り切って買ったカードでマーキングしているけど、魔法スキルなのでそろそろマーキングのスキルも覚えられるかな?

「麗子か。なんとかなるかもしれないけど、最近の話だと金銭感覚がおかしいからちょっと不安」

「金銭感覚がおかしい麗……止めておきましょう」

 友人を思い出したのか、華琳もわかってくれたようだ。

 美人だし射撃も得意だったはずだから味方になってほしいんだけど、両さんとセットじゃないとどっちも抑えがきかないと思う。

 中川と本田も今の状況だと戦力外だろうし……。

 

「だとするとプラモやフィギュアを補充して、俺がEPを籠めた方がなんとかなりそうだ」

 とはいえ、デパート内にもおもちゃ売り場がなかったのが痛い。最近の子はどこでプラモを買ってるんだろう?

 こうなったら秋葉原か渋谷に行くか。この辺の玩具店詳しくないし。

 む?

 

「ちょっと情報収集する」

「え? 戻ってインターネット?」

「いや、両さんに聞けるか試してみる。関羽と孫権とも話、できたしね」

 イレギュラーっぽい契約空間入りを使おうと思う。

 元々人間だった華琳たち恋姫†無双ぬいぐるみとは違うけど、これほどまでにEPが籠められていればできるかもしれない。

「そう。そっちもあとで聞かせなさい」

「うん。で、俺ちょっと寝るけどみんなはどうする? アイテム回収するならポータル開けておくけど」

 拠点で寝てる分にはそんなに危険はないだろう。

 俺が使用しなければポータルも閉じないし、小隊のメンバーが転移に付き合わされることもない。

 

「ならちょっと亀有駅見たいッス」

 亀有駅は拠点にはならなかったが、柔志郎がマーキングしていた。

 それにしても駅が見たいとか柔志郎って……。

「ワシもつきあうぜよ。柔志郎1人じゃ心配ぜよ」

 やっぱ仲いいね。

 もう付き合っちゃえば?

 

「あたしたちは駅のそばのデパート見てくるよ。金町のよりも大きかったし」

 話し合っていた嫁さんたちも出かけるようだ。俺がマーキングしたのもそこなので、ポータルも開けられる。

「俺がいなくても大丈夫? やばくなったらポータルカード惜しまないで使って戻ってきてね」

 いまだにポータルのスキル持ちは俺だけ。魔法使いの効果ってすごいらしい。

「私たちのことよりも自分のことを心配するのだ」

「大丈夫でしょ。この近辺じゃ目立つことしてないから、魔族も気にしないよ」

「油断するのは危険だ。だから、私もここに残るぞ」

 え? レーティアも残ってくれるの?

 

「正直な話、さっきので疲れた」

 ああ。最後のデパート、銅像があったのが7階で、エレベーターもエスカレーターも当然動いてなかったから大変だったんだよね。

 ゾンビを魔法光球で誘導してる間に階段を駆け上がったりしてさ。

「なんかあったら連絡よろしく」

 とはいってもコンカメールじゃ緊急時に気づかない場合があるんだよなあ。せめて着信音があれば……。

「そうか!」

「どうした?」

「スマホか携帯電話を多めに持ってきてくれ」

 デパートなら携帯ショップぐらい入っているはず。

「でも、アンテナ動いてなくてここじゃ使えないんじゃないか?」

 携帯電話はトランシーバーじゃないので、アンテナや基地局なくしては通話はできない。

 昔のPHSならトランシーバー機能あったらしいけど探すのも大変だ。

 

「秋葉原に行けばトランシーバーくらい入手できるだろうけど、それまで大変だからね」

「念話が使えればいいんじゃが、わりと上級者用のスキルぜよ」

 ああ、やっぱりそんなスキルあるんだ。ならばさらに可能性が高くなったかもしれない。

「だからね、『ないなら作るしかない』理論だよ。携帯を素材にしてトランシーバー機能をつければいい。俺の固有スキルで」

 ダミーコンカも作れたんだから、コンカ機能も追加にチャレンジしてみるかな。

「そんなこともできるの?」

「イメージとコスト次第だよ、たぶん」

 まあ、両さんよりは安くすむでしょ。

 

 俺が開けたポータルでみんなが行くのを見届けた俺とレーティア。

 スタッシュで両さん銅像をベンチの側に出しなおして、ベンチに横たわる。

「退屈だろうけどごめんね」

「そんなことはないぞ。今の私にできることはこれぐらいだろうしな」

 俺の頭を持ち上げてその下に座る彼女。

 こ、これはもしかして……膝枕?

「レ、レーティア?」

「そんな寝方では首を痛めるぞ。それに寝る時は眼鏡は外すものだろ」

 もしかしたら、生きてる人間に会うかもしれないというかすかな希望で念のためにつけておいた祝福封じの眼鏡をレーティアが外す。

「ふむ。やはり貴様は眼鏡がない方がいいな」

「レーティアはどっちも可愛いよ」

 一瞬でアイドル提督の顔が赤く染まった。

「なっ?」

「ジャージで三つ編み眼鏡もアリだと思う」

「そ、そうか?」

 ホント、可愛い。

「重くなったら無理しないでどかして」

 

 

「成功したのかな?」

 いつも通りのなにもない世界。今日は布団すらない。

 目の前にはあの銅像と同じ制服姿の人物。

「お前は誰だ?」

「俺は天井煌一です」

 ナマ両さんに会えるとは、感動だなあ。

 

 現状を説明する。

「わしが銅像だと言うのか?」

「信じられないかもしれないけど」

「まあ、そんなこともあるだろ」

 あっさりと両さんは信じてくれた。

「わはは。わしはこんなことには慣れてるのだ」

 さすがギャグ漫画のベテラン。

「それよりもなにかないか? 腹が減って辛いぞ」

 銅像なのに腹減ったって……。そう思いつつも、スタッシュから弁当を取り出す。

 ……ここでもスタッシュ使えるのか?

 

「どうぞ」

「いいのか?」

 そう聞きつつも既に弁当箱の蓋を開けてる両さん。

「うまい!」

 そして返事を待たずに食べ始める。さすがだ。

 両さんの性格を知ってなければ怒ってたかも。

 

「ごっそさん」

 空の弁当箱を受け取ってスタッシュにしまう。

「で、わしが銅像で世界はゾンビだらけと」

「はい。両さんに力を貸してもらいたかったんだけど、それも無理そう」

「うーむ、残念だ。わしがいればゾンビどもなどイチコロだろうに」

 両さんがこんなことを言う時ってそう思ってない?

「……そんなこと言って、実はそんな面倒なことやってらんねー、とか思ってません?」

「ぎくっ。そ、そんなことはないぞ。ここは退屈だからゾンビだらけだろうが、構わん」

「あ、中川さん、麗子さん、本田さんの銅像もあります」

 寝る前にスタッシュから出していっしょに置いておけば、ここに出てきたかな?

 とりあえず銅像をスタッシュから出して見せる。

 

「わしもこんなだったのか」

「はい。両さんのもまだあります」

 半被姿の両さん像を出す。

「これがわしか。むう」

「銅像だった時の意識はないんですか?」

「うむ。気づけばここにいた気がするぞ」

 だとすると、成現に1度でも成功しないと人形時に意識は生まれないのかな? 元が人間で魂のある恋姫†無双ぬいぐるみは別としてさ。

 

 プラモを売ってる場所を聞くと、さすがは両さん詳しかった。というか、金町駅付近に模型店があるらしい。

「まだ模型店が残っているとは」

 模型店なんて減る一方なのに。

 実家の近所の模型店、閉店して何年になるだろう。

「柴又にもあるぞ」

 むう。行くしかなさそうだ。

 

「プラモが本物になるなら戦車はどうだ? あれが動かせればゾンビなんて敵じゃないぞ」

「俺、スケールモデルはちょっと」

「貴様、それでもモデラーか! わしが教えてやる! プラモ持ってこい!」

「マジですか!」

 両さんに教えてもらえるとは。

 戦車か。ガンタンクぐらいしか作ったことないけど、挑戦してみるかな。

 

「あ、あれ?」

「どうした?」

「なんか身体が揺れて……起こされているのかも」

「そうか。じゃプラモと飯、頼むぞ。あと酒もな!」

 なんか増えてるけど、授業料代わりにお酒もつけるか。両さんと飲むのも面白そうだ。

 俺は両さんに手を振って別れ、契約空間をあとにした。

 

 

「やっと起きたか」

「ん、ああ、おはよう」

 みんな戻ってきたようで、まだ俺を膝枕していたレーティアが真っ赤になって照れていた。

「ありがとうレーティア」

「あ、ああ」

 その顔を堪能していたいけど、みんなが見ているので起き上がった。

 駅の椅子で寝ていたせいか、身体が変に強張ってるな。レーティアが膝枕してくれなかったら本当に首を痛めていたかも。感謝だな。

 ……こんなになってるってことは結構長い間寝ていたのかな?

 契約空間で過ごす時間は一瞬だったんじゃなかったっけ? もしかしてあれは本当に夢?

 

「どうした、難しい顔して」

「いや、それがさ」

 って、確かめる方法があるじゃないか。

 スタッシュから弁当箱を取り出すとしっかり空になっていた。

 うん。夢じゃなかった。

 となると、やっぱりあれはイレギュラーな空間で契約空間モドキってことになるのかな?

 

「空の弁当箱見て、なにをニヤニヤしてるんだよ。そんなに美味かったか?」

「いや、俺は食ってないんだ」

「え?」

「両さんと話はできたよ。両さんたちは成現できそうにないけど、この辺で素材が入手できるのがわかった」

 あれ? なんで梓が睨んで……あ、もしかして弁当あげちゃったの怒ってる? 俺のために作ったのに、って。

 

「あ、あのね、両さん、すごい腹減ってたみたいでね。俺も梓の弁当楽しみにしてたんだけど、残念だなー」

「……ならいい。今度はそいつの分も作ればいいんだろ」

「ありがとう。さすが俺の嫁さん!」

「な、なに言ってんだよ!」

 むう。頬染めてソッポむかれても可愛いとしか思えん。

 梓もツンデレさんだったっけ?

 

 

 その後、両さんに教わった模型店で驚くべきことがあった。

「なんじゃ? こういうのを探してたんか? なら探知を使えばええじゃろ?」

 そう剣士に言われたのだ。

 もっと早く言ってくれ、という思いよりも剣士に言われたことの方がショックが大きかった。

 この駄神に言われるまで気づかなかったなんて……。

 

「なんか疲れた」

 ゲートでサイコロ世界に戻ってきた途端、座り込んで休憩。

 模型店に行く途中、ゾンビと戦ったのと、剣士のツッコミのせいだろう。

「まだ荷物あるんだから座り込むな」

「はいはい」

 よろよろと立ち上がって、ゲートの外にスタッシュの中身を出して再び駅へ。

 みんなけっこうアイテム集めたし、俺も模型店の品をかなり持ってきてしまった。

 塗料や接着剤、プラ材、工具等が補充できたのも助かるね。

 

「こんなにお酒持ってくるし」

 ジト目で見ないでよ。両さんに頼まれてたんだからさ。

 もちろん、俺も飲むけど。

 傷んでなきゃいいなあ。

 

「アニキ、なんか疲れてるッスね」

「そうか? そんなことないって」

 昼飯抜きもきいたのかな? でもあっち行くと食欲落ちるしなあ。

 早く悪臭耐性のスキルがほしい。

 

 アイテムを全部持って帰ってきたら百貨店にポータルを開けて、買取り用紙を持ってくる。

 剣士たちのカードによるポータルはもう消えている。コンカのログとディスクロン部隊の観測によれば持続時間は1日らしい。

「あ、塗料は色ごとにね」

「こっちとこっちのぷらもでるはどう違うの?」

「ああ、それは……」

 プラモ関係の用紙はほとんど俺が記入することになった。

 みんなは衣類や靴、雑貨がメインらしい。

 

「こんなものまで」

 温水洗浄便座か。乗せ換えてコンセント差せばいいのかな? ……配水管もつけなきゃ駄目か。説明書よく読まないと。

 そういやエアコンの取り付け、両さんに話聞いてないな。後で聞いて、明日はエアコンの工事か。

 

「今日はこの後どうするんじゃ?」

「俺はこれからスマホにEP籠めて、機能追加成現できるかやってみる」

 ちゃんと人数分以上のスマホも確保してきたしね。

「それが終わったらたらもう一度両さんに会ってくる。エアコンの取り付け方法聞いてくるよ」

「明日で季節変わるんだっけ。頼むな」

 昼とか夜っていう変な季節にならないといいけどね。

「なんか契約空間と違って瞬間で済みそうにないから、みんなは自由時間にしといて」

「服の整理でおわるであろうな」

 ああ、みんな相当に服を持ってきたみたいだ。時間もかかるだろう。

 俺のもいくつか見繕ってくれたみたいだし。

「煌一のもあとで裾上げしないとね」

 そんなことまでできるの?

 梓ってば家事スペック高すぎる。

 

 

 10台のスマホを箱から出して並べる。重ねた方がいいかな?

 そして、ノートに追加する機能をメモ、コンカでイメージを確認しながらEPを籠める。

「必要なのはトランシーバー機能、コンカ機能だよな」

 この2つは絶対に必要だろう。電話と違って1対多の通話も可能なのは便利だ。コンカ機能があれば、メールやチャットもできるだろうし。

 防水、対衝撃もいるな。頑丈じゃないと困る。

 カメラ機能は元から持ってるし……バッテリーの持ちを伸ばした方がいいか。スマホは持たないっていうもんな。

 そうか、MPで充電できるようにすればいい。

 電話も一応、入れとくか。1対1で内緒話したい時があるかもしれないし。

 

 むう。たいして追加する機能がないな。面白くない。

 攻撃機能でもつけるか? ……それはなんか違う気がする。

 じゃあ変身? ……スーツのデザインが浮ばない、保留、と。

 あ、失くしても持ち主が呼んだら手元に現れる、ってのはいいな。追加追加。

 

 とりあえず、こんなもんか。後で思いついた機能追加できるように空きスロットを2、3用意して、イメージ開始。

 ……やっぱ変身機能いるんじゃね? あとベルトとか。

 いや、いい歳して変身ベルトはねえでしょ、いくらなんでも。

 そうだよな。変身ったら美少女戦士でしょ。

 古っ! 今ならプリキュアでしょ。

 プリキュアとかおっさんがなにいってるのさ。

 

 はっ!?

 いかん、EP低下によるネガティブが発現しちゃったか。

 ……なんかネガティブっていうか、ちょっと違う気もするけど。

 楽しいことを考えないと!

 プリキュアか。呉の連中を成現したら、コスプレしてもらおうかな?

 女子中学生にしか見えない柔志郎にも似合いそうだね。

 

 っと。EP注入おわったか。

 コンカで追加機能を確認してもだいじょうぶそう。必要MPも足りてるみたいだし。

 充電もしなきゃいけないだろうからMPを半分くらい残して成現!

 ……うん。成功したみたい。マークが果物からサイコロに変わっている。

 1つを取って電源ON。

 名前を書け?

 コンカ機能のせいかな。タッチパネルに指で記名してみる。

「これで設定完了? 簡単すぎない?」

 ああ、中身だけじゃなくて箱ごとやったらマニュアルも変わったのかな?

 その分コストが嵩むか。

 まあ、マニュアルなくてもいいでしょ。

 コンカにメールできるかテストも兼ねてみんなにメール。

『できたから大部屋に集まって』

 スタッシュにしまって、俺も大部屋に移動しよう。

 

「見た目は普通のスマホッスね」

 ちゃんとメールが届いたようで全員集まったのでそれぞれにスマホ改を渡した。

「まあね。そんなに変える必要もないでしょ。痛スマホにしたいならケースの方でなんとかすればいいし。とにかく、電源入れて名前入れてみて」

「ふむ。指で書けばいいのね?」

「うん。設定完了すればコンカ機能で思考操作もできるはずなんだけど、最初はやっぱり記名が必要みたい」

 みんな真剣に指で名前を書いてる。ちょっと面白い。

 

「これだけ? ガンフォンでももう少し初期設定に時間かかったけど」

 ガンフォンってグレンラガン世界の携帯だっけ? なんか顔がついてそう。

「うん。とりあえずトランシーバー試してみよう」

 思考操作でトランシーバーモードに切り替え。

 

「これでいいんか?」

 剣士のスマホ改の画面にトランシーバーっぽいアイコンが表示されているのを確認して頷く。

「みんなできた? 聞こえてる?」

 スマホ改に向かって喋ってみる。

「聞こえたぜよ!」

「聞こえたッス」

「聞こえたわ」

「聞こえたのだ!」

 返答が一気にスマホ改から聞こえてきた。

「うん。トランシーバーはうまくいったみたいだ。じゃあ……」

 ヨーコに電話って念じてみる。

 プルルルル……プルルルル……。

 ヨーコのスマホ改が鳴り出した。

 

「えっ? ……これ?」

 自分のスマホ改の画面、受話器のアイコンに気づいたヨーコがそれに触れる。

「もしもし?」

「はい、煌一です」

 うん。電話機能も上手くいったみたいだ。

 

「マナーモードやカメラ機能とかは柔志郎に聞いて。あとは距離と遮蔽物があっても使えるかどうかだけど、試すしかないか。メールと同じようにMP消費するからだいじょうぶだとは思うけど」

「減ってないわよ」

 え?

 早速スマホ改で華琳のキャラシートを呼び出してMPを確認するも減っていない。

 ……あ、もしかして。

 モードの確認をしてみると、持ち主のMPで通話やメールをするのと、スマホ改のバッテリーを使用して行う、の設定画面が出てきた。

「これのバッテリーを使ってコンカの消費MPのかわりができるっぽい。まあ、バッテリーはMPで充電しなきゃいけないんだけど」

 いったん充電するという形な分、消費効率は直接本人がMP消費した方がいいはず。

 でも、充電しておけるというアドバンテージは大きい。

 

「凄いぜよ!」

 剣士が興奮するのもわかる。

 我ながらいい物を作ってしまったらしい。

「あと、スマホの基本機能の他にコンカの機能も入ってるはずだから」

「コンビニエンスフォン、ッスね!」

「略してコンホ?」

 しまらない略なような……まあ、スマホ改やビニフォンよりいいか。

 

「じゃ、みんな色々試してみて。俺は疲れたから回復ついでに両さんに会ってくる」

 ツマミを適当に見繕って、酒をスタッシュに入れて、プラモを……どれがいいかな?

 タイガー戦車なんて初心者には早いとか言われそうだし、……いくつか持ってけばいいか。

 工具と塗料等も忘れずに入れて、置き場所がなくてアパートの廊下に出しっぱなしの両さん銅像の側に枕を持ってきて。

 おやすみなさーい。

 

 

 両さんにプラモ、お酒とツマミを差し入れて、エアコンの取り付けやプラモの話をしながら乾杯して、ほろ酔い気分で契約空間モドキを去った。

 なにもなくて両さんが退屈だというから、テレビとデッキ、ゲーム機を持っていってあげないとな。あと冷蔵庫も。

 ……電源どうすっかな? コンホみたいにMPでやればいいか。

 

 目覚めると、俺に毛布が掛けられていた。誰だろう?

 両さんの銅像の置き場所も考えないとな。

 でも、俺のとこはまずい。今は契約空間モドキ以外は意識ないみたいだけど、夜の生活を覗かれるのも嫌だし。

 とりあえずは廊下で我慢してもらうしかないか。

 

「あ、起きたッスか?」

「うん。おはよう」

「ちょうどよかったッス。夕飯、用意できたみたいッス」

「夕飯、か」

 どうやら、ちょっとアルコールが残っている。

 あっちで飲んでもちゃんと飲んだ事になってるみたいだ。

 

「やっぱりアニキ、元気ないッスね」

「え?」

「これで元気だすッス!」

 柔志郎が取り出したのは2体のぬいぐるみ。

 周瑜と賈駆の恋姫†無双ぬいぐるみだった。

 

「これは?」

「オレがクレーンゲームで取ったッス!」

「難しかったろ?」

「メダル15枚使ったッス」

 ってことはサービス分を入れたら18回か。そんなに得意じゃないんだろうな。

「GPは大事に使いなさい」

「いいんス! アニキには元気になってほしいッス!」

「……ありがとう。心配かけてごめん」

 まったく、女子中学生に気を使わせるなんて……。

「むー、子供扱いしないでほしいッス!」

 気づけば、柔志郎の頭をなでていた。

 こんだけわしゃわしゃなでてもアホ毛はピンと立っているのだからたいしたもんだ。

 

 

 食事を済ませてニュースも見ずに1人で部屋に戻った。

 柔志郎にお礼をしなきゃいけない。

 電車でも成現してプレゼントしようか? ……MPが足りないかな?

 じゃあやっぱり、ファミリアか。

 柔志郎、鉄ちゃんだけじゃなくて、眼鏡フェチでもあるみたいだから、そのへんで考えてみよう。あと、俺の呪いにも耐えられる設定で……。

 

 この時、住む場所はどうするんだという考えが浮かばなかったのはアルコールが残ってたせいだろう。

 

 選んだフィギュアにEP籠めをしている途中で、レーティアが203号室にやってきた。

 美少女フィギュアを手にしているのを見られたくなかったから鍵は閉めていたはずだけど、嫁さんたちには合鍵を1つ渡している。

 その合鍵を持っているのが添い寝の当番らしい。

「……またメンバーを増やすのか?」

「うん。柔志郎のとこに」

「私のかわりではないのか?」

 なんか泣きそう?

 新人成現ってもしかして地雷?

 

「なんでそうなるの? レーティアのかわりなんて誰にもできないでしょ」

「私は現状では足手まといだし、天才なら華琳がいるし、物作りだって煌一がいる」

「レーティアに頼むための俺の担当世界にまだ行ってないから、そう思うだけだよ」

「でも……」

 知り合いのいないとこでゾンビの相手なんかしてたら、不安になるのも当たり前か。

「レーティアはすごいってば。それにもし、かわりがきたら俺の嫁さんやめちゃうつもりかい? そんなに俺との結婚は嫌?」

「そ、そういうわけではないぞ」

「嫌だって言っても、もう絶対に離さないけどね」

 1人逃がしたらみんな逃げちゃいそうだし。

 逃がさないよ、ってレーティアを抱きしめ、その唇を奪うのだった。

 

 


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