真・恋姫†有双……になるはずが(仮)   作:生甘蕉

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39話 黒幕

 俺が返したぬいぐるみの正体と、干吉らしき審判のことを聞いた戦女神(ワルテナ)

「怪しいやつですわね。煌一さん、その干吉さんを強くイメージして下さい」

「えっ? ああ、俺の思考を読むのか」

 言われるままに干吉の姿をイメージする。

 ……たしかこんな感じで……こんな眼鏡で……無印の方にしか出てないからあんまり自信ないな。

 

「なるほど。では、先ほどのコンビニエンスフォンを貸してもらえませんか」

 仮登録状態にしてビニフォンを渡す。

「カメラを使えるようにお願いしますわ」

「これでいい? シャッターは念じればいいから」

「はい。レンズはここですね?」

 確認しながらビニフォンのレンズに手をかざして、シャッターを切るワルテナ。

 

「この方ですか?」

 ビニフォンの画面には干吉の姿が映っていた。

「念写?」

「はい。別に高いカメラを壊さなくてもできますわ。どちらかというと水晶玉の応用かもしれませんわね」

 なるほど。この女神は第3部もおさえていると。

 花京院やシーザーが使徒やファミリアで出てきても驚かないことにしよう。

 

「うん。この人ね」

 チ子に画面を見せて確認してもらう。

 便利だな、念写機能。

 盗撮し放題じゃないか!

「本拠地や拠点には念写や遠見による覗き、盗撮等を防止する魔法がかかってますわ」

 こんなアホなことを考えてるのを読まないで下さい。

 ……嫁さんたちが盗撮されないのは助かるな。

 

「それにしても……チッ」

 今、舌打ちしたの? 女神様が?

「生パターン青を聞き逃すとは不覚ですわ!」

「はい?」

「ぜひとも捕まえなくてはいけませんわ」

 まあ確かに捕まえてはほしいけどさ。

 ……干吉ってばホモっぽいとこ匂わせてたような気もするし、この腐女神なら喜ぶのも当然か。

 

「運営に報告してゲートを緊急封鎖してもらった方がいいのかな?」

 ゲート以外にこの面から移動できる方法があったらアウトだけど。

「いえ、運営にはまだ報告しない方がいい。煌一たちの面のチャンスコーナーのぬいぐるみも証拠品として運営に押収される可能性がある」

 また本来の口調なのか、ワルテナさん。もしかしてけっこう緊迫した状況?

 恋姫†無双ぬいぐるみを回収しにくくなるのは凄い困るんだけど。

 

「せっかく今回、メダルもけっこう入手して全員救助できるかもしれないのに」

 第3競技の輪投げでの順位は低かったけど、剣士もきっちりと景品のメダルの束をゲットしてくれていた。あの棒メダルは輪を通しやすいけど、倒したらアウトだったんだろうな、きっと。

「俺たちはすぐに戻ってぬいぐるみを救助した方がいいか」

「今さら回収するとは思えぬが、チャンスコーナーに現れるかもしれぬな」

 なんだか不安になってきた。他の恋姫ぬいぐるみも北郷一刀みたいに景品にされてやしないだろうな?

「競技が残ってるオレたちは残るッス」

「ゆり子は柔志郎と契約してくれ。智子といっしょの方がいいだろう」

 ファミリアにならないとゲートは使えない。うちの小隊は定員いっぱいだし、ゆり子も智子と同じ小隊がいいはず。

「せやな。お父さん、がんばるんや」

「智子も。応援してるから」

 宝珠すくいの代表は智子だった。そばで応援したいのになあ。

 

「ワシも最終競技の応援するから残るぜよ」

 剣士はまあいいか。もし戦闘になったとしても嫁さんたちがいればなんとかなるだろう。

 棒メダルを剣士から受け取って、髑髏小隊はポータルでゲートに移動する。

 

 

 4面へと戻った俺たちは、急いでゲームコーナーへと向かった。

 あ、浴衣返すの忘れた。着替えた服はスタッシュに入ってるからいいけど。

「ふう。まだ無事か?」

 クレーンゲーム自体には鑑定は使えても、中の景品には使えないので目視でクレーンゲームの中のぬいぐるみ調べる俺と華琳。

 他の嫁さんたちは万が一の邪魔が入らないように見張ってもらっている。

 

「ええと、もう助けたのが華琳、愛紗、蓮華……」

 人数が多すぎてこんがらがったので、スタッシュからノートを取り出してまとめていく。

 

救出済み

蜀・愛紗(関羽)、鳳統、馬超、厳顔、璃々

魏・華琳(曹操)、許緒、楽進、程昱、夏侯淵、典韋、郭嘉

呉・蓮華(孫権)、孫尚香、周泰、甘寧、呂蒙、周瑜

その他・陳宮、袁術、袁紹、公孫賛、ミケ、シャム、賈駆

 

 25人か。

 あ、売っちゃったけど貂蝉と卑弥呼もいたから27人。

 で、クレーンゲーム内にいるはずなのが。

 

蜀・劉備、張飛、諸葛亮、趙雲、馬岱、魏延、黄忠

魏・夏侯惇、荀彧、李典、于禁

呉・孫策、黄蓋、陸遜、大喬、小喬

その他・文醜、顔良、張勲、董卓、呂布、張遼、華雄、張角、張宝、張梁、孟獲、トラ、華佗

 

 29人? 間違いないよな?

 華琳に確認してもらいながら、クレーンゲームを覗いていく。

「……下の方は誰だかわかり辛い」

「救助しながら確認するしかないわね」

 そうだ。どっちにしろ救助するんだ。あとで公式のHP見ながら確認すればいい。

 

「メダルは100枚以上あるんだ。なんとかなる!」

 棒メダルは1本、50枚。

 なんとかなる、なんとかなると自分に言い聞かせながら、クレーンゲームを多方向から見て目標のぬいぐるみを決める。

 深呼吸して、メダルを投入。

 5枚投入で1回サービスされるから120回。1人4回のチャレンジか。

 ……いや、そんなことを考えては駄目だ。集中しないと。

 

 

「ふう、やっと10人か」

 次のメダルを投入しようとしている俺の手を華琳が止める。

「少し休みましょう。……残りの子もちゃんとこの箱にいそうね」

 勢いがついてきたような気もするけど、ここは華琳の言うとおりに休憩した方がいいか。

 肩の力を抜いて、クレーンゲーム内のぬいぐるみを確認。全員いそうで胸を撫で下ろした。

 

「もう競技は終わったかな?」

「智子の晴れ舞台は見たかったわね」

 でーでん、でーでん……。

 ビニフォンから流れる音楽。この鮫映画の効果音っぽいメールの着信音は……。

「みんな! 誰かくる!」

 メールを確認しながら警告する。

 あの着信音はディスクロン部隊からの緊急メール。

 

「誰かって?」

「……知らないやつみたい」

 ゲームコーナーへの入り口にみんなが注目する。

 華琳が炎骨刃を抜き、ヨーコがスナイパーライフルを、クランとレーティアがサブマシンガンを構える。

 梓は烈火拳を装備しただけでなく、足元がミシミシ鳴っている。鬼の力を解放しているみたいだ。

 

「くる!」

 鬼の嗅覚か聴覚か、どっちかわからないけれど鋭くなった感覚で来客を告げる梓。

 その直後、やつは現れた。

 

「ふん。だから傀儡を一纏めにしておくのは反対だったんだ」

 愚痴るように呟きながら現れたのは、中国風というか、道士っぽい衣装を纏った少年。額には赤い色でなにかの文様が描かれている。

 

「ええと……左慈君、でいいのかな?」

「気持ちの悪い言い方をするな、異物」

 あってるみたい。

 こいつは干吉の相方。恋姫†無双の悪役の左慈。

 

「一応確認するけど、このぬいぐるみって君たちの仕業?」

「無論。ただ始末したのでは他に影響が出ると煩いやつがいたのでな、そんな形にしたわけだ。結局は始末することになるのだがな」

 俺たちをなめているのか、ちゃんと答えてくれる左慈。

 それでも、目は左右を見回している。ぬいぐるみを確認しているのかも。

 

「そうか。お前が私たちを人形にした犯人か!」

 華琳の持つ炎骨刃が炎を纏いだす。

 それを睨む少年道士。

「傀儡を人形にするとは悪趣味なあいつにしては洒落がきいていると思ったが……貴様、どうやって戻った?」

「それはこちらの台詞よ。皆を元に戻しなさい!」

「……なるほど。方法は知らぬか」

 納得したように腕組みし頷く左慈。その顔のすぐ横を何かが通り過ぎ、少年の髪がわずかに散る。

「戻さないなら、次は当てるわ」

 ってヨーコ、撃ったの?

 もうちょい情報引き出したかったんだけど、もう戦闘開始?

 

「そんなものが当たるか」

 こちらに向かって駆け出す左慈。

 彼にクランとレーティアの銃撃が降りそそぐが、言葉通りにかすりもしない。

「どうなっているのだ!?」

 銃弾をかわしながら近づいてくる左慈。

 もしかして、俺を狙っている?

 一番弱い奴から始末しようってことか。

 GGK2刀を構える俺。

 

「させるか!」

 梓の鬼の拳がうなりを上げた。

 ……鳴っているのは烈火拳か。

「くっ」

 脚を高く上げてそれを受け止める左慈。

 その2人を目がけて、巨大な炎が襲い掛かる。

 

「華琳!」

「梓なら大丈夫よ。ちゃんと加減したわ」

 たしかに烈火拳で火レジ上がってるとはいえ、味方ごと攻撃しなくても。

「加減はいらなかったようだよっ!」

 苛立たしげに聞こえた梓の声。

 その声を合図にしたように、ヨーコが再び発砲した。

 

「当たらないと言った!」

 左慈はまだぴんぴんしながら向かってくる。

 ……やばい。こんなことなら絶対命中な攻撃魔法をマスターしておくんだった。

 俺は咄嗟にGGKを床に突き刺し、氷の壁を正面に張った。

 そのおかげで左慈の攻撃を防げる。すぐに氷壁は破壊されちゃったけど。

 左慈ってこんなに強かったの?

 学生だった主人公に邪魔されるぐらいの強さだったんじゃ……。

 

「チッ。……貂蝉はどうした?」

「さっきから気にしてるのは、そいつのこと?」

 げっ。あれで集中してなかったの?

「あの2人なら売っちゃった」

 驚きのあまり、正直に話してしまった。

 

「売った……あれをか? というか、売れたのか!?」

 左慈も驚いたようで、動きが止まる。

 もしかして攻撃のチャンス?

「今だ!」

 俺と同じ判断なのか、レーティアが動く。

 だがそれは銃撃ではなく、俺の眼鏡を奪うという予想外の行動だった。

 

「左慈と言ったな! お前にはこの男は殺せない!」

「なにを! ……な!!」

 俺の方を向いた左慈の頬が見る見る赤く染まっていく。

 ……ああ、左慈も美少年だもんねえ。

 この反応はもう見たくなかったんだけどさ。

 

「き、貴様、名は!」

「あ、天井煌一。天井(てんじょう)に煌く数字の一」

「天井か。覚えておくぞ! 俺は左慈! 忘れるなよ!」

 唐突に自己紹介されてしまった。忘れるなってもう知ってるんだけど。

 

「この勝負、預ける」

 あ、退いてくれるのかな?

「俺と戦うまで死ぬなよ!」

「あ、はい」

 赤面したまま、左慈は風のように去ってしまった。

 いいの、こんなんで?

 

「さすが女神の祝福だな。これほどの効果とは」

「呪いだよ」

 とりあえずはしのいだけど、余計に面倒なことになった気がするんだけど。

 

「煌一、目がいやらしい」

 まあ、言われる理由はわかる。戦闘のせいで、みんなの浴衣が着崩れてしまってたから。

 俺も慌てて自分の浴衣を確認。……うん、大丈夫。はみ出していない。

 

「みんな、ちゃんと履いていたんだね」

 浴衣の時に履かないってのは嘘だったのか。

「当たり前だ!」

 梓にゲンコツをもらってしまった。

 せめて烈火拳を外してからにして下さい。

 ……烈火拳のおかげで、華琳の火炎が命中した梓の浴衣も焼けずに済んでいたのかも。ちょっと残念。

 いや、左慈に梓のそんな姿を見られなくてよかったのか。

 

「また邪魔が入らないうちに救助を続けましょう」

 そうだね。そうなんだけど、ちょっと気持ちを切り替えるまで待ってね。

 集中しないと失敗しそうだからさ。

 集中、集中……忘れないように着崩れ嫁さんの姿を脳内に保存!

 ……ビニフォンに念写機能追加しようかな。

 

 

「ぃ……よっしゃあぁっ!」

 思わず両手でガッツポーズ。

 それから床にへたりこむ。疲れた。背中が汗でぐっしょりだ。

「全員救出できたのか?」

「うん。たぶんいない子はいないはずだよ」

 メダルも残り数枚で、クレーンゲーム機を空にできた。

 左慈がこなければもっと早く救助完了してたろうに。

 左慈がきたのは、干吉が華琳のことを知らせたからなのかな?

 となるとつまり、干吉も捕まってないんだろうなあ……。

 

「お疲れ様」

 華琳が優しく俺の頭をなでてくれる。

「カタヌキよりも緊張した」

 これでやっと、肩の荷が1つおりた。

 これでやっと、ビールが飲める。

 

「夜祭り、まだやっているかな?」

「最後に花火があるってあのナンパ眼鏡は言ってたな」

 ナンパ眼鏡(ミシェル)が言うってことは、女の子と眺めたいほどのもんなんだろうか。

「ぬいぐるみを置いたら行ってみよう」

 行かないで浴衣を返さないってのもちょっと迷うけどね。

 もらっちゃったら、浴衣のままで楽しんじゃうのになあ。

 神社の裏で隠れながらって、憧れるシチュエーションだよね! 覗かれそうだからやらないけど!

 おっと、戻る前に忘れずに呪い封じの眼鏡を装着しておかないと。

 

 

 俺たちが再び会場に戻っても、まだ祭りは続いていた。

 競技はもう終わってしまったようだったけど。

「おお、煌一さん、大変じゃったのう」

 カラーヒヨコの屋台の前で座り込んでいる剣士と遭遇。

「買うのか?」

「コカトリスやバジリスクも混じってるらしいんじゃがのう、全部オスなもんで、イナズマが嫌がってるんぜよ。安いと思うんじゃがのう」

 そんなもんの雛なの?

 普通の鶏の雛を着色しただけじゃないの?

 

「……生き物は止めておきなさい」

「亀も駄目か?」

「亀? ミドリガメじゃないよね?」

 縁日で入手して飼いきれなくなったり飽きたりして、放流するのが定番の。

「アーケロンじゃったかのう、すごく大きくなるらしいんぜよ」

「それはでかすぎだ。あきらめなさい」

 大きい亀か。玄武かガメラぐらいしか思い浮かばない……あ、ジンメンみたいのだったら嫌だな。

 やっぱり生き物はパスパス。

 

「お父さん、お疲れや」

「智子も頑張ったみたいだね」

「せや。2位や。お父さんと同じ順位や」

 よしよしと智子の頭をなでる。

 

「そいつのかわりに1位をとるって張り切っていたくせに」

「そうなの? ありがとう」

「つ、次はきっとゆり子が私らのために1位をとってくれるんや!」

 照れ隠しか反撃か、妹に次の試合を託す智子。

 俺もそれに乗っかることにする。

「そうだな。うちの子ならやってくれるさ」

「だ、誰がうちの子だ!」

「じゃあ、俺の娘なら」

「私の妹なら」

 おおっ、ゆり子が赤くなってる。

「ふ、ふん。あの程度なら私が負けるはずがないだろう。娘ではないがな」

 妹の方は認めたのね。父親分は寂しいけど、嬉しい。

 まあ、今回はもう他に競技はないし、次の交流戦はどんな競技になるかわからないけどね。

 

「残念ながら、干吉君は逃がしてしまいましたわ」

 腐女神モードのワルテナが頭を下げる。

「こっちに干吉の相方がきたから、たぶんそうじゃないかと思った」

「相方ですか?」

「こんなやつだ」

 レーティアがビニフォンの画像を見せる。

 いつの間に撮ったの? まさか、こんなのがタイプなの? 美少年だけどさ。

「隠蔽スキルも使ってないなんて、よほどの自信家なのだろう。今は煌一の虜のようだけどな」

 それは止めて下さい。

 

「まあ! この方が」

 この反応。干吉の時も思ったけど、恋姫†無双は未プレイでアニメも見てないんだろうな。

 女の子を前面に押し出しているから腐女子向けじゃないもんなあ。

「運営に連絡入れましょう。ぬいぐるみは全部回収したし、俺たちの面にきたってことはゲートを使用してるってことだろうから」

「そうですわね」

 電話ボックスに向かうワルテナ。

 2面(ここ)のは4面(うち)の電話ほど古くはないな。テレカが使えるようになっている。

 ……そこにコンカつっこむんですか、ワルテナさん。

 

 女神が電話して数分後、瀬良さんを呼び出す放送が流れた。

 連絡手段ないから、ビニフォンほしがっているのかな?

 

 さらに十数分後、昼食をとった場所に瀬良さんがやってきた。

 俺たちは屋台で適当に買ってきたものを摘んでいる。いつのまにか、カミナとミシェル、エルフ姉妹や十三たちも混じっていた。

「お待たせしました」

「忙しいところをすみません。ですけれど、緊急事態なのですわ」

 腐女神モードだと緊急っぽく感じなかったり。

 

 瀬良さんにビニフォンの画像で干吉と左慈を見せながら事態を説明する。

「部外者の侵入ですか。大問題ですね」

 ビニフォンごと2人の画像を手にしていたカメラで撮影する瀬良さん。北郷一刀ぬいぐるみも撮っている。

「こんな事態なのにうちの上司ときたら」

 なにやらブツブツ愚痴ってるけど、聞くと長くなりそうなのでスルー。

 

「とりあえずゲートの使用制限を厳しく設定しますので、これ以降の侵入は防げるはずです」

「ゲート以外からの侵入は?」

「たぶんないはずです。それをするにはよほどの力を持ってないと。そんな力はすぐに感知できます」

 ゲート付近やアパートの周りに監視カメラと警報装置、設置しようかな?

 

「あとさ、剣士がやっと担当世界の救済したんだけど、その支払いはいつぐらいになるかな?」

 管轄が違うかもしれないけど、聞いてみる。

 恋姫ぬいぐるみ、全員救出したんだから早く元に戻してあげたい。

 でも、そのために住むとこや食事を確保しなきゃいけない。GPが必要だ。GMでもいい。

「それなんですけどね、なんかうちの上司が再確認せよ、って煩いんですよ」

「ああん、お前とこの上司って、さっきの審判の同類か?」

 カミナの台詞が俺たち全員の気持ちを代弁していたと思う。

 

「……なるほど」

 ワルテナには状況がつかめたようだ。

「小さい男ですわね」

 ……俺? 俺のことじゃないよね!?

 

 女神の視線の先には瀬良さん。

「私はなにも言ってませんよ」

「わざと一瞬、精神防壁を解きましたわよね?」

「さあ。なんのことですか?」

 ふふふと微笑みあう女神と天使。

 ……怖い。

 たぶん、瀬良さんがわざと心を読ませた。その結果がワルテナの小さい男発言なんだろうけど。

 

「どういうことじゃか、ワシにはさっぱりわからんぜよ」

「瀬良さんの上司は以前、剣坊の姉にふられたのですわ。それを根に持って、剣坊に嫌がらせともとれる行動をしているのです」

 赤点常連の学生がいきなり高得点を取ったからカンニングを疑われた、とかそういうのじゃなかったのか。

 もっとなんというか……せこい。

 ふられて根に持つ気持ちはわからんでもないけど。弟に嫌がらせってさ……。

「じゃ、もしかして柔志郎担当の世界の拠点がゾンビタウン内だったのも?」

「私からはなんとも言えません」

 ……言外に肯定か。

 

「干吉と左慈も?」

「それは違うと思います。ここまで事件になってしまうと、管理能力を疑われますし」

 ふむ。なら、あの2人は瀬良さんの上司の嫌がらせに便乗したのかも。

 

「詳しいことは彼なら知っているかな?」

「この子ですね? どんな子なんですか?」

 北郷一刀ぬいぐるみを持ち上げるワルテナ。

 どうしよう。

 説明したら気に入って自分のファミリアにしそうな気もする。

 北郷一刀も美少年だし。

 

「それは素晴らしいですわね!」

 あ、読まれちゃった。

 まあいいか。

 嫁さん取られる心配が減りそうだと思うことにしよう。

 

 


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