真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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29話 いいんちょ水月

 トイレに温水便座洗浄器をつけたことを華琳が勘違い、ちょっと……なプレイに及ぶことになったんだけどさ。

 

 間違えたふりして、卒業しようかと一瞬――いやかなり、迷った。

 だってさ、先にそっちってのはさあ……。

 

 けれど、テレビで見た光景が頭の隅をよぎる。

 熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)を使ってるアーチャーもどきが映ったと思ったらすぐに集中砲火を受けて撃沈。

 壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)の撃ち合いだろうか?

 SD体形じゃないタイガーころしあむを観ている気分だった。

 その後は複製した武具をいかに使いこなすかの勝負になっていったけど、複製される武器も滅茶苦茶。

 ほとんどが剣とはいえ、レーザーブレードやら竜殺しやら。マスターソードやムラサメブレードもいた。

 物理攻撃が強そうだったあれはたぶん、はやぶさの破壊の剣だろう。

 参考にはなったけど、俺の場合先に模型を作っておかなきゃいけないし、成現させるには必要コストも高そうで使い捨てにするのも迷いそう。

 

 あんな連中がゴロゴロいるんだ。

 交流戦でしか会う可能性はなさそうだけど、今はまだ魔法使いのスキルを失うのは早すぎる。

 最大MPの強化ともっと魔法を覚えてからじゃないとこの隠しスキルは手放せそうにない。

 そう決断して、華琳の望んだ方で我慢した。

「殺菌と消臭の魔法がこんな時に役に立つと思わなかったわ」

 俺も思ってなかったよ。

 

 

 ……我慢なんていったけどさ。

 ありでした。

 すっごくよかった!

 おっぱいもよかったけど、表面じゃなくて内側で受けてもらえるってのは嬉しい。

 俺を受け入れてくれたって思えるから。

 お口の時よりも繋がっている感じも大きかったし!

 

 残念なのはいまだ俺が魔法使いなことと、子供ができる可能性がないってことか。

 ……俺、子供がほしくて智子を娘にしちゃったのかなあ?

 

 1回戦を終えてすぐに、華琳が俺のスキルを確認する。

 ……その前に、準備不足だったのか、ちょっと切れて出血していたので慌てた俺が華琳に回復魔法を使ったんだけどさ。俺のはまだ回復魔法(小)なので不安で何度も連射。華琳が呆れていた。

 

 出血が収まったことにほっとした俺を凝視するア○ル非処女。

 俺の魔法使いのスキルが失われたかもしれないと心配したんだろう。

 それぐらい、ギリギリなプレイだったとわかる。

 華琳がそっちまで許してくれたのには、梓のおっぱいに対抗するだけじゃなくて、ぬいぐるみの救出のお礼という意味もあるんじゃないだろうか。

 

「これで終わりではないでしょうね?」

「お、俺はまだできるけど、華琳がもたないでしょ。あんなに辛そうだったんだし」

「……この程度で音を上げる私ではないわ」

 真っ赤な顔で俺を睨む華琳。でもまだちょっと瞳に涙が残ってるんだけど。

 ……言っても聞きそうにないので、今度は俺が華琳を鑑定してみた。

 HPは回復魔法を使ったから満タンだけどさ、痛いのをずっと我慢してたんだろう、EPがけっこう減ってるじゃないか。

 うん。傷は残ってないようだな、安心した。

 ……あれ? 『○門性交』のスキルがレベル1!? そんなスキルまであるの?

 調教ゲーじゃないんだからさ……。

 そう思いつつも、スキルの解説から切れる心配はなさそうと判断。痛がるだけだった華琳を今度こそ感じさせようと奮起する俺だった。

 

 

 翌朝。

 自分でも気になってスキルを確認したけど、魔法使いは失われていなかった。

 ほっとしたような残念なような。

 ……そっちで卒業扱いにされても悔しいだけか。

 

「起きたのね」

「おはよう。身体の調子はどう?」

「平気よ。まだ煌一が入っているような気はするけど」

 ……入っちゃったんだよなあ、華琳の中にこれが。

「大丈夫? 辛いなら病院で回復ベッドを使おうか?」

「平気だと言ったでしょう」

「でも……」

「それほど気になるなら、何度も何度も求めないで」

 いやあ、昨夜はがんばっちゃったなあ。

 まさかこの俺がそんな台詞を言えるようになるとは。

 結局何回やったっけ?

 

「よかったよ、華琳」

「……当然よ」

 その後、歩きにくそうにした華琳をお姫様抱っこして、トイレや風呂に運んだのだった。

 うん。なんか新婚さんっぽい。これだよこれ!

 

 

 

 智子とセイバーライオンの基礎講習2日目なので、見学することにした。

「なんだ、お前たちも参加するのか?」

「娘の応援なのでお気になさらず」

 智子コピーに見学したいと説明したら許可してくれた。さらに、校舎の2階の空き教室を案内してくれたのでそこから観戦することに。

 気が利くなあ。コピーとはいえ、さすが俺の娘だ。

 

「けどさ、あの2人そんなに強いのか?」

 窓から校庭を覗きながら梓が問う。

「まあ見てなって」

 成現が上手くいっていればかなりの戦力になるはずだから。

 

「始まるようだ」

 校庭が輝いて、透明緑な壁で2分割された。

「まずは個人戦だっけ」

「その前に回復魔法伝授」

 ああ、アレか。

 ……わかっていたとはいえ、智子やセイバーライオンが傷つけられるのは気持ちのいいものではなかった。

「他に方法ないのかね?」

 結界っぽい薄緑の壁が見えなかったら、俺が治しにいったかも知れない。

 

「智子、がんばれーっ!」

 俺の応援が届いたのか、傷の治った智子がちらりとこっちを見て頷く。

 さっそく使う気だろう、その能力を。

 

「プリキュア、オープンマイハート!」

 小さな円板状のアイテムを手にした智子の声がここまで聞こえた。

「えっ?」

「変身した?」

 成功だ。

 智子の固有スキルは変身。

 成現の時に使ったフィギュアの能力が使える姿に変身できるのだ。

「月光に冴える一輪の花! キュアムゥーンライト!!」

 ……え? 髪の色まで変わってる? 背も伸びてるようだし、顔や体形もキュアムーンライトそのものになっているような……。

 

「あれは?」

「キュアムーンライト。智子のもう1つの姿だよ」

 あれは『ハートキャッチプリキュア!』の伝説の戦士で、と説明しようとしてたらセイバーライオンのコピーがもうやられてしまった。はやすぎ。

 決まり手はムーンライト・シルバーインパクトだと思う。

 

 セイバーライオンの方も智子コピーを倒していた。

 まあ、コピーの方は変身してなかったしね。

 

 ……団体戦の方では智子コピーならぬ月光コピーが相手チームにいました。

 そうなっちゃうのか。

「どうせ見せかけだけだろ。あたしたちん時だってそうだったし」

「見せかけだけでも大変だったぞ」

 レーティアは誰の偽者を相手にしたんだろう?

 梓、狼、鷲……どれでも大変だったろうなあ。

 

「私の巨大化よりも持続時間が長くないか?」

「たぶんアイテムで変身してるから消費MPも減ってるんじゃないか?」

「ふむ……」

 やっぱりクランにも変身アイテムを用意するか。

 ステッキとベルトどっちがいいかあとで相談してみよう。

 

 

 教室を出て、団体戦も瞬殺ですました2人と合流する。

 智子はもう変身を解いていた。

「お疲れ様」

「相手側も変身してた時は不安にならかったか?」

「自分との戦いなんて、試練で経験済みやから」

 あれ?

 それってさ。

「智子、キュアムーンライトの、月影ゆりの記憶もあるのか?」

「ないと戦う時困るやろ。お父さんは戦う能力だけをくれようとしたみたいやけど、私にはちゃんと3人分の記憶もあるんや」

 それは予定外なんだけど。

 酔って改変したせいか、詰めが甘かったか。

「……大丈夫か?」

「問題ない」

「そうは言っても辛い記憶も多いだろう」

 なにしろ、ハートキャッチの不幸を一身に背負っているといってもいいぐらいの子だし。

「私には大事な思いでや。それに、お父さんはいなくならないんやろ?」

 

「……そうか」

 元にした3人は父親との仲にちょっと問題があった。2人は両親が離婚して母親と暮らしており、1人は父親と死別。

 それにつけこむ形での俺の父親設定なんだけどさ。

「3人分とか予定外だ。なにか異常があったらすぐに教えなさい」

「だいじょうぶやって。心配性やなあ」

 智子は俺のファミリアではないので、鑑定でしか状態が確認できないのは困るな。

 義弟ではなく、義妹だった柔志郎に智子のファミシーを見てもらったけれど異常はなさそう。

 MPの消費も確認してもらったが、クランの言うように能力のワリに消費が少ない気がする。

 うちの智子、かなり強いかもしれん。

 

「セイバーライオンもようやった」

「がお!」

 こっちは心配してなかったけど、宝具じゃなくて支給された剣であの強さ。

 1秒1万の消費MPは伊達じゃないようだ。

 

「これで戦力もかなり増強できた」

 剣士と柔志郎の小隊にはあと3人ずつの空きがあるとはいえ、住居を考えるとさすがにこれで増員は打ち止めかな?

 これ以上は本拠地をグレードアップしてからだ。

 がんばってGPを稼ごう。

 残りの恋姫†無双ぬいぐるみも救助しなくちゃいかないし!

 

「そうね。これなら魔族とやらにも勝てるのではないかしら?」

「どうじゃろうなあ。デュラハンの硬さは半端なかったぜよ」

「まあ、戦うのは拠点を増やしてからの方がいいだろうね」

 戦う時は拠点の近くじゃない方がいいだろう。

 むしろ、むこうの拠点を破壊する方がいい。いったい、魔族の拠点はどこなんだろう?

 

 

 予想以上に早く2人の基礎講習が修了してしまったので、そのままゾンビ世界へ。

「ここが柔志郎の担当世界?」

「が……お」

 セイバーライオンが辛そうに鼻をおさえている。

 ライオンだけあって鼻がいいのかも。

「まずはあの高層マンションの攻略かな? 中はさらに臭いんで覚悟するように」

「気が重いわ」

「がお」

 セイバーライオンはすでに涙目だったり。

 ごめんね。晩御飯は美味しいものを食べさせてあげるからね。

 

「図書館は気になるから、マーキングだけしておこうか」

 ビルの商業エリアの上に大きな図書館があった。

 ゾンビはそれなりにいたけど、智子が変身することもなく、俺たちで対処できてしまった。

「遺体の処理の方が問題なんだよな。ほっとくと臭いし」

「中で倒すのも考えもんなんやなあ」

 できれば供養してあげたいけど、この世界の神様ってもういなくって、いるのは駄神だから天国とやらも期待できそうにない。

 救いがないなあ。

 

「今回の目的は最上階。近辺の情報入手だ」

「そうね。この量では1日かかっても運び出せそうにないでしょうし、置き場所もないわ」

 まあ、全部持ってく必要はないだろうけどさ。三国志関係は確保しておきたい。

 

 マンション部はオートロックだったりしたが、そんなものは扉ごと剣士が破壊。

「なんか慣れてる?」

「拠点だった北綾瀬駅を失って金町を目指している時、休憩したのは主にマンションだったッス」

「探知しながらならゾンビのいない部屋もわかるし、鍵は魔法で開けられるぜよ」

 なるほど。無人の部屋なら安心して眠れるわけか。

「それに貯水槽のあるとこなら、トイレも使えたッスよ」

「ああ、電気がなくてもそっちが使えるのはありがたいな」

 探知を使い、ゾンビを警戒しながら進む。

 隠形を使いながらと、そもそもマンションの廊下に出ていたゾンビが少なかったため、ほとんど遭遇もせずに昇っていくことができた。

 

「ゾンビはドアも開けられないのか」

「知能は低いぜよ」

「ガラス戸くらいは割ってきちゃうんスけどねえ」

 室内だからって安心はできないか。

 

「あのさ」

「ん? 疲れたか?」

 レーティアに呼びかけられて立ち止まる。

 ずっと階段を昇り続けているのだから疲れもするだろう。

 今やっと20階を超えたぐらいだろうか?

 事前にインターネットで調べたが、むこうの世界と同じならこのビルは39階もあったりする。

 

「いや、歩いてこの階数を移動するのは効率が悪くないか?」

「そうは言ってもエレベーターも動かないし」

 電気がないと高層階は大変だねえ。

 非常用のバッテリーとか自家発電装置があるのかもしれないけど詳しくないし。

 ビル管理士の資格、とっておけばよかったか。図書館に資料あるかな?

 

「お父さん」

 智子が指差した先を見てみると、某もちもちドーナツを思い浮かべるセイバーライオンの鬣の上にイナズマがとまっていた。

 室内だと飛ぶのも面倒なのかも。

 ……はっ。

「こ、これは!」

 ライオンの上に鷲。この組み合わせは!

「あとはゾウがいればマグナボスじゃないか!!」

 剣士がゴリラやサメって言うから気づかなかったけど、次はゾウでしょ、ゾウ。

 それとも剣士をゾウに見立てて、セイバーライオンを肩車してもらうか?

 

「ちゃうやろ!」

 バシンと智子がどこからともなく取り出した――スタッシュからだが――ハリセンにツッコまれた。

 いつの間に用意していたんだろう。見事な出来のハリセンだ。さすがわが娘!

「イナズマやイナズマ!」

「ケェ?」

 おお、イナズマが首を傾げた。そんなこともできるのか。

「イナズマは私たちといっしょに講習を受けたし、スタッシュも使える」

「ああ。おとなしく椅子の背にとまっていたな」

 レーティア、梓と基礎講習を受けた時、そうなっていたのか。カシオペアも椅子の上に座っていたのかな?

 

「せやからたぶん、ポータルカードも使えるんやないかって思うんやけど?」

「……あ」

 そうか。

 イナズマに屋上に行ってもらってそこでポータルカードでポータルを開けてもらえば、一気に屋上に行ける。

 こんな階段で大変な思いしなくてもよかったのか?

 

「イナズマ、これ使えるか?」

 剣士も気づいたのだろう、イナズマにポータルカードを見せた。

「ガァ」

 えっと、それはどっち?

 首でアクションしてくれないかな。

「がおがお」

「使えるらしいぜよ」

 もしかして、セイバーライオンが通訳してくれたの?

 スキル動物語とかもってるのかもしれない。

 

「……どうする? イナズマに行ってもらう?」

「ポータルカード1枚消費するか、あと20階近く昇りきるか、か」

 いくらGPが稼げるようになってきたとはいえ、ポータルカードは結構高い。俺自身がポータル使えるだけに余計にそう思う。

「仕方ないぜよ。イナズマ、頼んだぜよ」

 あっさりと剣士がポータルカードを渡してしまった。

 根性論じゃないけど、ここは駄神を鍛えるためにも最後まで昇らせた方がよかったんじゃないか? とも思ったが俺も階段昇るの面倒なので止めなかった。

 

 まず俺のポータルで全員が拠点に戻り、そこからイナズマが単独でマンションの屋上を目指す。

「さっすが、早いのう」

「私もいっしょに行けばよかったやろか」

 ……ムーンライトも飛べたっけ。

「屋上にはゾンビがいないから大丈夫でしょ」

 と、話してるうちにもうイナズマからセイバーライオンのビニフォンに電話がかかってきた。

 イナズマ用のビニフォンはまだ作ってなかったので今回は剣士が貸していたけど、使えるんならイナズマとカシオペア用のも必要か。

 ……タッチパネル、どうやって操作したんだろう。嘴? それとも脚?

「がおがお、がお」

「屋上にはゾンビはおらんかったらしいぜよ。ポータルも開けたようじゃ。さっそく行くぜよ!」

 俺たちは拠点の魔法陣からマンションの屋上へと向かった。

 

「高いぜよ!」

 そりゃ39階建ての屋上だからねえ。

「風も強いわね」

「でもそのおかげでそんなに臭くないのだ」

 言われてみれば。

 ゾンビがいなかったことも大きいんだろう。

 

「さて、それじゃみんなでこの近辺を観察して。気になったのがあったらビニフォンで撮影するのを忘れないで」

 屋上といってもかなり広いので俺たちは手分けして四方を観察する。

 ビニフォンに望遠機能つけておけばよかったか。

 

 

「なんか面白いの見つかった?」

「あそこ、車が動いてるみたいなんだけど」

 自信なさそうな梓。鬼の視力でもはっきりとは見えなかったのかな?

 

「どっち?」

 梓の指差した方角に目をこらすがよくわからない。

 ビニフォンに地図を表示させてみると、たぶん千葉の方角。

 

「そうや!」

 なにか閃いたのか、ペンを取り出す智子。

 ってそのペンは!

「マーキュリーパワー、メーイクアップ!」

 セーラーマーキュリーに変身する智子。

 これが智子のもう1つの変身。

 うん、中の人繋がり。それだけじゃなくて、さっきいった父親関係や、賢い、孤立気味、美少女、等の共通点も多いんだよね。智子と亜美は誕生日や血液型も同じって一部では有名だったし。

 

 ……けど無印状態なの?

 H(ヘッド)M(マウント)D(ディスプレイ)なゴーグルを装備し、ポケコンとビニフォンを接続するマーキュリー。

「渋滞情報を上手くキャッチできれば……」

「そのちっこいの、いらないんじゃ?」

「いや、あのポケコンはマーキュリー最強の武器だから」

 特に無印なら物理的な意味でね。

 この辺のアンテナ動いてないから、受信力増強のつもりなのかも?

 

「けどさ、車が動いているかどうかだけならさ、夜まで待てばライトの光で見えるはずだけど」

 俺の言葉にせわしなく動いていた指が止まるマーキュリー。

「それにさ、街明かりも見つけやすくなるし」

 無言で変身を解いた智子が近づいてきた。

 手にはハリセン。

「そういうことはもっと早う言ってや!」

 ……照れ隠しにツッコミなんて可愛いなあ。

 

 


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